長時間労働とは?【発生する問題点とは?】削減対策

昨今の日本で社会問題にもなっている「長時間労働」。過労死や過労自殺のリスクを高める過重労働が引き金となった大きな事件が多発し、社会全体に衝撃を与えています。

しかし一口に長時間労働といってもその認識は人によってさまざま。年齢や健康状態、育った環境などによって「長時間労働だ」と感じる時間には個人差があります。

ここでは、一般的に定められている「長時間労働」の定義や原因、働き方改革との関係などについて確認していきます。

目次

1.長時間労働の定義とは?

長時間労働には、「何時間以上が長時間労働に該当する」という決まりはありません。「長時間労働」と感じる時間に個人差があるためです。

労働基準法による労働時間は1日8時間、1週間に40時間と定められています。これを超えて勤務する場合、企業と労働者の間で労働基準法第36条による協定(36協定)を結ぶことが義務付けられているのです(詳細は後述します)。

厚生労働省では平成29年1月、1カ月当たり80時間を超える残業があった事業所に対して、監察、指導を行いました。このことから「継続して月45時間以上の残業がある」「月80時間を超える残業がある」場合、長時間労働に注意と考えるのがよいでしょう。

法定労働時間とは?

一般的に長時間労働とは、1日8時間、1週間で40時間という法定労働時間を超えて働く時間(時間外労働)を指します。なお大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月から時間外労働の上限規制が導入されるので注意しましょう。

長時間労働には具体的な定義がありません。しかし厚生労働省では過労死の原因のひとつが長時間労働だと明確に定めています

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2.長時間労働による過労死の認定基準

過労死とは過度な長時間労働や残業を強いられた結果、脳疾患や心不全などを引き起こす急激な体調の悪化に伴って起きる突然死のこと。

「過労死等防止対策推進法第2条」では「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」と定義しています。

要約すると以下の3項目です。

  1. 過重な負荷による脳血管疾患や心臓疾患を原因とした死亡
  2. 強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺
  3. 死亡に至らない脳血管疾患や心臓疾患、精神障害

過労死基準(過労死ライン)とは?

過労死基準(過労死ライン)とは健康障害リスクが高まるとする時間外労働の時間を指した言葉です。法律などで定義されたものではありませんが、労働災害認定で労働と過労死、過労自殺との因果関係を判定する際に用いられます。

1カ月100時間・6カ月平均80時間

過労死基準の具体的な数値目安となるのが「1カ月100時間・6カ月平均80時間」です。これは、発症前の2カ月ないし6カ月にわたって1カ月当たり80時間を超える時間外が認められた場合を指します。

ここでは。1日8時間勤務、1カ月の労働日を20日として月160時間の労働を想定しています。1日4時間の時間外労働をした結果、1日12時間の勤務が続いている状態です。

もしくは発症前1カ月間に100時間を超える時間外労働が認められた場合となります。こちらも同様に1日8時間、1カ月の労働日を20日として想定すると1日5時間の時間外労働をした結果、1日13時間の勤務となるでしょう。

また、20日の労働日に各2時間50分の時間外労働と、4日の法定外休日出勤が続く場合も同様です。

労働者災害補償保険法(労災)とは?

労働者災害補償保険法(労災)では、業務中に起きた事故や病気などに関して「労働者災害補償保険法(労災)」による給付が受けられると定めています。

これは、「仕事が過酷で働けなくなってしまった」などの際、収入が途絶えてしまうリスクを軽減するための保険です。病気などが仕事に起因するものだと認定されれば「療養給付」「休業補償給付」などを受けることができます。

厚生労働省は2001年に過労死の労災認定の基準を発表したにもかかわらず、依然として長時間労働が多い状況を非常に重く受け止めています。それが2019年4月施行の「時間外労働の上限規制」につながっているのです。

今回の改正により、法律上時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできなくなりました

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3.36協定(サブロク協定)と長時間労働

「36協定(サブロク協定)」とは時間外労働や休日労働に関する基準を定めた労使協定のこと。

36協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に協定書を届け出れば限度時間の範囲内で時間外や休日に労働させることができます。また36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決める必要があるのです。

これまでは基準以上の時間外労働が行われても何ら罰則はなく、長時間労働が横行していました。しかし今回この基準が法律に格上げされることになり、1カ月に45時間を超える残業は、たとえ36協定が締結されていても「違法」となるのです。

特別条項付き36協定とは?

「特別条項付き36協定」を締結すると限度時間を延長して労働させることができます。しかし以前から、これが長時間労働を助長させる要因となっているという声がありました。

今回の法改正に伴い、特別条項付きの36協定締結には、限度時間の延長が必要となる特別な事情や限度時間を超えられる回数、限度時間を超える一定時間の定めなどが必要となりました。

なお、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以上の時間外労働と月100時間以上の時間外労働および休日労働、2~6カ月平均80時間以上の時間外労働は違法となります。

36協定における時間外労働の問題点

これまでの「特別条項付き36協定」には、延長時間の上限が設けられていなかったため、天井のない労働時間が許容される事態となっています。

また厚生労働省の調査対象となった事業所の半分近くが、36協定の存在すら知らないと回答したのです。さらに、約1,500もの事業所で過労死ラインといわれる月80時間を超える時間外労働・休日労働を行っているという実態が判明しました。

36協定の締結を行う労働者の代表は、労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者である必要があります。過去には会社側が一方的に特別条項付き36協定を締結し、過労死へとつながった事件も発生しました。

36協定の上限を超えないように「サービス残業」を強いる会社もありますが、そもそもサービス残業は残業代の支払いを不当に免れる行為として違法です

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4.日本の長時間労働の現状

長時間労働が問題視されて久しい日本の現状は、近年どのように変化しているのでしょうか。

長時間労働者の割合

週35時間以上の就業者に占める週60時間以上働く人の割合を見ると、2000年代初めには17%を超える年がありました。しかし平成15年(2003)をピークに緩やかな減少傾向を示しており、平成28年(2016)には12%台にまで減少しています。

しかし週50時間以上働く雇用者の割合を諸外国と比較すると、イギリスは12.8%、アメリカは11.7%、フランスは7.8%であるのに対して日本は21.9%です。欧米諸国に比べてまだまだ高いことが分かります。

過労死の件数

厚生労働省が公表した「平成30年版 過労死等防止対策白書」によると、民間雇用労働者の労災補償状況は、脳・心臓疾患の支給決定件数は毎年250から300件前後で推移しています。

しかし、業務における強い心理的負荷によって精神障害を発病したとする労災請求件数や精神障害の支給決定件数は年々増加しているのです。2017年には500件を超え、過去最高となりました。さらにこのうち未遂を含む自殺は98件という状況だったのです。

勤務問題を原因のひとつとした自殺者の数

平成29年(2017)における勤務問題を原因のひとつとした自殺者は1,991人にも及びました。また自殺者全体の中で勤務問題を原因のひとつに挙げる割合は9.3%。これは2007年の5.7%から徐々に上昇していると分かります。

長時間労働が問題視される中、多くの企業が削減の取り組みをしているにもかかわらず解消されたと実感する従業員が少ないのが日本の現状といえるでしょう

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5.長時間労働が発生する原因

それではなぜ長時間労働が発生するのでしょうか。その原因について見ていきます。

労働人口の減少や賃金上昇による人手不足

真っ先に考えられるのは人手不足(業務過多)です。労働人口の減少や賃金の上昇で多くの人を雇えなくなった企業の事情から、業務量や業務内容に見合う必要な人員を雇用できない企業が多く存在しています。

これは製造業や飲食業など特定の業種にて多く見られる課題です。またどの年代、どの職種においても一定数の人手不足が見られます。業務に見合った人員を揃えることができず、結果として1人当たりの労働時間が長くなってしまうのです。

管理職の長時間労働に対する意識の低さやマネジメント不足

多くの回答を占めるのが管理職の意識の低さやマネジメント不足です。本来、管理職やリーダーは業務進捗や業績管理だけでなく、社員の勤怠や仕事量の管理も行います。

しかし労働時間が長い社員を高く評価する、優秀な人材に仕事量が偏る、計画性のない指示を出すなど、管理者層、リーダーのマネジメント不足が長時間労働を引き起こす原因となっているのです。

また部下の長時間労働を見て見ぬふりしたり、改善対策を考えたりしない管理職が原因で長時間労働が課せられていることが多い現状も。部下に対する配慮や上層部への問題提起による長時間労働対策が望まれるといえるでしょう。

社員による主体的な残業

中には与えられた仕事を完璧にこなしたい、終わるまで帰りたくない、残業によって上司の評価を得たいといった社員自身の要素が影響して長時間労働につながる場合も。企業はこうした要素も鑑みていく必要があるでしょう。

長時間労働を是とする人事制度や職場の風土が残っていることも、残業が発生する原因と考えられます

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6.長時間労働が企業に与えるデメリット

長時間労働が企業に与えるデメリットは多岐にわたります。長時間労働の状態を放置すれば、問題やリスクを抱え続けてしまうでしょう。

残業代が増加する

1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える法定外残業の場合、労働基準法によって25%以上の割増賃金を支払う必要があると定められています。

さらに22時から翌5時までの深夜時間外労働にはさらに25%上乗せされるため、結果として支払う給料は1.5倍になるのです。また法定休日に出勤した場合、通常より35%割増しした賃金を支払う必要があります。

採用コストが増加する

当然のことですが、労働者はより良い労働環境を求めるため、長時間労働が常態化している企業の離職率は高まります。離職者が増えれば、残った従業員への負担が増加し、さらなる離職者や長時間労働を招くでしょう。

労働の量と質がアンバランスな状態が続けば、業務効率の低下や企業自体の成長停滞にもつながるのです。

労働生産性が低下する

長時間労働と労働生産性は密着に関係しています。長時間働き続ければ集中力が落ち、ミスが増えることは避けられません。また業務の効率も悪くなり、慢性的な睡眠不足や疲労が回復しないことへのストレスが増大したりモチベーションが低下したりします。

業務中に事故が発生しやすくなる

集中力が途切れる、効率が悪くなれば、業務中の事故が発生しやすくなるでしょう。

企業イメージが低下する

残業の実態は就職活動や転職活動をしている人にとって非常に関心の高い事項です。長時間労働が多いというイメージを持たれた企業は、採用市場にて不利な状況に陥る可能性が高いです。

転職者が同条件の他社と迷った場合に、長時間労働や残業の過多を判断基準とすることは決して珍しいことではありません。それにより必要な人材を獲得できず、さらに人手不足が加速することも考えられます。

長時間労働のデメリットは、個人の健康から会社の価値に至るまで幅広い部分に深く影響します。表面化した一部の事象だけを問題視するのは危険です

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7.長時間労働が引き起こす問題

長時間労働は社員の健康に大きな被害を及ぼし得る問題です。

1日12時間働き、通勤に往復2時間かかるケースを想定しましょう。この場合、プライベートの時間は10時間しか残りません。またその10時間のうち少なくとも1時間は仕事の昼休みとして会社に拘束されるため、実質の時間は9時間となります。

この時間内で睡眠時間や食事、朝の身支度や帰宅後の入浴などを行うため、長時間を占める睡眠時間は削られるでしょう。心身に不調をきたしがちになったり生活にどんどん余裕がなくなっていったりすることは明らかです。

さらに睡眠不足や生活の余裕のなさは業務効率にも影響します。同じ1時間の仕事でも、体調が万全の状態で行う場合と比べて、成果に大きな違いが生じるのは想像に難くありません。

長時間労働が続くことは結果として会社の不利益につながります。日本には短時間労働を実施してなおかつ高い業績を誇る企業も存在しているのです

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8.長時間労働を削減するための対策の手順

それでは、長時間労働を削減するための具体的な対策を見ていきましょう。

社内の現状を把握する

まず重要となるのは現状の把握です。社内でどれだけ長時間労働が行われているのか、また部署による偏りはあるかなど、具体的な情報を収集します。

厚生労働省は2017年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定しました。ガイドラインは長時間労働の把握において以下が必要だと示しています。

  • 始業・終業時刻の確認及び記録(日々の作業)
  • 賃金台帳の適正な調製(日々および毎月の作業)
  • 労働時間の記録に関する書類の保存(3年間)
  • 労働時間を管理する者の職務の適正化
  • 労働時間等設定改善委員会など労使協議組織の活用

長時間労働に対する意識改革を行う

長時間労働を是正するには、経営トップをはじめとする従業員全体の意識向上が必要です。長時間労働には個人の考え方だけでなく関係性の強弱や利害関係なども関係するため、本質を変えない限りリバウンドを起こすこともあり得ます。

残業が当たり前の企業風土が根付いているなら、経営トップや管理者層が率先して長時間労働に対する意識改革を行いましょう。また管理職に対して、長時間労働のリスクや管理方法を教育するマネジメント研修の実施など行動の在り方を教育することも重要です。

一般社員には生産性を高める働き方についての研修を行い、業務効率に対する意識を高めていく手段が効果的でしょう。

長時間労働の削減には、会社全体が意識を高めて取り組んでいく必要があります。誰か一人の意識改革や行動の変化では根本的な解決にはなりません

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9.長時間労働の撲滅に向けた具体的な施策(例)

長時間労働の撲滅に向けて、会社側が講じられる具体的な施策もあります。

年次有給休暇の取得を促進する

有給休暇の取得を促進することで総労働時間の削減につながります。土日と祝日の間にある平日をあらかじめ有給休暇として会社側が指定するのも効果的でしょう。計画的な付与制度の活用が、結果として長時間労働の削減になるのです。

ノー残業デーを導入する

心のどこかに残業は当たり前だ、という意識は潜んでいないでしょうか。残業が常態的に行われている、または周囲が気になって帰りにくいという職場環境の場合、従業員全員が取り組める制度を導入するとよいでしょう。

ノー残業デーは部署単位で実施することも可能です。繁閑時期に合わせて設定するのもよいでしょう。

勤務間インターバル制度を導入する

勤務間インターバル制度とは、終業時間から翌日の始業時間まで一定の時間を空けてしっかり休息を取るという制度のこと。

たとえば12時間のインターバルを設定している場合、仮に24時まで働いた翌日は12時間後の12時に仕事を開始します。一定の休憩時間を設けることで労働者の健康とワークライフバランスを保つことを推奨しているのです。

昨今、効率よく仕事をこなして定時で退社し、自分の時間を楽しむ人も増えつつあります。長時間労働の改善は個人のモチベーションアップや企業の利益につながるでしょう

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10.職場での長時間労働対策

長時間労働は企業にとっても従業員にとってもメリットの少ない働き方です。社内で残業が増えてきている場合、なぜ残業をしなければならないのかを明確にしましょう。

慢性的に残業が続いているということは、人員が不足しているということでもあります。従業員を増やすことも検討しましょう。

長時間労働が一時的なものである場合、派遣社員や外注などを活用すると、従業員に負担がかかりすぎない体制をつくることができます。

またチームによって残業時間がまちまちである場合は、人員のバランスが取れていない可能性が高いです。社内全体の配置を見直してみましょう。

会社や組織が業務内容や人員配置、成果やコストを見直して抜本的な改善をしない限り長時間労働は慢性化します。

長時間労働の削減に取り組むには、ただ対策を取り入れるだけではいけません。会社全体の意識付けとして、実態の把握と共にPDCAを回していきましょう

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11.働き方改革で長時間労働はどう変わる?

労働者が長時間労働によって健康障害を発したり、過労死や自殺に至る現状を改善したりするための取り組みが「働き方改革」です。平成18年4月には労働時間などの設定の改善に関する特別措置法「労働時間等設定改善法」が施行されました。

これは「年間総実労働時間1800時間」を目標として労働時間の短縮を促進した「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を受け継いだものです。ここでは仕事と生活の調和の実現のため、以下の取り組みが重要だと明記しています。

  • 労使間の話し合いの機会の整備
  • 年次有給休暇を取得しやすい環境の整備
  • 時間外・休日労働の削減
  • 労働者各人の健康と生活への配慮
  • 他の事業者との取引上の配慮

労働時間等見直しガイドラインの改正

労働時間などの設定の改善に向けて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律「働き方改革関連法」が成立しました。

勤務間インターバルを導入する努力義務や時間外労働の上限規制が新設されることに伴って「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」を踏まえた「労働時間等見直しガイドライン」も改正、平成31年4月から適用されたのです。

残業時間の上限規制(罰則付き)

働き方改革関連法の施行に伴って「36協定」で定める時間外労働時間に、罰則付きの上限が設けられました。違反した企業には6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。

年5日の年次有給休暇の取得の義務化

企業は労働者に年5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。それまでは労働者が自ら申し出なければ年次有給休暇を取得することができなかったのです。

しかし、この見直しにより会社が労働者の希望を聞き、労働者の希望を踏まえて時期を指定する必要ができました。

月60時間超残業の割増賃金率の引き上げ

月60時間を超える残業には猶予期間がなくなり、大企業・中小企業共に50%の残業割増賃金を支払う必要があります。

労働時間の客観的な把握の義務化

健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者などすべての人の労働時間状況が客観的な方法、その他適切な方法で把握されるよう法律で義務付けられました。

具体的には、労働時間を客観的に把握し、長時間働いた労働者に対して、医師による面接指導の確実に実施するといったもの。「労働安全衛生法」に基づき、残業が一定時間を超えた労働者から申し出があったら、医師による面接指導を実施しなければなりません。

フレックスタイム制の労働時間の清算期間の上限が3カ月に

フレックスタイム制の労働時間の清算期間が1カ月から3カ月になりました。上限が3カ月となるため、たとえば、6月に働いた時間分を8月の休んだ分に振り替えるという使い方ができます。

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置などを講ずることで、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度のこと。

これは労使委員会の決議および労働者本人の同意が前提となり、対象となるのは以下3つの要件を満たす労働者です。

  1. 使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められている
  2. 使用者から確実に支払われると見込まれる、1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上である
  3. 対象業務に常態として従事していることが原則(対象業務以外の業務にも常態として従事している者は対象労働者にならない)

産業医・産業保健機能の強化

本改正では事業者から産業医への情報提供の充実、また産業医の活動と衛生委員会との関係を強化する内容も盛り込まれました。

企業は、長時間労働者や業務の状況など、産業医が労働者の健康管理などを適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません。また、産業医から受けた勧告の内容を、事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなくてはならないのです。

ここには、事業者による労働者の健康情報の収集や保管、使用および適切な管理について指針を定めること、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにすることなども含まれています。

事業者は産業医などが労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければならないのです。

同一労働同一賃金の導入

同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間の不合理な待遇差の解消を目指した「同一労働同一賃金」も今回の改正に含まれています。

働き方改革では働く人々の健康を守り、多様なワークライフバランスを実現させる労働時間法制の見直しと雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を推進しています