退職とは?【意味・定義】方法、流れ、人事、期間、準備

退職とは、勤めている職を辞めることです。人事や労務が知っておくべき一連の手続きや退職の種類などを解説します。

1.退職とは?

退職とは「使用者と労働者の雇用契約が終了する」こと

組織をなんらかの理由で辞めることを指し、

  • 労働者の意思表示による退職
  • 契約期間満了による退職
  • 解雇による退職

が含まれます。

なお労働者本人が死亡した際は、労働基準法では原則「退職」ではなく「死亡」として扱います。そのため社会保険の資格喪失手続きにおいても、喪失理由で「退職等」と「死亡」が選べるのです。

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2.「退職と辞職」「退職と退任」違い

退職の類義語に「辞職」と「退任」があります。いずれも似ている言葉ですが、それぞれ意味が異なるのです。

退職と辞職の違い

退職と辞職の違いは大きく分けて2つあります。

  • 辞職とは自らの意思で辞めることを指すのに対し、退職は会社側の都合で職を離れる場合も含まれる(働き手の意思に関係なく使用される)
  • 辞職は組織における立場によって使い分けられる

辞職は課長以上の役職者が、会社やその役職を辞めるときにも使われます。たとえば経営陣や会社役員クラスは辞表を提出して辞職しますが、一般社員は退職届を提出して退職します。

退職と退任との違い

退職と退任は、何を辞めるのかによって使い分けます。退職は文字どおり職場を辞めることを指しますが、退任は任務からは退くものの職場を辞めるとは限りません。任期満了でその任務が完了、つまり退任したのち、新たな任務につくこともあります。

退任は主に役職者に対して使用する語であり、一般社員が会社などを辞める場合には退職という表現を使うのが一般的です。

なお任期の途中で自ら辞める場合は退任ではなく辞任となります。

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3.退職の3つの種類

一般に人事や労務で扱う退職は、退職の理由を元に、

  1. 自己都合退職
  2. 会社都合退職
  3. 自然退職

の3つに分けて考えます。

退社や離職といった表現をする場合もありますが、退職であることに変わりはありません。

①自己都合退職

「自己都合退職」とは、労働者からの申し出により労働契約を解消すること。

雇用期間の定めのない労働者の場合は、いつでも退職を会社に申し入れできます。

民法上では、退職の意思を示したときから2週間が経過すると退職が実現するとされており、退職に会社側の同意は必要ありません。

一方、契約期間の定めがある労働者の場合は、原則として期間途中で一方的な契約解除はできません。

②会社都合退職

「会社都合退職」とは、会社側が労働者に対して一方的に退職させること。

たとえば懲戒解雇や会社の倒産による解雇などです。

退職奨励した結果の退職も会社都合退職に該当します。退職推奨とは、人員整理を目的として社員へ自主退職を促すこと。

退職推奨では、退職金を増やすなどの条件で早期退職者を募るケースが見られます。

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③自然退職

「自然退職」とは、あらかじめ就労規則などに定めた条件に該当した場合、自動的に労働契約を終了すること。

「当然退職」とも呼ばれており、労働者または会社に退職の意思があるかどうかは関係ありません。自然退職では以下のケースが挙げられるでしょう。

  • 定年による退職
  • 休職期間を満了しても復職ができない場合の退職
  • 雇用契約期間の満了による退職
  • 役員就任や本人の死亡などによる退職

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4.人事や労務が行う退職日までの手続き

人事や労務が退職者に対して行うべき手続きは、退職前から始まります。

退職後の進路や個別の事情により異なる手続きになる場合があるので、よく確認しておきましょう。

退職日が決定後、退職届の提出

退職日が決まった退職希望者には、就業規則に則って退職届の提出を依頼します。

退職希望者は退職希望日の2カ月から3カ月前ほどに、まず直属の上司などに退職の意向を伝えるのが一般的です。

双方の話し合いを経て正式な退職日が決まるのは、退職の1か月から3か月前が目安となります。

退職日が決まり次第、速やかに退職届を人事や労務宛に提出するように依頼しましょう。

退職の意思表示の効力

民法上では、期間の定めのない労働者が退職の意思表示をした、つまり無期雇用の社員が退職届を提出したら、2週間で退職することが可能です。

しかし実際には、業務の引き継ぎや残業務の整理などを2週間で終わらせることは難しいでしょう。

そのため就業規則で退職の意思を表示してから、退職までの期間をそれより長く設定している会社も多くあります。

ただし就業規則に定められている期間を強要してしまうと、民法に違反するおそれがあるので注意しましょう。

退職手続きの説明を行う

退職希望者に対して行う退職手続きの説明には、社会保険や年金、退職金などが挙げられます。

退職に際して必要な手順や書類をまとめた説明文をあらかじめ準備しておくとよいでしょう。

退職後の社会保険、雇用保険をどうするかを相談

退職後の再就職が決まっているかどうかで、必要となる社会保険と雇用保険の手続きが変わります。

退職後すぐに再就職が決まっている場合

転職先の健康保険に加入することになるため、退職者における特に手続きはありません。

次の就業までブランクが発生する場合

退職者とその家族は健康保険をどうするかを決めなくてはなりません。離職中に健康保険加入する方法は3つです。

  • 国民健康保険に加入する
  • 現在の保険を任意継続にする
  • 家族の健康保険に被扶養者として加入する

なお失業保険給付についても、本人による手続きが必要となることも伝えておきましょう。

最終給与、退職金について

最終給与は支払日や退職金などが関係しますし、通常よりも天引きするものが多く発生することがあります。

退職者には以下のポイントに気をつけて説明しましょう。

退職日以降に支給される給与について

多くの会社は社内ネットワークなどで給与明細を開示していますが、退職日以降は給与明細と源泉徴収票を自宅へ郵送することになります。

天引きされる項目について

最終給与から以下の分が差し引かれる旨を説明します。

  • 社会保険:月末退職の場合2か月分徴収
  • 住民税:退職時期により5月分まで一括徴収
  • 通勤交通費の精算:定期券代、ガソリン代などの返金
  • そのほか:社宅の費用など
退職金の有無について

退職金の支給額や支給日の説明をします。確定拠出年金制度がある場合は手続きについても説明しましょう。

退職日までに返却、提出してもらう書類

退職者から会社に返却してもらうものも多数あります。漏れのないようリストアップしておくとよいでしょう。

返却物の例
  • 健康保険証
  • 会社の身分証明書(セキュリティーカード、IDカード、社章など)
  • 名刺
  • 制服、作業服(クリーニングの要否も含め)
  • 通勤定期券
  • 会社支給の備品(印鑑や文房具など)

なお健康保険証は退職日当日まで使用できます。返却が退職後となる場合は、扶養家族分とあわせて速やかに郵送するよう依頼しましょう。

上司宛てではなく人事宛てで郵送してもらうのもポイント。「上司は受け取ったが人事への連絡が送れる」といったミスを防ぐためです。

退職日に渡す書類

退職時に人事や労務から退職希望者に対して渡す書類は、いずれも重要なものばかりです。こちらもリスト化しておきましょう。

退職時に会社から渡す書類

年金手帳

国民年金の種別を変更する際に必要です。

雇用保険被保険者証

雇用保険給付の手続きに必要です。原則本人に交付するものですが、会社側で保管するケースも多いので忘れずに返却しましょう。

退職証明書

退職者が退職証明書を請求した場合に、必ず発行しなければならない書類です。理由なく拒否したり遅延したりすると、労働基準法違反となります。

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5.人事や労務が行う退職日後の手続き

退職日以降にも人事や労務が行う手続きがあります。書類によって手続きの期限が異なるため、注意が必要です。

社会保険の手続き

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きが必要です。

退職日の翌日から数えて5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。

全国健康保険協会に加入している場合は、本人から回収した「健康保険被保険者証(本人分・被扶養者分)」を添付しなくてはなりません。

「高齢受給者証」や「健康保険特定疾病療養受給者証」、「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されている場合は、同様に添付が必要です。

雇用保険の手続き

雇用保険の資格喪失手続きも必要です。

退職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出します。

この書類には離職日や直近の給与支払い状況、離職理由などを記入し、これをもとに退職者が受け取れる失業給付金の料率が計算されるのです。

退職時の給与状況はもとより、離職理由によっても退職者の受け取れる金額が変わります。

なお「雇用保険被保険者離職証明書」には、退職者の署名と確認印が必要なので、退職前に忘れずに記入と捺印を依頼しておきましょう。

その後、ハローワークから「離職票」が交付されるので、会社から退職者へすみやかに郵送します。

住民税の手続き

住民税の特別徴収から普通徴収へ切り替える手続きが必要です。

特別調整とは、毎月の給与から天引きして会社が代理で納税することで、普通徴収は退職者本人による納税すること。

退職した社員がすみやかに再就職した場合は、翌月10日までに転職先に「給与所得者異動届出書」を提出します。

退職後の就職先が決まっていない場合は、退職した月によって以下のように手続きが異なるのです。

1月~4月

残りの分を一括徴収

5月

特別徴収

6月~12月

翌月から普通徴収(ただし、本人の意向により、退職金などを超えない範囲で一括徴収にすることも可能)

なお退職所得(退職金などの所得)のうち、退職所得控除を超える分については住民税の課税対象になります。そのため特別徴収の確認だけでなく、退職所得の課税についても留意が必要です。

退職した労働者に書類を送付する

退職日以降、人事や労務は退職者に対して3種類の書類を送付します。こちらも書類によって期限が異なるため、漏れのないように確認しましょう。

源泉徴収票(給与・賞与、退職金)

人事や労務は退職者に対して、退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付します。

退職時に準備する源泉徴収票は、「給与所得」が記載されたものと、「退職所得」が記載されたものと2種類があります。

別々に作成するのは、給与所得と退職所得で所得税の計算が異なるためです。

退職所得の源泉徴収票には、退職手当の金額と、そこから天引きされた所得税の金額を記載します。なお退職金の支給がない場合は、「退職所得」の源泉徴収票は不要です。

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離職票-1、-2

「雇用保険被保険者離職票(離職票)」は、退職者が失業手当を受け取るために必要な書類のひとつです。

雇用保険の資格喪失手続きが完了すると、ハローワークから会社宛てで離職票が送られてきます。本人は退社済みのため、人事や労務から本人へは郵送などで送付しましょう。

離職票は「離職票-1」「離職票-2」の2種類で構成されており、「-1」には、失業手当の振込先とする金融機関が指定できるようになっています。

「-2」の用紙は、「退職の理由」と「退職直前6か月間の給与」を記載します。

退職者が離職票の交付を希望しない場合は、退職者へ郵送する必要はありません。

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健康保険被保険者資格喪失確認通知書

「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」は、退職者とその家族が、国民健康保険などへ加入するときに必要な書類です。そのため退職者から希望があった場合にのみ作成します。

退職者が次に加入する国民健康保険により書式が決められていることもありますが、一般に書式は任意のため、必要事項を会社にて記入すれば問題ありません。

健康保険資格喪失証明書を本人に交付する際は、会社控としてコピーを取り、保管しておきます。

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6.人事が知っておきたい退職に関するQ&A

退職者の事情によって退職時の手続きは変わります。

また退職に関する法律も定められているため、トラブルのリスクを下げることも大切です。人事や総務が退職の手続きにおいて、悩むあるいは困るケースを紹介します。

退職届の受理日は、誰が受理した日になるのか?

「退職に対して決裁する権限のある者」が退職届について決裁を下し、退職者本人にその旨を通知した時点とされています。ここでいう「退職に対して決裁する権限のある者」とは、社員の解雇権を持つ役職の人のこと。

一般的には、大企業の場合は人事部長が該当し、中小企業の場合は役員などが相当します。

ただし退職届を受理した担当者がそれまでにも退職について決裁を下したことがあれば、役職に関わらず「退職に対して決裁する権限のある者」と認められる可能性が高いでしょう。

労働者の退職理由には、本音と建前がある?

本音ではなく建前を理由にする退職者は多いものです。とくに給料や人間関係などネガティブな意味合いが強い退職の場合は、本音を避ける傾向にあります。

また将来的に仕事上で接点が生まれることも十分にあるため、円満に退職したいと思うのも自然なことです。

ただし普段接点の少ない人事担当者ではなく、直接の上司に本音を伝えるケースも多くあります。そのため直接の上司とよく連携をとっていれば、本音を知る手がかりとなりえるでしょう。

就業規則で定められた提出期限より後に提出された退職届は有効?

退職日の2週間より前であれば、就業規則で定められた提出期限より後であっても認められます。

期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条にて、「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定められているためです。

なお就業規則に違反しているからという理由で、退職者に損害賠償などを求めることは原則できません。

短期間での業務の引き継ぎは避けたい事態ではありますが、スムーズに引き継ぎができる業務体制を整えておくことも大切です。

退職者の有給休暇取得と業務の引き継ぎ、どう考えるべき?

有給休暇の取得は労働者の権利なので、退職予定者であっても取得を妨げることはできません。

引き継ぎは有給休暇を取得させたうえで退職日までに行うことになるでしょう。どうしても退職日までに有給休暇の取得や引き継ぎが難しい場合は、退職日の変更が可能か相談するのもひとつの方法です。

このような事態をできるだけ避けるには、以下のような対策をとっておきましょう。

  • 就業規則で「退職希望日の1か月前までに退職の申し出をすること」などを明記する
  • 普段からマニュアルなどを整えておき、特定の人だけがわかる業務を極力なくす
  • 有給休暇を適時取得するような職場の雰囲気や体制をつくる

退職事由を詳しく聞いても構わない?

自己都合退職の場合は退職理由がなくても退職できるため、詳しく聞くと問題になることがあります。

そのため退職理由を退職者に確認したい場合は、回答するかどうかは労働者側の任意であることを最初に伝えておくと誤解を避けられるでしょう。

ただし労働期間の定めがあるにも関わらず途中で労働契約を解消する場合と、退職勧奨などによる合意退職の場合はこの限りではありません。

互いの認識をすり合わせる必要があるため、退職理由を詳細に聞くことが可能です。

行方がわからなくなった社員を退職したとみなせる?

行方がわからなくなった社員に関する処遇を就業規則に扱いを定めておけば、退職できます。

たとえば「14日間の無断欠勤が続いた場合は、懲戒解雇とする」などです。ただしこの日数は法律上で明記されているものではありません。

就業規則で行方がわからなくなった社員の扱いが定められていない場合は、裁判所の掲示場などに会社からの解雇の意思表示を掲示する「公示送達」という手続きも取れます。

しかし手間と時間がかかるため、家族と相談して念書をとったうえで退職や解雇とするケースが多いようです。