過労死ラインとは? 基準や過労による主な疾病、気をつけること、国の対策について

過労死ラインとは、働きすぎによる病気や死亡を労災として認めるための基準のことです。ここでは過労による疾病や気をつけること、国の対策について説明します。

1.過労死ラインとは?

過労死ラインとは長時間労働よる病気や死亡を労働災害として認めるための基準のことで、時間外労働の目安が決められています。

  • 時間外労働が発症前の2か月間で約100時間あったか
  • 2~6か月間においてひと月あたり約80時間を超える時間外労働があったか

過労死という言葉が広まった背景

日本人の勤勉さは世界に誇るともいわれる一方、人間本来の生理的限界を逸脱した日本企業の過度な長時間労働は古くから問題視されていました。

「過労死」という言葉は1982年に社会医学的に命名され、1988年に「過労死110番全国ネット」という弁護士運営の電話相談窓口が開設されるなど、一般用語として定着してきたのです。

過労死を招く要因

過労死の背景にあるのは、過度の長時間労働や休みなく働き続けた結果、精神と肉体に大きな負荷がかかり、脳や心臓に悪影響を及ぼすということ。

代表的な死因に「脳血管疾患」「心臓疾患」があり、また精神障害による「自殺」についても過労死となる場合もあります。これについては過労死等防止対策推進法第2条に定められているのです。

過労死ラインとは長時間労働よる病気や死亡を労働災害として認めるための基準のこと。この基準には時間外労働の目安時間が定められています

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2.過労死ラインの基準

過労死ラインとされている目安は、時間外労働時間にあります。現在では、「健康障害発症の2~6か月に1か月あたり約80時間を超えたもの」と「健康障害発症前の1か月間に約100時間」の2つの基準が定められているのです。

時間外労働が1か月平均で80時間を超える

ひとつめの過労死ラインは「健康障害発症の2~6か月間に1か月あたり約80時間を超える時間外労働を行った」という基準で、健康障害と長時間労働の因果関係が認められやすいという一般的な目安です。

単純に計算すると月に20日出勤した場合、1日4時間以上の残業を行うと、合計で12時間の時間外労働をしたということになります。

発症1か月前の時間外労働が100時間を超える

2つ目の過労死ラインは「健康障害発症1か月前は、100時間を超える時間外労働を行ったという場合です。単純に計算すると月に20日出勤した場合、1日5時間以上の残業で合計13時間の時間外労働をしたことになります。

とはいえこれらはあくまで目安とされているもので、明確なものではありません。

労働基準法から考えた場合

労働基準法について、あらためて見ていきましょう。

労働基準法では、従業員の法定労働時間は1日8時間、1週間40時間、法定休日は1週間に1日(あるいは4週間に4日)以上必要と定義されています。

一方、従業員と雇用主が「36協定」を締結し、労働基準監督署に届けると、雇用主は時間外労働と休日労働を従業員に要請できるようになるのです。

過労死ラインとなる目安は時間外労働時間にあります。「健康障害発症の2~6か月間に1か月あたり約80時間を超えたもの」と「健康障害発症前の1か月間に約100時間」の2つです

3.過労死ラインに近い症状の前兆

過労死ラインは、時間外労働時間を目安としている一方、過労死ラインに近い症状もあると考えられているのです。ここでは、下記について説明します。

  1. 脳梗塞・くも膜下出血
  2. 心筋梗塞・虚血性心疾患
  3. うつ病
  4. 睡眠不足・居眠り

①脳梗塞・くも膜下出血

近年増加傾向にある過労死の原因が「脳梗塞」と「くも膜下出血」などの脳血管疾患です。

  • 脳梗塞:脳の血管が詰まる疾患
  • くも膜下出血:脳の血管から出血が生じてしまう疾患

脳卒中の前兆は、顔や手足の片方がしびれる、呂律(ろれつ)が回らない、目の焦点が合わせづらいなどで、くも膜下出血は、頭を殴られたような激しい頭痛が生じるとされているのです。

②心筋梗塞・虚血性心疾患

心臓を動かす筋肉の異常や、心筋の血管の滞りによる心疾患も近年多く見られており、その一つが心筋梗塞です。

これは冠動脈が動脈硬化によって硬くなり、心筋に血液を送れず心筋が壊死してしまう状態で、激しい胸の痛みに突然襲われることが多いとされています。また胸やみぞおちを圧迫するような痛み、吐き気、呼吸困難や息切れという症状も報告されているのです。

③うつ病

過度な長時間労働によるうつ病が原因で、自殺に至った場合も過労死として認定されます。うつ病の代表的な前兆とされているのは、下記のとおりです。

  • 睡眠障害(夜ベッドに入ってもなかなか寝付けない、朝ベッドからなかなか起き上がれない)
  • 何をやっても楽しいと感じない
  • 常にイライラしている
  • 仕事に集中できない
  • 頻繁に死にたいと思ってしまう

職場のコミュニケーション不足や人間関係のしがらみが背景となって、うつ状態に陥るケースが多いといわれています。

④睡眠不足・居眠り

働きすぎによる過労や睡眠不足が背景となり、勤務中や通勤途中に居眠り運転事故を起こしたり、自宅風呂場での溺死が労災と認定されたりしたケースもあります。

睡眠時間を確保していても下記のような症状がある場合、できるだけ身体を休めるように心掛けましょう。

  • 記憶力の低下
  • 急に意識が飛んでしまう
  • 夜に寝ても、1日中眠気に襲われてしまう

労災認定の基準は過労死ライン

上記のような症状が生じて、医師から診断された際、労災として認定される場合があります。

基本的な判断基準となるのは過労死ラインです。時間外労働時間が「健康障害発症の2~6か月間に1か月あたり約80時間を超えたもの」と「健康障害発症前の1か月間に約100時間」2つが焦点になる場合も多いといえます。

過労死ラインは時間外労働時間が目安となる一方、「脳梗塞・くも膜下出血」「心筋梗塞・虚血性心疾患」「うつ病」なども過労死ラインに近い症状といえるのです

4.過労死に対する国の対策

働きすぎによる過労死が問題視されている昨今ですが、国もさまざまな対策を図っています。事業場に向けた指導や労働時間の改善、メンタルヘルス対策など具体的な取り組みを見ていきましょう。

長時間労働の事業場に対する監督指導等

従来、労働行政機関による監督指導の対象は「月100時間」の時間外労働が行われている事業場でした。しかし2016年4月より「月80時間」の時間外労働が行われている事業場に拡大されたのです。

さらに過労死が起こってしまった事業場に対して、疾病の原因究明や再発防止対策の指導が強化されました。

長時間労働等に係る企業本社に対する指導

さらに2017年1月より、違法となる過度な長時間労働を複数の事業場で実施している企業に、事業場だけでなく本社に対しても労働行政機関による指導が実施されています。

たとえば地方にある事業場で違法な長時間労働が行われていた場合でも、本社に改善への指導が入るのです。

労働時間の適正な把握の徹底

2017年1月に策定された、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の周知や指導がさらに強化されました。

ガイドラインの目的は、労働時間の適正な把握のため使用者が講じる適切な管理などの措置を、具体的に明示することです。

企業名公表制度の運用

また是正指導段階から企業名を公表する、という制度も始まりました。たとえば労働法の観点で違法となる過度な長時間労働が複数の事業場で実施されていた企業については、代表者に対して指導を行います。そしてさらに、企業名の公表も実施されるのです。

36協定に関する法令の周知指導

2018年9月に定められた「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」を踏まえた指導も、実施されます。

これはいわゆる「36協定」、使用者と労働者が締結することで時間外労働が認められるものですが、その指導についても徹底されました。

過重労働による健康障害の防止対策

過労死など、発症リスクの高い環境で業務に従事する労働者を見逃さないため、専門医による面接指導を徹底するものです。職場の上司や同僚では気付きにくい、労働者の異変を見逃さないようにするための策といえます。

メンタルヘルス対策

うつ病などの精神障害に関係する労災支給決定や認定が行われた場合、労働行政機関は、労働者が従事していた事業場だけでなく本社に対しても、メンタルヘルス対策などの指導を実施するものです。

精神障害に関係する労災支給決定や認定された労働者が本社以外に勤務していた場合においても、本社への指導が入ります。

ハラスメント防止対策

過労死などの原因としてハラスメント事案が想定される事業所に対し、再発防止のための取り組みを労働行政機関が正しく指導を行うというものです。

この場合のハラスメントには「セクシュアルハラスメント」「パワーハラスメント」「マタニティハラスメント」などがあり、労働者に対するいじめや嫌がらせを指します。

過労死が問題視されている一方で、国は、事業場に向けた指導や労働時間への改善、メンタルヘルス対策などのさまざまな対策を図っています

5.過労にならないために各々が気を付けるべきこと

たびたび過労死にまつわるニュースが流れる昨今、私たちは過労にならないためどんなことに気を付けたらよいのでしょうか。ここでは、日常から心がけたいポイントやヒントを具体的に紹介します。

  1. リフレッシュやリラックスに努める
  2. 長時間労働を控える
  3. 生活リズムを整える
  4. タバコやコーヒーを控える
  5. 働き方を見直す
  6. すぐに医師からの診断を受ける
  7. 法律への理解を深める
  8. 周囲の声に耳を傾ける

①リフレッシュやリラックスに努める

過労死の原因には、突発的に集中した長時間労働に原因がある状況も目立つ一方、日常的な疲れの蓄積による過労死も珍しいものではありません。

過労死ラインでは「月80時間以上の時間外労働の超過」「月100時間の残業の継続」と定められていますが、そのような時間外労働だけが原因で過労死に至ってしまうケースも報告されているのです。

疲れを感じたらリフレッシュやリラックスを心掛けることも、過労死を防ぐ有効な手段といえるでしょう。

②長時間労働を控える

労働者自らが長時間労働を控えるよう常日頃から留意することも、重要な策といえます。脳・心臓疾患の労災認定基準では、「脳出血」「クモ膜下出血」「脳梗塞」「高血圧性脳症」「心筋梗塞」などの発症と示されているのです。

これらの疾病は働きすぎが原因とされています。休みを取らずに連続で労働していると誰死もなり得る可能性がありますので、注意しましょう。

③生活リズムを整える

疲れをため込まないためには、理想的な睡眠時間の確保と正しい生活リズムの維持も重要です。

睡眠時、浅い睡眠の「レム睡眠」と深い睡眠の「ノンレム睡眠」が90分ごとに繰り返され、レム睡眠の間に起床すると気持ちよく目覚められるといわれています。6時間や7時間半など90分の倍数を睡眠時間に設定すると、よいかもしれません。

④タバコやコーヒーを控える

リフレッシュの一つであるタバコやコーヒーですが、これらに含まれるニコチンやカフェインには覚醒作用があるため、必要以上に摂取し続けると、「疲れ」を感じづらくさせてしまうかもしれません。

疲れに対して体が麻痺してしまわないよう、摂取量をしっかり管理しましょう。また疲れたり気力を振り絞ったりしたいときに飲む栄養ドリンクにも、カフェインが含まれています。

⑤働き方を見直す

会社は、過労死の予防に向けて、労働者がワークライフバランスの取れた働き方ができる職場環境づくりに取り組む必要があります。まずは従業員満足度調査やその他のアンケートで、職場環境に対する労働者の声を聴いてみましょう。

また労働者が年次有給休暇を取得しやすくなるよう、業務の進行などについて日頃から進捗管理を徹底し、休暇取得希望や考えをヒアリングしておく必要もあります。

⑥すぐに医師からの診断を受ける

自分の体に異変や異常を感じた場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。

十分な睡眠時間を確保したり業務中に適当な休憩時間を挟んだりしても疲れが全く取れない、急に疲れを感じやすくなった、よりも仕事に集中しづらくなった場合なども要注意です。

⑦法律への理解を深める

労働基準法は、労働者の日々の健康や安全を保持し、過労死の予防を目的に制定された法律です。健康な状態で働き続けたいと考えるのであれば、きちんと法律を理解しておくことも重要でしょう。

また労働基準法をベースとして支給されるべき残業代に対して受け身になってはいけません。きちんと適正な額を請求できるという労働者の権利についても改めて理解しておきましょう。

⑧周囲の声に耳を傾ける

責任感が強い人は、ある程度の不調でも気にせず現状を維持する傾向にあります。また長時間労働などにより大きなストレスがかかってくると、周囲にいる労働者の声に耳を傾けにくくなってしまうという特徴もあるのです。

同僚や近い上司とのコミュニケーションを普段からきちんと取って、自分では気付きにくい不調や異変に気づいてもらえるような環境づくりをしておきましょう。

過労死を防ぐためには、過度な長時間労働を控えることはもちろん、良質な睡眠時間の確保や生活習慣も重要なのです

6.過労死による労働者災害補償保険を理解する

不測の事態に備えるためにも、過労に対するさまざまな補償について知っておくとよいでしょう。ここでは「労災保険の基準」「労災保険に基づく給付」について説明します。

労働者災害補償保険には基準がある

厚生労働省では、発生した脳や心臓の疾患を労災と認定するかどうかの基準となる「脳血管疾患及び虚血性心疾患などの認定基準」を定めているのです。

脳や心臓の疾患は、動脈硬化や日常の生活習慣が要因とされていますが、業務の過重で血管病変が著しく悪化し、発症する場合も考えられます。よって発症の原因が業務と認められると、労災補償の対象になるのです。

労災認定は過労死ラインが基準

健康を害する症状が発生し、医師から心疾患やうつ病などと診断されれば労災として認定されやすい一方、「過労死ライン」もひとつの判断基準となるのです。

時間外労働が、「健康障害発症の2~6か月間に1か月あたり約80時間を超えたもの」と「健康障害発症前の1か月間に約100時間」という2つのポイントもその焦点となります。

労働者災害補償保険の給付

企業に雇用されている労働者は、法律にもとづいて国が運営する労災保険の対象になるため、代表的な給付金として下記の5つの補償を受けられるのです。

  1. 業務中の事故により、後遺症が残ってしまった場合の年金と一時金
  2. 労災によって休業した場合、給料の80%の補償
  3. 労災により死亡した場合、遺族への年金と一時金、葬祭料
  4. 労災から1年6か月経過しても治療が続く傷病に対する年金
  5. 診療・薬などの治療費、手術費、看護費

不測の事態に備えるためにも、過労に対するさまざまな補償について改めて確認しておきましょう