パーパスブランディングとは? 効果・成功事例をわかりやすく

パーパスブランディングとは、自社の存在意義を対外へ発信し、社会からの支持や共感を集めて企業の価値を高める戦略のこと。ここではパーパスブランディングの効果や、成功事例をご紹介します。

1.パーパスブランディングとは?

パーパスブランディングとは、社会における自社の存在意義を提示して、企業価値を高める手法のこと。「自社は何のために存在しているのか」という原点を明確化し、それに忠実に事業を展開して、社会からの支持や共感を高めていきます。

そもそもパーパスとは?

パーパス(Purpose)は、一般的には「目的」「意図」などを示す言葉です。ビジネスにおいては「存在意義」という意味で使われます。似た言葉である「企業理念」「ビジョン」「バリュー」などはパーパスに含まれる要素といえるでしょう。

そのため「パーパスブランディング」は、自社のパーパス(存在意義)を軸にして、自社の価値を高めるブランド戦略を指すのです。

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2.パーパスブランディングと一般的なブランディングとの違い

ブランディングとは、社会全体に認知されている自社価値を最大限に高めること。

単に認知されるだけでなく「香りのよいシャンプーなら、あの商品」「故障が少ないPCならあの企業」など、他社と差別化できる「独自のポジション」を得るために欠かせない戦略です。

以下で一般的なブランディングと、パーパスブランディングの違いを詳しく説明します。

目的

ブランディングとパーパスブランディングの大きな違いは、その目的にあります。

一般的なブランディングの主な目的は、商品やサービス周知によるブランドの確立や競争優位性の向上、それらによる利益拡大です。

一方のパーパスブランディングは、世間に存在意義を示して多くの支持や共感を集めて、社会における認知を拡大させることを目的とします。

対象

ブランディングとパーパスブランディングは目的が違うため、訴求対象も異なります。

一般的なブランディングでは利益の拡大を目的とすることが多く、訴求対象はパーソナライズした個人や取引先、投資家などです。パーパスブランディングは社会的な存在意義の認知拡大を目的とし、利害関係にかかわらず社会全体を訴求対象とします。

価値定義

一般的なブランディングにおける価値は、それぞれの消費者が商品やサービスなどのブランドから得る価値です。

直接的なメリットのみならず、安心や信頼など感情的な価値も含みます。パーパスブランディングの価値は、企業がより多くの消費者から賛同や共感を得られる社会的価値です。

ブランディングが「私にとっての価値(ME価値)」を高めるための戦略であるのに対し、パーパスブランディングは「私たちの価値(WE価値)」を高めるための戦略だといえます。

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3.パーパスブランディングが注目される理由

近年ではパーパスブランディングが社会的に注目されています。ここではパーパスブランディングが注目される5つの理由を説明しましょう。

  1. 商品やサービスのコモディティ化
  2. 社会課題への関心向上
  3. 若い世代の価値観の変化
  4. 投資の判断基準の変動
  5. モノからコトへと変化した消費思考

①商品やサービスのコモディティ化

マーケティングのコモディティ化に対抗するために、パーパスブランディングが注目されるようになりました。

コモディティ化とは、市場参入時には高い付加価値を持っていた商品が、市場の活性化により一般化すること。コモディティ化した商品は、品質や機能の特徴が薄れ、商品単価でしか差別化されなくなります。

そのため近年では多くの産業で低価格化競争が激化し、商品やサービスではなく存在意義を打ち出して差別化をはかるパーパスブランディングが重視されているのです。

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②社会課題への関心向上

世界的に社会課題への関心が高まっていることも、パーパスブランディングが注目される理由のひとつです。

インターネットが普及しSNSが一般化し、多くの人が世界中の情報をスピーディーに共有できるようになりました。そのため社会全体で気候変動やエネルギー問題など、さまざまな課題への関心が高まっています。

企業にも社会課題に取り組む姿勢が求められるようになり、社会問題と自社との関連性や自社の存在意義などを市場や社会へ示す必要が出てきたのです。

③若い世代の価値観の変化

消費者の価値観の変化に対応する戦略として、パーパスブランディングの必要性が高まっています。

さまざまな商品やサービスで満ちている現代社会において、商品そのものの価値だけでは消費者に選択してもらうのは困難です。とくに品質のよい製品のなかで育った若い世代には、商品に付随するストーリーや企業の価値観に共感したものを好む傾向にあります。

若い世代への認知度を高めるためには、パーパスブランディングを取り入れる必要があるのです。

④投資の判断基準の変動

社会課題への関心が高まったことで投資家の判断基準も変化してきました。投資家への情報開示としてパーパスブランディングが注目されています。

以前は「利益があげられるかどうか」が主な基準でしたが、近年、多くの投資家が「社会課題へどのようにかかわっているのか」を投資の基準に採用。目先の利益だけを追求する企業は、成長が見込めないと判断される恐れもあります。

パーパスブランディングを取り入れて、自社の社会課題への取り組みを明確にすると、投資家からの評価が向上するでしょう。

⑤モノからコトへと変化した消費思考

消費者の考え方が「コト消費」変化したことも、パーパスブランディングの必要性を高めました。

一定水準の製品が家庭に行き渡っている現代、消費者の志向は「モノの所有」から「コトの体験」に移行しつつあります。企業は消費者に「どのような商品なのか」よりも、「自社がどのような体験や感情を提供できるか」をアピールする必要が出てきたのです。

そこでパーパスブランディングをとおして共感や信頼を高める戦略が注目されるようになりました。

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4.パーパスブランディングの効果

パーパスブランディングには、企業のあり方に共感する「ファン」を増やし、経営を安定させる効果があります。ここではパーパスブランディングの具体的な効果を4つご紹介します。

  1. マーケティングの差別化
  2. 顧客からの信頼度アップ
  3. 従業員のモチベーション向上
  4. 意欲的な人材の確保

①マーケティングの差別化

パーパスブランディングに取り組んで企業独自の価値を生み出すと、マーケティングの差別化が図れます。企業の存在意義を明確化すれば方向性が定まり、設定したパーパスに従ってすべての事業を展開していけるからです。

価値観に独自性が生まれ、市場において他社との差別化につながるでしょう。

②顧客からの信頼度アップ

社会に対する自社のかかわり方をパーパスブランディングで明示すると、共感する消費者からの信頼を高められます。信頼が高まった消費者は長く自社のファンになることも多く、良好な関係の構築およびそれによる事業の安定や成長が見込めるのです。

③従業員のモチベーション向上

パーパスを設定し企業の存在意義を明確にすると、従業員のモチベーション向上にもつながります。「自分の仕事が社会に貢献している」「この業務が社会課題の改善に役立っている」と実感しながら働けるため、仕事に対するやりがいを育むからです。

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④意欲的な人材の確保

パーパスを明確にすると、企業のあり方に共感して「ここで働きたい」と考える意欲的な人材が集まりやすくなります。優秀な人材ほど報酬や待遇よりも、「この仕事をとおして社会の役に立ちたい」など動機や使命感で就職先を選ぶ傾向にあるからです。

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5.パーパスブランディングの注意点

企業がパーパスブランディングに取り組む際は次の4つに注意が必要です。それぞれについて詳しく説明します。

  1. ターゲット顧客の設定
  2. 宣言と実行
  3. 適材適所の采配
  4. 社内と社外のパーパスを統一

①ターゲット顧客の設定

パーパスを設定する際、ターゲット顧客を定めてはいけません。上述したようにパーパスブランディングの目的は、社会全体に自社の存在意義を示し、支持や共感を集めることだからです。

ターゲットを設定してしまうと、共感を得られる層が限定されてしまいます。広い視野で社会全体を見据えながらパーパスブランディングに取り組むことが大切です。

②宣言と実行

パーパスを設定して社会に宣言したら、必ずアクションを起こす必要があります。

よく見られるのが、パーパスを設定しただけでまったく取り組んでいないケースや、パーパスを無視して利益だけを追っているケースです。掲げたパーパスと経営実態がかけ離れていては、消費者や従業員、投資家からの信頼を失いかねません。

ステークホルダーから見放されてしまっては、パーパスブランディングが逆効果になってしまいます。

③適材適所の采配

パーパスブランディングに取り組む場合は、「適材適所」の考え方ではなく、「適所適材」で人員を采配します。パーパスブランディングの実施には、パーパスを事業戦略の中心に据えた組織構造を構築する必要があるからです。

今ある人材でパーパスを実行するのではなく、パーパスを実行するために必要な人材を獲得する考え方に切り替えましょう。

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④社内と社外のパーパスを統一

パーパスはひとつとは限らず、「社内向け」と「社外向け」にわけて提示している企業もあります。この場合双方のパーパスの根幹を統一させ、矛盾がないように設定しなければなりません。

先に社内向けに小さなパーパスを設定し、規模を広げて社外向けに展開するのもひとつの方法です。社内用のパーパスは、従業員の共感を得られるだけでなく、使命感をもって実行できるものを設定しましょう。

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6.パーパスブランディングの成功事例

すでにパーパスブランディングを導入して成果を上げている企業も見られています。ここでは成功事例を4つご紹介しましょう。

  1. 株式会社門崎
  2. ソニー株式会社
  3. 富士通株式会社
  4. 花王株式会社

①株式会社門崎

株式会社門崎は、岩手県産の黒毛和牛ブランド「格之進」で知られている企業です。パーパスに「一関と東京を食で繋ぐ 岩手を世界に届ける」を、ミッション(実現するべき使命)に「日本の食と未来を消費者と生産者と共にクリエイトする」を掲げました。

そしてコロナ禍でも自宅で格之進の味を楽しめると伝える「おうちで格之進」という企画を実行。この企画には、Webプロモーションやバーチャルイベントを盛り込みました。

このようなパーパスに沿った活動は、リモートを活用して人々をつなげ、多くの支持や共感を得ることに成功しています。

②ソニー株式会社

ソニー株式会社は、2019年にトップが全世界の従業員に呼びかける形で、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」という新たなパーパスを宣言。

施策として、新しいパーパスを軸にした経営方針を積極的に発信し、企業活動の中心に据えることで、従業員に浸透させていきました。

その結果従業員の8割が自社のパーパスを肯定的にとらえるようになり、翌2020年には利益が過去最高に達しました。

③富士通株式会社

富士通株式会社は、2020年に「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを発表し、「すべての企業活動は、パーパス実現のため」と位置づけました。

そしてパーパスに沿った人材戦略や組織変革のほか、個人のパーパスを言語化する対話プログラム「Purpose Carving」を全社で展開するなど、徹底したパーパスブランディングを実行したのです。

その結果、従業員のモチベーションが高まり、約800人の幹部従業員がポスティング制度で新たに登用されるなど、自らポジションを選び主体的に働いています。

④花王株式会社

花王株式会社のパーパスは「豊かな共生世界の実現 To realize a Kirei Word in which all life lives inharmony」です。

子ども達が描く未来を実現させるため「パーパスドリブンなブランド」をテーマに掲げ、社会課題の解決に取り組んできました。施策では、2010年から「花王国際子ども環境絵画コンテスト」を開催し、11年間で約10万人を超える子どもが参加。

パーパスブランディング後は、消費者の1回あたりの購入個数が増加するといった成果がでています。