SDGsとは? 背景、目標、海外と日本の取り組み、企業がやるべきことについて

SDGsとは、持続可能な開発目標のことです。世界が直面する課題に取り組む国際目標で、2030年までの達成を目指しています。

1.SDGsとは?

SDGsとは、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指してさまざまな課題に取り組むもので、17のゴール・169のターゲットから構成されているのです。持続可能な開発目標を指しており、「Sustainable DevelopmentGoals」の頭文字を取っています。

SDGsが決められた背景

SDGsは2012年、リオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で議論が始まりました。背景には地球温暖化や貧富の格差、女性の地位や資源の不足や枯渇などがあります。

地球温暖化

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスにより地球温暖化が進んでいます。気温の上昇は、海水の膨張や、極地の氷が融解による海水面の上昇を招くのです。過去100年間、10~25センチメートルも海水面が上昇したとされています。

今後100年では1.4~5.8℃、平均気温が上昇すると予測され、海面上昇や生態系、食料生産等への悪影響が考えられているのです。

貧富の格差

世界の10%である最富裕層が、全世界の所得の40%近くを占めるといわれています。一方、最貧層が全世界の所得に占める割合は、わずか2~7%にすぎません。

所得格差は世界的な解決を必要とする問題で、格差拡大を食い止めなくてはなりません。必要な地域への開発援助と、外国からの直接投資がのぞまれます。

女性の地位向上

2014年現在、195カ国中143カ国の憲法において男女の平等が保障されているものの、52の国ではいまだに実現されていません。また多くの国で女性に対する差別は、根強いままです。

それは「法や政治」「ジェンダーにもとづくステレオタイプ」「社会規範や慣習」などといった点。法の下におけるジェンダー平等といっても、実際に女性が平等な機会を得られていない点が問題です。

資源問題

世界の経済活動は、自然の資源や生物を利用して成り立っている部分が多いもの。しかし水不足や資源・エネルギーの枯渇、生物種の絶滅などは、経済活動が原因となっています。

自然の資源や生物を失うと、人類にとっても持続可能な成長につながりません。そこで将来に残していくことを考えて生きなくてはならないのです。

SDGsの目標

SDGsは、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されています。

そして「持続可能な開発」「民主的なガバナンスと平和構築」「気候変動と災害に対する強靭性」という、国連開発計画(UNDP)の戦略計画の重点分野と関連しているのです。
地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。

SDGsが掲げる17のゴール

17のゴールは以下のとおりです。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任 つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

17のゴールに紐づく169のターゲット

17のゴールにはそれぞれ紐づくターゲットがあり、合計すると169になります。そのひとつ「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を挙げると、ターゲットは以下のとおりです。

  • 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する
  • 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる
  • 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる
  • 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などクリーンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する
  • 2030年までにおのおのの支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う

2030アジェンダ

2030年までの新たな持続可能な開発の指針を策定したものが、2030アジェンダです。2015年に国連サミットで採択されました。

SDGsが中核になっており、「人間、地球および繁栄のための行動計画である」とされています。2030年までに貧困をなくし、持続可能な未来をつくる必要があると示しているのです。

MDGsとの違い

SDGsの前身にあたるものに「MDGs(Millennium DevelopmentGoals:ミレニアム開発目標)」があります。2015年までに達成すべき目標とし、主に開発途上国向けに貧困をなくすための取り組みでした。

一方、SDGsは、各国政府だけでは達成できないユニバーサルな目標になっています。企業や自治体、学校や地域など団体での取り組み、またすべてのひと一人ひとりの行動が必要です。

CSRとの違い

世界的な環境で、企業に求められているものに「CSR」があります。「Corporate Social Responsibility」の略で、企業の社会的責任のことで、SDGsとは異なります。

昨今、先進諸国と開発途上国との間に格差が生じ、批判が起きています。自社の利益や業績を追求するだけでは、厳しい目を向けられるようになりました。企業が環境や人権に配慮し、倫理性を持って社会的責任を果たすという取り組みがCSRです。

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SDGsウォッシュとは

SDGsウォッシュという言葉があります。SDGsの本質を理解せず、本気で取り組んでいないにもかかわらず、あたかもSDGsに積極的に取り組んでいるよう思わせる行為のことで、広告宣伝といった場で行われています。

SDGsウォッシュと思われないためにも、SDGsをよく理解して事業戦略の中心に置くとよいでしょう。SDGs達成のために本気で取り組み、事業を通じて社会貢献していく必要があります。

SDGsとは、世界中で2030年までに達成する持続可能な開発目標のこと。企業や自治体、学校やコミュニティ、そして一人ひとりの取り組みが必要です

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2.海外におけるSDGsの達成状況と取り組み

2019年に発表された各国のSDGs達成度ランキングは下記のようになっており、上位3カ国を北欧が占めています。ヨーロッパでは特にSDGsの取り組みが進んでいるのです。各国の詳しい状況を見ていきましょう。

  1. 1位 デンマーク
  2. 2位 スウェーデン
  3. 3位 フィンランド
  4. 4位 フランス
  5. 5位 オーストリア

①デンマーク

デンマークでは、SDGsのテーマに沿って大規模なイノベーションラボが行われています。ここで生まれた製品に、再生可能なラップ「Reusable Smart Pallet Wrapping」があり、プラスチック問題の解決が期待されているのです。

コストが抑えられ、1,000回まで再利用できるとあり、広く利用されると思われます。

②スウェーデン

スウェーデンでは、ゴミを100種類に分別しているのです。細かく分別して、家庭ゴミをリサイクルしたり、発電所の燃料に変えたりしています。

「自分が環境の一部になる」「まず地上にあるエネルギーを使う」「生物の多様性を保護する」という3つのルールを国民全体が実践しており、環境に対する意識が高いです。

③フィンランド

フィンランドは自然豊かな国で、生活の中で自然と触れ合う機会が多いため、国民による環境への意識が高くなっています。そのため有名な観光地で問題になっているオーバーツーリズムにならず、経済にも良い影響をもたらす取り組みがなされているのです。
国と企業が連携し、地元の人も参加、観光地の文化や自然を守りながら発展するという持続可能なものになっています。

世界的にみた日本の達成状況

では日本はどうでしょう。2019年のSDGsの達成度ランキングで、日本は15位となりました。アジア諸国の中では最も高く、世界の中では一定の評価がされているといえます。

項目ごとに見ていくと「質の高い教育をみんなに(目標4)」「産業と技術革新の基盤をつくろう(目標9)」では高い評価を受けているのです。

一方「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」「つくる責任 つかう責任(目標12)」「気候変動に具体的な対策を(目標13)」「パートナーシップで目標を達成しよう(目標17)」では評価が低くなっています。

SDGsの達成度は北欧やヨーロッパの国々が高いです。日本は一定の評価がされているものの、まだ解決が必要な点はあります

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3.日本政府によるSDGsの取り組み

日本政府でも、「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、SDGsに係る施策の実施をすすめています。

全国務大臣を構成員として、関係行政機関が相互でしっかりと連携し、総合的かつ効果的にSDGsの推進を目指しているのです。

SDGsアクションプラン2020

「SDGsアクションプラン2020」は、2020年に政府が実施する具体的な取り組みを表しています。2030年のSDGs達成に向け、それまでの10年間を「行動の10年間」とするためのものです。また以下のような日本の取り組みを国際社会に示していく必要もあります。

  • 誰一人取り残さない社会を実現している
  • 世界の国づくりと人づくりに貢献している
  • SDGsの担い手である

ビジネスにおけるSDGs

日本の経済界でも、SDGsの実現に向けた取り組みがされているのです。経団連は、SDGsの達成に向けて「Society 5.0」というコンセプトを提案しています。革新技術を最大限活用することにより、経済発展と社会的課題の解決の両立を目指そうというものです。

将来的にSociety 5.0を日本のSDGsモデルとして、国際社会に共有していこうという展望があります。

地方創生におけるSDGs

SDGsをきっかけとして、地方創生において新たな価値を見出したり、まちづくりの原動力になったりしていくのも期待できます。

たとえば「インフラ整備をして地方創生を推進する」「防災や減災のためのまちづくり」「エネルギーの地産地消など循環型社会の構築」などです。地方では人口減少や高齢化が課題となっており、持続可能なコミュニティづくりも求められます。

女性のエンパワーメントにおけるSDGs

SDGsの国際的な評価によると、日本はジェンダーに関する項目で評価が低くなっており、早急な解決が求められているのです。「国会で女性議員の比率が低い」「男女間に賃金格差がある」など、まだ社会的な男女平等は達成できていません。

「女性の活躍情報の見える化」「ワークライフバランスの推進」「男性の家事や育児への参画促進」「政策や方針決定に女性参画拡大」といった取り組みが必要です。

SDGs未来都市

政府は、地方創生分野における日本の「SDGsモデル」の構築に向け、2020年度の「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」を選定しました。

SDGs未来都市には、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する33都市が選定されています。自治体SDGsモデル事業に選ばれたのは、先導的な取り組みをしている10事業です。

ジャパンSDGsアワード

また政府は、SDGsの達成に向けて優れた取組を行っている企業や団体等を表彰するため「ジャパンSDGsアワード」を創設しました。表彰の対象は、SDGs達成のために優れた国内外の取組を行っている、日本に拠点のある企業や団体です。

多くの企業・団体が応募したなか、各関係省庁参加のもと、SDGs推進円卓会議の構成員による選考委員会により、表彰の対象者が決定されます。

日本政府も「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、国内外でのSDGsの取り組みを推進しているのです

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4.日本企業によるSDGsの取り組み

日本企業でもSDGsの取り組みが積極的に行われています。持続可能な社会を実現するために、従業員のさまざまな視点から、納得の工夫がされているのです。全国各地で行われている取り組みを挙げて詳しく見ていきましょう。

【石川県】明和工業

石川県の明和工業では、研究機関や省庁との産官学連携での技術開発も行いながら、開発途上国の抱える問題解決につながる技術提供を行っています。

たとえば開発した「バイオマス炭化装置」では、汚泥や生ゴミを炭化物に変えられるのです。生成した炭は肥料や土壌改良材、燃料として利用できます。この技術提供により、国内外の問題解決に貢献できるのです。

【神奈川県】大川印刷

神奈川県にある大川印刷では、従業員からのボトムアップでSDGsのプロジェクトチームを立ち上げました。具体的な取り組みは、「紙やインクなど環境に配慮した印刷」「視力の弱い人でも見やすいカレンダー」「4カ国語版お薬手帳」など。

成果として持続可能な調達に関心のある企業からの取引が増え、従業員のモチベーションも高まりました。

【東京都】ワンプラネット・カフェ

ワンプラネット・カフェ(東京都)では、ザンビアで廃棄されるバナナの茎の繊維を有効活用して紙をつくって、ものづくりを通じた生態系保全に貢献しています。
背景にあるのは、貧困問題が深刻なザンビアにて、人々の教育支援・職業スキル研修を行いながら、より直接的に雇用を生み出す事業を探しているというもの。

製品である「バナナペーパー」はSDGsすべてに貢献する商品として、高校の教科書やメディアに取り上げられ注目されています。

【福岡県】モリタ企画産業

福岡県のモリタ企画産業では、自動車燃料使用量の削減を目指しました。

そして従業員一人ひとりが意識を高めて「アイドリングストップの励行」「効率の良い運行ルートの確認と実行」「車両の点検、整備の徹底」「ガソリン車2台をGPS機能を備えたハイブリッド車に変更」に取り組んだのです。

その結果、「燃料使用量が前年比で30%減」「二酸化炭素削減」「経費削減」「安全運転の徹底」など多くのプラス効果がありました。

日本企業もSDGsの取り組みを行っています。それにより従業員の意識が高まったり経費が削減したり、取引が増えたりといったメリットがもたらされているのです

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5.SDGsに向けて企業がやるべきこと

政府では、企業の経営戦略にSDGsを組み込むよう推進しており、下記について整理した「SDGs経営ガイド」を取りまとめました。

  • 企業がいかに「SDGs経営」に取り組むべきか
  • 投資家はどのような視座でそのような取組を評価するのか

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女性の活躍の推進

「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする」という政府目標があったにもかかわらず、役員や管理職における女性の割合は依然として低くなっています。

今後指導的地位の女性を増やすためには、「女性のキャリア支援」「企業における女性の活躍促進」を後押ししていくことが不可欠でしょう。

食品ロスの削減

外食産業では、多くの食品ロスが問題となっています。消費者として食品ロスを出さないためにも以下に留意しましょう。

  • 食べきれる量を注文する
  • 出来立てのおいしい状態で食べる
  • 残ったものは飲食店と相談して持ち帰る
  • 持ち帰った料理は早めに食べる
  • 飲食店としては、下記の取り組みが考えられます。
  • 材料の仕入れや保管の工夫
  • 小盛りメニューの提供
  • 食材使い切り・売り切り

フェアトレード

フェアトレードとは、途上国の生産者と先進国の消費者を結びつける公正な貿易のことで、途上国と先進国の格差拡大の反省から生まれました。

フェアトレード認証製品には、バナナやカカオ、コーヒーやお茶、綿花やサトウキビなどがあります。フェアトレード認証を得るためには、生産者とトレーダーが守るべき厳しい基準をクリアしなくてはなりません。

政府は、企業経営にSDGsを取り込み、企業価値を高めるよう推進しています。そして投資家がその点を評価するとしているのです