SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは?

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは、利益と持続性の両立を目指すことです。SXの定義や背景、DXとの違いや課題、事例などについて解説します。

1.SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは?

SX(サステナビリティトランスフォーメーション:以下SX)とは、利益を確保しながら持続性のある経営を目指すこと。英語では「Sustainability Transformation」と表記され、頭文字からSX(Xはtrans-の略)とも呼ばれているのです。

ビジネス環境が不安定な昨今、企業は短期的な利益だけでなく中長期的な成長も求められます。企業が持続的に成長性するために不可欠だと考えられているのが、ESG(環境、社会、企業統治)に配慮した経営なのです。

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2.SXが注目される理由

今後も企業が生き残っていくには、社会情勢の変化に対応しつつ、中長期的な経営戦略を実施していく必要があります。ここではSXが注目され始めた理由を説明しましょう。

  1. SDGsの実現
  2. ESG投資の拡大
  3. 社会情勢の変化

①SDGsの実現

SDGsを実現する手段として、SXが注目されました。

SDGsとは、すべての人が安全かつ安心して暮らせる持続可能な世界を実現するための目標のことで、「Sustainable Development Goals」の略です。テーマは環境や労働、教育や資源など。SXでは環境問題や社会問題に取り組むので、SDGsの実現にもつながります。

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②ESG投資の拡大

世界の投資市場にて、財務情報だけでなく環境、社会、企業統治を考慮する「ESG投資」が拡大し、SXが注目されるようになりました。企業のSX戦略から長期的な成長性を測れるからです。

企業が成長を続けるには、投資を受け資金調達をしなければなりません。SXは投資家へのアピールになり、安定的な資金調達やそれによる市場優位性の向上につながります。

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③社会情勢の変化

急激な社会情勢の変化が日常となった現在、SXは対応力を得る手段としても注目されています。

IT技術の進化や市場のグローバル化、疫病の流行など大きな変化が相次ぐなか、こうした変化をうまく乗り越えるためには柔軟かつ強靭な対応力をつけなければなりません。SX戦略の実現に向けて事業や体制を整えると、変化に強い組織を構築できるのです。

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3.SXとDXの違い

SXとDXは似た言葉に見えるものの、そもそも目的が異なります。ここではDXの定義とSXとの違いを説明しましょう。

DXとは?

データやIT技術を活用して業務や組織、プロセスや企業文化、風土などを変革すること。また変革によって他社よりも優位な状況を目指します。2004年、スウェーデンの大学教授が考え出し、2018年12月に経済産業省が提唱しました。

IT化と間違えやすい言葉であるものの、IT化はDXを実現するための一手段に過ぎません。DXはIT化による変革と、それによる市場優位性や利益を目指すものです。

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目的の違い

SXとDXの目的は下記のとおりです。

  • SX:環境や社会、企業統治に配慮し、企業が中長期的に成長し続けること。主に中長期的な視点で施策を講じる
  • DX:デジタル技術を活用し、自社のビジネスや人々の生活を変えるような改革をもたらし、市場優位性を上げること。主に即効性の高い施策を講じる

ただしSX戦略では、DXによるデジタル技術の活用も取り入れて考える必要があります。

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4.SXに取り組む必要性

SX戦略で環境問題や社会問題に取り組むと、コーポレートガバナンスを維持向上できます。そのため積極的にSXに取り組む企業は、投資家からの評価や社会からの信頼を獲得しやすくなるのです。ここでは企業がSXに取り組む必要性を説明します。

  1. 投資家からの評価を獲得
  2. 社会からの信頼を獲得

①投資家からの評価を獲得

ESG投資が拡大している現在、SXに取り組む企業は投資家からの評価が高まります。SXは、ESGと長期的な成長性の両立を目的としているからです。

ESG投資は世界的な拡大を見せており、日本においても例外ではありません。SX戦略を進める企業は、世界の投資家から資金を調達しやすくなるのです。

②社会からの信頼を獲得

SXの「短期的な利益だけでなく中長期的な持続性を目指す」という姿勢は、企業イメージの向上につながり、社会からの信頼を獲得できるのです。

リーマンショックや新型コロナウイルスのように、突然大きなダメージを受ける出来事は、今後も起こりえます。このときSXに向けて情勢の変化に対応できる組織を構築できていれば、倒産を避けられるでしょう。このような理由で、社会からの信頼が高まるのです。

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5.SXで重要な2つの観点

2020年8月、経済産業省はSXで重要な観点として、次の2つを挙げました。ここではそれぞれについて、説明します。

  1. 企業の持続性
  2. 社会の持続性

①企業の持続性

企業が利益を得る力の持続性のこと。企業の持続性を獲得するためには、以下のような取り組みが必要だと経済産業省が提唱しました。

  • 強みやビジネスモデルの中長期的な向上
  • イノベーションを起こす下地作り
  • 戦略的な事業の組み替え

②社会の持続性

経済産業省は、持続可能な社会の未来像を実現すべく、SX戦略への取り組みを提唱。具体的にはあるべき社会の未来像から逆算し、現在自社における中長期的なリスクとチャンスを見つけて、それを経営に生かすのです。

感染症や戦争、グローバル化の影響など、企業を取り巻く状況は今後の予測ができません。社会的な出来事が生じたときに、いち早くニーズを察知し、リスクを減らせる組織を構築すると、長期的に事業を継続していけるようになります。

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6.SX実現の3つの課題

世界はもちろん、日本でもSXに取り組む企業が増えています。その分SXに関する課題は増えていくと予想されるでしょう。ここではSX実現の3つの課題を説明します。

  1. 投資家からの理解と評価
  2. 積極的な投資家の不足
  3. 本業とSX実現の両立

①投資家からの理解と評価

SXの中長期的な取り組みは、投資家からの理解と評価を得にくい側面があります。

例として、中長期的な成長を目指し、新規事業を始める場合を考えてみましょう。本業から離れた新規事業は、そのぶん試行錯誤が必要であり、実績を上げるまでに時間がかかります。

しかし実績のない新規事業に対して、投資家はなかなか積極的な評価を下せません。企業は投資家に新規事業の背景や将来性、現在の取り組み、企業全体としての計画などを伝え、理解を得る必要があります。

②積極的な投資家の不足

SXの実現には、それを評価してくれる投資家が欠かせません。しかしそうした積極的な投資家は、まだそれほど多くないといわれています。

近年、投資市場で広がりを見せているのが、指標にもとづいて機械的に投資するパッシブ投資。パッシブ投資は戦略やそれに沿った投資先の設定が不要なため、販売手数料や信託報酬などのコストを抑え、市場に連動した無理のない利益を目指せます。

しかしこうしたパッシブ投資の特徴から、短期的な成果の見えにくいSXはなかなか評価されません。SXを推し進めるためには、社会全体で積極的な投資家を育成する必要があります。

③本業とSX実現の両立

SXは中長期的な成長を目的としており、実現には時間や人材などのコストがかかります。利益の中核をなす本業との両立が難しく、SXをうまく推進できない企業も少なくありません。

そこで政府は現在、Society 5.0(AIやIoT、ビッグデータなどのITイノベーションで、経済発展と社会的課題の解決を計る取り組み)を推進しています。

Society 5.0が進めば、IT技術を生かして仕事の効率や生活の質が高まり、少子高齢化や地方の過疎化、貧富の格差といった社会問題の解決も期待できるのです。

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7.SXに必要なダイナミックケイパビリティとは?

ダイナミックケイパビリティとは、そのときどきの状況に応じて、企業を臨機応変に変化させる力のこと。SXの実現には、組織におけるダイナミックケイパビリティの強化が欠かせません。ダイナミックケイパビリティは、以下の3つの能力に大別できます。

  1. 感知力(Sensing)
  2. 捕捉力(Seizing)
  3. 変容力(Transforming)

それぞれについて見ていきましょう。

①感知力(Sensing)

データを集めて正確に分析し、脅威や危険を察知する能力のこと。

社会情勢や顧客ニーズの変化、競合他社の動向などを感知できれば、対応した戦略を立てて今後に備えられます。たとえば新型コロナウイルスが流行り始めた時点で、すぐにテイクアウト販売に力を入れた飲食店は、感知力が高いといえるでしょう。

②捕捉力(Seizing)

今持っている資産や知識、技術を振りわけ直す能力のこと。

今持っている力をうまく活用できれば、感知力で捉えた変化をチャンスに変え、競争力を強化できます。例として挙げられるのは、本業の技術を生かしたほか分野への事業展開です。

③変容力(Transforming)

企業内外の資源や組織を刷新する能力のこと。

変化に応じて臨機応変な刷新ができれば、変化に強い持続性のある企業といえます。例として挙げられるのは、自社の強みを生かした新規事業をおこす際、組織を改編して他社と業務提携するものです。

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8.SXの企業事例

これからSXに取り組むなら、国内外の取り組み事例を見ておくとよいでしょう。ここでは3社の企業事例を説明しましょう。

  1. ネスレ日本
  2. みずほグループ
  3. 日立エナジー

①ネスレ日本

キットカットやスティックコーヒーなどで有名なネスレ日本は、世界トップ企業のなかで生き残るため、売り上げと利益だけに留まらない経営を目指してSXに着手。

ゴミの削減や植物由来食品の開発、森林の保全と再生、カカオ農家の支援や若者向けのバーチャル教育など、SXに積極的に取り組んでいます。

多数の取り組みで最も注目を集めたのが、キットカット大袋を紙パッケージへ切り替えたこと。この取り組みにより、年間380万トンのプラスチックゴミ削減が見込まれています。

②みずほグループ

大手金融機関のみずほグループは全体でSXを推進しており、企業の持続性に精通した社員の育成と配置、脱炭素を目指す技術開発などに取り組んでいます。

具体的には「CO2排出量の可視化と削減」「廃棄物マネジメント」「女性活躍の促進」「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示」などです。

自社の取り組みのみならず、ほか企業のSX推進の支援も開始。2022年には「サステナビリティ経営エキスパート」として、CSR検定2級を取得した社員1,000名を顧客担当部署に配置しました。

③日立エナジー

日立エナジーは日立製作所が脱炭素を目指し、アメリカのABB社と事業融合して立ち上げました。

もともと「2050年までに脱炭素を達成する」という目標を掲げており、達成に向けて太陽光発電や風力発電に強いABB社と、2020年に事業を融合。持続可能な電力供給を提案する日立エナジーを設立したのです。

日立製作所や日立エナジーの取り組みは規模が大きく、日本のSXを推し進める存在として期待が高まっています。

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9.SXの理解に欠かせない伊藤レポート3.0とは?

伊藤レポートとは、企業の持続的成長をテーマとした、経済産業省の報告書のこと。伊藤邦雄氏がプロジェクトを牽引していたため、「伊藤レポート」という通称で呼ばれるようになりました。

2014年に初めて公表され、2017年に2.0、2022年に3.0へと更新。最新の伊藤レポート3.0は、SXの必要性や戦略について説いており、「SX版伊藤レポート」とも呼ばれています。

伊藤レポート3.0のポイント

伊藤レポート3.0では、以下5つがポイントとして挙げられています。

  1. 日本企業が長期成長を見込んだ投資に伸び悩み、国際的に持続性が重要視されつつある現状は、日本経済にとって試練でありチャンスである
  2. SXはこれから日本企業の利益の根幹となる
  3. 企業が投資家などと対話を重ね、これまでにない変革を進めることが重要である
  4. SXを実現するための取り組みとして挙げられるのは、社会の持続性を踏まえた明確な目標や長期的な戦略、具体的な数値・日程の設定や対話によるブラッシュアップなど
  5. 日本全体でSXを効果的に推進する必要がある