雇用契約書とは? 作成方法や記載項目、パートや契約社員の注意事項など解説!

使用者が、労働者を雇い入れる際に交付するのが雇用契約書。類似する書面に労働条件通知書という書面もあります。

使用者と労働者間にトラブルを起こさないためにも、これらの書面について、正しく理解することは非常に重要なのです。

  • 雇用契約書とは何か
  • 労働条件通知書との違い
  • 雇用契約書で明示が必要な事項や作成時の注意事項

などについて、詳しく見ていきます。

1.雇用契約書とは?

雇用契約書とは民法第623条に基づいて、使用者(雇う側)と労働者(雇われる側)の間で雇用契約の内容についての合意がなされたことを証明する書面のこと。

民法第623条には、「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」と規定されています。

雇用契約書は法律上、交付を義務付けられている書類ではないため、発行しなくても罰則規定はありません。

しかし、「言った」「言わない」のように、雇用後に起こる雇用契約に関する争いが起きることも。それら争いの回避を目的として、多くの企業で雇用契約書の交付が行われています。

雇用契約書は、使用者と労働者双方で署名または記名押印するのが一般的です。

また、労働条件通知書の代替書類としても活用できます

2.労働条件通知書との違い

労働条件通知書とは、労働基準法第15条(労働条件の明示)で、労働契約時、会社が労働者に対して明示すべき項目のうち絶対的明示事項となる、

  1. 労働契約の期間
  2. 業務の場所・内容
  3. 業務の開始時刻・終了時刻・残業の有無
  4. 休憩時間
  5. 休日・休暇

など5項目について記載された書類のこと。使用者から労働者に通知するだけで構わず、署名や押印といったものは不要です。

雇用契約書は署名や記名押印が必要となるため、当事者間の合意が必要ですが、労働条件通知書は(本来は)当事者間の合意を表すことは義務ではありません

また、労働基準法第15条で義務付けられた絶対的明示事項が記載された雇用契約書、もしくは就業規則が交付されていれば、改めて労働条件通知書を作成する必要はありません。

その際は、書面の名称を「労働条件通知書兼雇用契約書」としておくとよいでしょう。

労働条件通知書とは?

【記載例まとめ】労働条件通知書とは? 正しい作成方法・書き方の見本
企業が労働者の採用を決定した場合、当該労働者に労働条件通知書を交付しなければなりません。しかし、労働条件通知書とは何でしょうか。 労働条件通知書とは何か 労働条件通知書の書き方や見本 労働条件通知書...

労働条件通知書とは労働基準法第15条1項の定めに従い、使用者が労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示するために用いる書面のこと。

「様式は自由でよい」とされているため、絶対的明示事項が雇用契約書や就業規則に記載されていれば、改めて労働条件通知書を作成する必要はありません。

また、将来就く予定の業務については、網羅的に明示しなくてもよいとされています。つまり、雇い入れた直後の業務内容が明示されていれば、問題ありません。

3.雇用契約とは?

雇用契約とは当事者の一方である労働者が労働に従事し、相手方である使用者がその労働に対して報酬を支払う契約のこと。

「労働の対価として報酬を支払う」考え方は労務供給契約の一つの考え方で、民法第623条で定義されている概念です。その他の労働供給契約として、請負や委任などがあります。

雇用契約は書面で取り交わされることが一般的です。口頭のみで契約内容を約束した場合、後々トラブルになることもあるので注意が必要です

労働契約との違い

雇用契約と同じような場面で用いられる言葉に、労働契約があります。

労働契約とは労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が労働者の労働に対して賃金を支払う契約のことで、労働関係諸法規でも用いられている概念です。

雇用契約と労働契約という2つの言葉は、

  • 同じという考え方
  • 全く別物という考え方

両方が存在します。雇用契約と労働契約が異なるものという根拠の一つに、「労働者を示す範囲」にあります。

民法第623条では、「労働に従事する」すべての労働者を対象としていますが、労働基準法の適用対象である労働者の条件は、労働基準法の第9条にある通り、「職業の種類を問わず、事業又は事務所(事業)に使用される者」です。

ここでいう「事業」とは「工場、鉱山、事務所、店舗等の如く、一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体」と解釈されています

個人が一時的に雇った

  • 大工
  • 庭師
  • 家事代行者

などは、労働基準法上での労働者に該当しません。

4.雇用契約書の作成方法、要件

必要な記載事項

雇用契約書の作成方法や要件について解説します。

  1. 労働契約の期間
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  3. 就業の場所、従事すべき業務
  4. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
  5. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期
  6. 退職(解雇の事由を含む)

①労働契約の期間

雇用契約書の作成に当たって必要なことは、労働契約期間の明示です。

  • 期間の定めがある労働契約の場合:定められた期間を明示
  • 期間の定めがない労働契約の場合:期間の定めがない

それぞれを、雇用契約書に明示します。

②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準

雇用契約書を作成する際、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準」について事前に取り決め、明示する必要があるのです。

契約社員のような有期労働契約(期間を定めた労働契約)では、まず更新の有無を明示します。

  • 自動的に更新する
  • 更新しない
  • 都度検討して、更新する・しないを決める

などの文言を用いて記載するのです。また、更新についての判断基準も明示しましょう。

  • 契約満了時の経営状況によって判断
  • 労働者の能力・勤怠などをもって更新の有無を判断

といった具体的な内容を盛り込みます。

③就業の場所、従事すべき業務

雇用契約書には就業場所や従事すべき業務の記載も必要です。

まず、実際に労働者が配属される就業場所を明示します。もし、後に就業場所が変更になると事前に分かっている状況ではどうするのでしょう?この場合、雇い入れ直後の最初に配属される就業場所を明示することで、問題ありません。

労働者が従事すべき業務内容も記載が求められます。将来的に従事する可能性の高い業務がある場合には、それを網羅して明示することも可能です

④始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換

雇用契約書には、

  • 始業・終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間や休日、休暇
  • 就業時転換

といった労働条件の詳細に関しても具体的な明示が求められます。

始業・終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無

労働者に適用される始業・終業の時刻が、シフト制など日によって時間が異なる場合、勤務パターンごとの始業を列挙してください。

終業時刻の記載に関しては、「シフト制による」といったルールを示した上で、就業規則の関係条項名を網羅的に示すことでも対応できます。

残業の有無については、所定労働時間を超える残業が発生するかどうかを明示します。

休憩時間や休日、休暇

労働時間に関しては、所定労働時間に対応する休憩時間も具体的に明示しなくてはなりません。労働基準法上、

  • 6時間を超え8時間未満までのとき:少なくとも45分
  • 8時間を超えるとき:少なくとも1時間

の休憩が必要と定められています。休憩時間を設定し明記すれば、労働者の標準となる労働時間が定まるでしょう。

労働者には、休日や休暇の規定も適用されます。曜日を固定する必要はありませんが、労働者には1週間に1日、または4週間に4日の休日を与えなくてはなりません。

シフト制休日と設定しても構いませんが、不定期で休日を与える場合、休日パターンや休日に関する就業規則の関係条項名を示す必要があります。

休暇とは、本来は出勤日であって本人が申請することで取ることができる休みのこと。法定休暇と法定外休暇に分かれているので注意が必要です。

就業時転換

就業時転換について、交替制勤務をさせる場合、交替期日や交替順序等に関する事項も明示します。就業規則の関係条項名を網羅的に示すことでも、代替可能です。

⑤賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期

労働の対価として支払われる賃金についても明示します。

月給制・日給制・時給制など賃金の計算方法や、手渡しなのか振り込みなのかといった支払い方法の明示が必要です。

もし賃金を金融機関への振り込みという方法で支払う場合には、事前に労働者の同意を得る必要があります。

賃金は、労働基準法によって「毎月1回以上、一定の支払日を定めて支払うこと」が義務付けられています。

週払いの場合、支払日を毎週金曜日と定めることもできます。しかし、月払いの場合、毎月「月末支払い」とすることはできますが、毎週第4金曜日といった設定はできません。

⑥退職(解雇の事由を含む)

雇用契約書には、解雇の事由を含む退職に関する要件も定めて明示することが、求められます。

  • 退職する際の事由
  • 退職時の手続き
  • 解雇する場合の事由

はできるだけ細かく丁寧に記載しましょう。

雇用契約書の書面内におさまらないほど、明示すべき事項が多い場合は、対象労働者に適用される就業規則上にある関連条項名を網羅的に示すことでも、代替できます。

解雇の場合、解雇事由が争点となり大きな問題に発展するケースが見られますので、解雇の事由を含む退職に関する要件も、しっかりと詰めておきましょう。

雇用契約書の記入例

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5.雇用形態別・雇用契約書作成時のポイント

「雇用形態別の作成ポイント」についても覚えておきましょう。多くの企業は、正社員以外にも、契約社員、パート社員、アルバイトといったさまざまな雇用形態で働く従業員を抱えています。

さまざまな雇用形態の従業員と雇用契約書を結ぶ際、正社員とは違った注意を払う必要があるのです。ここでは、

  • 正社員に対する雇用契約書を作成する際の注意事項
  • 契約社員やパート社員(アルバイト)に対する雇用契約書を作成する際の注意事項

について解説します。

正社員の雇用契約書の注意事項

  1. 雇用契約書に必要な記載項目を網羅する
  2. どの労働時間制を採用するか決める
  3. 転勤の有無を明示する
  4. 人事異動、職種変更の有無を明示する
  5. 試用期間を明記する

①雇用契約書に必要な記載項目を網羅する

雇用契約書に必要な記載項目を網羅しているかどうか、確認が必要です。正社員雇用の際は、労働基準法施行規則で、雇用条件に関して法律で決められた項目を明示することが、義務付けられています。

そのうち、書面で明示することが義務付けられている項目は、合計14項目。

これらについて、雇用契約書上に記載があるかどうか、必ず確認してください。

②どの労働時間制を採用するか決める

どの労働時間制を採用するか、定める必要があります。

法律上では、原則的制度である「通常の労働時間」以外に、「変則的な労働時間制」を採用できるケースも。

働き方改革でも、変則的な労働時間制がクローズアップされています。

労働時間に関しては、

  • 労働者がどの労働時間制を採用して就業するかを取り決める
  • 雇用契約書への明記

が重要なポイントです。

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③転勤の有無を明示する

転勤に関する事項も、雇用契約書への明記が必要です。

そもそも雇用契約書上、「就業の場所」は明示すべき項目の一つ。就業場所が変わるような転勤が考えられる雇用契約となる場合、転勤の有無について別途明記します。

また、会社からの転勤命令に従う必要がある点も、雇用契約書にはっきりと記載するのです。

④人事異動、職種変更の有無を明示する

正社員で就労する場合、人事異動や職種変更といった場面に遭遇することも。

雇用契約書に明示すべき項目に、労働者が「従事する業務内容」があります。

・多様な職種への配属の可能性があるのか
・専門職として特定の職種のみの配属になるのか

雇用契約書で明確に記載しておきましょう。

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⑤試用期間を明記する

新しく人材を採用した場合、試用期間を設けるケースは多々あります。

試用期間とは、採用した従業員を一定期間現場で就労させること。従業員としての適性や能力を判断し、その結果で本採用するかどうかを決定できる制度です。

注意点は、試用期間中でも雇用契約は成立していること。試用期間の存在や期間などについても、雇用契約書へ明記してください。

契約社員の雇用契約書の注意事項

  1. 所定労働時間の原則(1日8時間以内かつ週40時間以内)
  2. 雇用契約書の内容が、就業規則の労働条件を下回らないこと
  3. 契約社員の無期転換ルール(5年ルール)
  4. 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
  5. 労働条件の明示義務

①所定労働時間の原則(1日8時間以内かつ週40時間以内)

所定労働時間の原則を記載しましょう。これは、労働基準法第32条によって定められています。

所定労働時間は、始業時刻から終業時刻までの時間数から休憩時間を引いたもの。1日8時間以内かつ週40時間以内でなくてはなりません。

また、小規模の事業所では1日8時間以内かつ週44時間以内であればよい、という特例が設けられています。

②雇用契約書の内容が、就業規則の労働条件を下回らないこと

就業規則の労働条件を下回らないことも必要です。就業規則とは、常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成し、労働基準監督所長に届け出なければならないもの。

作成にあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが求められます。

ことが必要です。雇用契約書の内容は、当然、この就業規則に記載してある労働条件を下回らないようにしなければなりません。

③契約社員の無期転換ルール(5年ルール)

契約社員は、有期労働契約を結んでいる労働者を指します。平成25年4月1日から、労働契約法第18条に、労働契約のルールが新たに定められました。

契約社員の雇用契約を更新する際、通算5年を超えて雇用となるときは、当該契約社員から無期契約への転換希望が出せるようになったのです。また会社には、無期契約への転換希望に応じる義務が発生します。

④期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

契約社員は企業と有期労働契約を結んでいます。

平成25年4月1日に施行された労働契約法第20条では、特別な事情がない場合、正社員よりも契約社員に支払う賃金を低くしたり、正社員よりも低い労働条件で就労させたりすることを禁止しています。

契約社員の雇用契約書は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止条項についても、正しく理解した上で作成することが重要です。

⑤労働条件の明示義務

労働基準法第15条1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。

その他、労働条件の明示を義務付ける細かい項目が決められているのです。

労働基準法に則って、漏れのないよう、雇用契約書へ労働条件を明示しましょう。

パート社員(アルバイト)の雇用契約書の注意事項

パート社員やアルバイトの雇用契約書を作成する際、注意するべき4つの事項です。

  1. 記載を必要とする項目が網羅されているか
  2. 無期か有期か、雇用契約の期間が取り決めてあるか
  3. 就業規則やパートタイム労働法、最低賃金法に注意して賃金を決めているか
  4. 始業時刻・終業時刻の記載についての注意点を確認しているか

労働基準法、就業規則を遵守した雇用契約書の作成を徹底しましょう。

6.雇用契約書を交わしていない場合には?

使用者が労働者を雇用する際、労働条件などを明示した雇用契約書を取り交わすことが重要です。

しかし、現実には書面で雇用契約書を取り交わすことなく、口約束の状態で労働者を雇用するケースも少なくありません。

雇用契約書を交わしていない場合、罰則規定があります。

また、万が一合意があって書面による明示がない場合、雇用関係をどのように解釈するか、確認しておきましょう

罰則

使用者が労働者を雇用する際、労働条件を明示した雇用契約書を交わしていないと、労働基準法の罰則規程が適用されます。

労働基準法第15条にある労働条件内の絶対的明示事項を示さなかった場合、労働基準法第120条によって30万円以下の罰金を科されます。

トラブル回避のためにも、罰則のあるなしにかかわらず、雇用契約書の作成、交付は行いましょう。

合意はあるが書面による明示がない場合

使用者と労働者の間で、就労条件など雇用契約に関わる合意を口頭で行った場合、労働基準法違反となります。しかし、労働契約自体が無効になるわけではありません。

労働契約そのものは労働基準法ではなく労働契約法によって別途定められています。

そのため口約束でも使用者と労働者の合意があればその労働契約は成立するのです。絶対的明示事項に漏れがあっても、雇用関係は維持されます。