ウェイとは?【ビジネスでの意味を簡単に】事例、トヨタ

ウェイとは、過去の経験により培われた「その企業らしさ」のこと。今回はウェイの定義、目的、効果、有名企業の導入事例などを解説します。

1.ウェイとは?

ウェイとは、創業から現在に至るまでに培われた企業特有の価値観のこと。「Way」という英語の「方向」「やり方」「行い」「ふるまい」といった意味から派生したと考えられます。

ウェイは広く一般にも伝わるように、「経営理念」や「行動指針」という形で明文化されることが多く、社員がものごとを判断するときに影響しやすいのです。そのため人、モノ、カネ、情報に次ぐ「経営資源」とも言われています。

類義語

ビジネスにおけるウェイの類義語としては、「クレド」や「ミッションステートメント」などが挙げられます。

  • クレド:仕事の中心とすべき価値観を短い文章で表したもの
  • ミッションステートメント:経営理念を実現するための行動指針を文章で表したもの
  • ウェイ:クレドやミッションステートメントなども含めた「価値観の総称」

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ウェイマネジメント

自社のウェイを明文化し、社員に対して意図的に浸透させる取り組みのこと。すでにウェイが明文化されている場合は、それを現状に則したものに改善することを指します。

ウェイマネジメントには、ポスターの掲示やリーフレットの配布、管理層による率先したウェイの体現などが効果的です。

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2.ウェイを明確にする目的

ウェイは人やカネ、モノや情報に次ぐ経営資源として注目を集めています。ウェイを明確にすれば、どのような状況であってもその企業らしい行動や判断につながるからです。ここではウェイを明確にする目的を3つ説明します。

  1. 企業の思いを組織全体に浸透
  2. 永続的な企業運営
  3. 他社との差別化

①企業の思いを組織全体に浸透

ウェイを明確化すれば経営陣の考えが社員全員に浸透し、組織全体の方向がぶれません。

ウェイは業務の種類や大小にかかわらず、すべての仕事における基盤となる価値基準です。ウェイが曖昧なままでは各々の価値基準で仕事をする社員が出てしまいかねません。

ウェイを明確化すると、経営陣から一社員まで同じ価値基準で仕事ができるようになり、企業全体の経営方向も自然と定まっていくのです。

②永続的な企業運営

ウェイを明確化すれば、本質的な価値を重要視できるようになり、安定した利益が生み出せる企業になれます。

ウェイは数値目標のような目に見える価値基準ではなく、それを達成するための考え方や行動指針といった目に見えない価値基準です。

ウェイを明確化して社員や顧客、株主といったステークホルダー全員に浸透させれば、これらの人々は単なる成果ではなく本質的な価値へ目を向けるようになります。

本質的な価値は安定した長期の利益を生み出し、永続的な企業運営の実現につながるのです。

③他社との差別化

ウェイを明確化すれば、企業のあり方が強化され、商品やサービスだけに頼らない差別化を図れます。

ウェイは目に見えない価値基準であり、「なにを成したか」ではなく「どうありたいか」に目を向けさせるもの。ウェイを明確化すれば企業のあり方がよりはっきりと打ち出され、商品やサービスに新たな価値がくわわります。

そのため近年のブランディング戦略において、ウェイは欠かせない要素のひとつなのです。

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3.ウェイを明確にする効果

ウェイの明確化は、経営陣だけでなく社員全体に変革をもたらします。それにより実現するのは、企業らしい基準、業績や社員のモチベーション、エンゲージメントの向上などです。ここではウェイを明確にする効果を説明します。

  1. 業績の向上
  2. 社員のモチベーションアップ
  3. 企業らしさの基準が明確になる
  4. エンゲージメントの向上

①業績の向上

ウェイを明確化すれば、社員がより仕事に注力するようになり、業績アップが見込めます。ウェイを大切にし、共有している企業の社員には以下の傾向があると、日本企業を対象とした過去の調査で明らかになりました。

  • 仕事への情熱を持っている
  • 自分の仕事でなくても積極的に取り組む
  • よりよい仕事をしようと創意工夫を凝らす

こうした社員の動きは仕事の質を向上させ、結果として業績の向上につながります。

②社員のモチベーションアップ

ウェイの明確化は自社への不満を減らし、社員のモチベーション維持に役立ちます。

社員のモチベーションが低下する要因でよく見られるのが待遇や職場環境、人間関係といった自社の方針や価値観への不満です。社員のモチベーションを維持するためには、このような不満をできる限り減らさなければなりません。

ウェイの明確化で企業全体に同じ価値基準を浸透させると、社員が同じ目標で行動するようになっていきます。社員の不満が軽減され、以前よりモチベーション高く仕事に取り組めるのです。

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③企業らしさの基準が明確になる

ウェイを明確化すれば、行動指針がより具体的になり、企業らしさの基準が定まります。

ウェイが曖昧なままでは、社員ごとに捉え方の差が生まれ、なかなか一律の行動が取れません。しかしウェイが明確になれば、それに伴う行動指針もより具体的に進化します。社員の行動への評価や修正が行いやすくなり、企業らしさの基準も自然と定まるのです。

④エンゲージメントの向上

ウェイの明確化はビジョンの共有、自主性と創造性の尊重などをもたらし、社員のエンゲージメント(自社に対する貢献意識や愛着)を向上させます。エンゲージメントの向上には、以下のふたつが効果的だとされています。

  • ビジョンの共有
  • 自主性と創造性の尊重

ウェイの明確化はまさにビジョンの共有です。またすべきことが見えてくるため、主体的な行動も起こしやすくなります。社員のエンゲージメント向上はもちろん、それによる離職率の低下なども見込めるでしょう。

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4.ウェイが注目される背景

近年、ウェイへの注目が高まる理由として挙げられるのは、企業間のグローバルな競争が激化し、社員が一丸となって力を発揮しなければ生き残れない点。またトラブルに対する問題意識や働き方の変化も要因のひとつです。

ここでは、ウェイが注目される背景を説明します。

  1. トラブルに対する問題意識
  2. 働き方の変化
  3. 求心力の向上

①トラブルに対する問題意識

ウェイが注目されている背景には、不正や不祥事、事故などといったトラブルの多発、そしてそれを防止したい企業側の思惑があります。

ウェイはコンプライアンスなどと同じく、仕事において守るべき正しい価値基準。つまりウェイは企業が社会に対して「守るべき約束」を提示しているともいえます。企業による積極的なウェイの導入には、こうしたトラブルへの抑止力としての側面があるのです。

②働き方の変化

ウェイが注目されている背景には、働き方改革によるリモートワークの増加、そしてそれによる生産性の低下があります。

近年、リモートワークは意思疎通の機会を減少させ、判断の遅れや生産性の低下をもたらしました。多くの企業は現在、こうしたリモートワークのデメリットへの対応を迫られています。

そこで多くの企業が仕事における判断材料としてウェイを浸透させようと取り組んでいるのです。またウェイは、リモートワークで低下しやすいモチベーションを向上させる手段としても重要視されています。

③求心力の向上

ウェイが注目されている背景には、グローバルな企業間競争の激化、そしてそれに対抗するための人材を確保したいという企業側の思惑があります。

近年、転職が一般化し、日本特有の終身雇用制度は崩壊しつつあると言われるまでになりました。こうしたなかでグローバルな企業間競争を勝ち抜くためには、優秀な人材を囲い込まねばなりません。

モチベーションやエンゲージメントの向上が期待できるウェイは、人材をつなぎとめる手段としても注目を集めています。

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5.ウェイ導入の手順

ウェイは企業のビジョンを広く浸透させ、社員の自主的な行動を促す効果があります。このウェイを掲げるには、自社にあった「経営理念」や「行動指針」、「ビジョン」などを策定しなければなりません。ここではウェイを導入する手順を説明します。

ウェイの導入手順

ウェイの導入は、曖昧なウェイの明文化、そして浸透という手順で行います。ウェイの詳しい導入手順は、以下のとおりです。

  • 現状の分析
  • ウェイを決める要素を整理
  • ウェイの言語化
  • ウェイの浸透

ウェイの決定にあたっては、まず自社の環境や課題の分析が必要です。それを踏まえたうえで、経営陣や社員の想いや企業としてのこれまでの経験などを整理し、ウェイを言語化していきます。

ウェイの浸透には、違和感や疲労感など多くの障壁が想定されるもの。ポスターやリーフレットの作成、教育制度や評価制度の改定など適切な対策を講じ、全体への定着を促しましょう。

人材育成と連動させる場合

ウェイを人材育成と連動させる場合、ウェイに沿った行動を評価し、共有するシステムが必要になります。ここでいうシステムとは、具体的に以下のようなものです。

  • 表彰
  • 社内広報
  • 人事評価制度
  • 目標設定
  • 人材要件
  • 育成体系

これらのシステムでウェイに沿った行動の評価と共有が行われると、社員が自発的にウェイを実践するようになります。自主性の現れはウェイの浸透が最終段階に入ったことを意味し、モチベーションやエンゲージメントの向上といった成果も見られるでしょう。

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6.ウェイ導入のポイント

ただウェイを明文化しただけでは十分に浸透させられません。ここではウェイをスムーズに導入するためのポイントを説明します。

  1. 社内制度の整備
  2. 経営者が率先
  3. 多くの時間をかける

①社内制度の整備

ウェイに沿った社内制度を整備しておけば、社員に自然とウェイが浸透していきます。

ウェイは企業主導で浸透させていくものですが、社員の考え方や行動は強制的には変えられません。ウェイをうまく浸透させたいならば、社内イベントやコミュニケーションの取り方などを見直してみましょう。

普段の生活にウェイが組み込まれ、社員への自然な浸透が期待できます。

②経営者が率先

経営陣が率先してウェイを体現すれば、その熱意や誠実さでほかの社員を動かせます。経営陣の言動はつねにほかの社員から注目されているからです。

経営陣がウェイを重視していなければ社員にも浸透しません。ウェイを導入するなら、まず経営陣が率先してウェイを体現しましょう。熱意や誠実さが伝われば、ほかの社員もウェイを重視するようになります。

③多くの時間をかける

共有に時間を使えば使うほど、ウェイは社員に深く浸透していきます。

社員が仕事に割く時間は、生活のわずか20%程度。ウェイに触れる時間はさらにその一部にしか過ぎません。意図的に時間を確保しなければ、ウェイは日々の業務に埋もれてしまうでしょう。逆にしっかりと時間を確保すれば、そのぶん深い浸透が期待できます。

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7.ウェイを導入する企業事例

国内外の大手企業がウェイを導入しているので、それらを参考にしながら自社のウェイを定めるのもよい方法です。たとえば国内では、以下のような大手企業のウェイが知られています。

  • トヨタ
  • ローソン
  • ヤマハ
  • コマツ
  • 日産
  • リクルートホールディングス
  • 花王

ここではウェイを導入した実際の企業として、トヨタと日産、花王の3社を説明します。

トヨタウェイ

トヨタは社員の増加、そしてそれに伴う多様化に対応すべく、「知恵と改善」「人間性尊重」を柱とした「トヨタウェイ2001」を導入。

当時の社長はウェイを「トヨタで働くうえでの行動原則」と位置づけ、英語版も含めて内外の事業所に配布しました。

その後、経理財務や人事労務、調達や技術など各部門別のウェイも作成され、現在は時代に合わせて改善された「トヨタウェイ2020」が掲げられています。

日産ウェイ

日産は持続的な成長を目指すべく、5つの心構えと5つの行動からなる「日産ウェイ」を導入。その後2019年度には、利益ではなく社会貢献に重きを置いた、新たな「NISSANWAY」を作成しました。

現在はそれを評価の軸として、企業文化や事業構造の改革を行っています。こうした改革の成果か、2022年3月期の決算は3期ぶりの黒字となりました。

花王ウェイ

花王はグループ全体の価値基準として、「使命」「ビジョン」「基本となる価値観」「行動原則の4層構造」の4つからなる「花王ウェイ」を導入しました。

「豊かな共生世界の実現」という使命をトップに、ついで「人をよく理解し期待の先いく企業に」というビジョンを掲げ、それにもとづいて細かい価値観や行動原則を定めました。

この花王ウェイは、グループが活動を一貫させるための指針、社員が働きがいを得るための指針として扱われています。