定年後再雇用とは?【給与・ボーナスはどうなる?】何歳まで?

定年後再雇用とは、定年後に新たに雇用契約を結ぶ制度です。ここでは、定年後再雇用についていくつかのポイントから解説します。

1.定年後再雇用とは?

定年後再雇用とは、高齢者雇用安定法による雇用継続制度のこと。従業員が希望したとき、定年退職後に新たな雇用契約を締結するのです。ここでは下記から解説します。

  1. 定年後再雇用制度導入の背景
  2. 再就職との違い
  3. 継続雇用との違い

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2.定年後再雇用制度導入の背景

定年後再雇用制度導入の背景にあるのは、「急激な少子高齢化」「労働力不足」「定年退職年齢と年金受給開始年齢の時差」。「超高齢化による労働力不足に悩む企業」「年金受給開始年齢65歳まで収入を得たい高齢者」を背景に、制度が導入されました。

高年齢者雇用安定法の改正

高年齢者雇用安定法は一部が改正され、施行は令和3年4月1日となっています。改正の目的は、就労意欲のある70歳までの人材が就業できる機会の確保です。

企業に対し、「70歳まで定年引き上げ」「定年制の廃止」「70歳までの継続雇用制度の導入」など5つからいずれか講じる努力義務を課しました。

高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法の正式名称は、「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」。1971年、45歳以上の中高年齢者の雇用安定などを目的に「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」が制定されました。

その後、「1986年に60歳までの定年延長」「1990年に65歳までの再雇用の努力義務付け」などの改正を経て現在に至ります。そして1986年、現在の名称に改められました。

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3.定年後再雇用制度と「再就職」との違い

再就職とは、定年退職後に従業員自らで仕事を探して就職すること。定年退職後、

  • ハローワーク
  • シルバー人材センター
  • 転職サイト

などを活用して就職活動を進めます。

定年後再就職との違いは、

  • 自ら仕事を選べる
  • 65歳以上も雇用を継続できる可能性がある

点です。

シニア再就職を取り巻く厳しい現状

シニア再就職の状況を見ると、厳しくなっているのが分かります。ハローワークにある55歳以上の就職支援では、警備や清掃、ケアスタッフなどが主な募集職種となっているのです。

シニアの再就職では職種が限定される可能性も高いため、

  • 定年前から再就職のための人脈作りをする
  • 職業技術を研磨する

といった準備が欠かせません。

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4.定年後再雇用制度と「継続雇用」との違い

継続雇用とは、定年後に継続して従業員を雇用することで、2種類あります。

  • 勤務延長制度:定年を超えても引き続き雇用が継続する
  • 定年後再雇用制度:退職金制度がある場合、定年時に退職金が支給される

勤務延長制度

勤務延長制度とは、「退職しない」「雇用形態を継続して雇用を延長する」制度のこと。特徴は「業務内容や役職、賃金などは大きく変わらない」「雇用期間を延長する」などです。

退職金が発生する場合、「定年時に支給する」「延長した雇用期間が終了した退職時に支給する」などあらかじめ規定しておきます。

定年後再雇用とは、高齢者雇用安定法による雇用継続制度です。類似した言葉に「再就職」「継続雇用」などがあります

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5.定年後再雇用の働き方の詳細

定年後再雇用では、どのような働き方になるのでしょう。ここでは下記3つについて、詳細を解説します。

  1. 雇用形態
  2. 仕事内容
  3. 給与の相場(賃金水準)

①雇用形態

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査(2019年)」によると(複数回答)、下記のようになっています。

  • 正社員として雇用している企業が41.6%
  • 嘱託、契約社員としての雇用が57.9%
  • パート、アルバイトが25.1%

つまり60代前半の継続雇用者は多くが「嘱託社員」「契約社員」「パート」「アルバイト」になっているのです。

②仕事内容

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査(2019年)」によると、下記のような結果が見られました。

  • 「定年前と同じ」が44.2%
  • 「定年前と同じで責任が軽くなる」が38.4%
  • 「定年前と同じだが責任が重くなる」が0.4%

定年前と同じ仕事をしている企業・定年前と同じ仕事で、責任の重さが軽くなる企業ともに約4割となっているのです。

③給与の相場(賃金水準)

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、定年時の給与相場を100とした場合、

  • 全体では平均的水準の人で79
  • 最も低い水準の人は71

だと分かりました。「定年後再雇用の給与相場」「企業規模」を比較した場合、企業規模が大きいほど相場水準が下がる傾向にあるのです。

定年後再雇用では、「雇用形態」「仕事内容」「給与相場」といった点で、定年前と異なる条件になるケースがあります

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6.定年後再雇用における同一労働同一賃金

定年後再雇用において、同一労働同一賃金が適用されるかどうか、確認も重要です。ここでは、下記3つから解説しましょう。

  1. 同一労働同一賃金とは?
  2. 定年後再雇用は同一労働同一賃金の対象になる
  3. 注意点

①同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金とは、「正規雇用」「非正規雇用」の不合理な待遇差を解消する取り組みのこと。雇用形態を問わず、「従業員が納得できる処遇に」「従業員が多様な働き方を自由に選択」するために設けられました。

具体的には、同一労働に対する賃金は、雇用形態に関わらず同一であるべきというもの。賃金以外、福利厚生や能力開発なども含めた取り組みが必要です。

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②定年後再雇用は同一労働同一賃金の対象になる

定年後再雇用にはパートタイム・有期雇用労働法が適用され、定年後再雇用のほとんどが同一労働同一賃金の対象になります。

「退職金の支給」「年金の受給」「加齢による体力の低下」などによる待遇差の不合理がある場合、「そのほかの事情」として労働契約に記載されるため、定年再雇用をほか非正規雇用と同等には考えられません。

③注意点

注意点は、「定年再雇用で待遇を引き下げる場合、労使合意が必要」「定年前と同じ業務の場合、賃金を大幅に減額するなどの待遇差は不合理と認められる」など。

定年後再雇用で待遇を引き下げると検討する場合、労使双方の納得を得てから、雇用契約の締結が必要になります。

定年後再雇用も同一労働同一賃金の対象です。待遇を引き下げる場合、労使の合意が必要となります

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7.定年後再雇用のメリット

定年後再雇用におけるメリットについて、企業側と従業員側、2つから解説しましょう。

企業のメリット

人手不足が解消できる

少子高齢化による労働人口の減少は、社会問題です。企業は定年後の高年齢者を体力面などに配慮しながら定年後再雇用すると、仕事や職場環境に慣れた人材を安定して確保できます。定年後再雇用は、採用難や人手不足の解消策として有効なのです。

顧客との関係が維持できる

定年後再雇用を活用すれば、定年前の顧客をそのまま担当できます。「担当変更の必要がない」「顧客との信頼関係を維持できる」などから、担当変更に伴う顧客管理リスクを軽減・回避できるのです。

採用コスト・育成コストを削減できる

採用や育成にはコストがかかるもの。定年後再雇用を活用すれば、「新たな採用コストの削減」「人材育成コストを削減」「新規採用と比較して離職のリスクを削減」といったメリットを企業にもたらします。

助成金や給付金を得られる

ここでは、定年後再雇用に関する助成金・給付金「65歳超雇用推進助成金」「高年齢雇用継続給付金」を解説します。

65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金とは、「65歳以上への定年引き上げ」「高年齢者の雇用管理制度の整備」「有期契約労働の無期転換」などを行う企業に支給される助成金です。

「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の3コースがあり、最大で160万円が支給されます。

高年齢雇用継続給付金

高年齢雇用継続給付金とは、「60歳以上65歳未満の従業員が対象」「60歳時点と比較して60歳以降の賃金が75%未満に低下した場合に支給」「最大で賃金の15%分が支給される」といった給付金です。

高年齢雇用継続給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」2つがあります。

従業員のメリット

年金が支給されるまで収入を得られる

多くの企業は、定年退職の年齢を60歳に設定しています。しかし年金の支給開始年齢は65歳。年金支給開始までの期間、定年後再雇用で収入が得られれば生活も安定しやすくなるため、働く側にとって大きなメリットです。

これまでの仕事を継続できる

新しい職場で仕事を始めれば、仕事内容や人間関係、職場環境などすべてを新たに学び直さなければなりません。定年後再雇用なら、従来の仕事や人間関係を引き継げるため、働く側にとって負担を少なくできます。

定年後再雇用には、企業側と従業員側、双方にメリットがあります。定年後再雇用を適切に運用すれば、メリットを享受できるでしょう

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8.定年後再雇用のデメリット

トラブルなく定年後再雇用を活用するためには、デメリットへの理解も不可欠です。ここでは、

  • 企業側のデメリット
  • 従業員側のデメリット

それぞれについて解説します。

企業のデメリット

世代交代が遅れる

定年年齢を過ぎた高齢者が再雇用されると、「次世代を担う若い従業員が萎縮する」「イノベーションや改革意識が誕生しにくい」といった弊害が起きるのです。また経験豊富な高齢者に頼ると、若い世代の自立、すなわち世代交代が遅れる可能性も否定できません。

正社員の希望者は必ず再雇用しなくてはならない

正社員から再雇用の希望がある場合、65歳まで必ず雇用すると義務付けられています。そのため再雇用を躊躇する人材でも、企業は本人の希望にもとづいて再雇用しなければならないリスクが発生するのです。

従業員のデメリット

65歳以降は自分で職探ししなくてはならない

再雇用され66歳以降も引き続き継続して就業できる制度を持つ企業は、全体の2~3割程度しかないとされています。65歳以降も働き続けたい場合、再雇用を利用しても再度65歳で就職活動をしなければならなくなるのです。

年金が減額される場合もある

年金制度には、就労で得た収入によって年金支給額を調整する在職老齢年金制度があります。60~64歳で特別支給の老齢厚生年金受給世代は、再雇用で逆に年金額が減額される可能性も高いのです。再雇用契約を結ぶ際、収入や年金額を確認しましょう。

定年後再雇用には、企業側と従業員側、双方に多くのメリットをもたらします。トラブルなく定年後再雇用を活用するためにもデメリットについて対策しましょう

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9.定年後再雇用のよくある疑問

最後に、定年後再雇用に関するよくある疑問について7つ解説します。

  1. どのようなプロセスが必要か
  2. 社会保険と労災保険の取り扱いはどうなる
  3. 有給休暇はどうなる
  4. ボーナスは出るのか
  5. 再雇用者の退職金はどうなる
  6. 早期退職者は対象となるのか
  7. アルムナイ制度とは何か

①どのようなプロセスが必要か

「定年後再雇用にはどのようなプロセスが必要か」という疑問は、定年後再雇用するまでのステップを知ると解決します。

定年後再雇用における主なステップは、「再雇用対象者へ通達」「対象者の継続雇用の意思確認」「面談」「雇用条件提示」「再雇用決定」「手続き」。ひとつずつステップを踏んで、円滑な定年後再雇用を進めるのです。

②社会保険と労災保険の取り扱いはどうなる

「社会保険と労災保険の取り扱いはどうなる?」といった疑問は、定年後再雇用後の手続きへの理解で解決します。社会保険では、「定年退職による資格喪失届」「再雇用による資格取得届」両方を同時に提出するのです。

労災保険と雇用保険に関しては、定年後再雇用後も特段必要な手続きをせずに引き継げます。

③有給休暇はどうなる

「有給休暇はどうなる?」といった疑問は、雇用関係の継続があるか否かを考えると分かるのです。

定年後再雇用では、「定年退職日と再雇用日の間に相当期間が存在する」「客観的に労働関係が切れていると認められる」場合以外、雇用関係が継続していると見なされます。よって定年前からの勤続年数を通算した日数分の有給休暇が、付与されるのです。

④ボーナスは出るのか

「ボーナスは出るのか?」といった疑問には、ボーナスの特性に対する理解が必要です。ボーナスの多くは、正規雇用の従業員への福利厚生のひとつとして支給されています。

そのため、「ボーナス制度がない会社では支給されない」「ボーナス制度がある会社でも定年後再雇用には支給されないケースが多い」などがあるのです。

⑤再雇用者の退職金はどうなる

「再雇用者の退職金はどうなる?」といった疑問には、再雇用時の一般的な退職金の取扱いを知っておくと解決します。

再雇用の場合、定年退職時に一旦雇用契約が切れるのです。そのため再雇用者の退職金は、定年退職時に支払うのが一般的です。再雇用契約期間終了時に支払う場合、退職金の請求権に時効がある関係上、労使で支払い時期の認識を一致させておきます。

⑥早期退職者は対象となるのか

「早期退職者は対象となるのか?」といった疑問には、高齢者雇用安定法の理解も必要です。高齢者雇用安定法により、定年年齢は60歳を下回れません。

定年後再雇用は、定年を迎えた従業員が定年後に再度雇用される制度であるため、50代などで早期退職した人に定年後再雇用は適用されないのです。

⑦アルムナイ制度とは何か

アルムナイ制度とは、「キャリアの途中で転職するために退職した従業員」「復職を前提とせず企業を離れた従業員」を再雇用する制度のことで、出戻り自由制度ともいわれています。

「従業員の在籍期間」「退社後に積む経験や知見」すべてを経営資源として活用できるでしょう。

定年後再雇用の疑問を解決しながら上手に制度を活用すれば、企業の抱えるさまざまな問題を解決できます