合同会社とは経営者と出資者が同一で、出資者全員が有限責任社員である会社形態のことで、「LLC」と称されることもあります。合同会社とは一体何か、見ていきましょう。
目次
1.合同会社とは?
合同会社とは、出資者と経営者が同一になる会社形態です。一般的な株式会社に比べ、初期費用やランニングコストが低く、経営の自由度が高いというメリットがあります。2006年の会社法から始まった新しい会社形態のひとつで、合資会社、合名会社と並んで持分会社のひとつに数えられます。
2.合同会社が含まれる持分会社とは?
持分会社とは、「合同会社」「合資会社」「合名会社」の総称です。会社形態は「株式会社」と「持分会社」に大別でき、出資者自身が、経営に関する何らかの権限を持って業務を執行するという特徴を持ちます。
その背景にあるのは、「持分会社は出資者である社員間の人的信頼関係を基礎として作られた会社」という点。そのため会社に対して責任が発生した場合、社員全員が連帯して無限責任を負うことが持分会社の原則となっているのです。
3.合同会社と株式会社の違い
出資者と経営者がイコールとなった「合同会社」に対して出資者と経営者が別になっている会社を「株式会社」といいます。
株式を公開している会社の場合(市場に株式を流出させている)は、誰でも株式を購入して出資者になることができるのです。対して非公開の場合、市場では買えないため株主から買うといった方法で出資者になることができます。
株式会社の最終的な決定権は、取締役会や株主総会などの機関。議決権は株数に応じるため、結果として株式を多く持っている株主により多くの権限があるといえるのです。
4.合同会社のメリット
ここでは合同会社の特徴やメリットをチェックしていきましょう。
設立費用が安い
株式会社の場合は設立に際して最低でも15万円の登録免許税と5万円の定款認証における手数料が発生します。
対して合同会社の登録免許税は最低で1件6万円。また定款の認証が要らないため、手数料の発生もありません(ただし収入印紙代は発生)。費用も少なく手続きも簡単というのは、大きなメリットでしょう。
有限責任
合同会社と同じ持分会社である合資会社や合名会社が無限責任であるのに対して、合同会社は出資者全員が有限責任となっています。
会社が業務上のトラブルで大きな損害を与えてしまったり、多額の借金を重ねて倒産したりといった場合、株式会社と同様、社員は自分が出資した分など決められた範囲だけの責任で済ませることができるのです。
利益配分の自由設定
定款で決めておけば、合同会社は、剰余分の配当に対して出資比率とは別の自由設定で利益の配当を実施できますが、株式会社は、配当比率を出資比率と同じにする必要があります。
つまり合同会社では、出資者である社員の業績に見合った配当を出資比率とは別に行ったり、出資金額にかかわらず均等に配分したりすることができるのです。
決算を公表する義務がない
株式会社は毎年株主総会が終了した際に財務情報を開示する「決算公告」を行う必要がありますが、合同会社には、決算の公表義務がありません。
大会社以外の会社(資本金5億円未満、負債額200億円未満)では、一般的な決算公告を掲載する際に必要な料金は約6万円となりますが、合同会社には決算公告の義務がないためこの約6万円が不要となるのです。
5.合同会社のデメリット
続いて合同会社の問題点や課題、デメリットについて紹介します。
信用を得にくい場合も
合同会社は比較的新しい会社形態であるため、株式会社に比べるとまだ認知度が低く信用を得にくい場合があります。取引先によっては株式会社と同等の価値を与えられない場合もあるでしょう。
とはいえ先述の通り、合同会社の登記件数は増加傾向にありますし、大手のインターネットサービス事業、DMMが合同会社に組織変更した事例もあります。さほど心配する必要はないといえるでしょう。
業務執行権によるリスク
出資者と経営者がイコール、出資者全員が有限責任社員である、これらはメリットです。しかしそれは、社員全員が業務執行権を持つというリスクを抱えることでもあります。
株式会社では取締役のように一部の人に限られていた権限を、合同会社では多くの社員が持つため、混乱が生じるリスクが高まるといえるのです。
同意が必要
合同会社は、代表社員の継承、事業継承、出資者の権利譲渡を行う場合、社員全員が同意しないと進められません。そのため、これらをきっかけに社内対立が勃発するリスクが考えられるのです。
良好な人間関係や丁寧な合意形成への努力、場合によっては議決権や利益の配分について定款に定めるといった対応も必要になってきます。
6.合同会社の設立費用と資本金
ここでは合同会社を設立するにあたって必要な費用と資本金について紹介します。
合同会社の設立費用
前提として、会社の設立には「定款の作成・認証」「登記」という大まかな流れがあります。
定款にかかる費用
「定款の認証」とは会社の憲法ともいわれる定款を改ざんや紛失、内容の真偽をめぐる紛争などから防ぐため、公証人にその正当性を証明してもらうもの。
前述の通り、合同会社は定款の認証が不要ですので、証人に払う5万円の手数料は合同会社の場合0円です。なお、定款用収入印紙代には4万円が必要ですが、電子定款では不要となります。
登録免許税
設立登記の際に納める登録免許税は資本金に0.7%を掛けて算出します。資本金額によって異なりますが、もし資本金額が6万円に満たない場合、登録免許税は最低ラインの1件6万円となるのです。
株式会社は15万円もしくは資本金×0.7%の高いほうとなりますので、株式会社に比べおよそ1/3程度の費用で済ませることができます。
消費税
新規設立する合同会社の場合、消費税課税に該当する1期目と2期目の基準期間がないため、特別な場合がなければ消費税の納税義務は免除となります。ただし、事業開始時の資本金が1千万円以上ある場合、消費税課税の納税義務が免除されません。
社会的信用を得るには、一定の資本金を用意したほうがよいため、バランスを見極める必要があります。
法人住民税
税金負担は株式会社と同じ扱いになるため、合同会社にも法人住民税の納税義務が生じるのです。
金額は、事業から利益が出た場合、「利益の金額×法人税率」で計算します。ただし法人住民税の均等割額は、会社の規模によって異なりますが、法人住民税は利益が出ないとき(赤字のとき)でも、均等割額の支払い義務が生じるので注意してください。
合同会社と資本金
合同会社は社員が出資する形になるため、資本金の多さは社員の負担増を意味します。
開業時の費用
資本金の大きな役割は、開業の際に必要となる費用をまかなうこと。具体的には以下のようなものが開業時の費用となります。
- 会社の住所地になる事務所や店舗を借りる賃貸借契約に必要な支出(敷金や保証金など)
- 机やイス、電話や事務用品など設備や備品を揃えるための費用
- 必要に応じて事務所物件の入居前内装工事
- 人件費に代表される事業の運営に必要な賃金
- 事務所や店舗の家賃
- 水道光熱費、電話料金、インターネット維持費用、郵便料金
許認可事業と資本金
会社法では、資本金が1円でも会社を設立できますが、「許認可事業」の場合、一定の資本金を要してなければ許認可を受けることができません。資本金要件がある許認可事業は、主に自己資本が500万円以上の一般建設業などです。
せっかく会社を設立したのに事業が始められないという事態に陥らないよう、事前に業界団体や申請先に確認しておきましょう。
7.合同会社を設立する流れ、ステップ
ここでは、合同会社を設立する流れを見ていきます。
- 項目の作成
- 定款の作成
- 登記書類の作成
- 登記の申請
- 各種手続き
①項目の作成
まずは法人設立に必要な項目を作成します。具体的な内容は以下の通りです。
- 会社名(商号):最初か最後に「合同会社」と付ける
- 事業目的:事業目的として決めた事業以外は行うことができない。後から変更・追加は可能だがその分コストがかかる
- 本店所在地:定款作成や登記申請の際に必要
- 資本金額:総額や内訳
- 社員構成:業務執行役員、代表社員(株式会社でいう代表取締役)など
- 事業年度:事業年度、決算を何月にするかを決める
②定款の作成
続いて定款を作成します。定款とは会社を運営していく上で定める根本的なルールのこと。定款に基づいて合同会社が設立されるため、基本的な設立事項のほか以下のような細かい項目を追加します。
- 公告:官報公告、電子公告、時事に関する日刊新聞紙公告から選べるが、合同会社は決算公告が義務ではないため定款に記載しないことも可能
- 任意退社:退社するときの取り決め
- 社員の責任:有限責任社員だけで構成されている旨を記載する
- 損益の分配:分配の割合
③登記書類の作成
定款を作成したら登記に必要な書類を各種作成します。具体的には以下の通りです。
- 定款
- 印鑑届出(合同会社の実印)、社員の印鑑証明書(出資する社員全員)
- 払込証明書:資本金が払い込まれていることを証明する書類
- 代表社員就任承諾書
- 本店所在地決定書
- 収入印紙:資本金×0.7%が6万円に満たない場合は6万円
- 登記用紙と同一の用紙:OCR用紙のほかCD-Rでの提出も可能
- 合同会社設立登記申請書:既存フォーマットあり
④登記の申請
以上、すべての書類が揃ったら登記を申請します。登記申請手続きは設立する会社の「本店所在地」を管轄する法務局で行います。
- 登記申請書、収入印紙貼り付け台紙を閉じる:登記申請書、収入印紙貼り付け台紙の順番で左閉じ。見開き部分には会社実印を捺印する
- 払込証明書と通帳のコピーを閉じる:払込証明書と見開きの部分に会社の実印を捺印
- 上記書類をさらに1つにまとめる
- 登記申請書類、印鑑届出書、登記用紙と同一の書類をまとめて提出する:完了連絡はない
⑤各種手続き
登記が完了したら、その他の手続きを済ませましょう。
- 設立届:1~2カ月以内に都道府県税事務所、市区町村役場、税務署に提出
- 青色申告承認申請:3カ月以内
- 印鑑証明書、登記簿謄本の交付:法務局窓口で交付
- 労働保険関係の届出:従業員が入社した翌日から10日以内。労災保険は労働基準監督署へ、雇用保険はハローワークへそれぞれ届出をする
- 社会保険の加入手続き:新しく人を採用した日から5日以内に年金事務所で手続きを行う