サンクコスト効果とは?【かんたんに】コンコルド効果、誤謬

サンクコスト効果とは、過去の回収できないコストに固執して、さらなる無駄なコストを生み出してしまう心理効果です。サンクコスト効果は日常生活だけでなく、企業活動においても生じやすいもの。とくに、企業活動においては最終的に経営難や倒産に追い込まれるほどの悪影響を及ぼす可能性があります。

今回はサンクコスト効果について、具体例やサンクコスト効果の原因、サンクコスト効果を回避するために企業が気をつけるべきポイントを詳しく解説します。

1.サンクコスト効果とは?

サンクコスト効果とは、回収できないコストに固執し、さらなる資金を投入してしまう心理効果のこと。サンクコスト効果により、合理的でない判断が生じてしまうリスクがあります。つねに合理的な意思決定をおこなうには、サンクコスト効果の仕組みを理解していることが必要です。

また、サンクコスト効果は企業活動においても発生する状態であり、合理的な判断を妨げる要因となるもの。なお、サンクコスト効果の概念は、認知バイアスに関連し、行動経済学の専門家によって提唱されました。

サンクコストとは?

回収できない過去のコストを意味する経済的な概念のこと。すでに支払われているコストであり、今後変化することはないため将来の財務分析では考慮されません。

かつ未来の決定には関係しないため、本来合理的な判断は将来の予測や目標にもとづくべきです。サンクコスト効果に陥らないためにも、サンクコストに対してあらかじめ準備し、予算を割くことで追加のコストを避けられる可能性があります。

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2.サンクコスト効果とコンコルド効果の違い

「サンクコスト効果」と「コンコルド効果」は、同じ意味を持つ言葉です。コンコルド効果の由来は、イギリス政府とフランス政府が開発した超音速ジェット機「コンコルド」にあります。

コンコルドの開発は予想の6倍を上回る多額の費用がかかったものの、実際にはさまざまな問題から採算が取れないことが判明していました。にもかかわらず、プロジェクトは続行され、最終的には巨額の損失を出したうえで全機が運行停止となりました。

コンコルドの事例は、サンクコスト効果により合理的な判断を妨げた代表的な例であることから、コンコルド効果とサンクコスト効果は同義として用いられています。

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3.サンクコストの誤謬(ごびゅう)とは?

サンクコストの誤謬(ごびゅう)とは、過去の投資にもとづいて行動を継続する誤った判断のことです。

たとえば、先月映画のチケットを購入したものの、当日に予定変更が発生したとします。別の予定と重なっていたとしても、チケット代を無駄にしたくないとの思いから映画にいくことを選択する行動は、サンクコストの誤謬(ごびゅう)といえます。

この行動は過去に支払ったチケット代を回収できるとの考えにもとづくものの、実際に回収できるという考えは誤りで、この映画を観に行くという選択肢をとってもチケット代は戻ってこないことに注意が必要です。

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4.サンクコスト効果の具体例

サンクコスト効果は企業活動のほか、日常生活でも起こり得る状態です。ここでは、身近にあるサンクコスト効果の具体例を日常生活とビジネスシーンからご紹介します。

日常生活

まずは、身近にあるサンクコスト効果の具体例をご紹介します。

恋愛

脈のない相手であるにもかかわらず、これまで尽くしてきたがゆえに諦めがつかない状況が恋愛におけるサンクコスト効果の一例です。

また、好きではないけれど付き合いが長く、費やしてきた時間や無駄になると思って別れられない、遠距離恋愛を頑張ってきた努力や費用を無駄にしたくなく、気持ちが冷めても我慢してしまうといった状況も該当します。

さらに、同棲を始めてから浮気されてしまったものの、同棲にかかった費用や引越し費用の問題で我慢せざるを得ない状況もサンクコスト効果に陥っている状態です。

イベント参加

コンサートのチケットを購入後、悪天候の影響で会場に行くことが難しくなるケースもあるでしょう。インターネット配信でコンサートを見られる場合、サンクコスト効果の影響が現れます。

本来であれば悪天候の中無理してコンサートに行くのはあらゆるリスクを伴うため、悪天候の影響を受けない自宅からインターネット配信を視聴するのが合理的な選択です。

しかし、現場に行ける価値も含まれたチケット代を無駄にしたくないとの思いは、サンクコスト効果に影響されているといえます。

私物の整理

私物を整理している際、現状使っておらず今後も使用予定がないものでも「いつか着るかもしれない」「また読み返すかもしれない」「値段が高額」などの理由から、処分をためらうことがあるでしょう。

合理的に考えれば、今使っておらず今後も使う予定のないものは、収納スペースを圧迫しているため処分すべきです。しかし、サンクコスト効果の影響を受けてしまうと「もったいない」という感情からなかなか処分できず、私物がどんどん増えてしまいます。

読書

中身を見ずに書籍を購入した結果、失敗してしまうとサンクコスト効果が働くケースがあります。読書は本来「楽しい」「ワクワクする」という体験を価値としたもの。

そのため、読んでいて「面白くない」「つまらない」本は時間と読む労力の無駄となるため、読まないまたは読みやめるのが合理的な判断でしょう。

一方、購入した費用が無駄になることを惜しみ、つまらない本でも最後まで読もうとする行動はサンクコスト効果の影響が現れている例です。読み終わっても購入代金が返ってくるわけではなく、ただつまらない時間を過ごすだけとなってしまいます。

ギャンブルやゲーム

クレーンゲームやギャンブルのように、投入したお金が景品に変わる、またはお金が増える可能性がある場合、投入金額が増えるたびに「こんなにお金をかけたから、今さらやめられない」という心理に陥るもの。

また、ギャンブルでは負けた分を取り返したという思いからさらなる投資が起こるでしょう。この心理こそ、まさにサンクコスト効果です。

お金を投じたからと確実に景品が取れる、ギャンブルに勝って投資分以上を取り返せる保証はどこにもありません。にもかかわらず、過去の投資を無駄にしないためにさらなる無駄な投資を続けてしまう状態はサンクコスト効果に該当します。

ビジネスシーンやマーケティング

ビジネスシーンやマーケティングにおいても、サンクコスト効果は身近に起こりやすいもの。ここでは、ビジネスシーンやマーケティングにおいてサンクコスト効果が働く事例をご紹介します。

新規事業の参入

新規事業へ参入するにあたって、費やす時間や資金は決して少ないものではありません。

そのため投資分を回収しようと収益に期待して撤退判断が遅れるケースも。赤字が続く場合は早期に撤退するのが合理的な判断でしょう。しかしサンクコスト効果が妨げとなって判断が難しくなってしまうのです。

転職活動

新たな仕事に挑戦するか検討している場合、現職で必要な資格取得に費やした時間やお金、これまで培ってきたキャリアや経験にとらわれてしまいなかなか転職に踏み切れないことも多いはず。

転職に成功の保証はないため、転職が合理的な選択であるかは実際に転職しないことにはわからないものの、過去に積み上げてきたものが転職を阻んでしまうのはサンクコスト効果の影響といえます。

自己評価や将来性を考慮して転職により新たなチャンスを追求する決断をすることもときには重要です。

サブスクリプション

年間サブスクリプションは、サンクコスト効果を利用した施策といえます。その代表例が、年間契約にすることで月間契約よりも月あたりの費用を割安にするキャンペーンです。

よりお得に契約したいユーザーがこの時に年間契約を選択すれば、途中でサービスを利用しなくなった場合でも「まだ契約期間が残っているので利用し続けよう」という心理を刺激し、解約率の低下を図ります。

このような手法は、ソフトウェアやアプリケーションのマーケティングとして広く採用されているのです。

会員ランクの設定

通販サイトやポイントカードによく見られるランク制度は、顧客が購入・利用するほどに上のランクへと昇格し、ランクに応じた特典が得られる仕組みです。なかには、継続購入・利用がないことでランクダウンするケースも。

こうした環境ではランクを維持したい心理が働きやすく、購入や利用を促すことが可能です。過去のコストを無駄にしたくないとの思いが行動に影響するのは、まさにサンクコスト効果といえます。

付録付き月刊誌

複数の雑誌を購入し、ひとつの内容を完成させる形式では、途中で購入をやめてしまうと完成しないためサンクコスト効果が強く働きます。その代表的な例が、付録のパーツを毎号集めてプラモデルを完成させる方式のプラモデル誌です。

分冊出版であるため、途中で購入をやめてしまうとそれまでの購入が無駄になり、かつプラモデルも完成しないため、最後まで購入しようという意欲を引き起こします。

無料トライアル

サブスクリプションサービスによく見られる無料トライアルは、サンクコスト効果を利用した施策のひとつ。無料トライアルはその期間にサービスの利便性を感じてもらい、有料サービスへと移行を促します。

無料期間中に得た快適さや利便性を手放したくないとの思いから、有料契約に踏み切るユーザーもいるでしょう。このとき費用やメリットが不明瞭であっても、価値を感じることで継続する傾向にあります。

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5.サンクコスト効果が起こる心理な理由

サンクコスト効果は、認知的不調と一貫性の原理が重なった結果として生じる心理現象です。ここでは、サンクコスト効果が起こる主な理由をみていきます。

損失の回避

損失を避けようとする心理により、失うことによる影響が強くなります。サンクコスト効果では、無駄な投資を続けることで損失を避けようとする心理が働くのです。

無駄の回避

「無駄にしたくない」「無駄だと思われたくない」という心理は、サンクコスト効果に影響します。

たとえば、ジムに入会したものの利用しなくなった場合、支払ったお金が無駄になることや他人からの評価を気にして退会しづらくなってしまう状態は、サンクコスト効果の影響です。

非現実的な楽観主義

楽観的主義的な思考では、一時的な含み損でも将来的に収益化できると信じてしまう結果、サンクコスト化することがあります。需要の変化などによって回復しなければ損失は拡大する恐れがあるため、本来であれば早期に合理的な判断を下すことが必要です。

自己責任

自分に責任を感じている場合、サンクコスト効果に陥る可能性が高まります。というのも自分の決定で進めている物事は、他人の決定よりも中止が難しいからです。自分の責任で多くの物事を動かしているほど、責任の重さから継続してしまう傾向にあります。

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6.サンクコスト効果を避けるには?

サンクコスト効果によって合理的な判断が阻まれると、企業活動においては最終的に経営難や倒産に追い込まれる可能性もあります。サンクコスト効果を避けるために企業が気をつけるべきことをお伝えしましょう。

サンクコスト効果の自覚

サンクコスト効果に自覚的になることも重要です。過去の労力や出資にとらわれず、冷静に物事を判断するためには客観的になる必要があります。自身の判断が合理的であるかを客観的に問いかけると、長期的に見て正しい判断を下しやすくなるのです。

ゼロベース思考での検討

サンクコストはゼロと仮定して考え、継続や撤退を判断しましょう。過去のコストは取り戻せないため将来には関係ないものと認識し、今後最大の利益を出すためにはどうすべきかを考えることが重要です。

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機会費用の考慮

合理的な判断を下すためには、サンクコストではなく機会費用に注目しましょう。機会費用とは逃した機会の価値であり、埋没費用よりも重要度が高いもの。

たとえば面白くない書籍を読み続けることで逃す機会費用として、より有益な本や人と出会う・かかわる時間が挙げられます。何らかの意思決定を下す際、機会費用を基準にすることでより有益な選択ができるようになります。

第三者の意見を導入

サンクコスト効果が働くと、主観的な判断を下しやすくなります。主観的な判断はあらゆるリスクに気づけない可能性があるため信頼できる第三者やアドバイザーから意見を聞き、客観的な情報を得ることが重要です。

そのためにも、真摯に相談に乗ってくれる信頼できる相手を見つけておくことも大切です。

事業の撤退基準の設定

経営においては、新規事業投資やM&Aなどによるサンクコスト効果の呪縛に注意が必要です。投資コストや労力に固執すると本末転倒な結果となり、自社の基幹産業に悪影響を及ぼす可能性があります。

事前調査が重要なのはもちろん、M&A後のサンクスコストにも注意して、撤退ラインを明確にすることが大切です。

適切なKPIの設定

KPIは大きな目標に到達するまでの小さなゴールであり、適切な指標を組み合わせて設定する必要があります。KPI設定の際は、リードライフサイクルを活用したKPIの構造かも有効です。

各担当者のスキルに合わせて現実的なKPIを設定し、施策のパフォーマンスを把握して目標達成を追求しましょう。

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