給与とは?【意味を簡単に】給与所得控除、計算方法、手取り

給与とは、労働者が会社から受け取る報酬すべてのことです。ここでは給与と給料の違いや給与明細の確認ポイント、雇用契約について解説します。

1.給与とは?

給与とは、企業などの雇用主から従業員に対して支払われる労働の対価すべてを指す言葉です。基本給に限らず、時間外手当(残業代)などの手当やボーナスも含まれます。また、お金以外にも自社製品などを現物で支給される場合も給与の範囲です。給与から税金や社会保険料を控除した実際に手元に残る金額を手取りと言います。

給料との違い

給与とよく似た言葉に「給料」があります。2つの違いは一体何でしょうか。給料とは正規の勤務時間に対する報酬、すなわち基本給のことです。基本給に残業代や手当、ボーナスなどは含まれません。

給与は変動するが給料は変動しない

給料とは基本給、つまり昇給がない限り、給料の金額は変わりません。一方、残業時間によって変動する残業代や、会社の業績によって変わるボーナスを含んだ給与は、さまざまな不確定要素をもつため金額が変動するのです。

給与としてみなされるもの

残業代やボーナス以外にも給与と見なされるものがあります。

  • 手当:残業手当、休日出勤手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当など
  • 現物給与:無償または低価格で受け取った会社の商品、無償または低価格で借りた会社所有の土地や建物、無利息あるいは低金利で会社から借りたお金など

社内の一部で配布された記念品

創業記念品や永年勤続表彰記念品などを贈られた場合、それらは現金給与扱いになります。つまり記念品の購入金額が給与に加算される場合もあるのです。この場合、以下すべての条件を満たさない限り課税対象となり、給与明細に記載されます。

  • 社会一般的に見てふさわしい記念品
  • 処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下
  • 一定期間ごとの行事で支給されるものは、おおむね5年以上の間隔

混同されがちな「給与」と「給料」ですが、その意味は厳密には異なります。転職や就職の際は「給与」ではなく「給料」に着目するとよいでしょう

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2.給与明細の確認ポイントと記載項目

給与明細とは、給与の支払額や控除額をまとめて記載した通知書のこと。口座に振り込まれる金額だけを確認して給与明細は見ない、そんな人も多いのではないでしょうか。

しかし給与明細には、現状を知らせる情報がたくさん記載されているのです。ここでは給与明細を確認する上でのポイントを解説します。

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給与明細を受け取ったあと確認するポイントとは?

給与明細のおおまかな内容はどの会社も同じで、3つのブロックに分かれます。

  1. 勤怠:実際に働いた実績
  2. 支給:もらえる給料の明細
  3. 控除:給料から差し引かれる項目の明細

支給合計から控除合計を引いた「差引支給額」が、口座に振り込まれる金額になります。

給与支給業務の理解をしておく

従業員の給与支給額を計算する業務、つまり給与計算には、法律に対する正しい知識と仕組みの理解が必要です。会社と従業員は、労働に対して給与を支払う「労働契約」で結ばれており、給与計算はこの労働契約の根幹を支える非常に重要な業務です。

また従業員も、給与支払業務の基礎を理解すると、自身の明細に発生した不備や算定方法などが理解できます。

自身が支払ったお金の情報の確認

口座に振り込まれる金額は、本来の給与から社会保険料や各種税金などを差し引いた金額です。しかしこれら控除額は地域や年齢、家族環境や体調などによって異なるため、一言にいくらと括るのは非常に困難といえます。

そのため自身が支払っている金額は基本、自身が受け取った給与明細から確認したほうがよいのです。

給与が正確か確認する

給与計算は、労働契約の根幹を支えるもので、数ある業務のなかでもっとも間違えてはいけない業務のひとつといえます。

給与計算にはさまざまな給与計算ソフトが用いられますが、計算に必要な情報を入力するのは人間です。つまりどれだけ会社が正確に計算していたとしても、給与計算が間違うことは万に一つもない、と言い切ることはできません。

そのため、従業員は給与明細を受け取ったら直ちにチェックしなければならないのです。誤りを見つけた場合はすぐに経理担当者に連絡しましょう。

ふるさと納税の控除を確認

故郷や応援したい自治体に寄付する「ふるさと納税」では、納税額に応じて所得税や住民税に対する控除を受けられますが、正しく控除されているかどうかについては、給与明細の確認が必要です。

前年にふるさと納税を行い、ワンストップ特例制度の利用もしくは確定申告をしている人は、「税額控除額」の欄に数字が入っているかを確認しましょう。

給与明細に記載される項目とは?

前述のとおり、給与明細は大きく「勤怠・支給・控除」の3つのブロックに分かれています。ここではそれぞれの項目について、細かく見ていきましょう。給与明細に決まった書式はありませんが、大まかな内容はどの会社でも同じです。

額面

はじめに、給与に関する話題でよく登場する「額面」という単語のおさらいです。額面(額面給与)とは、基本給に残業代や交通費などの各種手当を加えた金額のことで、給与明細では「総支給額」や「支給額合計」の欄に記載されています。

求人広告に記載されている金額は、一般的にこの額面になるのです。

支給項目

支給項目は、会社から支給されるさまざまな金品の総称です。支給項目は主に「固定給」と「変動給」の2つに大別されます。

  • 固定給:基本給、役付手当、資格手当、家族手当、住宅手当、通勤手当など
  • 変動給:残業手当(時間外手当)、休日出勤手当、従業員が一時的に立て替えて払っていた出張旅費など

夏期や冬期にボーナスがある場合は原則、固定給である基本給をベースに計算します。また税金の計算と社会保険料の計算は、計算の対象が異なるため注意しましょう。

勤怠

勤怠の項目には、給料の支払い対象となる月に働いた実績が記載されており、勤務日数や欠勤日数、残業時間、有休消化日数、有給残日数などが勤怠項目に当たります。

このなかでも特に確認しなければならないのが、「残業時間」と「休日出勤」に関する項目です。勤怠のなかでも間違いが発生しやすい項目ですので、自分の申請や記録と異なる場合はすぐ上司や担当者に相談しましょう。

控除項目

控除項目には、給料から差し引かれる項目と金額が書かれています。口座で確認する金額は、額面から控除という名目でさまざまなものを差し引いた後の金額で、控除項目には以下に代表される内容が記載されているのです。

  • 社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)
  • 所得税や住民税
  • 会社独自の制度(団体保険料や従業員持株会、確定拠出年金(本人負担)など)

現代では紙ベースの給与明細から、オンラインで確認できる給与明細も増えています。どちらの明細でも、大事なことは「給与明細に興味を持つこと」です

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3.給与の計算方法

給与計算とは、給料の総支払額と控除額、手取り額を計算して、従業員および各関係機関に支払う業務の総称です。

担当者は、勤怠などの労働実績に応じて就業規則に基づいた総支給額を計算し、さらにそこから社会保険や税金などの控除額を計算しなければなりません。ここでは、その給与計算について見ていきましょう。

総支給額の計算

労働基準法にて、給与は毎月1回以上支払うと義務付けられているため、給与の締め日が過ぎたら担当者はただちに総支給額を算出しなければなりません。対象期間の勤怠をもとに、勤務日数や残業時間を確認して、総支給額を算出します。

控除額の計算

基本となる総支給額を計算したら、次は社会保険料や税金を合計した「控除額」を決定します。控除の内訳は大きく分けて2つ。法律で給与から控除すると定められている「法定控除」と、法定控除以外で企業ごとに定める「その他の控除」です。

実際に支払われる給与(手取り)の計算

給与計算の基本的な構造は、以下のとおりです。

総支給額–控除額=差引支給額

実際に従業員に手渡されるのは、総支給額から控除額を差し引いた差引支給額、いわゆる手取り額です。一人ひとりの給与計算をどのように行ったのか明記したものが給与明細となります。

残業や深夜勤務時の給与計算方法

続いて、残業や深夜勤務があった場合の給与計算について見ていきましょう。昇級や減給がない限り基本給は一定ですが、時間外労働による残業手当や深夜の労働に対する深夜手当、休日手当などは毎月変動するのです。

時間外、休日労働の給与計算は以下の計算式に当てはめて算出します。

時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×割増率(時間外労働の場合は1.25、休日労働の場合は1.35)

残業の計算単位

原則、労働時間は1分単位で計算します。労働時間の端数切捨ては認められていませんが、切り上げることに問題はありません。もし金額に1円未満の端数が生じた場合、就業規則等に定めたうえで50銭未満を切り捨ててそれ以上を切り上げ、とすることも可能です。

給与計算は、最新の法令に基づいて正確に処理しなくてはなりません。税金や社会保険料などはひんぱんに改正されます。計算前に必ず確認しましょう

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4.給与の源泉徴収票

給与等を支払ったすべての労働者に対して作成・交付されるのが「給与所得の源泉徴収票」で、これには会社が1年間いくらの給料を支払い、いくらの税金を徴収したかが記載されています。

源泉徴収票は、その従業員自身の確定申告や、次の職場での年末調整に使われるのです。

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給与の源泉徴収票を提出するタイミングとは?

源泉徴収票をなんとなく受け取っているが、いつ必要になる書類なのか分からない、また一度確認した後は捨ててよいのだろうか、と悩む人も多いのではないでしょうか。ここでは、給与の源泉徴収票が必要になるタイミングについて解説します。

従業員の退職時

従業員が退職した際、会社は1月1日から退職時点までの給与に基づいた源泉徴収票を発行すると義務付けられています。転職先の会社にて年末調整を行う際、前職の会社で行われた源泉徴収の内容と、転職先での源泉徴収の内容を合算する必要があるからです。

年末調整計算後

源泉徴収票は、年末調整の計算が完了した際にも発行しなければなりません。「年末調整の最終報告書」と位置付けると分かりやすいでしょう。

作成した源泉徴収票は、従業員と税務署に1部ずつ、市区町村に2部提出します(一部提出範囲は受給者が法人の役員である場合のみ)。つまり会社は、従業員1人につき合計4枚の源泉徴収票を作成しなければなりません。

また源泉徴収票は、会社員でも確定申告が必要、住宅ローンを組んだり扶養家族になったりと各種ライフイベントなどさまざまな場面で必要になります。

給与の源泉徴収票の見方とは?

源泉徴収票には聞き慣れない単語が並ぶため、見方が難しいと印象を抱く人も多いでしょう。そんな源泉徴収票に記載されている情報は、次の4つです。

  1. 支払金額
  2. 給与所得控除金額
  3. 所得控除の合計額
  4. 源泉徴収税額

①支払金額

支払金額は、いわゆる会社員の年収に当たります(交通費や旅費交通費などの非課税手当は含まれない)。給与、残業代(時間外手当)、ボーナス(賞与)をはじめ、各種手当を含めた額面の給料を支払金額といいます。

年の途中でほかの会社から転職してきた場合、前職の支払金額や徴収額の情報がなければ支払金額を確定できません。退職時に源泉徴収票の発行が必要なのはこのためです。

②給与所得控除金額

年末調整には、一定の額を経費として年収から差し引いて払うべき税金を安くする「給与所得控除」という制度があり、この項目には、それぞれの年収(支払金額)に応じて異なる金額が明記されています。これは自営業でいう必要経費にあたる金額です。

③所得控除の合計額

社会保険料控除や生命保険料控除、基礎控除や扶養控除など、給与所得控除以外の控除合計額が記載された項目で、次の2つに分けられます。

  • 毎月給与から控除(天引き)されてきた金額:健康保険料や厚生年金保険料、企業共済掛金などの年間合計額
  • 年末調整ではじめて控除される金額:配偶者控除や基礎控除など(源泉徴収票の下部に内訳の記載あり)

④源泉徴収額

源泉徴収額の項目には、1年間で徴収した所得税の合計金額が記載されており、計算式は次のようになります。

源泉徴収税額=(給与所得控除金額-所得控除の合計額)×所得税率

所得税率は課税される所得額に応じて異なりますが、源泉徴収票には記載されていません。詳しく確認したい場合は、国税庁から発表されている情報を参照しましょう。

源泉徴収票は再発行できます。会社には源泉徴収票の作成と保管が義務付けられているため、紛失した場合は勤務先に再発行を依頼しましょう

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5.雇用契約とは

雇用契約とは、雇用者と労働者の間に結ばれる契約のこと。労働者は雇用者に対して労働力の提供を約束し、雇用者は労働者に対して報酬を与えると約束するのです。

アルバイトは疎かになってしまいがち

雇用契約は、正社員やアルバイト、パートなどの雇用形態にかかわらず、すべての労働者と雇用者の間で締結されます。

正社員をはじめとするフルタイム勤務の場合、きちんと雇用契約を結び、労働条件通知書によって労働条件を事前に掲示する場合も多いですが、非正規雇用の場合はこれらの契約が疎かになりがちです。

労務トラブルを引き起こす恐れがありますので、アルバイトやパートの場合も雇用契約を結ぶことが求められます。

口頭でも契約は成立する

労働者と雇用者の双方が契約内容に合意している場合、雇用契約は書面だけでなく、口頭でも成立します。しかし口頭のみではトラブルを招く恐れがあるため、交わした雇用契約を書面に記した「雇用契約書」を取り交わすのが一般的です。

また契約そのものは口頭でも成立しますが、労働条件は書面で明示しなければなりません。労働者を雇用する際、雇用者は賃金や労働時間外の労働条件などを書面などで明示すると義務付けられているのです。

雇用契約も書面確認が大切

雇用契約書は双方の取り決めによる書類で、なくても法的に問題はありません。しかしトラブルを防ぐためにも、アルバイトやパート、正社員を問わず書面を交付しておくとよいでしょう。

一方、賃金や労働条件を明記した労働条件通知書は、法的に交付義務のある書類です。交付していない場合、雇用主が労働基準法の義務に違反したことになりますので注意しましょう。

雇用契約は、口頭や紙面だけでなく、オンラインでも締結できます。しかし労働条件の通知は紙媒体で行わなければならないため注意が必要です

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6.給与所得に含まれるものとは?

使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金や賞与なども給与所得に含まれます。一定の条件を満たした食事の現物支給や商品の値引販売など、給料としての性質を有するものが、税法上の給与所得となります。また青色事業専従者給与も、給与所得です。

役員や使用人に支給する手当

前述のとおり、役員や使用人に支給する手当は原則として給与所得になります。ほかにも残業手当や休日出勤手当、職務手当や家族手当なども給与所得となりますが、次のような手当は非課税になるのです。

  • 通勤手当のうち、一定額以下のもの
  • 転勤や出張などの旅費のうち、通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

現物支給や商品の値引販売などの経済的利益

一般的に給与は金銭で支給されますが、現物支給や商品の値引き販売などの経済的利益も給与所得の収入金額とされるのです。具体的には、次のような経済的利益を指します。

  • 物品やその他の資産を無償または低い価額で譲渡したことによる経済的利益
  • 土地や家屋、金銭などの資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
  • 福利厚生施設の利用などを無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
  • 個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益

金銭以外の物品や権利を与えられた場合も、給与所得として所得税が課税されます。現物給与については非課税の規定もあるため、判断に迷った際は担当者に相談してみましょう