請負契約とは?【わかりやすく解説】(準)委任契約との違い

業務を外部に委託する際には、業務内容に応じて、「請負契約」と「委任契約」のどちらかを結ぶ必要があります。よく似ている二つの契約であるものの、これらの違いを理解して適切な契約形態を選択することが重要です。

この記事では、請負契約と委任契約・準委任契約との違い、請負契約時の記載事項や締結の注意点を解説します。

1.請負契約とは?

請負契約は、請負人が特定の仕事を完成させることを約束し、注文者がその成果に対して報酬を支払う契約のこと。建設工事やコンテンツ制作のような有形的なものと、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものがあります。

目的は、仕事の完成で、業務の遂行自体が目的の委任契約や準委任契約とは異なります。業務委託契約は、内容によっては請負契約に相当する場合もあるのです。

また、請負契約は注文者と請負人双方にメリットとデメリットがあり、契約書には完成すべき仕事の内容や取引の詳細を適切に反映させる必要があります。

建設工事請負契約書の場合、建設業法にもとづく規定事項が必要です。偽装請負にならないよう注意が必要で、紙で締結する場合は収入印紙の貼付が必要になります。

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2.請負契約書とは?

請負契約書とは、請負契約の内容を文書化したもの。注文者と請負人の間で交わされ、仕事の内容、工期、納品・検収の方法、報酬、請負人の禁止事項、知的財産権の帰属、再委託の条件など、契約にかかわる重要な事項が明記されるのです。

請負契約書は、双方の権利と義務を明確にし、トラブルを防ぐために重要な役割を果たします。とくに、成果物の仕様や納期、報酬の支払い条件などは詳細に記載することが望ましいです。

必要な収入印紙の金額

請負についての契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」に該当し、課税の対象になるため、契約の金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。印紙税法に基づく、契約金額に応じた印紙税額は以下のとおりです。

  • 1万円未満:非課税
  • 100万円以下:200円
  • 100万円を超え200万円以下:400円
  • 200万円を超え300万円以下:1千円
  • 300万円を超え500万円以下:2千円
  • 500万円を超え1千万円以下:1万円
  • 1千万円を超え5千万円以下:2万円
  • 5千万円を超え1億円以下:6万円
  • 1億円を超え5億円以下:10万円
  • 5億円を超え10億円以下:20万円
  • 10億円を超え50億円以下:40万円
  • 50億円を超えるもの:60万円
  • 契約金額の記載のないもの:200円

参照元:国税庁「請負に関する契約書」

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3.請負契約と業務委託契約の違い

業務委託とは、民法で規定されている「請負契約」「委任契約」「準委任契約」を総称する言葉です。請負契約は、特定の仕事の完成を目的とし、その成果に対して報酬が支払われます。

対して業務委託契約は、仕事の完成を目的とする場合と、業務の遂行自体を目的にする場合があり、成果物の有無に関わらず業務の実施に対して報酬が支払われるのです。

法律上では、仕事の完成を目的とする業務委託契約は請負契約に当たり、業務の遂行そのものを目的とする業務委託契約は、委任契約または準委任契約に当たります。

請負契約では注文者が仕事の進め方について具体的な指示を出せず、成果物の完成が評価の基準となります。一方業務委託契約では、業務の遂行過程においても一定の指示や管理が行われる場合もあるのです。

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4.請負契約と委任契約、準委任契約との違い

請負契約、委任契約、準委任契約は、それぞれ異なる特徴を持つ契約形態です。それぞれの契約の違いを見ていきましょう。

委任契約との違い

委任契約は、法律行為をともなう事務処理を委託するときに使われる契約形態です。委任契約は、一方の当事者が法律行為を行うことを他方に委託し、その業務の遂行に対して報酬を支払う契約です。この契約では、成果物の完成ではなく、業務の遂行そのものが契約の目的です。

たとえば、弁護士に訴訟代理を依頼する場合がこれに該当します。請負契約と異なり、委任契約では成果物の提供を約束するものではなく、「勝訴」「敗訴」の結果に関わらず、法律行為そのものに報酬が発生します。

準委任契約との違い

準委任契約は、法律行為以外の事務を委託する契約です。この契約形態では、委任契約と同様に、業務の遂行が契約の主な目的ですが、法律行為には該当しない事務が対象となります。

たとえば、システムの保守や運営、コンサルティングサービス、研修、DM発送などが準委任契約の範疇に入ります。請負契約とは異なり、準委任契約では特定の成果物の完成を約束するのではなく、業務の遂行を約束します。

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5.請負契約のメリット

請負契約は、委託側と受託側の双方に下記のようなメリットを提供します。

委託側のメリット

委託側にとっての請負契約のメリットは、以下の3点です。

  1. 専門性の活用:外部の専門家に仕事を委託することで、高度な専門性や技術を活用できる
  2. コスト管理:必要な時にのみ業務を委託できるため、人件費や運営コストの削減が可能
  3. リスクの軽減:成果物の品質や納期に関するリスクを請負人に委ねられる

受託側のメリット

受託側にとっての請負契約のメリットは以下のとおりです。

  1. 自由度の高い業務遂行:仕事の進め方や時間配分を自由に決められる
  2. 報酬の機会:効率的な作業により、高い報酬を得る機会がある
  3. 多様なプロジェクトへの参加:さまざまな企業やプロジェクトに参加することで、経験とスキルを広げられる

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6.請負契約のデメリット

請負契約にはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。

委託側のデメリット

  1. 品質管理の難しさ:請負人の作業過程に直接介入できないため、品質管理が難しい場合がある
  2. ノウハウの蓄積不足:外部に業務を委託することで、社内でのノウハウ蓄積が進まない可能性がある
  3. コミュニケーションの課題:請負人との間でのコミュニケーション不足による誤解やトラブルが発生するリスクがある

受託側のデメリット

  1. 不安定な収入:プロジェクトベースの仕事は収入が不安定になることもある
  2. 高い責任:成果物の品質や納期に対する責任が大きく、プレッシャーが伴うことがある
  3. リソースの管理:複数のプロジェクトを同時に管理する場合、リソースの配分や時間管理が難しくなることがある

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7.請負契約で明確にすべき内容

請負契約を締結する際には、以下の点を明確にすることが重要です。必要な要素を詳細に定めることで、契約の透明性が高まり、双方の誤解を防げます。

成果物の検収基準

成果物の品質を保証するために、検収基準を明確に定める必要があります。たとえば、下記のようなものです。

  • 成果物が備えるべき仕様、数量や種類
  • 使用する原材料の種類、品番
  • 成果物の制作(製造)の大まかな工程
  • 検収の期間

ソフトウェアの開発では、完成物を納品してから2週間稼働させて問題がなければ検収、というような条件を設ける場合もあります。検収基準を明確にすると、成果物の品質が契約の要求を満たしているかを確実に評価できるでしょう。

納期(工期)

プロジェクトの納期または工期は、契約の重要な部分。この期限は、プロジェクトが完了すべき日付を明確に示し、請負人がこの期限を遵守することが原則です。しかし、納期の設定には、プロジェクトの規模や複雑さを考慮する必要があります。

とくに建設工事では、材料の調達や天候などによって作業に遅れが生じる場合も考えられます。注文者と請負人の間で納期に関するルールを明確にし、工期を延ばす場合の費用負担などについても決めておきましょう。

納品の方法

完成物の性質によって最適な納品方法は異なります。完成物を郵送で納品するのか、電子媒体によってデータで納品するのかなど最適な納品方法を明記しておきましょう。データで納める場合、詳細に形式を指定すると、不備が減ります。

報酬と支払いタイミング

請負報酬の金額、支払いの方法、タイミングを明確にすると、金銭的な誤解を防ぎ、双方の信頼関係を築けます。「総額〇〇万円(税込み)とする」「1個当たり〇〇万円(税込み)とする」などのように、請負報酬の金額、計算方法を明記するのです。

いつ振り込むのか、手数料はどちらが負担するかなど、報酬の支払い方法とタイミングも記載しておきましょう。

原材料の負担

プロジェクトに必要な原材料の負担に関する規定を設けるのも重要です。これには、材料の調達、費用負担、品質基準などが含まれます。原材料の負担を明確にすると、プロジェクトのコスト管理と品質管理が容易になるのです。

とくに建設工事の請負では、原料費が高騰し請負代金の変更が必要なケースもあるでしょう。請負者が原材料を負担する契約である場合は、原料価格上昇に伴う負担金額の変更についてもルールを明記しておきます。

成果物の権利

成果物に関連する知的財産権の所在を明確にすることは、請負契約において非常に重要です。 成果物の知的財産権は注文者に帰属させるケースが一般的であるものの、請負人が権利の一部を留保する場合もあります。

これにより、成果物の使用、配布、改変に関する権利が誰に帰属するかを明確にするのです。

なお、著作権の一種である翻訳権・翻案権(著作権法27条)および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(著作権法28条)を請負人から注文者に移転する場合は、その旨を請負契約に記載する必要があります。

動画・映画化・音楽・文章など、コンテンツの制作物を委託する際は、請負契約時の成果物の権利の所在に注意しましょう。

参考:著作権法

請負人の禁止事項

請負人に対する禁止事項を設定して、プロジェクトの品質と安全性を保証するものです。 これには「特定の作業方法の禁止」「機密情報の取り扱い」「第三者への情報漏洩の禁止 」などが含まれます。

再委託(下請)の可否

請負契約で禁止しなければ、請負契約を締結した受注者が別の業者に再委託しても問題ありません。

しかし、秘密保持の観点や成果物の完成に関する責任の所在が不明確になるなどの観点から下請を禁止したい場合は、再委託に関する取り扱いを契約書に明記しておきましょう。再委託が許可される場合、その条件や範囲を明確にする必要があります。

約不適合責任

成果物に欠陥があった場合の請負人の責任を定めるもの。この条項により、契約不適合が起きた場合に「業務の追完」「損害賠償」「契約解除」などを請求できます。契約書では、欠陥が発見された場合の修正、交換、返金などの対応を明確に規定することが必要です。

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8.請負契約解除のルール

請負契約の解除には、特定のルールが必要です。 契約解除の条件、解除の通知方法、解除に伴う費用負担などを明確に定める必要があります。

たとえば「契約違反の発生」「不可抗力によるプロジェクトの中断」など、解除が可能な具体的な状況を規定します。 また解除を行う際の通知期限や方法、解除によって発生する費用の負担についても、契約書に記載することが重要です。

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9.請負契約締結の注意点

請負契約を締結する際、いくつかの注意点があります。以下の点を適切に理解し、契約時に確認することで、将来的なトラブルを避けられるでしょう。

偽装請負に注意する

偽装請負とは、実際には労働者派遣に該当するにもかかわらず、請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約として装う行為のこと。

請負といいながら、業務の細かい指示を発注者が労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりするのは偽装請負の代表的なパターンといえるでしょう。

このような状況は、労働者の雇用や安全衛生面など基本的な労働条件が十分に確保されない可能性があり、違法です。

契約書の内容は実際の業務内容と一致している必要があり、請負人の業務遂行方法、作業場所、作業時間などについて注文者が過度に指示や管理を行わないよう注意します。偽装請負にならないよう報酬を定める際は仕事の完成にかかった時間をベースとしないことがポイントです。

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紙での締結は収入印紙を貼付する

紙の契約書を使用する場合、日本の法律では印紙税が課されるため、適切な金額の収入印紙を契約書に貼付する必要があります。印紙税の額は契約の金額によって異なり、正しい金額の印紙を使用しないと、のちに罰金を科される可能性もあるのです。

建設工事請負契約には定めるべき事項がある

建設工事に関する請負契約では、請負契約の一般的な条項だけでなく、以下の事項を定める必要があります(建設業法19条1項)。

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期・工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部または一部の前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期・方法
  6. 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更・請負代金の額の変更または損害の負担・それらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担・その額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令第2条に規定する価格等をいう。)の変動・変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 発注者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容・方法に関する定め
  11. 発注者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期・方法・引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期・方法
  13. 契約不適合責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

これらを契約書へ明確に記載すると、工事の進行に関する誤解を防ぎ、法的な問題を避けられます。

安全配慮義務を明確にする

安全配慮義務とは、使用者(委託会社)が労働者(請負会社)の心身の健康と安全を守るために配慮すべき義務のこと。

「労働契約法」第5条では、使用者は労働契約にもとづき労働者に賃金支払義務を負うほか、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定しています。

たとえば、建設工事や製造業務など、特に危険を伴う作業においては、安全管理の基準や手順、緊急時の対応プロトコルなどを詳細に定める必要があります。

また、安全配慮義務の遵守に関する責任は、請負人だけでなく、注文者にも責任があるもの。したがって契約書には双方の安全に関する責任と義務を明記し、適切な安全管理が行われることを保証することが重要です。

違約金や損害賠償を明確にする

契約違反が発生した場合の違約金や損害賠償に関する規定を契約書に設けることは、双方の保護にとって重要です。

契約の違反に対する具体的なペナルティ、損害賠償の計算方法、支払い条件などを明確に定めることで、契約の遵守を促進し、万が一のトラブルが発生した際の解決を容易にします。

違約金や損害賠償の条件は、公平かつ実行可能であることが望ましく、双方の合意のもとで設定されるべきです。