カウンターオファーとは? 意味、後悔、交渉成功率

カウンターオファーとは? 引き止めの成功率、主な提示条件、注意点

カウンターオファーとは、退職希望者を引き止めるために昇給や部署異動などを提示して説得すること。離職防止対策のひとつであるカウンターオファーについて解説します。

1.カウンターオファーとは?

カウンターオファーとは、離職希望者を引き止めるために条件や約束などを提示して交渉すること。たとえば退職や転職を希望する従業員に対して、昇給や昇格、希望部署への異動など待遇の改善を慰留条件に提示するケースが挙げられます。

しかし条件などを提示せず、ただ上司から説得をおこなうだけの交渉もカウンターオファーと呼ばれることがあるようです。

労働人口が低下している昨今、優秀な人材の流出は企業にとって痛手となりかねません。そのため多くの企業では離職防止策としてカウンターオファーを実施しています。

企業がカウンターオファーを出す理由

「優秀な人材ならば条件を提示してでも引き止めたい」というのが、カウンターオファーを行う理由です。

人材不足の昨今において、優秀な人材を確保することは企業にとって重要な課題となっています。優秀な従業員には今後も自社で活躍してほしいため、そのような従業員が離職を希望した場合には、なんとしても離職を防止したいのです。

慰留が成功すれば新たな人材の採用や教育などが不要になるため、コスト削減にもつながります。

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2.カウンターオファーがされる割合と引き止め交渉成功率

2017年にエン・ジャパン株式会社が公開した「「カウンターオファー」に関するアンケート調査」では、65%の企業がカウンターオファーをしたことがあると回答。それではカウンターオファーの成功率はどれくらいなのでしょうか。同社のアンケート調査の結果から成功率を紹介します。

参考 「カウンターオファー」に関するアンケート調査エン・ジャパン

カウンターオファーされる割合

エン・ジャパン株式会社の「「カウンターオファー」について(2014年版)」で、「カウンターオファーを受けたことがある」と回答した人は全体の31%でした。

またカウンターオファーを受けたことがない人のうち、35%の人が「転職の際にカウンターオファーを受けたい」と回答。その理由には「自分の存在価値を確かめたい」や「良い条件を提示されて慣れた職場で働きたい」などが挙げられています。

カウンターオファーの引き止め成功率

エン・ジャパン株式会社が2014年に公開した「カウンターオファー(退職引き止め交渉)」についてアンケート調査で、「カウンターオファーを受けて、次の転職先にいくのをやめたことがある」人は24%でした。

5人に1人はカウンターオファーが成功しているのです。引き止められた理由としては以下のものが挙げられます。

  • 提示された提示額が良かったから
  • 新たな事業を任されるようになったから
  • 今の職場の仲間をがっかりさせたくないから
参考 「カウンターオファー」について(2014年版)エン・ジャパン

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3.カウンターオファーで提示される条件

カウンターオファーの交渉において、離職希望者へ好条件を提示することがほとんどです。カウンターオファーで提示されることが多い条件から「昇給」や「昇進」、「配置転換」や「契約内容更新」の4つについて説明します。

昇給

従業員にとって昇給は、もっとも分かりやすいメリットでしょう。エン・ジャパン株式会社が2014年に公開した「カウンターオファー(退職引き止め交渉)」についてのアンケート調査で「引き止められた理由」にもあったとおり、従業員が納得できる金額を提示できれば引き止めが成功しやすくなります。

どうしても引き止めたいほどの優秀な人材ならば、昇給させたとしてもその給与に見合った働きが期待できるでしょう。

昇進

昇進を条件とする場合は、役職やポジションを与え、その分給与も上げることになります。つまりふたつの待遇改善が行われることになるのです。もともと昇進を希望する従業員であれば、カウンターオファーの条件として高い効果が期待できます。

しかし昇進すると責任やプレッシャーが大きくなるため、昇進を望まない従業員も少なくありません。昇進に関する本人の意思や希望を事前にリサーチしておきましょう。

配置転換

職場環境や人間関係に不満があって退職を希望する従業員は、配置転換によるカウンターオファーが効果的です。待遇面以外の職場環境に不満を持ち、以下のような理由で退職を希望する従業員もいるからです。

  • 希望する部署や業務がある
  • 現在のチームや部署内のメンバーとうまくいっていない

希望する部署や業務へ異動させると、従業員の希望を叶えると同時に、ジョブローテーションによるスキルアップ効果も得られます。

契約内容変更

正社員登用など、契約内容の変更を条件に提示する場合もあります。たとえば契約正社員やパートなどの形態で勤めている従業員が、将来性に不安を感じて転職しようとしているケースで提示されることが多いでしょう。「慣れた職場で正社員として安定的に勤められるなら退職をとどまる」という従業員もいるため効果的です。

育児や介護を理由に退職する場合は、労働時間の短縮を条件に交渉してみましょう。

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4.カウンターオファーの前に検討すべきこと

カウンターオファーでやみくもに引き止めるのは有効とはいえません。退職希望者の退職理由や悩みなどを把握し、「どのような条件なら退職理由を払拭できるか」を考える必要があるからです。ここではカウンターオファー前に検討すべきことを4つ紹介します。

転職希望者と話し合う

退職希望者と話し合い、退職理由を聞き出しましょう。退職を希望する理由を知っておかなければ、最適な条件を提示できないからです。

人間関係や担当業務に不満があるなら配置転換が提案できますし、給与面などに不満があるなら昇給や昇進が有効となるでしょう。スキルアップや評価に不満がある場合は、社内制度の見直しや改善が必要かもしれません。

昇給について考える

昇給を打診する場合は、「昇給のタイミング」と「昇給率や昇給額」を考えておかねばなりません。具体的な昇給率や昇給額を検討するには、以下のような項目を把握する必要があります。

  • 就業態度や勤怠状況
  • スキルや資格
  • 今までの実績
  • 業界や企業規模における昇給相場

タイミングでは「定期的な昇給にするか、あるいはベースアップにするか」を決めておきましょう。

カウンターオファーの内容を書面化する

退職希望者との話し合いでカウンターオファーに合意が得られても、その内容は必ず書面化しましょう。昇給や昇進などは雇用契約に関わってきますが、口約束だけでは証拠が残らないためのちにトラブルとなる恐れがあり、退職希望者も「本当に守ってくれるのか」と不安に感じるでしょう。

カウンターオファーに決まった様式はありません。書面にする場合は「交渉時の条件で新しい労働条件通知書を作成する」という方法があります。

情報を守る

カウンターオファーに関する情報が他者へ漏れないように注意しましょう。退職を希望していた従業員名や退職理由などが知られてしまうと、引き止めたとしてものちに人間関係や職場環境にマイナスの影響を及ぼす可能性があるからです。

またカウンターオファーを実施したことが知られてしまうと、ほかの従業員が「辞める意思を示せば良い条件で残れる」と考えてしまう恐れもあるでしょう。カウンターオファーによる情報は当人との間だけの秘密事項にしておくことをおすすめします。

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5.カウンターオファーで後悔する前に知っておきたい注意点

カウンターオファーが成功すれば離職を防止できますが、場合によっては職場のモチベーション低下や、退職希望者と関係性の悪化につながる可能性があるのです。ここではカウンターオファーの実施で注意すべき点を5つ紹介します。

長期的な解決策にならないことがある

カウンターオファーは長期的な解決策にならないことがあります。一時的には従業員を引き止められるかもしれません。しかし一度転職や退職を決意した従業員は、勤続意欲やモチベーションが低下している可能性があります。

なぜなら「退職を切り出さないと待遇が変わらない」と従業員が思ってしまうからです。その結果しばらくしてから再度退職を切り出されるケースも少なくありません。

悪しき前例になりやすい

「退職を切り出せばカウンターオファーを受けられる」と認識されてしまうと、多くの従業員がことあるごとに交渉の手段として退職を切り出してくる可能性があります。

なかには再交渉をするために転職市場の給与水準などをチェックし、よい募集があれば実際に転職してしまう従業員も出てくるかもしれません。そのためカウンターオファーの実施や結果を漏らさないように注意する必要があります。

信頼が失われることがある

従業員が退職を切り出した時点で、企業との信頼関係は少なからず失われています。カウンターオファーが成功して従業員が踏みとどまったとしても、お互いに今までどおりの信頼関係を継続するのは難しいでしょう。

従業員は今までの待遇や評価などが信頼できなくなりますし、企業側は「いつか退職してしまうかもしれない」と考えて業務を任せきれなくなることがあります。

転職希望者と同僚の間に溝が生じることがある

カウンターオファーが実施されたことを同僚や上司が知っていると、退職を希望した従業員との間に溝ができる可能性があります。やはりその従業員に対して信頼しきれなくなるからです。

せっかく退職を引き止めても、そのあと職場の人間関係がうまくいかず居心地が悪くなってしまい、結果的に退職してしまうケースも考えられるでしょう。

ほかの従業員のモチベーションを下げることがある

カウンターオファーの実施や結果がほかの従業員に知られた場合、従業員のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。「辞めようとした従業員が自分より好条件で働いている」ことに不満を感じる従業員が出てくるからです。

また「自分も退職を告げてカウンターオファーを受けよう」と考えるようになれば、勤続意欲はさらに低下するでしょう。

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6.カウンターオファーをせずに退職や離職を予防するには?

カウンターオファーは退職防止においての最終手段と考えましょう。重要なのは従業員の退職を予防することです。そのためには環境整備や従業員への支援などが重要になってきます。ここでは退職防止策を5つ紹介します。

コミュニケーションを活性化する

退職の意思を示されてから話し合いの場を設けるのではなく、普段からコミュニケーションをとる機会を増やしましょう。

悩みや不満を早い段階で聞き出してすぐに対処すれば、従業員のモチベーションや自社への信頼が向上します。このようなサイクルが確率すれば、退職を考える従業員は減っていくでしょう。

社内SNSやWebの1on1ミーティングなど、リモート環境でも導入しやすいコミュニケーションツールを活用するのがおすすめです。

評価制度の構築と見直しを行う

「正しい評価が得られない」という理由で退職する人も少なくないため、評価制度の再構築や見直しも必要です。退職を希望されてから昇給や昇進させるのではなく、事前に正当な評価をすれば従業員のモチベーションを維持できるでしょう。

また評価制度を見直すならば、等級制度や報酬制度といった人事制度も合わせて見直すべきです。

働きやすい環境を整備する

従業員が働きやすい環境を整備することも退職防止につながります。職場環境の不満が退職理由になるケースも多いからです。とくに育児や介護と仕事の両立は難しいため、休暇制度の利用促進や福利厚生の整備、時短勤務やテレワークの導入などは有効です。

このような職場環境を構築すると従業員のワークライフバランスが改善され、離職率の低下や生産性の向上などの効果が期待できます。

キャリアパスを策定する

キャリアプランを達成すると従業員のモチベーションは向上します。従業員が自身で計画したキャリアプランを実現するために、企業はキャリアパス(キャリアの道筋)と、必要な経験やスキルを積める環境を整備しましょう。

キャリアプランの達成は従業員にとって効果的なのはもちろんですが、企業にとっても優秀な人材を確保できるという大きなメリットがあります。

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スキルアップを支援する

キャリアアップを達成するためには、特定のスキルや資格などが必要になることも少なくありません。そのためスキルアップの支援を行うことも離職防止に有効です。

たとえば資格手当の支給や、教育制度や研修制度の整備などが挙げられます。自分の成長を実感できると仕事に対するモチベーションも上がりやすくなるので、従業員の定着率アップが期待できるのです。

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