【事例】ダイバーシティマネジメントとは?【わかりやすく】

ダイバーシティマネジメントとは人材の多様性を生かして成果を生み出す取り組みのことです。ここではダイバーシティマネジメントが注目される理由や導入のメリット、実施ポイントなどについて解説します。

1.ダイバーシティマネジメントとは?

ダイバーシティマネジメント(Diversity Management)とは、組織に多様性を取り込み、それを生かして事業成長や組織強化につなげる施策のこと。さまざまな個性や特徴を持った人材が平等な条件下で活躍しながら、生産性の向上を目指します。

ダイバーシティの意味

ダイバーシティ(Diversity)とは、年齢や性別、宗教や国籍などにとらわれず、一人ひとりが幅広い働き方をすることで、「多様性」を指します。具体的に含まれるのは以下のような属性です。

  • 性別
  • 人種
  • 国籍
  • 年齢
  • 障がいの有無
  • 価値観
  • 経験
  • キャリア
  • 宗教
  • 性的指向

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マネジメントの意味

マネジメント(Management)とは「管理や経営」のこと。マネジメントの父と呼ばれるピーター・F・ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための機能や道具、機関のこと」と述べています。

ヒト・モノ・カネ・情報のリソースを使って組織が目的を達成できるよう取り組む機能をマネジメントと呼ぶのです。

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2.ダイバーシティマネジメント注目される理由

ダイバーシティマネジメントは国内でも多くの企業が注目しています。その背景にあるのが以下4つの理由です。

  1. 価値観の多様化
  2. 労働人口の減少
  3. ビジネスのグローバル化
  4. 女性活躍の推進

①価値観の多様化

いまや労働者の価値観は多様化しています。かつて主流だった「ひとつの会社で定年まで勤めあげるのがよい」「残業は当たり前」という考えは通用しません。

若年層を中心に「スキルアップのために転職する」「ワークライフバランスを重視する」という働き方にシフトしています。多様化する労働者の価値観に合わせて、企業にも多様な働き方を認める動きが強くなってきました。

②労働人口の減少

少子高齢化による労働人口の減少は日に日に深刻化しており、人材獲得競争は激化するばかりです。この問題は今後ますます深刻化するとみられています。

企業が事業を継続するには、安定して人材を確保し続ける必要があるでしょう。そこで注目されているのが、労働市場への参加を阻まれていた女性や高齢者などを活用するダイバーシティマネジメントです。

③ビジネスのグローバル化

労働人口が減少する一方、経済や社会のグローバル化は進んでおり、海外進出を果たす企業も増えてきました。しかし国外で企業活動を行うには、日本と違う価値観や風習を理解する必要があります。

均質な人材では、変化し続ける世界のニーズに対応できません。しかし異なる価値観やニーズを実感するにはそれなりの時間が必要でしょう。そこで重要になるのが、多様な価値観を持った人材を活用するダイバーシティマネジメントです。

④女性活躍の推進

女性の活躍もダイバーシティマネジメントの導入を後押ししています。従来の国内企業では男性を中心とした採用が主流でした。

しかし1986年には男女雇用機会均等法が実施され、さらに2012年には女性活躍推進法が成立。現在では多くの企業が助成の活躍を促す取り組みを展開しています。

世界経済フォーラムが発表している「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、日本は156か国中120位と、主要7か国(G7)のなかでは最低の順位です。まだまだ女性活躍の推進には伸びしろがあります。

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3.ダイバーシティマネジメントのメリット

ダイバーシティマネジメントの導入は、企業だけでなく従業員の成長にも役立ちます。ここではダイバーシティマネジメントのおもなメリットについて説明しましょう。

  1. 企業評価の向上
  2. 人材不足の解消
  3. イノベーションの創出
  4. 対応力の強化
  5. 価値観のアップデート
  6. 従業員の成長

①企業評価の向上

ダイバーシティマネジメントに関する取り組みは企業イメージに直結します。実際にダイバーシティマネジメントの考えがはじめに広がったアメリカでは、多様性のある企業づくりをしていない組織に対して訴訟を起こされる可能性がありました。

ダイバーシティマネジメントをうまく取り入れられれば、他社との差別化につながるでしょう。社会的責任を果たしている会社として企業イメージが向上し、購買意欲を促進する効果も期待されています。

②人材不足の解消

ダイバーシティマネジメントは人材不足の解消にもつながります。就労意欲はあるものの、育児や介護、障がいなどさまざまな理由から働けないという人材は多く存在するもの。

在宅勤務やフレックス、時短勤務などさまざまな働き方を導入すれば、潜在していた人材を取り込みやすくなります。さらに既存社員もライフステージの変化に対応しやすくなるため、離職を抑制できるのです。

③イノベーションの創出

均質な人材しかいない環境で新たなイノベーションを起こすのは容易ではありません。しかしダイバーシティマネジメントによってさまざまな価値観を持った人材が集まれば、複数の視点から多彩なアイデアが飛び交います。

2020年に経済産業省が発表した「ダイバーシティ2.0」でも、ダイバーシティとイノベーションに一定の相関性があると示されています。

④対応力の強化

近年、新型コロナウイルスの感染拡大、異常気象や気候変動など予測が難しい変化がいくつも発生しています。企業が継続して活動を続けるためには、これらのリスクに対応する力が必要です。

ダイバーシティマネジメントは変化への対応力強化にもつながります。事実、コロナ禍において多様性のある働き方を推進していた企業とそうでない企業とでは大きな差がつきました。

⑤価値観のアップデート

同質性の高い人材で構成された組織は、価値観がアップデートされにくいという問題を抱えています。社会的にみればすでに時代遅れの失言であるのに、組織が従来の考え方を引きずっているためその異常性を感じられないケースです。

多様性のあるチームには、古い価値観に対する自浄作用があります。時代遅れの価値観で会社の評価を下げないためにも、ダイバーシティマネジメントは重要です。

⑥従業員の成長

ダイバーシティマネジメントが推進されれば、従業員は多様な人々と交流できるようになります。従業員の成長にはさまざまな価値観との交流が必要です。

相手の長所や個性を理解してともに働けば視野が広がります。そこから新たに活躍できる場を見つけて挑戦するのも可能です。

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4.ダイバーシティマネジメントの課題・デメリット

ダイバーシティマネジメントにはさまざまなメリットがある一方、課題やデメリットも抱えています。ここではダイバーシティマネジメントの課題とデメリットについて説明しましょう。

  1. ある程度の期間が必要
  2. 評価や待遇の複雑化
  3. コミュニケーションの弊害
  4. 生産性低下のリスク

①ある程度の期間が必要

ダイバーシティマネジメントの浸透には時間がかかります。なぜなら人間は基本的に変化を嫌うからです。たとえばそれまで多数派の男性に考慮していた職場環境が、少数派の女性が働きやすい環境へ変化したとします。

その変化が会社にとってポジティブだとわかっていても「はいわかりました」とその日から新たな環境に馴染めるわけではありません。変化を受け入れる体制づくり、受け入れる時間が必要です。

②評価や待遇の複雑化

働き方が多様化すると、どうしても待遇や評価は複雑になります。同じチームでもオフィス勤務の社員とフルリモートの社員、時短勤務の社員などさまざまな働き方がみられるようになります。

こうしたなかでも従業員のあいだに不公平感や不満が生じないよう、評価や待遇を見直すことが必要です。

③コミュニケーションの弊害

ダイバーシティマネジメントはコミュニケーションに問題が生じる可能性もあります。異なる価値観、異なる考え方の人間が増えれば、どうしても摩擦が起きやすくなるもの。

コミュニケーションの障害はハラスメントにもつながります。日頃から積極的なコミュニケーションをとり、お互いを理解することが重要です。ハラスメントの防止に研修やセミナーなどを実施するのも効果的でしょう。

④生産性低下のリスク

ダイバーシティマネジメントを推進するなかで、一時的にパフォーマンスが低下する場合もあります。たとえばリモートワークや時短勤務の導入によってコミュニケーションが不足すると、誤解や不快感が生まれやすくなるのです。

その結果生産性が下がる可能性もあります。ダイバーシティマネジメントを進める際は、個人の能力を見極めて組織的に対応することが重要です。

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5.ダイバーシティマネジメント実施のポイント

ダイバーシティマネジメントを実施する際は、組織内の環境整備や密なコミュニケーションが重要です。ここではダイバーシティマネジメントにおける3つのポイントについて説明します。

  1. 職場環境や設備の整備
  2. 企業の行動指針を周知
  3. 密なコミュニケーション

①職場環境や設備の整備

ダイバーシティマネジメントによって多様な人材を受け入れるには、職場環境や制度の整備が欠かせません。たとえば時短勤務やテレワークなどを実現するには、インフラ環境を整備したり勤務形態を見直したりする必要があります。

海外の人材を採用する際は、日本にとけ込めるよう実務以外の部分もサポートする体制を整えましょう。

②企業の行動指針を周知

たとえ多様な人材が集まったとしても、それぞれが異なる向きで行動したのでは会社は成長しません。企業の理念やビジョンを明確化して「自分もチームの一員である」という意識を芽生えさせる必要があります。

定期的に研修や説明会を実施し、粘り強く理解を求めましょう。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確に定めて、社員全員に企業の方向性を周知するのも効果的です。

③密なコミュニケーション

多様性を生かすには、社員同士のコミュニケーションも不可欠です。自らの個性が尊重され、どんな相手にも意見を言いやすいと感じる環境を「心理的安全性」の高い環境といいます。この心理的安全性が高いと、気軽に意見や提案を言えるようになるのです。

属性が違う相手とも意識的にコミュニケーションを取り、互いの違いや意見を尊重しましょう。ここから新たなアイデアやイノベーション創出、仕事へのモチベーションアップも期待できます。

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6.ダイバーシティマネジメントの企業事例

さまざまな企業がダイバーシティマネジメントを実施し、その効果を得ています。ここではダイバーシティマネジメントを実施した企業の事例とその成功例について説明しましょう。

  1. 資生堂
  2. エーザイ
  3. カルビー
  4. 東和組立
  5. 日本ユニシス

①資生堂

資生堂では「LOVE THE DIFFERENCES(違いを愛そう)」をスローガンに掲げています。ダイバーシティマネジメントの取り組みとして女性リーダーの育成や女性の活躍支援、障がいのある社員の活躍支援などを実施しました。

その結果育児休業からの復職率は99.3%、女性管理職比率は37.3%まで向上。ほかにも日頃から障がいへの理解を促す研修を実施して、積極的な多様性の採用と活躍推進に努めています。

②エーザイ

エーザイは1960年代からグローバル化を進めています。「個を尊重して理解する」という企業理念にもとづき、次のような取り組みを実施しました。

  • 男女問わず育児、介護休職を取得しやすい職場風土を醸成:男性社員の配偶者出産休暇取得率46.9%を達成
  • シェアオフィスやワーケーションなど就労場所の選択肢を増やす:キャリア採用社員比率が15.0%に
  • 年齢を問わず継続的にチャレンジできる環境を整備

③カルビー

カルビーが目指しているのは、国籍や年齢、ライフスタイルなどの垣根を超えて、多様な人材が活躍できる企業です。「女性リーダー育成プログラム」や「育児休業復職時セミナー」などを実施して、女性管理職比率を23.3%まで押し上げました(2022年4月時)。

ほかにも価値観の違いを組織の力にするべく、障がい者雇用も促進。2024年3月期の障がい者雇用率目標を2.5%と定めたものの、すでに2022年3月期でこれを達成した2.66%となっています。

④東和組立

自動車用品の一貫生産を強みとしている東和組立では、労働生産性に課題を抱えていました。そこで同社が取り組んだのがオペレーションの簡易化と標準化です。

それまで特定の社員しか担当できなかった業務を減らしたところ、さまざまな人材がシーンを限定されず働けるようになりました。課題としていた労働生産性も20%アップに成功しています。

⑤日本ユニシス

日本ユニシスが文化変革と事業変革に注力したのは、従来のままでは激しい環境の変化についていけないと感じたからです。

女性活躍や働き方改革をキーワードとした取り組みでは、法定を上回る育児・介護支援制度を実施。10年以上ものあいだ、育休からの復職率95%以上を保持しています。

ほかにも中長期キャリアデザインの設定支援や、新事業創出人材育成のためのワークショップなどを実施。その結果74.9%もの社員が「イノベーションを意識している」と回答しています。