サボタージュとは? 争議行為の種類、原因と解消法、書籍について

サボタージュとは、労働の質や量を低下させる行為のこと。しかし、正当なサボタージュであれば、労働条件や労働環境を改善したい労働者の争議行為として刑事免責や民事免責も認められます。

とはいえ、サボタージュが頻繁に起こると会社の経営は安定しません。できれば労使共にに回避したいところでしょう。サボタージュ・マニュアル等を参考にして、回避しながらより良い労使関係を築く努力を続けることが重要ではないでしょうか。

1.サボタージュとは?

サボタージュとは争議行為の一つで、職場内の労働量や質を低下させることで、雇用主や企業に対して労働条件の改善などを訴える行為のこと。労働者に積もった潜在的不満を表面化した一つのかたちといえるでしょう。

サボタージュという言葉の語源は、フランス語です。フランス語の「sabotage」からきた言葉で、仕事がうまくいかないとき、そのイライラから木靴で作業用機械を蹴り壊したという話が語源といわれています。

フランスからやってきたサボタージュ。日本では、「労働の質や量の低下」といった意味より「仕事を怠ける」といった意味合いで使用されることが多いようです。

「サボる」との違い

サボタージュという言葉が転じて生まれたのが、「サボる」で、怠ける、ずる休みをする等の意味を持ちます。日本ではサボタージュと「サボる」とは、ほとんど同じ意味を持つ言葉として理解されているでしょう。

なぜなら日本では、サボタージュという言葉自体が「労働の質・量を低下」としてではなく、「労働者が怠ける」という意味合いで用いることが多いからです。

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2.争議行為とは?

争議行為とは労働条件の改善や労働に関するさまざまな主張を持つ労働者が、自らの主張実現のために何らかの行為を通して労働を妨げる行為を指します。

いくつかの種類があり、その一つがサボタージュです。その他、

  • ストライキ
  • ボイコット
  • ピケッティング
  • 残業拒否
  • 休暇闘争
  • 職場占拠

などがあり、使用者の争議行為にはロックアウトがあります。

争議行為には、免責も存在します。たとえば、労働組合の団体交渉等の行為で正当なものには、刑事免責が定められているのです。また使用者は、正当な争議行為により損害を受けた場合には、労働組合や組合員に対して損害賠償請求ができない民事免責の規定も定められています。

争議行為の免責

刑事免責

刑事免責は、

  1. 刑法第35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」
  2. 労働組合法第1条2項「刑法第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」

と2つで定められています。

民事免責

民事免責については、労働組合法第8条で「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し、賠償を請求することができない。」と規定されています。

刑事免責と同様に正当な争議行為に対しては、違法性が阻却されると共に、債務不履行や不法行為責任が追及されないと認められているのです。

争議行為を行った労働者は解雇や懲戒処分になる?

正当性が認められる争議行為に関しては、民事責任が免責されます。よって、争議行為を行った労働者に解雇や懲戒処分を科すことはできません。

また、正当性が認められない争議行為に関しても、使用者は不当な行為に対して重い処分を下すことはできないとされているのです。なお公務員は、地方公務員法第37条(争議行為等の禁止)が定められているため、争議行為の種類にもよりますが、行った場合に罰則が生じます。

懲戒処分にはどのような種類があるのでしょうか?
6つあります。 処分の軽いものから順に見ていくと、 戒告やけん責 減給 出勤停止 降格や降職 諭旨解雇 懲戒解雇 です。しかしこれは一般的な紹介処分の種類ともいえます。会社によって就労規定に沿った...

3.サボタージュを含む5種類の争議行為

争議行為の中の代表的な5つの争議行為、

  1. サボタージュ
  2. ストライキ
  3. ボイコット
  4. ピケッティング
  5. ロックアウト

について説明します。

①サボタージュ

サボタージュとは労働の質や量を低下させることで企業に対して労働条件などの改善を訴える行為のこと。しかし公務員は、争議行為等労働基本権に基づき、職務の公共性から制約を受けます。公務員は、国家公務員法や地方公務員法などで争議行為などを禁止されているのです。

ですがサボタージュは、公務員も実行できます。なぜならば、サボタージュは簡単に言えば、仕事を怠けること。あくまで労働の質や量を低下させる等、労働をすべて拒否するわけではありません。

このような理由から、サボタージュは公務員でも実行に移すことができます。この点は、労働を全く行わないストライキとの大きな違いでしょう。

②ストライキ

争議行為の代表的行為に、ストライキ(同盟罷業)があります。ストライキとは労働を全く行わないことで、企業に対して労働条件などの改善を訴える行為。正当なストライキには免責も認められていますが、

  • 暴力を伴う
  • 政治目的
  • あらかじめ組合員の意思を確認せずに行ったもの

などは正当性を欠くものとされます。

また、

  • 運輸事業
  • 郵便
  • 信書便・電気通信事業
  • 水道
  • 電気・ガス供給事業
  • 医療・公衆衛生事業

など公益事業でストライキを行う場合には、実施10日前までに労働委員会および厚生労働大臣、または都道府県知事など各種機関へ文書で通知しなければなりません。

ストライキは、労働を全く行わない行為。よって、所定労働時間中で就業していない時間には賃金の支払いがないものとしています。

正当性が認められないストライキの種類

正当性が認められる争議行為には免責が認められていますが、正当性が認められないストライキもあります。

  1. 政治スト:政治目的を達成するために行う
  2. 山猫スト:組合執行部の意思に反した一部組合員のみで行う
  3. 同情スト:他の企業の労働争議支援を目的としたもの
  4. 交渉を経ていないスト
  5. 告知のないスト
  6. 平和義務に反するスト
  7. 平和条項に反するスト

この7種類のストライキは、刑事免責や民事免責が認められないため、損害賠償を請求することも可能です。

スト破りについて

ストライキを行う際、使用者側について労働を継続することを、スト破りといいます。使用者がストライキに対抗して、新規規採用者等の内部の労働者、もしくは外部の人材を使って何らかのかたちで労働者を就業させるのです。

これには、ストライキの効果を弱体化させる効果があります。しかし、目的が労働組合の団結の阻害という場合、違法性が強いと判断されることが多いようです。

③ボイコット

ボイコットとは労働者が団結して「自社製品を買わない・サービスを利用しない」といった不買運動を実施すること。不買運動が起こると、使用者は売り上げが減少し、経済的に打撃を受けます。

実際にダメージを与えて争議行為の目的を達成するもので、ボイコットという争議行為そのものは原則として合法とされています。しかし、取引先企業に「取引の停止」「不買」を働きかけることは違法です。

④ピケッティング

ピケッティングはストライキなどの実効性を確保するための行為のこと。たとえば、ストライキの効果を低減させるスト破りをする人が職場に入ることを避けるため、職場を監視する行為など。

もともと適正なストライキは刑事免責、民事免責の対象になります。よって、組合員以外で就労している労働者の労働を妨害しない範囲で、スト破り防止のため職場を監視する行為は、合法として認められるのです。

⑤ロックアウト

ピケッティングとは逆に使用者側が労働者を締め出す行為をロックアウトといいます。

労働争議発生中に使用者側が店舗や会社といった自社を閉鎖して、労働者が業務を行うことを妨げる行為のこと。使用者は労働者の労働を妨げることで、労働者に対して賃金を支払わない、すなわちストライキへの対抗行為を実行できます。

しかし、ロックアウトが法的に正当な行為として認識される基準は、かなり厳しいでしょう。

4.国内におけるサボタージュ

国内のサボタージュで有名な事例は、2010年に会社更生法を適用された日本航空と2013年に起きたコンビニエンスストアでのバイトテロ事件です。

日本航空では、賃金カットやリストラに対抗するため電気配線の切断事件が起きています。バイトテロ事件では、アルバイト店員が商品の上に寝そべる姿がSNSにアップされました。

劣悪な労働環境を放置したり、人材育成を怠った状況を放置したりすれば、人手不足だけでなくサボタージュ等の行為で企業価値も下がりかねません。

5.サボタージュの原因と防止・解消法

不当な評価や人事管理

サボタージュが起こる原因は、不当な評価や人事管理です。独立行政法人情報処理推進機構が2014年に発行した「内部不正の現状について~国内外の内部不正の動向~」によると、不正行為を働く動機として最も多いものは、労働条件や労働環境などの不満に関する理由です。

また、

  • 不当と感じる解雇通告:34.2%
  • 給与や賞与に不満:23.2%
  • 人事評価に不満:22.7%

といったように、人事評価や人事管理に対して不満を持っている労働者が多くいることも分かります。このような状況を放置すれば、サボタージュが発生しやすくなるでしょう。適正な人事評価、人事管理に対して自社は問題ないか等の早急な確認が必要です。

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相手を傷つける

「そんなことがきっかけで?」と上司は思うかもしれません。しかし、上司による何気ない一言で、部下が自尊心を傷つけられた・人格を否定されたと感じた状況が、サボタージュを招くこともあるのです。

人間は自尊心を傷つけられることを最も嫌う生き物。自分の存在価値を否定されれば、生きる居場所を失い、自己否定した相手に対し強い敵意を覚えるでしょう。職場では穏便に進めようとする人も多いため、なかなか上司や会社は気が付きません。

しかし、それが何らかのかたちで次々と表面化、問題化してくるのです。役職や階級等で上下関係のある会社組織内では難しい面もあるでしょう。それでも相手を尊重して一緒に仕事を行う姿勢を全社員で共有しましょう。サボタージュの芽は小さくなります。

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相手への理解不足

現在、多くの日本企業が世界各地に出張所や現地法人を構えてグローバルなビジネスを展開しています。日本とは異なる文化、思想の国で現地の労働者を雇用するため、問題が発生することも多々あるでしょう。

実際に、日立製作所の中国工場で、給与のベースアップ要求のサボタージュが勃発。駐在員だけでなく、ローカルの人事部長が中心となって必死の交渉に当たり、やっとのことで労働争議妥結にこぎつけました。

この事例が教えてくれるのは相手を理解することが労働争議解決の鍵になるということ。ローカルな人事部長は現地労働者の文化や思想、感情に理解を示しながら争議妥結を模索しました。

国、地域、国籍、宗教、性別等が違っていても相手をしっかり理解することで労働争議を速やかに収束に導くことが可能なのです。

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サボる人が持つ自身の正当化

多くの労働者を抱えれば抱えるほど、「サボる」人を雇用するリスクは高まります。こうした「サボる」人に対して、どのような対処法が考えられるのでしょう。

少し荒っぽい対処法に思えるかもしれませんが「サボる」理由を正当化する人をあえて監査役に抜擢し、モチベーションを高める方法があります。もともと「サボる」人は、「自分はもっと評価されてよいのではないか」「今の仕事は、自分にふさわしい仕事ではない」とさまざまな理由をつけて自分の「サボる」癖を正当化しがちなのです。

そんな人を要職に抜擢することで、「サボる」側から「サボる人を管理する」側に立場が変わります。指導役を担うことで自発的な労働へと結び付ける、いわゆる「認知的不協和」を利用する方法は、実は「サボる」癖のある人に対して有効な手段なのです。

6.米国戦略諜報局(OSS)がサボタージュについてまとめた書籍『サボタージュ・マニュアル』

サボタージュ・マニュアルの目的と概要

世界でも問題視されるサボタージュ。その中、米国戦略諜報局(OSS)がサボタージュについてまとめた書籍『サボタージュ・マニュアル』が人気を集めています。

『サボタージュ・マニュアル』の目的は、効率の良さを徹底排除し、ターゲットを硬直化・弱体化させること。

サボタージュに対抗するマネジメント方法から、トイレを詰まらせる」など実際にある嫌がらせの話題まで幅広くサボタージュを考察しているのです。一度手に取ってみてはいかがでしょう。

『サボタージュ・マニュアル』の具体的な内容

『サボタージュ・マニュアル』では、

  • 管理職
  • 従業員
  • ホワイトカラー

向けに会社の弱体化につながる具体例を記載しています。

たとえば、管理職に「会議で長いスピーチを頻繁に行う」「決断を早める近道を認めない」「会議の議事録や通信文は、細部にわたってチェックし訂正させる」などを行うとサボタージュが増えやすくなるのです。

従業員やホワイトカラー向けには、「ペーパーワークやファイル数をどんどん増やす」「重要な書類を間違ったファイルにあえて保存する」「新人に先輩としての経験やスキルは伝授しない」等が挙げられています。

その他、「世の中にはこんなサボタージュがあるのか」と耳を疑うような具体例も。職場内のさまざまな場面でサボタージュの危険性がある事実を再認識できるでしょう。

参考 サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質Amazon.co.jp