人事戦略とは?【フレームワーク】戦略の立て方、事例

働き方が大きく変わるなか、人事戦略は企業の重要な施策として注目されています。どのようなもので、どうやって戦略を決定していくのか。フレームワークの使い方をふくめて確認しておきましょう。

1.人事戦略とは?

人事戦略とは、企業のビジネス活動に合わせて人材を管理する総合的な計画のこと。採用や業績評価、報酬など、人事のすべての主要業務の方向性を決定し、組織全体の人事慣行を決定する長期的な策定です。

人事戦略を英語で表現すると?

英語では「The Human Resource strategy」「Human Resource」(人材・人事)「strategy」(戦略・作戦)1997年にアメリカのデイビット・ウルリッチ教授が提唱したあたらしい人事の役割についての提言が基本になっています。

管理だけをしている従来の人事部は企業に必要ないとするかわりに、あたらしい人事はこれからの組織には欠かせない重要な役割を担うと解説。そのポイントは4つです。

  • 戦略パートナー(Strategic Partner)
  • 管理のエキスパート(Administrative Expert)
  • 従業員のチャンピオン(Employee Champion)
  • 変革のエージェント(Change Agent)

従来と大きく違うのは、人事も販売部門とおなじように、企業の経営戦略や市場を十分に理解したうえで業務を行う点。さらに社員を等級で単純に管理するのではなく、やりがいをもって働いてもらうために意見を聞き、職場環境を改善する役割も担うのです。

そのあたらしい人事部が計画して実行するのが人事戦略。企業のカルチャーや従業員そして組織を総合的にとらえたうえで人事が立案し実行する戦略といえます。

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2.人事戦略と人材戦略、戦略人事との違い

「人事戦略」と「人材戦略」どちらもよく目にします。ふたつの意味は異なるのでしょうか。

人材戦略との違い

英語ではどちらも「The Human Resource strategy」。The Human Resourceを「人材」もしくは「人事」と訳すかの違いはあるものの、意味は同じになります。

日本でいう人事部も、英語では「Human Resource Department」もしくは「Human Resource Division」「HRD」です。

いまでは「ヒト」を貴重な経営資源ととらえて「人材」とするのが一般的になっているものの、人材部という呼称をつかっている日本の企業はほとんどありません。

「The Human Resource strategy」も、採用や等級、そして評価や報酬など「人事部」の施策にかかわるため、日本では「人事戦略」のほうがわかりやすいかもしれません。

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戦略人事との違い

戦略人事とは人事戦略が企業全体の成長を意図した施策を指すのに対し、より特化した企業の目的を達成するために実行される人的マネジメントのこと。「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」とも呼ぶのです。

そのときの市場や環境に応じた企業の具体的な目標にあわせて、人材を戦略的に配置し組織づくりを行うのを意味します。人事部門の専門的な知識だけではなく、状況に応じた経営戦略や事業戦略について理解したうえで実行される施策です。

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3.人事戦略を立てる目的

企業内で管理部門としての役割を担当し、採用や配置、等級や報酬の決定を行ってきたのが従来の人事部。しかし少子化やコロナ禍もあり、人々の働き方や働くことに対する考え方が変わるなか、人事部の役割は大きく変わってきています。

  • 企業と従業員の双方に価値のある雇用を実現する
  • 組織のパフォーマンスを向上させ、目標を達成する
  • 目標達成に適切な人材を採用し、雇用を維持してモチベーションを高める

人事部も企業の目標やあり方にコミットし、人材をより積極的に活用する施策を実行する部門へと進化することが必要です。

  • 人材を最大限に活用できる企業はどうあるべきなのか?
  • どのような施策をどう実行していくのか?

つねに経営戦略を理解して、企業の目標を実現するために策定されるのが人事戦略です。

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4.人事戦略の立て方

人事戦略は、組織と従業員を内部から変革するために策定されます。ではどうすれば企業価値をあげる人事戦略を立案できるのでしょうか?基本的なステップを確認しておきましょう。

STEP.1
ビジネス戦略を理解
人事戦略を立てて実行するには、人事は企業の管理部門という従来の考え方を変える必要があります。販売部門と同じように、企業の経営目標と置かれた環境やマーケットを理解することがファーストステップ。

そして目標を達成するために「人事がどうかかわれるのか」「なにが優先事項となるのか」を考えます。人事戦略はつねにビジネスニーズと合致していなければなりません。

STEP.2
人事戦略を検討
つぎに市場で優位性を確保するためのロードマップを作成します。

組織が人材をどのように活用すればマーケットで優位なポジションを取れるのか、十分な検討と計画が必要です。有効な戦略を立てるには、企業戦略を策定するときと同じように、あとで紹介するいくつかのフレームワークを使うとよいでしょう。

STEP.3
投資すべき方策に優先順位をつける
企業の目標を達成するためにはどのような人事施策を実行できるのか。

すべてのプロジェクトを洗い出して優先順位を検討します。予算や経費は限られていますから、なにに優先して投資するべきかを検討して確定しなければなりません。

そして確定した施策を実行する予算を確保するために、経営陣や利害関係者を巻き込んで賛同を得ておくのも大切です。

STEP.4
人事制度の見直し
企業の経営戦略にあった人事戦略が決まったら、現状の人事制度や方法を見直します。

あたらしい人事戦略を実行するために、具体的になにを変えなければならないのか。たとえば給与体系を変えなければならないのか、評価制度を抜本的に変更するべきなのか。

従来の人事制度を見直し、なにを変更してあたらしくなにを導入するべきなのか、確定します。

STEP.5
戦略に従った人事制度の実施
あたらしい人事戦略を実行するために、社内のリソースが不足していれば用意する必要があります。

  • 人材育成プログラム
  • あたらしい評価制度
  • 労務管理のシステム

そのときの環境や企業によって優先事項はさまざまあるものの、テクノロジーの導入やアウトソーシングもふくめて、必要なリソースの確保を検討します。

STEP.6
人事制度を浸透させる
従業員が会社を選ぶ時代。よって従業員エンゲージメントの向上は重要です。

あたらしい人事施策によって従業員が能力を発揮し、スキルを高められることを社内に浸透させることが必要になります。人事戦略の実行によって職場環境が改善され、それぞれが描くキャリアの実現に役立つと理解してもらわなければなりません。

経営陣を巻き込むと同時に、従業員の賛同を得るとあたらしい人事制度が組織に定着していきます。

STEP.7
有効性を検証
あたらしい施策を導入したあとは人事戦略が期待どおりに機能しているか検証するのも大切です。

  • 就業時間
  • 離職率
  • 欠員補充までの日数
  • 従業員1人あたりのトレーニングコスト

人事戦略にかかわるKPI(Key Performance Indicator)業績指標を設定して、継続的に結果を検証します。必要があれば戦略や制度を見直してつねに改善することが必要です。

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5.人事戦略策定のポイント

コロナ禍を経て人々の働き方がかわった新しい時代。人事戦略を策定するために意識しておくべきポイントがあります。

  • 企業の目的、価値および文化を明確にする
  • 組織のフラット化によって、企業の敏捷性(アジリティ)に貢献する
  • 人事制度の変革やスキルの再教育などによりあたらしい価値を創造する
  • 未来のためのあたらしい組織の原動力となる

人事戦略を策定するうえで、まず明確にしなければならないのが企業のアイデンティティ。企業が存在する意義はなにか、そして社会にどういう影響を与えるのかを見直します。現代は、下記の頭文字をとってVUCAといわれる時代です。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

そして昨今、企業のあり方のキーワードのひとつがアジリティ(敏捷性)です。インターネットの普及とテクノロジーの発達で、業務のアウトソーシングもあたりまえになっています。

ビジネスはプロジェクト化していて、従来の硬直化した組織ではマーケットの需要に対応するのが困難になりつつあるのです。よって従来の企業体から、流動化したフレキシブルな組織へと進化する必要があります。

そしてもうひとつのキーワードがリスキリング(スキル再習得)。企業の生み出す付加価値を最大化するには、従業員の能力を活性化することが必要です。

外部の人材を探すのではなく、企業内の従業員を育成して生産性をあげられれば、企業と従業員の双方にとって大きな利益になるでしょう。

従業員と企業の関係も大きく変わっています。今後どうすれば従業員の能力を発揮させて企業の付加価値をあげられるのか。経営戦略と結びついた人事戦略は、企業の未来にとってもっとも重要な課題です。

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6.人事戦略策定に役立つフレームワーク

人事戦略の立案に役立つ代表的なフレームワークを紹介しましょう。問題や障害を明らかにして解決策を確定するのに役立ちます。

  1. ロジックツリー
  2. 根本原因分析
  3. CATWO分析
  4. ケプナー・トリゴー(Kepner Tregoe)分析
  5. SCAMPER分析
  6. VRIO分析
  7. SWOT分析

①ロジックツリー

問題とその原因を明確にしてマッピングすることで解決策を見つけるのに役立つフローチャートです。

  • 現状の問題点とその原因と結果を特定
  • 問題を解決策へと変えて、右側にツリー状に増やしていく
  • 解決方法を策定する

左から右に行くにつれて、抽象的なものから具体的な解決方法にしていくことがポイントです。問題点をリストアップできるため対応するべき優先順位をつけやすく、可視化することで全体像を把握できるというメリットがあります。

②根本原因分析

問題があるのはわかっているけれど、その問題がどこから生じているのかわからない場合に役立つフレームワークです。

原因を正確に特定して、恒久的な解決策を見つけるために有効で、離職率の高さやトレーニングプログラム不足などの問題に対処できます。

具体的には退職者のインタビュー、従業員の意識調査などを通じて問題にかかわるデータを収集して分析し、根本原因が何なのかを特定していきます。

高い離職率の根本原因が恒常化した残業になると判明した場合、人事は部門マネージャーと解決策に取り組めるようになるのです。

③CATWOE分析

複雑な問題や状況分析、評価に役立つツールです。

  • C – Customers:問題や解決策が影響する対象はだれか
  • A – Actors:問題に関わっているのはだれか
  • T – Transformation process:問題解決にどのようなプロセスが必要か
  • W – World view:問題解決に影響する価値観はなにか
  • O – Owner:問題を分析して解決するのはだれか
  • E – Environmental cunstraints:問題解決に影響をあたえる経済的要因はなにか

たとえば従業員のモチベーションが低い場合、CATWO分析をつかって次のことを特定できます。

  • C:従業員
  • A:マネージャーおよび人事担当者
  • T:従業員の士気を向上させる方法
  • W:企業の価値観
  • O:人事部
  • E:予算や企業文化、仕事量など

これらの各要素を考慮すると、人事部はモチベーション低下に対処して職場環境を改善するための戦略を検討できます。

④ケプナー・トリゴー(Kepner Tregoe)分析

KT分析は4つのステップで構成される問題解決と意思決定のためのフレームワーク。ステップは次の4つです。

  • 問題を特定して関連情報を収集
  • 根本原因を特定
  • 最適なソリューションを決定
  • 選択したソリューションの潜在的な問題を特定し、対処するための対応策を検討

たとえば人材育成トレーニングの開発時、改善が必要な領域を特定してから解決方法を作成するときに役立ちます。

⑤SCAMPER分析

あたらしい製品やサービスを生みだすのに役立つクリエイティブな手法で、次の頭文字を取ってSCAMPER分析と呼ばれています。

  • Substitute:何かで代用できないか?
  • Combine:何を組み合わせることはできないか?
  • Adapt:ほかの何かを適用できないか?
  • Modify:何かを修正することはできないか?
  • Put to other uses:何かに転用できないか?ほかのことに使えないか?
  • Eliminate:何かを削除できないか?
  • Reverse:何かを組み替えたり並べ替えたりできないか?

採用プロセスでSCAMPER分析を使用して、候補者を評価する新しいアプローチを作成するのも可能です。

⑥VRIO分析

組織が社内リソースを評価・分析して最大限に活用するのに役立ちます。「社内のリソースを特定して活用」もしくは「必要に応じて適切な人材を採用」して、プロジェクトを確実に遂行したいときに役立ちます。

  • Valuable:企業がマーケットで生じる機会を生かして脅威を無効にできる、価値あるリソース
  • Rare:競合他社にないリソース
  • Inimitable:ほかの企業には真似ができないリソース
  • Organization:リソースを活用する組織力

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⑦SWOT分析

業務に影響をあたえる内部および外部要因を把握して、強み・弱み・機会・脅威を分析して、効果的な人事戦略を策定できます。企業戦略のフレームワークとして有名ではあるものの、人事戦略にも役立つのです。

  • Strengths:強み
  • Weaknesses:弱み
  • Opportunities:機会
  • Threats:脅威

強みと弱みはコントロールできる組織内の要因です。しかし機会と脅威は人事の力がおよばない外的なものといえます。それがSWOT分析によって、人事は組織が持っているスキルと不足している能力を特定できるのです。

すべての情報を収集したら、既存の強みと弱みを把握したうえで、必要なスキルや従業員を獲得するための人事戦略を立てられます。

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7.人事戦略策定の参考になる企業事例

従来の管理部門という考え方を変えて人事戦略を導入し、成功した例は数多くあります。人事戦略に取り組む日本企業の成功事例をいくつか見ておきましょう。

  1. カゴメ
  2. 大和証券
  3. 日立

①カゴメ

人事の目標として「エンゲージメントの向上」を掲げるカゴメ。信頼感がある環境のなかで個々のメンバーがチームとしてきちんと働き、能力を最大限発揮して組織の目標を達成できる状態にすることを目標に、さまざまな改革に取り組んでいます。

達成するためのポイントは3つです。

  • 経営戦略と人事戦略の連動
  • 現状と目標のギャップの数値化
  • 行動を変える企業文化の定着

「評価は上司次第」という古い制度を廃止してグローバルな人事戦略を推進。社員の意識を同じ方向へそろえるため、KPI評価シートは役員もふくめて全社員が記入して公開しました。

さらに同シートを活用して、上司が変わっても評価に差異がでない業績連動評価を導入したのです。会社としての透明性を担保しながら、エンゲージメントの向上を最重要経営戦略として、強い会社づくりを目指しています。

②大和証券

時代に先駆けて推進してきた「働き方改革」をさらに推しすすめ「働きがい改革」を掲げて職場環境の整備に取り組んでいるのが大和証券。イノベーティブな発想や顧客満足度の向上は従業員の高いモチベーションがあってこそ、という理念が基本です。

  • 社員の生産性
  • 社員の活躍度
  • 社員の働きがい

クオリティNo.1の付加価値を提供できる人材を育成し、同時に業務効率化によって生産性を向上。

若手からベテランまですべての社員がいきいきと働き続けられる環境を整備し、働くことに生きがいと喜びを感じて、最大のポテンシャルを発揮できる職場環境をつくりました。

高度資格ホルダー数や女性管理職比率などをKPIとして検証をしながら、人材戦略をすすめています。

③日立

2008年度に7873億という記録的な連結損益の大赤字を計上した日本の名門企業である日立。その後「グローバル」をキーワードに新しいビジョンと人事戦略を策定し改革を進めています。

  • 人材の可視化
  • グローバルグレーディングの導入
  • 次世代リーダーの選抜と育成

全世界25万人の人材データを蓄積して、優秀な人材を把握し人材配置を実行。従来の職能等級制度をあたらめ、徹底した格付けトレーニングを実施してグローバル共通の職務評価基準を導入したのです。

さらに国籍や性別を問わず優秀な人材を選別し、リーダー育成トレーニングプログラムを2011年から実施。労働組合も巻き込んで全社の意識改革を推し進め、業績をV字回復させることに成功しています。

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8.人事戦略策定の参考になる本

時代の変化とともに役割が大きく変わった人事業務。人事戦略を考察する際も人事領域への総合的な知見が必要です。

1997年にマッキンゼーが提唱した人事戦略の考え方から、急成長したNETFLIX社の成功の秘訣などが書かれた参考になる書籍を紹介します。

  1. ウォー・フォー・タレント ― 人材育成競争
  2. データ・ドリブン人事戦略
  3. NETFLIXの最強人事戦略
  4. Amazonのすごい人事戦略

①ウォー・フォー・タレント ― 人材育成競争

2001年10月15日発刊された1997年から実施されたマッキンゼーの「ウォー・フォー・タレント」調査にもとづいて書かれた人事戦略の基本書です。昨今は人が企業を選ぶ時代。有能な人材を確保して育成することが、企業にとっては重要な課題です。

なぜ人材を重視すべきなのか、いかに有能な人材を集めるのか、そしてその人材をいかに育てるべきかなど、人事戦略を6つのテーマにわけて詳細に解説しています。

参考 ウォー・フォー・タレント ― 人材育成競争Amazon

②データ・ドリブン人事戦略

2018年4月3日発刊。「データ・ドリブン人事戦略」はデータを活用して社内の人々のパフォーマンスを向上させることだけをさすのではありません。

データを分析して数値などが実績に与える影響を考察し、企業の成功に貢献することを目的とします。AI時代の人事の役割とはどのようなものか、どのようなスキルや知識が必要となるのか。

本書では、データドリブン人事戦略がどのようなもので、変化に対応できる組織をつくっていくためにはどうすればよいのかという方法が解説されています。

参考 データ・ドリブン人事戦略 データ主導の人事機能を組織経営に活かすAmazon

③NETFLIXの最強人事戦略

2018年1月9日発刊。元NETFLIX社の最高人事責任者、パティ・マッコード氏の著作です。同書のなかで「リーダーの役割は、すばらしい仕事を期限内にやり遂げること。優れたチームをつくること。それだけ」と説いています。

また優れたチームをつくるのに必要なのはカルチャー、企業文化の醸成で、大切にしていることは5つだと述べているのです。

  • 社員の自立した意思決定を尊重
  • 情報はオープンかつ積極的に共有
  • 率直に意見を言い合う
  • 優れた人材でチームを構成し続ける
  • ルールをつくらない

成功の秘密はトップクラスの人材の確保と企業文化へのアプローチ、継続的な成長を促進する人事戦略にあると説いています。

参考 NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築くAmazon

④Amazonのすごい人事戦略

2022年6月24日発刊アマゾンジャパンの立ち上げから勤務していた佐藤将之氏の著作。アマゾニアンの行動規範となる14項目の「Our Leadership Principle」そしてHR部門の使命「文化を育むこと」などについて、解説しています。

  • 人材の採用に責任を負う直属の上司が部下を厳選
  • 優秀な人材とするための育成にも上司が責任をもつ
  • 週単位で軌道修正を実現する「One on One」

飛躍的に成長する企業での人事制度の実例を紹介しながら、企業理念を人事制度に活用することで、会社の文化が醸成されていると解説しています。

参考 amazonのすごい人事戦略Amazon