新会社法とは? 改正の主な内容、いつから施行されたのか?

新会社法とは、2006年に施行された従来の会社法を、現在の日本の社会情勢や経済情勢にあわせて改正した法律。新会社法によってより柔軟な会社設立、運営が可能になりました。

1.新会社法とは?

新会社法は、商法の改正をきっかけに、会社に関連する法律を再編して施行された「会社法」のこと。

それまで正式に「会社法」という法律は存在せず、「商法第二編 会社」「有限会社法」「商法特例法」という3つの法律を総称して「会社法」と呼ばれていました。以前の「会社法」と区別するために、「新会社法」と呼称されるようになったと考えられます。

再編された3法の概要は以下のとおりです。改正内容についてはのちの見出しで解説します。

  1. 商法第二編:会社の形式である株式会社合名会社、合資会社の規定
  2. 有限会社法:有限会社に関する規定
  3. 商法特例法:株式会社の監視等に関する商法の特例

ここでは株式会社設立時の要件緩和や新しい会社形態の追加、相続株式の売り渡し請求権利などが盛り込まれました。

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2.新会社法の施行はいつから?

新会社法は、2005年に国会で法案が成立し、2006年5月に施行されました。

施行以前の会社法では、株式会社や合名会社、合資会社は商法第二編で、有限会社は有限会社法で規定。新会社法では、このようにバラバラだった会社に関する法律をひとつにまとめ上げ、わかりづらかった表記も現代風にわかりやすく改めたのです。

また起業する際、株式会社を設立するケースが多く見られたものの、これまでの会社法では主に上場しているような大企業を主眼においていました。しかし現在の日本では中小企業や零細企業が会社の大半を占めています。

このような社会や経済の実態にあわせて、整理統合する必要が生じました。そのため新会社法には、新たに会社を設立しようと志す経営者に対して、より柔軟に使いやすくするという視点が盛り込まれているのです。

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3.新会社法で改正された主な内容

新会社法で改正されたポイントには、主に以下の7つが挙げられます。

  1. 最低資本金制度の廃止
  2. 類似商号の廃止
  3. 役員の人数を自由に決められる
  4. 取締役の任期を延長できる
  5. 有限会社の廃止
  6. 合同会社という会社形態の誕生
  7. 払込金保管証明書制度の一部廃止

新会社法で改正された主な内容について詳しく解説します。

①最低資本金制度の廃止

新会社法の施行で、新たに起業する際にハードルとなっていた最低資本金制度を廃止。以前の会社法では、株式会社の場合は1,000万円、有限会社は300万円の資本金を受託しなければ設立できませんでした。

2003年には株式会社が1円で設立可能となる制度がスタートしたものの、それでも5年以内に資本金を1,000万円まで引き上げなければならないという規定が付帯していたのです。つまり実質的には1,000万円以上の資本準備が必要でした。

新会社法の施行により、この最低資本金が完全に廃止され、資本金に対する縛りがなくなったのです。よって発起人が1円を出資すれば株式会社を設立できます。

②類似商号の廃止

類似商号とは、同じ市区町村のなかで同一、あるいは極めて類似している商号(会社名)のこと。旧会社法では類似商号を禁止していましたが、新会社法では類似商号制度を廃止しました。

つまり同じエリアのなかで同じ会社名がすでに存在していても、商号を使用できるようになったのです。ただし新会社法のなかでも、類似商号に関しては以下の点に注意してください。

  • 本店の所在地が同住所の場合は使用できない
  • 商号が有名企業と同一の場合は商標権の侵害となる恐れがある

なお「本店の所在地が同住所の場合は使用できない」の場合、同住所に株式会社で同じ商号の会社があっても、合同会社といったほかの形式であれば設立可能です。

③役員の人数を自由に決められる

新会社法では取締役1名でも株式会社を設立できます。

旧会社法では、株式会社を設立するにあたって取締役は最低3名必要であり、なかから代表取締役1名を選出すると必要があったのです。またそのほか監査人1名をくわえて最低4名が必要でした。

しかし実際に小規模で株式会社を設立する際、4名体制が実態に即していないため、新会社法で改正されたのです。これまで1名で会社を設立する際は、有限会社形式を選択しなければならなかったため、有限会社の廃止に伴った措置とも考えられます。

なお取締役1名の株式会社は「取締役会」が存在しません。したがって会社の最終的な意思決定は「株主総会」が担います。

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④取締役の任期を延長できる

旧会社法では取締役の任期は2年、監査役任期は4年と定められていましたが、新会社法ではこの任期を10年まで延長できます。役員任期が満了した際には再任するか、あるいは新たな役員を選出して変更登記をしなければなりません。

しかし中小零細企業ではこのプロセスを怠り、放置しているケースが見られていました。2年ごとに役員を改選して登記をするのは、中小企業に負担がかかるからです。

取締役任期の延長についても、現在の会社事情に合わせた柔軟な改正といえます。ただし株式公開をしている会社では、従来どおりの任期で運営しなければなりません。

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⑤有限会社の廃止

旧会社法では設立のハードルが高かった株式会社に対する受け皿として、有限会社が用意されていました。新会社法では、この有限会社を廃止。前述した「最低資本金の撤廃」「取締役人数の削減」によって、有限会社の役割は終了したといえるからです。

なお有限会社の主な設立要件は以下のとおりです。

  • 資本金:300万円以上
  • 社員数:50人以下
  • 役員:取締役1名以上(任期は無制限)

現在存続している有限会社は、新会社法が施行される以前に設立されていた会社であり、「特例有限会社」と呼ばれます。定款変更を行えば、株式会社への移行も可能です。

しかし有限会社のメリットを手放したくないため、新会社法が施行されてもそのまま特例有限会社として存続させている経営者も少なくありません。特例有限会社のメリットは次の点が挙げられます。

  • 取締役に任期がない
  • 決算公告が不要
  • 株式の譲渡は自由

⑥合同会社という会社形態の誕生

新会社法で認めている会社の形式は、「株式会社」と「持分会社」のふたつです。さらに持分会社には「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3形式があります。

このうち合同会社は、新会社施行にともなって新たにくわえられた会社形式です。なお合同会社は米国のLimited Liability Companyを模して導入された形式で、日本では頭文字をとって「LCC」と呼ばれます。

そもそも持分会社とは、「社員=出資者」であり、業務執行権限(経営に関する権限)をもつ形式のこと。社員が複数いる場合は、全社員から代表権を与える「代表社員」の選出が可能です。なおこの代表社員は複数選出できます。また株主総会が不要、役員の任期が無制限なども特徴です。

合同会社とほかの持分会社形式の違いは、「無限責任社員」の設置義務があるかどうか。無限責任社員とは、自社が負債を負ったときに、負債総額の責任を負う社員です。

ほかの持分会社では無限責任社員の設置が必須ですが、合同会社は出資額の限度内で責任を負う「有限責任社員」のみで構成されます。

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⑦払込金保管証明書制度の一部廃止

払込金保管証明書とは、会社設立で出資金を払い込んだと証明する書類のこと。旧会社法では、設立手続きでこの証明書の準備が必須でした。しかし払込金保管証明書には、次のようなデメリットがあったのです。

  • 証明書を発行する銀行といった金融機関に重い責任が課せられるため、取り扱いを拒否されるケースもある
  • 証明書の発行には料率に伴う手数料が発生する
  • 払い込んだ資本金は一定期間返還されず、設立当初に必要な早期資金として有効活用しづらい

これらのデメリットの解消を目的として、新会社法では資本金の存在を証明する方法を簡素化。金融機関に預け入れた通帳のコピーを添付すればよいことになりました。