キャリアアンカーとは? 間違えやすい用語、8つの分類、活用法

キャリアアンカーとは、キャリアを形成する際に譲れない価値観のことです。キャリアアンカーが生まれた背景や間違いやすい用語、キャリアアンカーの8つの分類、診断方法、活用法、関連書籍について解説します。

1.キャリアアンカーとは?

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択、形成していくうえで最も大切にする価値観のこと。1970年代、マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの組織心理学者であるエドガー・シャインが提唱した、キャリア理論の概念です。

キャリアアンカーが一度形成されると周囲の環境や年齢の変化などに左右されにくいといわれています。よって生涯にわたってその人のキャリアを決定づける重要な要素とされているのです。

またキャリアアンカーは個人だけでなく、社員の特性や能力を測定するアセスメントツールとしても活用できます。

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2.キャリアアンカーが生まれた背景

キャリアアンカーという概念が生まれた背景にあるのは、市場のグローバル化やAIなどの技術発展などによってもたらされた大きな変化です。これにより社員一人ひとりが何を大切にしてどのように働きたいかを把握する必要が生じました。

企業とのミスマッチ

離職率の高さは、社会問題のひとつになっています。たとえば大卒者は入社後3年以内に約30%が退職しているといわれています。原因として挙げられるのは、「就労条件が合わない」「仕事が自分に合わない」といった企業とのミスマッチです。

人材流動性の高まり

近年、市場のグローバル化や技術発展などにより、イノベーション人材を中心に人材の流動性が高まっています。人材もより能力や個性が求められる時代へと変化。よって適材適所で個々の能力を発揮するのが重要だとされているのです。

個人の仕事観の変化

昨今、社会情勢の変化を受けて個人の仕事観も多様化しているのです。一般的に高収入・好待遇の職場がよいとされています。しかし「高収入でなくてもプライベートを確保したい」「やりたいことに没頭できる仕事がよい」人も少なくありません。

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3.キャリアアンカータイプを知るメリット

社会情勢の変化によって企業の人材流動性が高まり、働き方も多様化する昨今、キャリアアンカーの把握は企業と個人、双方にメリットをもたらします。

企業側

キャリアアンカーを把握すると、社員を適材適所に配置できます。よって社員はモチベーションが向上し、最大のパフォーマンスを発揮できるようになるのです。それは大きな成果へつながるでしょう。

社員側

働くうえで根幹となるアンカータイプを把握すると、昇進や転職など人生のさまざまな節目で満足度の高い働き方を選択しやすくなります。「のちのち不満を感じるような転職」といったリスクの回避や「職場での悩み解決」につながるでしょう。

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4.キャリアアンカーと間違えやすい用語

キャリアアンカーと似た意味を持ち、間違いやすい用語にプランドハップンスタンスとキャリアサバイバルがあります。それぞれの意味について説明しましょう。

プランドハップンスタンス

「キャリアは偶然に左右される場合が多い。偶然の出来事や出会いをポジティブ・シンキングにてキャリアアップにつなげられる」理論のこと。日本語では、「計画された偶然」「計画的偶発性理論」などと訳されます。

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キャリアサバイバル

個人が働くうえで譲れない価値観と、環境や組織のニーズを調和させる考え方のこと。キャリアサバイバルでは、キャリアアンカーだけでなく、企業の成長にどう貢献できるかなども大切になります。

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5.キャリアアンカーの8つの分類

キャリアアンカーは8つのタイプに分類できます。ここでは、それぞれのタイプの特徴と適職例について説明します。

  1. 管理能力タイプ
  2. 専門と職能別能力タイプ
  3. 保障と安定タイプ
  4. 自律と独立タイプ
  5. 奉仕と社会貢献タイプ
  6. 起業家的創造性タイプ
  7. ワークライフバランスタイプ
  8. チャレンジタイプ

①管理能力タイプ

管理能力タイプは経営者やマネージャーなど管理職へ就くことに価値を見出すタイプです。このタイプはマネジメントや問題解決などを好む傾向にあり、責任のある仕事をしたり組織を動かしたりすることで成長します。

管理能力タイプの適職

管理能力タイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • コンサルティング業界
  • 投資ファンド業界
  • 小売業界

これらの業界では管理職の視点から業務を進める必要があります。よって管理能力タイプは存分に力を発揮できるでしょう。

②専門と職能別能力タイプ

「何かの分野に特化する」「特定分野の権威になる」「エキスパートになる」ことを好むタイプです。ひとつの分野にて次々と新たな発見をし、挑戦し続けて成長します。ほかの人よりも正確かつ生産性の高い仕事ができるでしょう。

専門と職能別能力タイプの適職

専門と職能別能力タイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • 技術職
  • 研究職

こうした仕事でコツコツとスキルを磨いていくのが合っています。また向いていない仕事を任されると能力が生かされないと感じ、モチベーションも低下してしまうのです。

③保障と安定タイプ

生活において重要な要素を「安定性」「継続性」と考えるタイプです。ローリスクローリターンを好み、変化を嫌う堅実なタイプであるため、転職を行うのも少ないといえます。ひとつの企業で勤め続ける状況が多いです。

保障と安定タイプの適職

保障と安定タイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • 公務員
  • 大企業の社員

安定性を求めるため、公務員や終身雇用制度がある大企業の社員として働くのが合っています。公務員でもリスクマネジメント業務に向いている人が多いでしょう。

④自律と独立タイプ

自分の裁量で仕事を進めるのに価値を見出します。よって集団行動で規則や手順などに束縛されるのが苦手なタイプです。一人で仕事を進めたいタイプで企業であれば上司との距離が近く、すぐに提案や相談ができる環境で力を発揮します。

自立と独立タイプの適職

自立と独立タイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • フリーランス
  • 士業
  • 研究職
  • エンジニア

マイペースでコツコツと仕事できる環境が合っています。自由度の高い働き方で最大のパフォーマンスを発揮できるため、フレックスタイム制や成果主義を導入している職場が向いているでしょう。

⑤奉仕と社会貢献タイプ

能力の発揮よりもいかに社会の役に立つか、考えます。正義感が強いため、社会貢献活動につながる起業や企業の体制を指摘する監査部門での仕事などで能力が発揮されるでしょう。

奉仕と社会貢献タイプの適職

奉仕と社会貢献対応の人の適職は、下記のとおりです。

  • 医療業界
  • 福祉業界
  • 教育業界

このように人の役に立っているかどうかを実感できる分野の仕事に就く場合が多いです。環境問題に関する事業を立ち上げる人もいますが、それはあくまで手段にすぎません。目的は社会貢献です。

⑥起業家的創造性タイプ

クリエイティブな仕事や新規事業の立ち上げや発明などを好みます。自身のアイデアが生かされるかどうかに重きを置いているため、立ち上げ後の事業管理や運営などはほかの人に任せる場合も多いです。

起業家的創造性タイプの適職

起業家的創造性タイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • 建築業界
  • 広告業界
  • IT業界

これらの業界では今までにない新たなトレンドを生み出したり、ゼロから新たなものを考えたりするため、創造性が十分に生かされます。

⑦ワークライフバランスタイプ

仕事とプライベートの両立を重視して仕事を選ぶ傾向にあるタイプです。テレワークができたり育児休暇が取れたりと、柔軟な働き方ができる環境を好み、会社を選ぶ際には福利厚生の充実も大きな要素となります。

ワークライフバランスタイプの適職

ワークライフバランスタイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • 事務職
  • 制度が整っている企業の社員

有給消化率100%、育児休暇や介護休業制度などが整備されており、残業時間の少ない企業が向いているでしょう。

⑧チャレンジタイプ

全力で挑める困難への挑戦から受ける刺激を好みます。そのため現状の仕事に満足してしまうと次の仕事を求める傾向にあるのです。またハードワークはこなすものの、ルーティンワークが苦手といえます。

チャレンジタイプの適職

チャレンジタイプの人の適職は、下記のとおりです。

  • スポーツ選手
  • パイロット
  • エンジニア

たとえばエンジニアであれば誰も開発できなかったことを成功させる能力があります。得手不得手にこだわらず、挑戦しがいがある分野には積極的に取り組むのです。

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6.キャリアアンカーの診断方法

キャリアアンカーはどのように診断すればよいのでしょう。ここでは診断方法について解説します。

フレームワークを使った自己分析

フレームワークを使った自己分析では下記の3つが必要です。それぞれについて説明しましょう。

  1. どんな仕事がしたいのか(will)
  2. 自分は何が得意なのか(can)
  3. 何をするべきなのか(must)

①どんな仕事がしたいのか(will)

「どのような人物になりたいのか」「どのような人生を送りたいのか」という将来のビジョンを明確にすると方向性が定まります。たとえば「子どもを産んでも働き続けたい」など。ビジョンが明確になったら、その理由もあわせて考えてみましょう。

②自分は何が得意なのか(can)

「自分にできることは何か」「どのようなスキルがあるのか」など強みを生かして働くと、モチベーションを高く維持できます。資格やスキルだけでなく、明るい人柄や誰とでも話せるコミュニケーション能力も強みに当てはまるでしょう。

③何をするべきなのか(must)

上記のWillとCanが自分を主軸に考えているのに対し、Mustは「周囲から求められていることや今すべきことは何か」を表します。

たとえば数値目標が同じでも目的が異なると、評価が想像より低くなる場合もあるでしょう。自分のやりたいことと周囲からの期待がずれていないか、確認が必要です。

チェックシートを活用する

厚生労働省でも若者や女性、中高年向けに雇用環境をチェックするシートや自己棚卸しシートなどをホームページで公開しています。積極的に活用しましょう。

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7.キャリアアンカーの企業での活用法

企業でもキャリアアンカーは採用や研修、人材育成や人事異動など、さまざまな場面で活用できます。活用シーンやその効果について、解説しましょう。

  1. 採用活動に使う
  2. 新人研修で使う
  3. 中堅社員の育成に使う
  4. 人事異動のアドバイスに使う

①採用活動に使う

会社説明会にキャリアアンカーを活用すると、応募者の仕事に対する価値観や望む働き方を把握できます。求める人物像も認識できるため、ミスマッチ対策にもつながるでしょう。

②新人研修で使う

キャリアアンカーが形成されるのは、一般的に30歳前後。職務経験の浅い新卒者にキャリアアンカーの形成は難しいため、まずは新人研修でキャリアアンカーの概念を教えましょう。そして仕事をしていくうえで譲れない点や価値基準の作り方などを意識させます。

③中堅社員の育成に使う

中堅社員研修にてキャリアアンカーの考え方を学ぶと、適性や仕事観を把握できます。それにより中堅社員は、仕事に対する大きな目標が認識できるのです。モチベーションの向上にもつながるでしょう。

④人事異動のアドバイスに使う

異動時に心理的ストレスを感じる社員もいます。キャリアアンカーの視点で「どのように働きたいか」を考えさせると、新しい職場でどのように能力を発揮していけばよいか、社員はわかります。それにより離職や転職も防げるでしょう。

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8.キャリアアンカーに関する本

最後にキャリアアンカーについて書かれた書籍をご紹介します。自己分析の手法として活用してみてください。

『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう』

エドガー・H. シャイン著の『キャリア・アンカー自分のほんとうの価値を発見しよう』では、キャリアの選択や決定に役立てるツールが紹介されています。キャリアアンカー概念を軸としたキャリア学習のためのガイドブックで、自己分析にも役立つでしょう。

『キャリア・アンカー〈1〉セルフ・アセスメント』

同じくエドガー・H.シャイン著の『キャリア・アンカー〈1〉セルフ・アセスメント』では、40の質問に答えると自分の仕事に対する価値観を測れます。自身の方向性を確認したいときに役立つ書籍です。