雇用保険とは? 加入方法、従業員退職時の手続き、パート・アルバイトの加入可否について

雇用保険は、労働者が失業して再就職を目指すときに給付を受けられる制度です。労働者にメリットがあるだけでなく、事業主と労働者の雇用関係が円滑になる役割も果たしています。

雇用保険は近年、適用拡大のために法律が一部改正されました。労働の多様化を反映した、高齢者向けの給付金制度も存在します。制度の内容を正しく理解し、落ち着いて対応できる心構えを持ちましょう。

目次

1.雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者が失業給付などを受けられる保険で、労働者が、

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

という条件を満たした場合、加入します。

雇用保険では

  • 失業した
  • 働き続けられなくなった
  • 教育訓練を受けた

といった場合に給付を受けられます。失業中は収入を得られなくなるため、その間に安定した生活を送りながらスムーズに再就職できるよう、給付が支給されるのです。

また、雇用保険に加入する事業所への支援として、「雇用安定事業」「能力開発事業」の二事業も行っています。

この二事業の目的は、

  • 失業の予防
  • 雇用機会の安定
  • 労働者の能力の向上

などです。

雇用保険の失業等給付とは?

雇用保険は、雇用に関するあらゆる機能を持った制度です。機能の分類は細かく枝分かれしていきますが、

  1. 失業等給付
  2. 雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)

2つに大別され、このうち失業中の労働者に支給されるのは失業等給付になります。

失業中は所得がなくなってしまうため、不安を抱えながらの求職になる場合が多いでしょう。雇用保険では労働者が安定した生活を送りながら再び就職できるよう、ハローワークで職業相談や職業紹介といった就職支援をした上で失業等給付が支給されるのです。

雇用保険は、失業等給付と雇用保険二事業の2つに大別されます。失業等給付は、求職活動を行う労働者に支給されるものです

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2.雇用保険の制度改正(平成29年改正)について

就業や雇用を安定させることを目的として、

  • 雇用保険法
  • 職業安定法
  • 育児・介護休業法
  • 徴収法

といった雇用保険に関する法律が平成29年に一部改正されました。

具体的な改正内容は、

  • 基本手当の拡大
  • 失業等給付に関連する保険料率、国庫負担率の一時的な引き下げ
  • 育児休業に関連した給付の支給期間の延長
  • 雇用保険二事業に関連する、専門的な教育訓練給付の給付率の引き下げ
  • 職業紹介の機能強化、求人情報などの適正

など。

平成29年度より雇用保険料率の引き下げ

平成29年に雇用保険法などの一部が改正され、失業等給付の保険料率が引き下げられました。

  • 労働者負担 4/1,000→3/1,000
  • 事業主負担 4/1,000→3/1,000

このように労働者も事業主も1/1,000ずつ引き下げられていますが、事業主が負担する二事業の保険料率は変動がなく、3/1,000のままです。また、一般の事業だけでなく、農林水産や清酒製造、建設事業も、労働者と事業主の保険料率が1/1,000ずつ引き下げられました。

平成29年の法改正で、基本手当の拡大や雇用保険料率の引き下げが行われました。保険料率は、労働者と事業主共に1/1,000ずつ引き下げられています

3.雇用保険の加入対象者(被保険者)とは?

下記の条件を満たすすべての労働者は、原則として雇用保険に加入する必要があります。

  • 31日以上雇用される見込みがある
  • 雇用保険が適用される事業である
  • 1週間に20時間以上働いている
  • 学生でない

「雇用保険が適用される事業」は、業種や規模などに関係なく、労働者を雇用していればすべての事業が当てはまるとされています。

そして事業主には、

  • 労働保険料の納付
  • 雇用保険法に関連する各種の届出

などの義務が発生するのです。

雇用保険が適用される労働者とは、雇用関係によって生活のための収入を得ている者のこと。雇用関係とは、「事業主の支配を受ける」「事業の規律の下に労働を提供する」「労働の成果対償として賃金や給料などの支払いを受ける」といった関係のことを指しています。

平成29年1月1日から、65歳以上の労働者にも雇用保険の加入義務が適用されるようになりました。また、令和2年度からは64歳以上の労働者も雇用保険料を支払う仕組みになります。

パートやアルバイトも雇用保険に加入できる?

パートタイムやアルバイトの労働者も、

  • 31日以上雇用される見込みがある
  • 1週間に20時間以上働いている

という条件に当てはまる場合、雇用保険に加入しなければなりません。「31日以上雇用される見込み」とは、具体的には以下に該当するケースです。

  • 雇用期間の定めがない
  • 雇用期間が31日以上とされている
  • 雇用契約に31日未満で雇止めすると明示されていない
  • 同様の雇用契約で労働者が31日以上雇用された実績がある

派遣社員や日雇労働者も雇用保険の加入対象?

  • 31日以上雇用される見込みがある
  • 1週間に20時間以上働いている

といった条件を満たす労働者は、雇用保険に加入しなければなりません。よって下記のような非正規雇用の労働者も加入の対象となるのです。

  • アルバイト
  • パートタイマー
  • 派遣社員(派遣元である人材派遣会社との間で労働契約を結んでいる労働者)
  • 契約社員
  • 嘱託社員
  • 臨時社員
  • 準社員

また、通常よりも雇用期間が短いとされる日雇い労働者や季節労働者も、条件を満たす場合は雇用保険の加入対象となります。

パートタイム労働者や日雇い労働者、そして季節労働者も、一定の条件を満たした場合は雇用保険の加入対象になります

4.雇用保険に加入できない労働者とは?

業務委託契約や個人事業主など、雇用保険に加入できない労働形態についてまとめました。

業務委託契約の在宅ワークや個人事業主は雇用保険の対象外

雇用保険の対象となるのは、雇用関係によって収入を得る労働者です。雇用関係とは、労働者が事業主の下で働き、賃金や給料を受ける関係のこと。業務委託契約」「在宅ワーク」「個人事業主」といった、雇用関係に該当しない場合、雇用保険の対象外になります。

代理店やフランチャイズの加盟店は?

フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)は、それぞれ独立した事業体です。加盟店のオーナーは、フランチャイズに加盟しても給与が与えられるわけではありません。

オーナーが独自に利益を追求し、お店の労働者に給与を支払います。加盟店のオーナーが個人事業主と見なされる場合、フランチャイザーとは雇用関係にないとして雇用保険の対象外になります。

業務委託契約や在宅ワーク、個人事業主といった働き方に雇用関係はありません。そのため、雇用保険の対象外となります

5.パートの雇用保険の加入条件

正社員に比べて1週間の労働時間が短い労働者を「パートタイム労働者」といいます。

  • パートタイマー
  • アルバイト
  • 契約社員
  • 準社員
  • 臨時社員
  • 嘱託社員

呼び方が異なっても、条件に当てはまる場合はパートタイム労働者となります。非正規雇用のパートタイム労働者も、

  • 31日以上雇用される見込みがある
  • 1週間の労働時間が20時間以上である

場合、雇用保険の加入対象になるので覚えておきましょう。

パートタイム労働者の雇用保険の適用基準①

雇用保険が適用される条件のひとつに「31日以上雇用される見込みがある」というのもがあります。適用されるのは、下記のいずれかに該当する労働者です。

  • 雇用期間が定まっていない
  • 雇用期間が31日以上とされている
  • 契約更新の規定に、31日未満での雇止めが示されていない

更新の規定はないものの、同じ雇用契約によって雇用された労働者が31日以上雇用されている

当初は31日以上の雇用が見込まれていなかったとしても、その後31日以上雇用されることが見込まれるようになった場合、その時点から雇用保険の適用対象となるのです。つまり、31日以上の雇用継続をしないと明示している場合を除き、31日以上の雇用見込みがあるといえます。

もし雇用期間が31日未満だったとしても、規定に契約を更新する可能性があることが記されていれば、31日以上の雇用見込みがあるとして雇用保険が適用されます。

パートタイム労働者の雇用保険の適用基準②

雇用保険が適用される条件に「1週間の労働時間が20時間以上である」というものがあります。パートタイム労働者は、週20時間以上の労働か未満か、どちらが適しているかを考える必要が出てくるでしょう。

パートタイム労働者も、31日以上引き続き雇用される見込みで、かつ1週間の労働時間が20時間以上である場合は、雇用保険が適用されます

6.雇用保険加入のメリットとデメリット

メリットとデメリットの両方を知り、雇用保険への理解をより深めましょう。

メリット①失業給付(失業保険)や再就職手当を受給できる

失業して収入がなくなってしまうと、次の就職が決まるまで安定した生活を維持できるか不安は募るでしょう。雇用保険は失業した労働者が安心して就職活動できるよう、必要な給付を行う制度です。

もし失業した場合に無収入になるリスクを考えると、雇用保険には大きなメリットがあります。

雇用保険の給付額は、過去6カ月間に受け取った給与額や年齢、勤続期間などから割り出します。また、給付がスタートする時期や受けられる期間は、退職の理由が会社都合や自己都合のどちらかによって異なります。

会社都合とは、会社の倒産や会社から解雇されたといった労働者の意思ではない理由によるもの。会社都合による失業は「特定受給資格者」とされ、自己都合の「一般の離職者」よりも給付日数が大幅に長くなります。

メリット②育児休業給付や介護休業給付を受給できる

失業等給付は、

  • 求職者給付
  • 就職促進給付
  • 教育訓練給付
  • 雇用継続給付

という4つの機能を持っています。

このうち、労働者が円滑に仕事を続けるための支援を目的としているのが、雇用継続給付です。雇用継続給付は、「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」という制度によって労働者に給付されます。

それぞれ受給資格が異なるので、自身が被保険者に該当するか確認や手続きをする必要があるでしょう。

メリット③教育訓練給付金を受給できる

教育訓練給付金は、失業等給付に位置付けられる教育訓練給付によって労働者を援助する給付制度で、労働者の能力向上やキャリア形成を経済的に支援します。たとえば、資格取得などを目的とした講座を受講する際、学費の一部が支給されることがあるのです。

離職の翌日以降から受講スタートまでが1年以内で、かつ雇用保険に入っていた期間が3年以上であれば支給の対象となります。在職者でも条件を満たす場合、在職期間中に指定講座で支払った自己負担分の一部が支給されます。

デメリット①社会保険料を支払う義務がある

雇用保険に加入した場合、労働者も事業主も保険料を徴収されるのです。保険料は、労働者の場合、給与の0.3~0.4%が天引きされる形で徴収されます。

具体的な保険料率は以下の通りです。

  • 一般の事業 9/1,000(労働者3/1,000、事業主6/1,000)
  • 農林水産・清酒製造の事業 11/1,000(労働者4/1,000、事業主7/1,000)
  • 建設の事業 12/1,000(労働者4/1,000、事業主8/1,000)

一般の事業とは、農林水産や清酒製造、建設のいずれにも当てはまらない事業のことです。

デメリット②会社側が雇用保険の手続きに時間を取られる

事業主は労働者を雇用するたびに、雇用保険の加入条件を満たすか確認し、条件を満たす場合は雇用保険の加入手続きを取り、雇用保険被保険者証を渡します。正社員や条件を満たすパートタイム労働者は、すべて雇用保険に加入させる義務が生じるからです。

新規の事業所であれば、まずは適用事業所の設置手続きをします。

労働者の加入には、

  • 労働保険関係成立届を労働基準監督署へ提出
  • 雇用保険適用事業所設置届や雇用保険被保険者資格取得届などをハローワークへ提出

など、複雑な事務手続きが必要になるのです。

雇用保険のメリットは、失業・休業時に手当が出ることなどが挙げられます。一方デメリットは、社会保険料を徴収されること、事業主は雇用保険の手続きに時間を取られることなどです

7.雇用保険料は誰が支払う?|負担方法について

雇用保険料は、加入者である労働者と事業主の双方が負担することになっています。事業によって若干異なりますが、一般の事業の場合は、下記のようなものです。

  • 労働者の保険料率…3/1000
  • 事業主の保険料率…6/1000

雇用保険料は、加入者である労働者と事業主の双方が、それぞれ一定の割合で負担することになっています

8.雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、【雇用保険に入っている労働者の賃金総額×雇用保険料率】で算出されます。一般の事業で働く労働者5名が、ある月に20万円ずつ賃金の支払いを受けた場合、

20万円×5名×0.003(一般の事業の保険料率0.3%)=3,000円

この月に労働者5名が支払う雇用保険料の総額は、3,000円になります。

賃金総額の定義と注意点

賃金総額は、事業主が労働者に支払う賃金すべてのことで、基本賃金のほか、賞与や手当も含まれます。

賃金とするものは、

  • 基本賃金
  • 賞与
  • 通勤手当
  • 超過勤務手当
  • 扶養手当
  • 技能手当
  • 調整手当
  • 地域手当
  • 住宅手当
  • 奨励手当
  • 休業手当

などの各種手当に加えて、

  • 社会保険料(労働者負担分を事業主が負担する場合)
  • 前払い退職金

も含まれます。基本的にすべての賃金が賃金総額に含まれますが、

  • 臨時に支払われた賃金(結婚祝金、災害見舞金、死亡弔慰金、退職金など)
  • 役員報酬
  • 出張旅費、宿泊費
  • 工具手当、寝具手当
  • 傷病手当金
  • 休業補償費

などは例外的に賃金に含まれません。

雇用保険料率とは?

雇用保険料は、労働者と事業主が支払いますが、支払う分は労働者の賃金総額に対して雇用保険率が適用されます。雇用保険率は、事業の種類によって3つに分けられます。

  • 一般の事業 9/1,000(労働者3/1,000、事業主6/1,000)
  • 農林水産・清酒製造の事業 11/1,000(労働者4/1,000、事業主7/1,000)
  • 建設の事業 12/1,000(労働者4/1,000、事業主8/1,000)

一般の事業とは、農林水産や清酒製造、建設のいずれにも当てはまらない事業のこと。事業によって保険料率が異なるので、まずは従事する事業がどれに該当するか確認しましょう。

雇用保険料の計算式は「雇用保険に入っている労働者の賃金総額×雇用保険料率」となります。基本的にすべての賃金(賞与や通勤手当など)が賃金総額に含まれますが、一部例外もあります

9.雇用保険料の納付方法

雇用保険料は、労災保険料と一緒に納付しますが、この2つを合わせて労働保険料と呼びます。雇用保険料と労災保険料は、基本的には分けて納付することができません。

例外として、

  • 概算保険料が40万円以上
  • 労災保険か雇用保険どちらかだけに加入しており、保険料が20万円以上

といったケースでは、分割して納付できます。

もし、実際に支払われた賃金と差がある場合は、年度終了後に精算するのです。

  • 実際の賃金より多い場合 翌年の保険料から差し引く
  • 実際の賃金より少ない場合 正しい保険料になるよう追加で支払う

賃金が倍以上になるなど大きく増加したときには、

  • 増加概算保険料の申告
  • 30日以内の保険料の納付

をしなければなりません。

また、年度中に賃金が倍以上になるなど大幅に増加した場合は、年度途中でも増加概算保険料を支払う必要があります。

雇用保険料の納付先と納付期間

労働保険料(雇用保険と労災保険)の年度更新の申告および納付する期間は、毎年6月1日~7月10日です。保険料の申告は、所轄の労働局や労働基準監督署で行います。

保険料は、郵便局や銀行などの金融機関、またはインターネットで納付可能です。口座振替で納付する場合は、申告書を労働局または労働基準監督署に提出します。

口座振替であれば、金融機関で手続きをする手間や待ち時間がなく、納付を忘れる心配もありません。また、手数料も発生せず、引き落としまでに最大2カ月のゆとりができます。

もし手続きが遅れて保険料の申告・納付が間に合わなかった場合、政府の決定によって保険料の10%を追徴金として支払うよう命じられることがあるのです。保険料は正確に集計した上、納期の見落としがないように気を付けましょう。

年度更新とは? 計算や手続きの方法

労働保険料は、保険年度(毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間)ごとの見込み給与から雇用保険料と労災保険料を算出・申告し、事業主が前もって支払います。

これが労働保険の年度更新と呼ばれるもので、事業主は年に一度、更新の手続きをしなければなりません。年度更新で支払った金額を、月ごとに労働者の給料から天引きします。

年度更新の期間は、毎年6月1日から7月10日までで、6月のうちにその年の4月から翌年の3月までの1年間に必要な労働保険料を算出して支払います。また、前年に支払った労働保険料に過不足がなかったか精算することも、年度更新の手続きに含まれます。

前年に支払った保険料が不足していた場合はその分を支払い、払い過ぎていたことが分かった場合は新年度の保険料から差し引いて調整します。

雇用保険料は、労災保険料と一緒に労働保険料として納付します。納付はその年度の見込額を前払いする形で、金融機関の窓口やインターネットで行います

10.雇用保険の加入に必要な書類まとめ

雇用保険へ新規加入する場合、労働保険関係成立届を労働基準監督署に提出した上で、適用事業所の設置手続きを進めます。手続きはハローワークで行いますが、ここでさまざまな書類が必要になります。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 労働保険保険関係設立届(控)
  • 労働保険概算保険料申告書(控)
  • 履歴事項全部証明書 原本1通
  • 労働者名簿

書類のうち雇用保険被保険者資格取得届は、賃金台帳や出勤簿などを添付しなければなりませんが、

  • 労働保険事務組合や社会保険労務士を通して提出した場合
  • 特に問題がない場合

は添付書類を提出する必要はありません。

雇用保険の被保険者資格取得届とは?

雇用保険被保険者資格取得届は、対象の労働者を雇用保険に加入させるために必要な書類で、労働時間の変更などで雇用保険の対象となった際に提出します。

事業主は、労働者が被保険者となった日(新入社であれば入社した日)の翌月10日までにハローワークに提出します。もし手続きが漏れてしまうと、遡って加入したときに雇用保険料が変わって修正申告をすることになるので、気を付けましょう。

雇用保険の加入にはさまざまな書類が必要です。中でも雇用保険被保険者資格取得届は、労働者を雇用保険に加入させるための大切な書類です

11.ハローワークにおける雇用保険の加入手続きの方法

事業主が雇用保険適用事業所設置届を提出し、労働保険の加入手続きを進めると、11桁(4桁-6桁-1桁)の番号が与えられます。これを雇用保険適用事業所番号といい、事業所ごとに割り振られます。

事業主は条件を満たす労働者を1人でも雇っている場合、こうした手続きを経て雇用保険適用事業所番号を取得しなければなりません。雇用保険の加入対象となる労働者がいる場合は、雇用保険被保険者資格取得届を労働者1人につき1枚ずつ提出します。

初めて労働者を雇い入れるときだけでなく、その後新たに労働者を雇ったときにも必要な手続きです。雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、労災保険と同様に労働者を雇用した翌日より10日以内となっています。

年度の途中で雇用が生じた場合には?

労働者を雇用した時点で労働保険が適用されますが、この状態を「保険関係の成立」といい、10日以内に保険関係成立届を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。
また、保険関係が成立してから50日以内に、年度末までの賃金総額を見込み、概算保険料を算出して概算保険料申告書を、

  • 所轄の都道府県労働局
  • 所轄の労働基準監督署
  • 日本銀行

のいずれかに提出します。年度中に新たに労働者を雇った場合も、同様の手続きです。事業によっては、労災保険と雇用保険の適用の方法を区別していることがあります(二元適用事業)。この場合は手続きを個別に行うのです。

年度中に保険関係を解消するケースでは、50日以内に確定申告をします。確定保険料と概算保険料に差額がある場合は調整します。たとえば、確定保険料よりも概算保険料が多いときには、差分が還付されるのです。

労働保険の加入手続きをすると、事業所ごとに雇用保険適用事業所番号が割り振られます。また、労働者を雇い入れた場合には雇用保険被保険者資格取得届を1人につき1枚提出します

12.雇用保険の被保険者番号とは?|番号の調べ方

雇用保険に加入すると、ハローワークより雇用保険被保険者証という証明書が発行されます。

この書類に、記載された11桁(4桁-6桁-1桁)の番号が労働者に割り振られる被保険者番号で、転職などの手続きの際、雇用保険を引き継ぐために必要になります。

雇用保険に入っている労働者が退職や転職をしても、基本的には被保険者番号が変わりません。

番号が不明な場合は、雇用保険被保険者証を前の職場から郵送してもらうか、ハローワークで再発行してもらいましょう。

雇用保険被保険者証は小さな書類ですので紛失を防ぐため、事業所側で保管するケースが大半です。退職の際、離職票などとまとめて労働者へ手渡されます。

雇用保険被保険者証には、労働者一人ひとりに割り振られる被保険者番号が記載されています。転職などの際、雇用保険を引き継ぐために必要になります

13.従業員退職後の雇用保険の手続きまとめ

労働者が退職した後、雇用保険に関してどのような手続きが必要になるでしょうか。

離職後に事業主が提出する書類

事業主は、雇用保険の喪失に関する書類などをハローワークに提出します。

①雇用保険被保険者資格喪失届とは?

労働者が退職する場合、事業主は、

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書

を管轄のハローワークに提出します。雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険に加入していた労働者が事業所を退職したことを証明する書類です。離職証明書を提出する必要がないケースもある一方、雇用保険被保険者資格喪失届は保険に加入している労働者が退職するときに必ず作成しなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのウェブサイトに様式がアップされています。

使い方としては、様式だけ印刷して手書きで記入、内容を入力して印刷、どちらかの方法を選択できます。

入力する項目は、

  • 被保険者番号
  • 事業所番号
  • 資格取得年月日
  • 離職等年月日
  • 1週間の所定労働時間
  • 被保険者でなくなったことの理由

など20以上です。

②雇用保険被保険者離職証明書とは?

労働者が退職する際に事業主がハローワークへ提出する書類は、雇用保険被保険者資格喪失届のほかに「雇用保険被保険者離職証明書」があります。雇用保険被保険者離職証明書は在職時の賃金を証明するもので、雇用保険の基本手当の金額を決定する上で必要になります。

退職者が離職票と呼ばれる書類の交付を希望した場合は、雇用保険被保険者離職証明書を提出しなければなりません。もし退職者が基本手当を受け取らない場合は、作成する必要はありません。59歳以上の退職者に対しては、本人の希望にかかわらず同様の書類を用意する必要があります。

雇用保険被保険者離職証明書は、退職者が離職する前に本人が記名、または自筆で署名することになっています。離職理由について退職者と事業主の間で主張に隔たりがある場合、ハローワークで事実関係を調査し、その上で離職理由を判定します。

雇用保険受給資格者証の確認

退職した労働者が、失業手当(基本手当)を受け取る資格があることを証明する書類が「雇用保険受給資格者証」です。失業状態の確認をハローワークで行う「失業の認定」手続きの際に、失業認定申告書と併せて提出します。

雇用保険受給資格者証の交付は、雇用保険に加入したときにハローワークから事業所へ交付されています。そのため、ほとんどの場合は退職するときに事業所から労働者へ渡されるのです。

万が一雇用保険受給資格者証を紛失した場合、電子申請かハローワークの窓口で再発行できますが、窓口での手続きには、印鑑と身分証明証が必要になります。

雇用保険受給資格者証に記入する項目は、氏名や生年月日、被保険者番号などの基本情報のほか、離職した時の年齢や年月日、離職理由など退職時の情報にも及びます。

雇用保険被保険者離職票(-1、2)の確認

事業所が管轄のハローワークに、雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書を提出すると、雇用保険被保険者離職票-1や雇用保険被保険者離職票-2(離職証明書の複写)が発行されます。

事業所で記入する必要があるのは、離職証明書の複写である雇用保険被保険者離職票-2です。事業所は発行された2つの離職票を退職者に送付します。ここまでが、事業所側が離職票発行のために行う一連の手続きとなります。

書類を受け取った退職者は、受給資格の認定を受けるためにハローワークで2つの雇用保険被保険者離職票を提出します。離職票を発行するための離職証明書の提出は、退職者が被保険者の資格を喪失した翌日から10日以内に行わなければなりません。

事業所としては離職票の有無を早めに確認した上で、本人に送付するまでの手続きを円滑に行いましょう。

離職証明書の書き方

ハローワークから事業所に発行される、

  1. 雇用保険被保険者離職票-1:退職者がハローワークに来所してから記入する
  2. 雇用保険被保険者離職票-2:離職証明書を複写したものなので、結果的に事業所側が記入する

2つは、退職者が失業手当(基本手当)を受給する際に必要な書類です。

雇用保険被保険者離職票-2は、右半分に離職理由を、左半分には、1年間の賃金の支払状況を記入します。労働期間が1年に満たない場合は、労働期間外の部分を斜線で引くなどするのです。

賃金額の欄には「A」「B」とありますが、

  • A…月給
  • B…日給

という区分になっています。雇用保険の失業等給付の算出対象となる賃金は、労働保険上の賃金と異なり賞与や退職金が含まれないので、注意が必要です。

事業主はハローワークから雇用保険被保険者離職票(-1、2)の発行を受けたら、速やかに退職者に送付します

14.65歳以上の従業員の雇用保険について

平成29年の適用拡大により、65歳以上の労働者も

  • 31日以上雇用される見込みがある
  • 1週間の労働時間が20時間以上である

という条件をいずれも満たす場合は、高年齢被保険者として雇用保険に加入することになりました。保険料については当面免除となっています。

高年齢被保険者として雇用保険に加入

職場が変わった場合でも適用要件を満たせば、雇用保険に加入します。適用拡大された平成29年以降に雇用した労働者だけでなく、それより前に雇用した65歳以上の労働者も、適用要件に該当する場合は保険の加入手続きを取る必要があるのです。

65歳以上の労働者の加入条件

保険の加入対象となる労働者は、雇用した時点から高年齢被保険者となります。事業主は、雇用した翌月の10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークへ提出しなければなりません。

労働者の勤務時間などの変更により適用要件を満たした場合も、労働条件が変更となった翌月の10日までに管轄のハローワークへ届け出ます。

高年齢被保険者の雇用保険料

高年齢被保険者の雇用保険料については他の労働者と同じく徴収されますが、令和2年3月までは事業主・労働者共に支払いが免除されています。保険料率は特別に低く設定されることはなく、他の労働者と同じ雇用保険料率が課されます。

保険料率は毎年変更になる可能性があるので、都度確認しましょう。

適用拡大により、65歳以上の労働者も雇用保険の加入対象になりました。加入条件や保険料率は他の労働者と同じですが、保険料の支払いは令和2年3月まで免除されます

15.高年齢求職者給付金とは?基本手当との違い

65歳以上の退職者は、失業したときに給付を受けられる基本手当に代わるものとして高年齢求職者給付金を受け取れます。要件を満たした上で離職票をハローワークへ提出すると、高年齢求職者給付金を受ける資格を得られるのです。

基本手当は年金と併給できませんが高年齢求職者給付金は一時金の扱いとなるため年金との併給が可能です。また、支給の回数制限が撤廃されたので、何度でも受け取ることができます。

高年齢求職者給付金の受給要件

高年齢求職者給付金の受給は、下記の要件を満たすことで資格を得られます。

  • 65歳以上の雇用保険被保険者である
  • 退職日直前の1年間に、雇用保険に合計6カ月以上加入していた
  • 現在失業中で、働く意思があり就職活動を行える
  • 健康に問題なく、いつでも再就職できる

以上の要件を満たした場合、ハローワークへ離職票を提出する必要があります。また、失業が自己都合による場合、退職前までの2年間に通算12カ月以上雇用保険に加入していることが給付を受ける条件となります。

また、65歳で定年退職し、同じ事業所に再雇用された場合も、

  • 労働時間が週20時間未満
  • 週20時間以上の仕事に対する就職活動をする

という要件を満たせば、受給資格を得られます。

高年齢求職者給付金の給付日数や支給金額

受け取れる高年齢求職者給付金の金額は、退職者の雇用保険の加入期間により次のように異なります。

  • 6カ月以上1年未満…30日分
  • 1年以上…50日分

90~330日分が28日分ずつ支給される基本手当と違い、高年齢求職者給付金は一時金扱いとして一括で支払われます。

実際の高年齢求職者給付金の支給額を算出するには、

  • 賃金日額(退職直前の6カ月の賃金の合計÷180日)
  • 基本手当日額(賃金日額に給付率を掛ける)

が必要です。基本手当日額は、賃金日額によって異なる給付率を掛けて計算し、基本手当日額が割り出せたら、これに給付される日数(30日分か50日分)を掛けてで、高年齢求職者給付金の支給額を算出するのです。

また、高年齢求職者給付金は所得とは見なされないため、確定申告の必要はありません。

高年齢求職者給付金は、65歳以上の退職者が受給できる給付金です。金額は、雇用保険の加入期間などによって異なります