【事例アリ】ジョブ型人事制度とは? メリデメ、失敗例、給与

欧米で主流のジョブ型人事制度は、近年、日本の大手企業でも導入が進んでいます。注目される理由や導入ポイントなど詳しく解説していきます。

1.ジョブ型人事制度とは?

ジョブ型人事制度とは、特定の仕事を遂行できる人材を採用し配置する制度のこと。人ではなく、遂行される仕事の価値に対して賃金を支払う考え方です。欧米で主流となっている制度で、日本でも大手企業を中心に導入が進んでいます。

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2.ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度の違い

人事制度にはジョブ型とメンバーシップ型があり、日本では長くメンバーシップ型が取り入れられてきました。

メンバーシップ型人事制度とは?

職務を限定せずに自社のメンバーとして採用し、配置転換を行う制度のこと。総合職として採用し、配置転換をしながら経験を積ませていく方法で、企業にとっては柔軟な人事戦略が実施しやすいといえます。

終身雇用を前提とした雇用で、長期的な人材確保が可能であるものの専門職の人材育成が難しくなるのです。

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違い

ジョブ型人事制度では、特定の分野に強い人材を採用するため、職種変更をともなう配置転換がありません。高い知識と技術を備えた人材を確保すれば即戦力となります。

一方のメンバーシップ型は、多くの人材を採用し職務内容を限定しない働き方です。そのため、賃金の算定方法や昇進、昇格や降格、採用基準などさまざまな点が異なります。

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3.ジョブ型人事制度が注目される理由

ある調査によると、半数以上の企業がジョブ型人事制度の導入を検討していました。なぜ注目が集まるのかを解説します。

  1. 専門職の人材確保
  2. 働き方の多様化
  3. 日本政府がジョブ型への移行を促す指針を発表

①専門職の人材確保

企業が求める専門性の高いスキルを有する人材を確保できるからです。近年、ITエンジニアといった、新しい技術のスキルを持つ人材の不足が問題視されてきました。

従来のメンバーシップ型は配置転換をしながら人材を育成するため、専門性を高めるのに時間がかかります。ジョブ型は即戦力となる人材を確実に確保できるのです。

②働き方の多様化

新型コロナウイルス感染症の流行にともない、リモートワークが広まったことで労働環境が大きく変わりました。

リモートワークで、メンバーシップ型人事制度によるプロセス型の評価は難しく、そのため、遂行される仕事の価値に対して賃金を支払うジョブ型人事制度に注目が集まっています。

リモートワークとジョブ型人事制度の相性は良く、勤務時間や勤務地、年齢など、企業の採用条件に合わなかった優秀な人材が活躍できるようになりました。

③日本政府がジョブ型への移行を促す指針を発表

日本企業にジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針を2023年春までに、官民で策定すると、岸田内閣総理大臣が述べています。その目的は下記のとおりです。

  • 日本全体の生産性向上
  • 労働移動(就職や転職、転勤などによる労働力の移動)の円滑化
  • 専門性による賃上げ

政府は、「年功序列的な職能給をジョブ型の職務給中心に見直す」と話しており、ジョブ型への移行に際して失業の増加を防ぐ対策(学び直し)も検討しています。

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4.ジョブ型人事制度で給与はどう変わる?

人事評価や給与算定の基準などがメンバーシップ型と異なるため、給与額の変動や定期昇給と諸手当の廃止が予想されます。

職務によって給与が変動

担う職務の内容によって基本給が変動します。メンバーシップ型の貢献や年功などに応じて給与配分が設定されるのと異なり、高い専門性と職務遂行スキルを持っている人材は若くても給与額が高くなるでしょう。

逆にスキルや知識が基準に達していなければ必要とされる職務がなくなるため、降格や減給といったケースもあり得ます。

定期昇給や諸手当が廃止

ジョブ型人事制度は職務内容が基準のため、勤続年数や年齢などを基準にした定期昇給や家族手当、住宅手当など、職務に関係ない手当や企業全体の昇給が廃止されます。よって基本給のみの支給となるため、給与総額は減る可能性も高まるでしょう。

給与を上げるためには、つねにスキルアップが必要です。

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5.ジョブ型人事制度のメリット

今後、国内企業で導入が広がるジョブ型人事制度について、企業側と労働者側の視点からメリットを解説します。

企業側のメリット

企業側のメリットは、下記のとおりです。

  1. 採用のミスマッチを防止
  2. 人件費の削減

①採用のミスマッチを防止

企業が求める専門知識と技術を身につけた優秀な人材をいつでも採用できます。専門分野の知識を生かした企業の即戦力として期待できるでしょう。また、職務と役割が明確なので採用のミスマッチを防ぐのも可能です。

②人件費の削減

職務を遂行できる人材を採用するため教育コストを削減できます。企業が必要とする知識やスキルを持っているため業務も効率化し、残業も削減されます。年功に応じた賃金体系ではないので、固定昇給もなく人件費が抑えられます。

労働者のメリット

労働者側のメリットは、下記のとおりです。

  1. モチベーションの維持
  2. スキルを生かして報酬を増やせる

①モチベーションの維持

自分のスキルを生かした業務に集中できるため、会社や社会に貢献しやすく仕事へのモチベーションが保ちやすいです。仕事へのやりがいを感じられるためストレスもなく健全な精神状態でいられます。

また転勤や異動がないので結婚や出産、育児や介護など人生設計がしやすいのもメリットです。

②スキルを生かして報酬を増やせる

年功序列や勤務年数でなく、スキルやポジションで給与が決まるので、再雇用の高齢者や若年層でも入社早期から高収入が期待できます。入社後も専門スキルを向上させていけばいくほど報酬が増えていくのがメリットです。

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6.ジョブ型人事制度のデメリット

国内企業で導入が広がるジョブ型人事制度にはメリットがある一方、企業側と労働者側、それぞれでデメリットがあります。

企業側のデメリット

企業側のデメリットは下記のとおりです。

  1. 人材が流出するリスク
  2. 契約外業務の対応は原則不可能

①人材が流出するリスク

高い専門性やスキルを有する優秀な人材は、つねに他社からの引き抜きがあるため条件の良い会社に転職されてしまうかもしれません。また高い意識を持った人材ゆえ、キャリアアップを目指して転職してしまう可能性もあります。

②契約外業務の対応は原則不可能

ジョブ型人事制度の従業員は原則、契約外の業務を行いません。そのため突発的な業務を指示したり、急な欠員が生じてもジョブ型人材を投入したりできません。また契約外の業務を依頼すると契約違反となり、トラブルにつながる可能性もあります。

労働者のデメリット

労働者側のデメリットは下記のとおりです。

  1. 雇用が不安定
  2. 自主的なスキルアップが必要

①雇用が不安定

職務を明確にして採用されているため、契約している職務がなくなれば雇用が継続されなくなります。また「ほかの業務がしてみたい」「スキルを身につけるためほか部署へ異動したい」と思っても配置転換ができません。

②自主的なスキルアップが必要

高度なスキルを求められ即戦力として採用されたため、スキルが不足すると雇用の継続を打ち切られる可能性もあります。ジョブ型人事制度は社内研修がないため、つねに自ら専門スキルを向上させる努力が必要でしょう。

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7.ジョブ型人事制度の失敗例

ジョブ型導入を検討しているが失敗するのではないか、と心配する企業や労働者に向けて失敗例と対策を解説します。

  1. 個人重視志向によるチーム力の低下
  2. 育成と処遇方針の不整合

①個人重視志向によるチーム力の低下

営業のスキルアップ、企画力強化を目指してジョブ型を導入。個人の業績目標には個々の売上を設定し、ジョブ型人材を職務内容で評価しました。

その結果、個人の実績を重視する傾向になり、企業の強みだったチームワークが希薄に。次の評価期間ではチームワークを評価基準へくわえたものの、改善はみられませんでした。

対策は、チーム力で評価する要素を入れることです。

②育成と処遇方針の不整合

従業員がジョブ型に対応できず、結局は年功的な昇給や昇進がそのまま継続されているケースも多々あります。処遇の変更がともなうため、しっかりと説明しなければ現場の従業員から不満の声が上がるでしょう。

対策は、組織全体にジョブ型人事制度を導入するのではなく、マネジメント層から段階的に導入していくことです。

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8.ジョブ型人事制度を導入する際のポイント

ジョブ型人事制度を導入する際のポイントとはなんでしょうか。それぞれについて見ていきます。

  1. 職種や役割、職務範囲などを明確にする
  2. 社内制度の整備

①職種や役割、職務範囲などを明確にする

どのような事業で、どのような専門スキルを持った人材が必要なのかを明確にしましょう。ジョブ型人事制度を適用する職務内容や範囲が決定したら、職種やポジションごとの職務内容、達成目標、責任と権限範囲を明確にします。

また業務の詳細を明記したジョブディスクリプションを具体的に作成するのもポイント。具体的な内容は、下記のとおりです。

  • 職務内容
  • 目的
  • 責任範囲
  • 必要なスキル
  • 労働時間
  • 勤務形態

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②社内制度の整備

賃金制度についてはこれまでの職能給が排除され、各ポジションの職責の大きさにもとづいてランクを設定します。その際、外部労働市場における賃金水準も加味しながら行いましょう。

就業規則については、職務や勤務地などは本人が決めます。企業側に決定権があった異動や転勤、昇進や降格といった就業規則は見直しが必要です。またこれまでの経営環境が変わる点について、企業と労働者の意識のズレをなくしたうえで導入するのが重要です。

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9.ジョブ型人事制度の導入企業事例

ジョブ型人事制度への移行が日本で進んでいます。実際に導入している企業がどのような取り組みをしているのか紹介します。

  1. 資生堂
  2. NTT
  3. カゴメ
  4. ニトリ
  5. 三菱ケミカル

①資生堂

生産性と専門スキルの向上を改善することを目的に導入。管理職から一般職まで全階層へ、ジョブ型雇用制度を日本の風土にあうようカスタマイズした「ジョブグレード制度」を適用しています。

20以上のジョブファミリーを設けており、なかでの役割によって等級が変動します。その結果、異動や担当替えがスムーズに行えるのです。

②NTT

2020年7月から部長級以上にジョブ型の人事制度を導入。21年10月から課長級以上の管理職全体に対象範囲を広げました。従来の人事制度では、管理職になるには30代半ばから40代でしたが、新制度では20代で管理職になるのも可能です。

職能資格制度は専門家が育ちにくく、年功主義的な運用が課題になっていました。

③カゴメ

グローバル人事を実現するためにジョブ型人事制度を導入。管理職の登用が実力主義となり、優秀な人材であれば国内外を問わずに活躍できる体制を整備しました。

等級制度を「年功型」から「職務型」へ、さらに課長以上の役職には業績・評価と連動した報酬制度へ改訂。部門横断的な取り組みを重視し一般社員への拡大は考えていません。

④ニトリ

ハイパフォーマー人材の育成を目的に、一部の社員へジョブ型人事制度を適用。デザイナーといった専門職はもちろん、それ以外の社員は専門職務が決まるまでジョブローテーションで幅広い知識やスキル、経験を積むことになります。

つまり高い専門性のスキルを持った人材とオールラウンドな人材、両方が育成可能になったのです。

⑤三菱ケミカル

人事異動の透明性や公平性を確保し、働き手の考え方に対応することを目的に導入。年功ではなく職務に対する成果で評価し賃金水準や賞与を決定します。

社内異動は社内公募制とし、社員が自主的にキャリア形成へ取り組めるようにしました。母体となる企業が5社となり社員が適材適所で働ける環境を整えるのも、狙いのひとつです。