ゼロベース思考とは?【事例やデメリットをわかりやすく】

ゼロベース思考とは、革新的なアイデアを生み出すためすべての既成概念を排除して行う思考方法のこと。ここではゼロベース思考のメリット、デメリット、身につける方法、成功事例などを解説します。

1.ゼロベース思考とは?

ゼロベース思考とは、過去の経験や価値観、社会的な規範などをすべて取り除き、ゼロの状態から始める思考方法のこと。常識や思い込みにとらわれないため、斬新で創造的なアイデアを生み出せる場合もあるのです。

なお似た語に「トレンド思考」があるものの、ゼロベース思考とはアプローチが異なるのです。

トレンド思考は既存の知識や経験を改善して、よりよいアイデアを得ようとする思考法のこと。過去の経験や知識を取り除くのではなく、改善あるいは進化させることに重点を置いています。

企業から注目される理由

多くの企業がゼロベース思考に注目し、積極的に取り入れるようになった理由のひとつが「価値観の多様化」です。社会環境が変化してさまざまな働き方やライフスタイルが容認されるようになり、人々の価値観や消費者ニーズも多様化しています。

このような状況で企業が生き残るためには、過去の知識や経験にもとづいた画一的な考えに縛られるのではなく、斬新なアイデアや他社との差別化が必要でしょう。

多様化した価値観に対応できるイノベーションやアイデアの創出を促進する手法として、ゼロベース思考が注目されています。

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2.ゼロベース思考の身近な例

ゼロベース思考を身につけて思い込みを取り払うと、新たな発想を生み出せます。

たとえば「通勤にかかる時間を減らしたい」と考えた場合、多くの人は今よりも短時間で着くルートを探すでしょう。

ゼロベース思考では「通勤そのものをなくせないか」と考えます。その結果「徒歩圏内に引っ越す」「リモートワークに切り替える」などの発想にたどりつくことがあるのです。

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3.ゼロベース思考の成功事例

ゼロベース思考を取り入れてビジネスを成功させた企業も存在します。ここでは3社の事例を解説しましょう。

  1. ユニクロ(ヒートテック)
  2. ドトールコーヒー
  3. JR湘南新宿ライン

①ユニクロ(ヒートテック)

株式会社ファーストリテイリングが展開するユニクロの大ヒット商品「ヒートテック」は、共同開発企業である東レ株式会社とのゼロベース思考によって生まれました。

東レはもともと「ものづくり」を重視した企業でした。しかし2001年、赤字に転落したことをきっかけに、視点を「消費者が求める新しいサービス」に切り替え、ユニクロとパートナーシップを構築。

ユニクロが持つ販売現場の情報をもとに、東レが顧客のニーズに合った素材を開発し、従来の「下着」のイメージを一新する機能的でオシャレな保温インナーが生み出されました。

②ドトールコーヒー

「本格コーヒーの価格は500円前後が当たり前」という業界の常識を打ち破り、150円で本格コーヒーを提供したドトールコーヒーも、ゼロベース思考の成功事例といえます。

コーヒー1杯500円という価格は消費者にとって決して安くはないため、同社は業界の相場を取り払って「消費者の負担にならない価格で提供する」というゼロベース思考で商品開発に取り組みました。

その結果「本格コーヒー1杯150円」という破格の価格が実現し、業界のビジネスモデルに革新を起こしました。

③JR湘南新宿ライン

連日多くの人々が利用するJR湘南新宿ラインは、貨物専用として使用されていた線路を旅客列車の運行に活用しています。その斬新なアイデアは、まさにゼロベース思考が生み出した成功例といえるでしょう。

もともと関東を縦断する路線には高い需要があったものの、首都圏にはすでに多くの線路が張り巡らされており、新たな路線を導入することは困難と考えられていました。

同社はゼロベース思考でこの固定概念を捨て「貨物専用路線を旅客線として活用する」という斬新な発想を生み出したのです。新路線の運行によって、同社は売上アップを実現しました。

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4.ゼロベース思考のメリット

ゼロベース思考で思い込みや固定概念を取り払うと、新たなビジネスの創出や課題の解決につながることがあります。ここではゼロベース思考のメリットを解説しましょう。

  1. 新たなアイディアの創出
  2. 顧客視点で多角的な発想
  3. 複雑化した課題を解決
  4. 生産性の向上

①新たなアイディアの創出

ゼロベース思考を取り入れると、斬新で創造的なアイデアを思いつく可能性が高まります。ゼロベース思考で過去の経験や知識、思い込みや固定概念を排除すると、新しい可能性に焦点を当てて考えられるようになるからです。

一般的な価値観や知識にとらわれていると、他社と類似したアイデアになりがちです。しかし消費者ニーズが多様化している近年、企業が成長するには、独自性のある商品やサービスによる差別化が不可欠。そこでゼロベース思考による柔軟な発想が必要なのです。

②顧客視点で多角的な発想

ゼロベース思考を取り入れると、顧客の視点での発想ができるようになります。自社の都合や状況などを取り払うと、顧客のニーズをシンプルに考えられるからです。

人々の価値観やニーズが多様化する近年において、企業は「自社が売りたいもの」に注目するのではなく、「顧客が求める商品やサービス」に焦点を当てる必要があります。そのためにゼロベース思考で顧客の視点を持つことは非常に重要なのです。

③複雑化した課題を解決

ゼロベース思考で業界の常識や既成概念など、さまざまな先入観を排除してシンプルに考えると、複雑化した課題の本質を見極めて、迅速に解決策を見出せるようになります。

消費者のニーズや働き方、業態などが多様化し、企業が抱える課題は高度化あるいは複雑化してきました。これらを解決するためには、従来の戦略や思考法ではなく、より柔軟で斬新な解決方法が必要です。ゼロベース思考を取り入れると、刷新的な解決方法が見つかる可能性も高まります。

④生産性の向上

ゼロベース思考が従業員に浸透していくと従業員の働き方が改善されて、労働生産性が向上する可能性もあります。古い価値観や固定概念、偏見を捨て去った各従業員は、既存のやり方やルールなどを見直すようになるからです。

業務がより効率的に進むようになれば、生産性もアップしやすくなります。また自発的に思考するようになった従業員は、仕事へのモチベーションが向上する可能性もあるのです。

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5.ゼロベース思考のデメリット

ゼロベース思考は欠点も存在するため、すべての課題に対して有効というわけではありません。ここではゼロベース思考のデメリットをふたつ解説します。

  1. 前提条件が必要なときは不適当
  2. ある程度の時間が必要

①前提条件が必要なときは不適当

前提条件が重要な意味を持つ場面では、適切な答えを導き出せない可能性があります。ゼロベース思考は、条件をフラットにすることで問題や課題の本質を把握し、解決策を導き出す思考法であるためです。

たとえばある商品を日本全国で販売する場合、各地域の人口や物価、年齢分布などの前提条件を無視してゼロベース思考を適用すると、現実とはかけ離れた結論が出てしまう恐れがあります。

前提条件がある課題に対してゼロベース思考で結論を導き出したときは、実施策の検討に移る前に、前提条件と結論を照らし合わせましょう。

②ある程度の時間が必要

ゼロベース思考を実践するには、自身の常識や思い込みなど、既成概念をリセットしなければなりません。そのため一定の時間が必要となるでしょう。多くの人は自分自身の思考パターンが身についており、無意識のうちに自分のフィルターをとおして思考してしまうからです。

業界や自社の常識や慣習などを疑うことから始めると、自身の思考の枠やフィルターの存在に気づきやすくなります。

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6.ゼロベース思考のやり方

ゼロベース思考の習得には継続的な訓練が効果的です。ここではゼロベース思考の実践方法を4つ解説します。

  1. クリティカルシンキングを実践
  2. 論点を意識
  3. 物事や課題の追求
  4. 環境の変化

①クリティカルシンキングを実践

クリティカルシンキングをとおして、自分自身の考えや行動に疑問を抱くようになると、過去の知識や常識などの枠組みにとらわれず、柔軟な思考が可能となります。

クリティカルシンキング(批判的思考)とは、自身の目の前の事象を疑い、考察を繰り返しながら結論を導き出す思考法のこと。物事を批判的に捉えて前提を疑い、客観的な視点から考えます。

クリティカルシンキングを進めていくと、自然にゼロベース思考へ近づいていくため、新たなアイデアや解決策にもつながるでしょう。

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②論点を意識

つねに「何が問題なのか」「何を解決したいのか」「何を考えればよいのか」などに意識を向け、考察すべき課題の論点を明確にする習慣を身につけましょう。どれだけ時間をかけて考察を繰り返しても、論点がずれている場合には本質的な問題は解決できないからです。

ゼロベース思考を身につけて実践するには、課題の論点に意識を向けましょう。

③物事や課題の追求

難しい問題に直面した際は、強引に解決策を導き出すのではなく、まず問題を掘り下げて課題を洗い出す必要があります。

過去に似たような問題に直面した経験があっても、ゼロベース思考ではそれを白紙にして課題の洗い出しや原因の究明に取り組むのです。既成概念を排除するとゼロベース思考が鍛えられ、より適切な解決方法を見つけられるようになるでしょう。

④環境の変化

異なる環境に身を置くと新たな視点や価値観を得られるため、自身の環境を変化させることもゼロベース思考の習得に有効です。新しい人間関係を築いたり、通常なら行わない仕事に挑戦したりして、身の回りの環境を積極的に変えてみましょう。

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7.ゼロベース思考のトレーニング方法

ゼロベース思考の習得を促進するために、関連書籍を読んだり研修に参加したりするのも効果的です。ここではゼロベース思考をさらにトレーニングする方法を解説します。

書籍から知識や思考法を学習

ここではゼロベース思考を学べる書籍を2冊紹介します。

『0ベース思考』(スティーブン・レヴィット著)

ゼロベース思考を習得するには、人間の思考に含まれるバイアス(偏見)を取り去る必要があると解説しています。身近な実例からゼロベース思考をわかりやすく学べる書籍です。

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『イシューからはじめよ』(安宅和人著)

イシュー(重要な事柄)を見極めることの重要性をわかりやすく解説しており、ゼロベース思考の入門書として最適な一冊です。

参考 イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」Amazon

ゼロベース思考に関する研修を受講

ゼロベース思考に関する研修では、以下のような内容を学べます。

  • 物事を客観的に見る方法
  • 情報を的確に分析する方法

ケーススタディやグループディスカッションなどによってほかの受講者と意見交換する機会を得られます。それにより、ゼロベース思考に必要な多角的な視点やアイデアが身につくでしょう。

また講師からのフィードバックを受けると自身の思考の癖に気づきやすくなるため、ゼロベース思考の習得を促進できるのです。