ダイバーシティ経営とは?【簡単に】メリット、課題、企業事例

ダイバーシティ経営とは、人材の多様性を重視した経営戦略のこと。ここではダイバーシティ経営のメリットや課題、企業の事例などを詳しく解説します。

1.ダイバーシティ経営とは?

ダイバーシティ経営とは、多種多様な人材を生かした組織作りを行い、企業の持続的な成長や競争優位性の向上を図る経営戦略のこと。そのほかにもさまざまなメリットが得られるため、今日では多くの企業がダイバーシティ経営に取り組んでいます。

ダイバーシティとは?

一人ひとりの違いを受け入れる思想のこと。英語で「Diversity」と表記され、「多様性」を意味します。現代社会で不可欠な価値観のひとつといえるでしょう。なおダイバーシティが示す多様性は、下記の2つに分類できます。

性別といった自分の意志では変えにくい「表面的な多様性」

価値観や信念など表面化しにくい「深層的な多様性」

ダイバーシティとは?【意味を簡単に】&インクルージョン
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経済産業省による定義

経済産業省によるダイバーシティ経営の定義は、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」。

つまりダイバーシティ経営を行う企業には、「多様な人材の能力を引き出し、さらに次のステップへ発展するための環境整備」が求められるのです。

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2.ダイバーシティ経営の効果・メリット

ダイバーシティ経営のメリットには、持続的な成長や競争優位性の向上といったメリットが挙げられます。これらのメリットはさらに細分化できるのです。ここでは6つのメリットを解説します。

  1. 優秀な人材の獲得
  2. アイデアの創造
  3. 生産性の向上
  4. リスクの分散
  5. 海外進出の実現
  6. 自社評価の向上

①優秀な人材の獲得

性別や年齢、国籍など問わず能力の高い人材を採用していくため、自然と優秀な人材が集まります。そのため人材不足などの問題の解決策として、ダイバーシティ経営を遂行する企業も少なくありません。

またダイバーシティ経営を実践しているとアピールすれば、その理念に共感した若い人材が集まりやすくなります。

離職防止

多様な社員の能力を引き出し、活躍できる場を提供すれば、ダイバーシティ経営で採用した社員の離職を防止できます。取り組みがイノベーションの創出につながれば、さらに社員のモチベーションも向上し、定着率も高まるでしょう。

②アイデアの創造

価値観や育った文化の異なる人材が集まるため、風土や既存社員の価値観などが変わってきます。それによりアイデアが創造される可能性も高まるのです。停滞感や閉塞感が生じている組織の場合、改革という効果も期待できます。

③生産性の向上

多様な価値観を持った社員が「ユーザーのひとり」として提示するアイデアや意見は、商品やサービスの開発や品質改善に生かせます。それにより多くの企業が課題とする生産性向上が解決できるかもしれません。

また多様な人材の価値観を尊重するため、長時間労働を当たり前としない環境を整備すれば、短時間で成果を上げられる人材を育成できます。

④リスクの分散

企業に定着しているグループシンク(集団浅慮)によるリスクを分散できます。グループシンクとは、画一的な価値観や思考によって生じてしまう不合理な判断や行動のこと。

多様な人材によって新しい価値観やアイデアがもたらされ、企業そのものの体質を改善できます。リスク管理でも、ダイバーシティ経営が推進される傾向にあるのです。

⑤海外進出の実現

ダイバーシティ経営は、海外進出を実現するうえでも大きな効果を発揮します。さまざまな国籍や人種の社員がいると、それらの国で重視される価値観を理解しやすくなり、最適な事業モデルを構築できるからです。

また現地スタッフを採用する際も、すでに整備された職場環境や社内制度などを活用できます。

⑥自社評価の向上

ダイバーシティ経営における取り組みを公表すると、外部の評価が向上しやすくなります。コーポレートサイトやステークホルダーとの対話をとおして社外へ広く周知すると、「個々の社員を尊重する企業」というイメージを与えられるからです。

その企業で働いている社員の満足度向上にもつながり、業績の向上といった二次的な効果も期待できるでしょう。

ESG投資家が注目

ダイバーシティへの取り組みは、ESG投資家が注目する非財務情報のひとつ。ESG投資とは、環境、社会、企業統治に配慮している企業へ積極的に投資すること。

先に述べたとおり、ダイバーシティ経営はESGの「社会」に該当する課題への取り組みになります。よってESG投資の対象として注目されるようになり、資金調達につながる可能性もあるのです。

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4.ダイバーシティ経営のデメリット

ダイバーシティ経営にはデメリットもあります。導入前にデメリットを把握してから、導入を検討しましょう。

  1. コミュニケーションによるトラブル
  2. 価値観の違いによるストレス

①コミュニケーションによるトラブル

ダイバーシティ化の進んだ企業内では、コミュニケーションにかかわるトラブルが生じやすくなります。価値観や言語が異なれば、解釈の祖語や摩擦が少なからず起こるからです。

また何気ない一言がハラスメントになってしまう恐れもあります。多様な社員を受け入れられるよう、社内ルールの整備や社員の意識改革が必要です。

②価値観の違いによるストレス

多様な人々を受け入れると、社員がストレスを感じる恐れもあります。今までの価値観が画一的であるほど、既存社員は価値観の異なる人に対するストレスが高まってしまうでしょう。

ダイバーシティ雇用された社員も、価値観が大きく異なる環境で働くのはストレス。もしそれによってお互いの効率や生産性が低下すれば、チームや部署、さらには企業にとっても弊害が出てしまいます。

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5.ダイバーシティ経営の課題

ダイバーシティ経営には、デメリットもあるとわかりました。そのためダイバーシティ経営を推進する際は、自社で懸念される課題への対策を検討しておくとよいでしょう。ここではダイバーシティ経営の課題について、見ていきます。

  1. 社員の意識改革
  2. コミュニケーションの活性化
  3. 心理的安全性の確保

①社員の意識改革

ダイバーシティ経営を推進する際過去の経験や価値観から無意識のうちに持ち合わせるようになった「バイアス(思い込み)」が障壁となりうるため、「いかにして社員の意識改革を進めるか」が課題となります。

個々の社員へ自分のバイアスを認識させ、相手へ一方的な価値観を押し付けないよう指導しましょう。

②コミュニケーションの活性化

ダイバーシティ経営がある程度浸透した企業では、コミュニケーションの活性化が課題になりえます。社内に異なる価値観を持つ社員が増えると、コミュニケーションはどうしても希薄になりがちだからです。

コミュニケーション不足による誤解や軋轢は、業務上の問題を発生しかねません。ダイバーシティ経営を推進する際は、社員同士がコミュニケーションできる機会を定期的に設けましょう。

③心理的安全性の確保

ダイバーシティ経営を推進するならば、個々の社員レベルでの「心理的安全性」の確保も課題となります。価値観の異なる人たちが集まると、その集団のなかで、特定の価値観を持つ人だけを疎外する雰囲気が生じやすくなるからです。

すべての社員が安心して自由に発言や行動できるよう、環境やルールを整備する必要があります。

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6.ダイバーシティ経営推進のポイント

ダイバーシティ経営を推進する際のポイントは、下記の3つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 現状の把握と明確な目標設定
  2. 社員からの意見も必要
  3. 社内制度の整備

①現状の把握と明確な目標設定

ダイバーシティ経営を推進する際、自社の現状と課題を把握し、課題解決に向けた目標を設定する必要があります。目標は特定の人だけでなく、企業全体で共有するのも忘れてはいけません。

目標を共有すれば組織体制や社内制度、職場環境などが変わっても、既存社員がこれらの変化を理解して対応できるようになります。

②社員からの意見も必要

ダイバーシティ経営を推進する際、社員から出される意見にも耳を傾けなければなりません。経営のダイバーシティ化で実際の業務に問題や課題が生じても、経営層は気づけない可能性が高いからです。

事前に懸念される点をリストアップし、ダイバーシティ経営導入後も定期的に意見を募りましょう。

③社内制度の整備

ダイバーシティ経営を推進するためには、社内制度の整備も不可欠です。単に制度を作って人材を集めるだけでは、社内で反発が起こる恐れもあります。

また雇用制度や評価制度、報酬制度は多くの社員に関係するため、急な制度変更は混乱を招きかねません。ダイバーシティ経営で社内制度を整備する際は必ず、経営層から社員へ目的を説明したうえで、理解と納得を得ておきましょう。

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7.ダイバーシティ経営企業100選とは?

2012年度に開始された、ダイバーシティ経営を成功させた企業を対象に経済産業大臣が表彰する制度です。2015年度からは「新・ダイバーシティ経営企業100選」に改められました。

なお一定の成果が得られたため、「新・ダイバーシティ経営企業100選」と「100選プライム」の制度は2020年度をもって終了しています。

100選プライムとは?

新・ダイバーシティ経営企業100選に選出された企業を対象として、より全社的かつ継続的な取り組みを行っている企業を表彰する制度のこと。

「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」にもとづき、継続的にダイバーシティ経営へ取り組んでいる企業を選出していました。なお受賞した企業の事例が、ベストプラクティス集としてまとめられています。

なでしこ銘柄とは?

女性活躍推進に力を入れている企業を経済産業省と東京証券取引所が表彰する制度のこと。受賞企業の実績をレポートでスコアリングしており、投資家がこのレポートを企業評価に活用します。

たとえば「正社員の女性比率」や「女性管理職比率」、「男性育児休業」などについて、目標と実績が確認できるのです。

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8.ダイバーシティ経営の企業事例

ダイバーシティ経営を推進する際は、すでに導入している企業の事例を参考にするとよいでしょう。ここでは3社の取り組み事例を紹介します。

  1. 積水ハウス
  2. 千葉銀行
  3. 大橋運輸

①積水ハウス

積水ハウスでは、2005年から女性活躍推進を重視した取り組みを実施。女性管理職の育成やキャリアアップ支援制度の創設によって女性が活躍できる環境を整備しました。

結果2019年には女性管理職が51人から206人にまで増加。またこの経験を生かして、性的マイノリティや障がいを持つ人が働きやすい環境の整備も推進しています。

②千葉銀行

千葉銀行では、2005年に女性活躍推進を基本理念とする「女性いきいきキャリアアップ宣言」を公表。女性社員を対象とした職域拡大や人材育成のほか、女性が働きやすい職場環境の整備などを実施しました。

その結果渉外担当女性の販売実績が男性を上回りダイバーシティ経営が企業にとって大きなメリットがあると証明したのです。

③大橋運輸

大橋運輸では、ダイバーシティ経営推進の一環として「人材戦略」を重視した取り組みを実施。具体的には社員一人ひとりが能力を発揮できる環境の整備や、新規事業を開始するための人材育成などを行いました。

これらの取り組みによって顧客満足度が大幅に向上。個人向け事業部では売上が3倍に増加するという大きな成果を得ています。