サービス残業とは? 違法性の根拠、罰則、例外

会社で業務を行っていると残業が発生することがありますが、サービス残業とは一体どのような残業を意味するのでしょうか。企業に雇用されて働く以上、サービス残業の違法性などを正しく理解しておかなければなりません。

違法である場合はどこに相談したらいいのか、未払い賃金の請求方法や解消した事例も含めて詳しく解説します。

1.サービス残業とは?

サービス残業とは企業(雇用主)が当該時間外労働手当(残業代)の全部または一部を支払わずに法定労働時間を超えて従業員(労働者)を働かせること

残業時間というと、終業時間を超えた時間外労働を想起することが多いですが、始業前に業務を行った時間も含まれます。サービス残業は、支払うべき賃金を正当な理由なく支払わない行為であるため、労働基準法に違反する行為となるのです。

「サービス残業」という言葉の由来

サービス残業は、英語の「サービス(奉仕)」に由来します。

労働者に残業の「申請」を行わせず、本来は対価の発生する残業が無賃となることで、(従業員が自主的に残って働いていたとしても)奉仕しているように見えることからサービス残業という言葉が使われるようになりました。

サービス残業が発生する背景として挙げられるのは、有形・無形の圧力によって残業の「申請」を行わせず、定められた時間内で処理できない業務を課す、適切な業務量に調整しないため従業員が残業せざるを得ない状況になっているなどです。

タイムカードによる出退勤管理をしている企業では、定時に退勤処理を行わせた後で働かせるような例もあります。

深夜労働、休日労働に対して適切な賃金が支払われていない場合も、サービス残業に含まれるので注意が必要です

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2.サービス残業をさせる組織がよく使う言い訳の例

サービス残業をさせる組織がよく使う言い訳として挙げられるのは、下記のようなものです。

  • みなし労働制だから残業代を支払わない
  • 裁量労働制だからそもそも残業代はない
  • 固定残業代だからすでに支払い済み
  • 土日などに労働しても、就業規則に定めている通り休日ではない
  • 管理監督者だから残業代の支給は必要ない

しかし、定められた手続きを行っていない、独自の解釈で運用している、管理監督者といっても名ばかりの管理職である、などと不適切な場合も多く見られます。深夜・法定休日の業務も残業代の対象となるので覚えておきましょう。

残業代・賃金の不払いに関する是正企業数(厚生労働省)

労働に関する相談件数は10年連続で年間100万件以上あります。

厚生労働省が公表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」によると、残業代・賃金の不払いに対して厚生労働省が「是正・指導」をした企業は1,768企業、対象労働者数は11万8,837人、割増賃金の平均額は労働者1人当たり11万円でした。

平成29年度の是正結果は、是正・指導対象の企業数1,870企業、労働者数20万5,235人、割増賃金の平均額は労働者1人当たり22万円でした。いずれも前年度に比べて減少しているものの依然高い水準となっており、残業代未払い問題は深刻な社会問題となっています。

サービス残業をむやみに受け入れてはいけません。残業した分の対価として会社にきちんと請求しましょう

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3.残業代が発生する仕組みと法律

そもそも残業代とはどのようなもので、何の法律に基づいているのでしょうか。

法定労働時間:8時間/日・40時間/週

法定労働時間は、労働基準法第32条で定められている労働時間です。休憩時間を除き、「1週につき40時間を超えて労働させてはならない」「1日につき8時間を超えて労働させてはならない」と定められています(一部特例を除きます)。

企業がこの法定労働時間を超えて従業員を働かせた場合や法定休日に働かせた場合、その労働は時間外労働となり、当該労働時間に応じた残業代(割増賃金)を従業員に支払うのです。本来支払う必要のある残業代を支払わない場合、サービス残業となります。

割増賃金とは?

割増賃金とは、雇用主が労働者に時間外労働(残業)・休日労働・深夜業を行わせた場合に支払わなければならない賃金のこと。割増賃金を正しく理解するために、残業の種類ごとに概要を把握しましょう。

  • 時間外労働:法定労働時間を超えて労働すること。時間外労働で発生する割増賃金のことを、残業代、時間外労働手当、超過勤務手当という
  • 休日労働:労働基準法で定められた法定休日に労働すること。休日労働で発生する割増賃金のことを休日労働手当という。
    ※法定休日とは、週1日または4週を通じて4日間設定するもので、曜日は問われない。
  • 深夜業(深夜労働):午後10時から翌日午前5時までの間に労働すること。深夜業で発生する割増賃金のことを深夜労働手当、夜勤手当という

割増賃金にはそれぞれ、最低割増率が定められていることも把握しておきましょう。

残業代の割増率

  • 時間外労働(法定労働時間を超えた場合) :25%割増
  • 深夜労働(午後10時から午前5時までに労働した場合) :25%割増
  • 休日労働(法定休日に労働した場合): 35%割増
  • 時間外労働(1カ月60時間を超えた場合):50%割増
  • 時間外労働(法定労働時間を超えた場合)+深夜労働: 50%割増
  • 休日労働+深夜労働: 60%割増

36協定とは?

労働基準法第36条に基づいて、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者との労使協定にて時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合は、法定労働時間を超える時間外労働、法定休日における休日労働が認められます。

この労使協定を「時間外労働協定」と呼ぶのです。労働基準法第36条に定めがあることから、一般に「36協定」とも呼ばれています。

残業をした場合に発生する割増賃金の最低割増率も労働基準法に定められています。時間外労働について定めた「36協定」についても理解しておきましょう

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4.サービス残業は犯罪? 違法性の根拠

使用者が労働者に対して指揮権を持ち拘束できる時間(労働時間)は、労働基準法第32条第2項により1日最大8時間と定められています(※休憩時間含まず、労働基準法第40条第1項に該当する場合は除く)。

また、労働基準法第32条第1項により1週で最大40時間までとされているのです(※休憩時間含まず、労働基準法第131条に該当する場合は44時間まで)。

ただし、以下2つの要件を満たせば法定労働時間の枠を超えて使用者が労働者に対し指揮権を持ち拘束できるようになります。

  1. 労働基準法第36条第1項で定められている通り、労使間で協定(36協定 )を締結して行政官庁に届け出る
  2. 労働基準法第37条第1項で定められている通り、使用者が労働者に対して割増賃金を支払う

労働基準法第37条

労働基準法第37条では、労働者が法定労働時間を超えて働いたときや、休日労働、深夜労働をしたときに「割増賃金」を支払わなければならないと定めています。

つまり、従業員が「残業」や「深夜労働」「休日労働」をした場合、会社は労働者に対して通常より多くの賃金を払わなければなりません。

サービス残業は、この時間外労働分の割増賃金を支払うという要件が欠けているため違法であり、罰則の対象となります。

また使用者が労働者に対して、法定労働時間を超過する労働を強制し、拘束するにもかかわらず、時間外労働の前提として必要な36協定が締結されていない場合や割増賃金が支払われない場合も違法となります。

使用者の故意による指示

使用者が故意にサービス残業をさせている場合、労働基準法違反になります。たとえば違法だと知りながらサービス残業を強いる、従業員が隠れて残業していると知りながら黙認するなどが当てはまります。

サービス残業は長時間労働を招き、過労死や過労自殺、その前段階でうつ病などの精神疾患を発生させる原因となることもあるため、サービス残業の存在を知りつつ放置する行為は刑事罰に当たる違法行為となっています。

一方で故意ではなく過失の場合、罰則を科すことはできません。

労働者が使用者の評価を得るために残業をしていることを隠している場合、使用者が故意に働かせているわけではないため違法性を問えません

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5.サービス残業をさせた企業への刑事罰

労働基準法第32条、第37条に違反した場合の罰則が労働基準法第119条によって規定されています。違反した使用者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処すると定められているのです(刑事罰は極めて悪質なケースに科されるのが通常です)。

使用者は、労働基準法第10条にて「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」とされています。

つまり経営者だけではなく各事業の実質的な権限を持つ人も使用者として罰則の対象となるのです。

未払い残業代に関する罰則①付加金

付加金とは、残業代などが未払いになったときに、未払い分の残業代やそれに対する遅延損害金・遅延利息とともに請求することができるもの。

裁判所で会社の対応が悪質と判断された場合、本来の残業代の額と同額までの範囲で「付加金」という金銭の支払いを命じられます。企業が残業代を支払わなかったことに対する制裁金としての意味合いを持つものです。

未払い残業代に関する罰則②遅延損害金制度

企業が従業員に対して働いた分の残業代や賃金を支払わなければ、「金銭債務の不履行」があったとして、従業員は企業に未払いの残業代や賃金とともに民法上の規定により遅延損害金も請求できます。

残業代については、従業員が在職中の場合は「年利6%」、退職後は「年利14.6%」の遅延損害金が付きます。

未払い残業代について従業員に裁判を起こされれば、「付加金」や「遅延損害金」等が加わって、本来の残業代の額の倍額以上の支払いを命じられることもあります

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6.サービス残業と見なされない雇用形態のパターン

一般的に、労働基準法の定める法定労働時間を超えて働いたら「時間外労働の割増賃金(残業代)」を請求できます。

しかし中には残業代を請求できない雇用形態も。以下のような雇用形態の労働者で、正しく理解・運用がされている場合、未払いの残業代は発生しません。

  1. 事業場外のみなし労働制
  2. 裁量労働制
  3. フレックスタイム制
  4. 固定割増賃金制度
  5. 管理監督者
  6. 天候や自然条件に左右される労働者
  7. 断続的業務の労働者
  8. 公務員全般

①事業場外のみなし労働制

みなし労働時間制(みなし残業)は、外回りの営業職など事業場外(会社外)で勤務していて労働時間の把握が困難な職種に多く見られます。

みなし残業では、「一定時間(所定時間分)を働いたと見なす」場合と「通常その業務を遂行するのにかかる時間分を労働したと見なす」場合があります。

②裁量労働制

専門職や経営企画など、高度に専門的な業務や企画立案を行う業務に従事する労働者に適用される制度です。

裁量労働制の下では労働力を労働時間ではなく、一定の成果で評価すべきという考え方の下、実労働時間にかかわらず、労働時間を一定時間に見なすことが認められます。

③フレックスタイム制

フレックスタイム制とは一般に、労働時間を1カ月以内の一定単位で管理し、賃金精算を行う制度のこと。一定期間単位で労働時間を集計するため、「1日8時間、1週間に40時間」の法定労働時間を超過して働く日があっても、直ちに残業代は発生しません。

最終的に集計した労働時間と法定労働時間を照らし合わせて、時間外労働があれば割増賃金の請求が可能となります。なお、休日・深夜労働については適用対象外ですので、休日・深夜の労働については別途集計して割増賃金の精算が必要です。

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④固定割増賃金制度

会社は毎月一定の割増賃金を固定支給することが可能です。固定支給分については割増賃金の支払いをしたものとして処理されるため、固定支給分を超える割増賃金が発生しない限り、従業員は別途の精算を求めることはできません。

ただし、固定割増賃金制度が適法と認められるには厳しい条件があり、以下のようなことが求められます。

  • 雇用契約や就業規則で、固定割増賃金部分と基本給部分を明確に区別して定めている
  • 客観的に見て、固定割増賃金部分が時間外労働・休日労働・深夜労働などの残業の対価として支給されていると認められる

⑤管理監督者

管理監督者は、経営者と一体的立場にある労働者とされています。労働基準法の定める「管理監督者」に該当する場合は、時間外・休日労働に係る割増賃金の請求はできません。多くの企業は、管理職を管理監督者として扱っています。

⑥天候や自然条件に左右される労働者

農業や林業、漁業など、自然の天候やその他の条件に左右される業種に携わる労働者は、毎日同じ労働条件で働くことはできないため対象外となっています。

⑦断続的業務の労働者

運転手や事故発生に備えて待機する業務など、実作業が断続的に行われており、手待ち時間が多い業務は対象外です。

⑧公務員全般

地方公務員、国家公務員、公立の教員などは労働基準法の適用外ですので対象外です。

サービス残業と見なされない雇用形態もあるため、サービス残業を疑う際はまず自分の雇用形態を見直しましょう

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7.サービス残業の主な発生原因

日本においてサービス残業がなくならない理由や背景について説明します。

経営陣の労働基準法の無理解

小さな会社の経営者は労働基準法を理解していない人が多いという実情もあります。残業に対して残業代を支払うことは認識していても、みなし残業代を含めて給与を支払っているから必要ないと勘違いしていることもあるのです。

また「名ばかり管理職」などの脱法的な手法で、残業代の支払いを免れると誤解しているケースや、故意に残業代の支払いから免れようとしているケースも散見されます。

人件費の削減

コスト削減のために違法と知りつつサービス残業を強いる、または黙認しているケースもあります。また、やるべき業務はたくさんあるが業績が芳しくない場合など、管理職も含めてコスト削減が命題となっている状況にサービス残業が発生しやすくなるのです。

労働者の意識と慣習

サービス残業は言葉としては最近生まれたものですが、サービス残業自体は高度経済成長期の日本よりもっと古くから長く続いています。

高度経済成長期の日本においては「サービス残業は当たり前」で、人に尽くすことを美徳とする意識が強い日本人には普通とされていました。その意識は現在まで継承されています。

個人が身に付けた習慣が、組織に共有されて広がり、定着することでまた個人に影響を与えます。つまり組織から人が入れ替わっても、社風として組織内に残り続けるのです。

高度経済成長期を経験していない若手社員層の中でも、自らのアウトプットに付加価値がないからなどの理由で、進んでサービス残業をしてしまう人がいるのもそのひとつでしょう。

人に尽くすという精神は素晴らしいものですが、労働に対価が支払われるのは当然の権利です。個人個人がサービス残業を認めないという意識を持つことが大切です

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8.サービス残業をさせるブラック企業の特徴

サービス残業をさせるブラック企業にはどのような傾向があるのか見ていきましょう。

就業時間を記録しない

かつては「定時になったらそれ以降のタイムカードの入力ができなくなる」「定時を超える終業時間が入力できない」など、終業時間を記録させない方法でサービス残業をさせていました。しかし、サービス残業に関する認識の変化や時間管理システムの浸透により減少しつつあります。

始業時刻前の出勤を強要する

始業時刻前に働く場合も残業の扱いになるため、「仕事が終わらないなら早く来てやること」と強要したり、「始業30分前には掃除や朝礼がある」からと始業時間前に作業させたりした際、残業代が支払われていないようであれば、サービス残業に該当します。

始業前の業務については、従業員自体も「残業である」「残業に該当する」との認識が低い場合もあり、結果としてサービス残業となっている例もあります。

仕事を家に持ち帰らせる

「納期に間に合わないから仕事を持ち帰った」「課題が出ている」などと家で仕事をした場合も、場合によっては残業となります。従ってこの場合も働いた分について残業代が支払われていないようならサービス残業をしていることになります。

持ち帰り残業行為が残業代の支払い対象となるかどうかは、業務や作業の内容、会社からの指示の有無など、さまざまな事情を考慮して判断されます。

たとえば、期限が厳しく定められていない仕事を会社に指示されることなく持ち帰り、自分の自由なペースで仕事をするような場合は、残業代の支払い対象となる労働とは認められにくいでしょう。

会社が家に持ち帰って業務を完了させるように指示したのであれば、当然残業となります。

残業代を固定残業代で支払う(みなし残業)

「残業代は固定残業代としてすでに支払い済みだ」と言い訳されるケースが散見されます。しかし、固定残業代が支払われている場合も、適法な処理がされていなければサービス残業となる可能性があります。

単に給与を計算する上で都合がいいからと固定残業代が導入されているのであれば問題ないですが、コストを削減するために残業代を一定額に限定している場合は違法となります。

固定残業制度を導入していても、みなし残業時間を超えた場合は残業代を支払う必要があるのです。

なお、本来固定残業制度は労働者と会社側どちらにもメリットのある制度です。残業がゼロでも固定分は支払われるので、労働者にとっては安定した収入につながります。

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名ばかり管理職の存在

2010年頃に「名ばかり管理職」という言葉が登場し、小売店や飲食店を中心に悪質なサービス残業の実態が明らかになりました。

労働基準法に「管理監督者には残業代を支払わなくてよい」と定められていることから、社内の独自の基準で「店長」や「マネージャー」を管理職(管理監督者)として取り扱い、長時間の就労を強いながら残業代を支払わないという手法が多く見られたのです。

企業が独自に「管理職」と扱っていても、必ずしも「管理監督者」としての要件を満たすとは限らず、違法になる場合もあります。

この問題に対する認知が進み、大手企業では大きく改善が進んでいますが、規模の小さな企業には未だ「名ばかり管理職」がサービス残業のひとつとして残っています。

賃金計算がずさん

賃金計算の際に、労働時間を15分、30分などの一定単位で計算し、端数となる時間を一方的にカットしてその分の賃金を支給しないといった例もあります。

労働時間は本来1分単位で集計・計算される必要があるため、端数分について賃金を支払わない状況もサービス残業に該当するのです。

また、本来であれば昼休み(休憩)の時間にもかかわらず、電話待機のために机で食事をする状況もサービス残業に当たります。労働時間だと判断されるような状態にあるのに休憩扱いになっているなど、業務と業務外の区別が曖昧な企業は多いです。

サービス残業を行わせる手口は多くあります。紹介したケースを頭に入れて、自分自身の労働時間や賃金に目を向けましょう

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9.慣習化しているサービス残業を断るには?

サービス残業は違法行為ですので、会社からサービス残業を依頼、もしくは強要されても断ることができます。またサービス残業を断ったからといって、その社員の給料や評価を下げるなどといった不当な扱いも違法になるのです。

賃金が支払われていない労働を拒否する権利はありますので、きっぱりと断る姿勢を示しましょう。問題がある場合は社内の相談窓口を活用するとよいでしょう。社内解決が難しい場合、労働基準監督署に調査・指導を依頼することもできます。

会社が残業を強制しにくいケース

会社は社員に残業をしてほしくても、社員がそれによって著しい不利益を被る場合、残業が違法となる可能性は高いです。たとえば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 体調不良(持病などを含む)の場合
  • 家族の危篤など緊急の事情がある場合
  • 妊娠中または出産から1年を経過していない場合
  • 小さい子どもの世話や高齢者の介護が必要な場合

上記のような場合は、社員自身や、社員にとって大切な人の身体・生命に関わる可能性があるため、残業の強制を認めるわけにはいきません。

また、以下のような場合も残業を断れる可能性が高いです。

  • 残業しても残業代が支払われていない場合
  • 月100時間など、異常な長さの残業時間が日常的に強いられている場合

残業命令を断るのが難しいケース

残業命令を断るのが難しいケースもあります。

前提として、労使間で36協定が結ばれている、就業規則で、残業の命令に従わなければならないことが規定されているという2つの条件を満たす場合、正当な理由がなければ原則、残業を断ることはできません。

またプライベート性が高く、緊急性が低いと判断されるような事由の場合も、断ることは難しいでしょう。

たとえば、

  • デートに行くから残業したくない
  • 予定していたコンサートに行くから残業したくない
  • 昔の友人と久々に会うから残業したくない

このようなケースでは残業の必要性のほうが優先されやすく、 残業命令が合法である可能性が高くなります。

プライベート性が高く緊急性の低い理由の場合、会社から要請された残業を断ることは難しいでしょう

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10.サービス残業を止めたい! 会社を訴える方法

サービス残業がある場合、会社を訴えることもできます。その方法を確認しましょう。

労働組合に相談する

労働組合は、労働者が団結して会社との交渉力の差をなくし、会社とフラットな立場に立って話し合いをして、労働者の権利や利益を保護する団体です。

労働組合には同じ企業に所属する労働者で結成される「企業内組合」と、企業に所属しない「一般労働組合(ユニオン)」があります。

会社に組合がなかったり、会社の組合があまり機能していなかったりする場合、ユニオンに相談することも選択肢のひとつとなるでしょう。

しかし、ユニオンという団体の特徴やその考え方から、ユニオンに加入することで、結果として会社や社内関係者との関係が悪化する場合も。加入するかどうかは、自身の将来も見据えた上で慎重に判断しましょう。

一般労働組合(ユニオン)とは?

ユニオンは「会社との闘争によって労働者全体の権利・利益を実現する」という理念で動く組織であり、会社と労働者との間の円滑な関係を維持することを主目的とはしていません。

また、ユニオンは企業組織に所属する団体ではないため、各企業の実情や個別事情については関知しないことがほとんどです。

「ユニオンに所属する=会社と徹底的に闘う」ことを余儀なくされる場合も多く、会社内で周囲との関係が破綻してしまうこともあるでしょう。また、ユニオンに相談した際、協力費として一定の費用がかかることもあります。

労働基準監督署に報告する

サービス残業の実態を労働基準監督署に通報して、労働基準監督署から会社に対して適切な指導をしてもらうのもひとつの方法です。

サービス残業は違法行為ですから、労働基準監督署がこれを認めた場合、速やかに是正して未払いの残業代を支払うよう指導がなされます。

労働基準監督署に通報すると、労働基準監督官が会社を抜き打ちで訪問して、労働に関する法律に違反していないかを調査します。

ただし、労働基準監督署は何の根拠もなく動くことはありません。通報・相談の際は、給与明細や出退勤表を用意するなど、ある程度しっかりした根拠資料を提示して具体的に実状を説明しましょう。

労働基準監督署は、匿名での申告にしてほしいとの要望にも応えてくれますが、後で通報した事実を会社側が知った場合、間接的な方法で冷遇される可能性があります。まずは根拠資料を集めた上で、会社の然るべき担当者に相談するとよいでしょう。

サービス残業について相談する場合は、出退勤の状況が分かるもの、給与明細など割増賃金が支払われていないことが分かるもの、就業規則や雇用契約書などを用意しましょう

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11.サービス残業における未払賃金の請求方法

原則として、労働者が残業した場合、労働者には残業代を請求する法的な権利が発生し、当然、企業は残業代を支払わなければなりません。サービス残業が長年続いている場合、会社に対し過去分を含めて未払い残業代を請求することが可能です。

退職前と退職後、どちらがよい?

未払い残業代を請求することで、会社と争いになる可能性も。在職中に請求する場合、その後社内で辛い立場に置かれることも想定されます。そのため、残業代を実際に請求するのは、退職した後のほうがよいでしょう。

正当な権利を主張するために会社を辞める必要はありませんが、在籍中に請求する場合は組合に相談するなど、一人ではなく複数で訴える手段を整えておくことをお勧めします。

残業代の請求期限は2年(時効)

残業代の請求期限は2年で時効となり、請求する権利は消滅します。従って2年より前に行っていたサービス残業分は請求できません。未払い残業代とともに請求できる付加金や遅延損害金も同じで、時効は2年です。

労働時間を立証する証拠になるもの

残業代請求では労働時間を立証する証拠が必要です。裁判になったとき、証拠がなければ請求は認めてもらえません。自分の手元にコピーなどがあることが最低条件です。

タイムカードやシフト表、営業日報や手帳、交通ICカード(定期)の利用記録、パソコンのログインやログオフの記録など、必要な証拠を可能な限り集めておきましょう。

未払い残業代の計算方法

大まかな残業代は、「1時間当たりの賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間」で算出できます。休日や深夜は割増率が異なりますので、休日・深夜のサービス残業が多いようであれば、割増率をそれぞれ変更して計算すると大体の金額が把握できます。

サービス残業代と、それに付随して請求できる付加金、遅延損害金も、請求できる期限は2年と定められています

12.企業発展のメリットにならないサービス残業をなくすために

サービス残業の問題は、複数の問題が絡み合っていることも多いため、企業の上層部だけでなく、従業員一人ひとりがサービス残業を意識できるように社内環境を改善していく必要があります。

使用者側だけでなく労働者側も、残業やその他働く上で守らなければならないルールや必要な知識を正しく理解しましょう。

人事によるサービス残業解消の事例

サービス残業解消に向けた事例は、

  • 人事部による抜き打ちの残業時間確認
  • 経営陣による社内報での呼びかけ
  • システムの改善や構築(一定の投資を必要とする可能性、正確な労働時間の記録と残業代の計算が実現し、サービス残業が生まれにくくなる

サービス残業をなくすには、使用者と労働者双方の意識を変えるほか、正しい知識を得る、きちんと理解するなどが欠かせません。また、サービス残業の発生しにくい環境づくりに取り組むことも大切です