経営指標とは?【一覧でわかりやすく】経営のKPI、分析方法

経営指標とは、財務諸表から算出される会社の経営状況を表す指標のことです。突然の経営悪化や倒産を防ぐためには、経営指標から経営状況を把握できているかが重要です。

今回は経営指標について、その重要性や経営指標からわかること、経営指標の一覧などを詳しくご紹介します。

1.経営指標とは?

経営指標とは、会社の経営状況を表す指標のこと。財務諸表の数字をもとに算出され、自社の状況を数字から客観的に把握できます。

財務諸表には売上高や利益、資本金などさまざまな項目が記載されており、経営指標はこれらの数値を組み合わせて算出するため、あらゆる角度から経営状況が分析できるのです。経営指標を活用する手法を、専門用語で管理会計「計数管理」ともいいます。

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2.経営指標が重要な理由

経営指標が重要な理由は、自社の経営状況を明確に把握し、経営の安定性を図るためです。経営指標を活用すると他社や業界平均と比較でき、客観的な視点で自社の経営状況や安定性、成長性が把握できます。

経営者はつねに自社の経営状況を把握したうえで、経営計画の策定や見直し、必要な判断を下すことが求められます。適切な判断や施策が正しいタイミングで実行されないと、経営が危機的状況に陥ることもあるでしょう。

しかし、経営規模が大きくなるほど、経営者一人で経営状況を把握しきれない場合も出てきます。そうしたときに、経営状況が具体的に数値化され、自社の状況が客観視できる経営指標があれば、経営陣をはじめ組織全体が自社の状況を把握できるのです。

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3.経営指標からわかること

経営指標を活用すると、以下4つの観点から経営状況を分析できます。4つの項目から具体的にどのようなことがわかるかを解説しましょう。

  1. 収益性
  2. 安全性
  3. 生産性
  4. 成長性

①収益性

収益性からは「自社がどれくらい儲かっているか」「資本を有効活用して無駄が生じていないか」など、経営効率を把握できます。他社と比較すれば、自社の強みと弱みも把握できるため、強みとなる事業や伸ばす余地があるかなどを分析できるでしょう。

また、強みと弱みが把握できるため、自社の収益を伸ばす有効な経営判断ができるようになります。

②安全性

安全性からは、財務状況におけるリスクの有無がわかります。具体的には、倒産リスクや返済能力、適切な事業投資ができているかなどが把握できるのです。

黒字倒産も起こり得るため、利益が出ているからといって財務状況が安全だとは限りません。また、返済が現実的でないほどの債務を抱えている場合、財務面の改善が必須です。

財務状況が客観的に把握できれば、必要な対策を早期に講じることができ、倒産や財務状況悪化のリスク軽減につながります。

③生産性

生産性からは、人件費や事業展開に必要な資金などを適切に運用できているかといった面から、経営資源を効率的に活用できているかがわかります。

黒字であり、かつ財政状況に問題がなくても、経営資源の活用効率が悪い場合には改善が必要です。ヒト・モノ・カネが適切に割り振られているかが把握できることで、経営効率の改善につながります。

④成長性

成長性からは、売上や利益が順調に成長しているか、今後どのように成長する見込みがあるかが把握できます。

売上があっても生産性がよくなければ利益に結びついていない可能性もあるため、売上だけでは成長性は判断できません。

利益が伸びていない場合、その原因を究明し改善を図る必要があります。問題点を明確にして対策できれば、今後のさらなる成長に期待できます。

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4.収益性分析で使用する経営指標一覧

収益性分析で使用する経営指標は、主に下記5つです。

  1. 売上高営業利益率
  2. 売上高経常利益率
  3. 総資本回転率
  4. 自己資本利益率
  5. 総資本経常利益率

どれくらい利益を上げているかだけでなく、資本を有効活用できているかも分析することがポイントです。ここでは、収益性分析で使用する各指標を解説します。

①売上高営業利益率

営業利益÷売上高×100

売上高に対する営業利益の割合です。マイナスの場合、経営状況は本業赤字です。なお、営業利益は「営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費」で算出します。

②売上高経常利益率

経常利益÷売上高 × 100

売上高に占める経常利益の割合です。数値は高ければ高いほどよく、数値が高い場合には本業だけでなく、資金運用や資金調達などの財務活動も良好であると判断できます。

経常利益は「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用」の計算式で算出可能です。

③売上原価率

売上原価÷売上高×100

数値が低いと原価をかけずに売上が出せている状況であるため、収益性が高いと判断できます。反対に、数値が高い場合はコストがかさんで利益の確保が難しい状況です。

④自己資本利益率

当期純利益÷自己資本×100

自己資本を用いて生み出した利益を示す指標です。自己資本利益率10%を上回ると優良企業といわれており、数値は高ければ高いほど優良です。

⑤総資本経常利益率

経常利益÷総資本(負債+純資産)×100

総資本に対する経常利益の割合を示す指標のこと。「Return on Assets」の略で「ROA」と呼ばれることもあります。

総資本経常利益率は5%以上が理想であり、10%以上でかなり優良な企業とみなされます。業種によってはマイナスになる場合もあるため、マイナスだからと経営状況が悪いとは限りません。

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5.安全性分析で使用する経営指標一覧

安全性分析で使用する経営指標は、主に下記4つです。安全性が低い状態では支払い能力が低く、倒産につながるリスクもあります。安全性分析で使用する各指標を、解説しましょう。

  1. 流動比率
  2. 当座比率
  3. 固定比率
  4. 自己資本比率

①流動比率

流動資産÷流動負債×100

流動比率は、1年以内の返済能力を示す指標です。賃借対照表の「流動資産」と「流動負債」の比率から算出します。流動資産とは、1年以内に現金化が予定される資産で、流動負債は1年以内に支払わなければならない負債のこと。

流動比率は高いほど返済の能力が高いと判断でき、一般的には150〜200%が理想的です。ただし、業種によって適正値は異なります。

②当座比率

当座資産÷流動負債×100

当座比率とは、流動負債に対してどれだけ当座資産を保有しているかを示す指標であり、厳密な支払い能力が分析できます。なお、当座資産は「流動資産−棚卸資産」で算出でき、棚卸資産とはすぐに現金化できない不良在庫のような資産のことです。

③固定比率

固定資産÷自己資本×100

固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を示す指標です。固定資産とは、決算日から1年以内に回収が予定されていない資産のこと。土地や建物などの「有形固定資産」、特許権や商標権などの「無形固定資産」などが固定資産に該当します。

④自己資本比率

自己資本÷資産(他人資本+自己資本)×100

自己資本比率とは、会社の総資産のうち自己資本が占める割合を示す指標です。自己資本比率が高いほど負債が少なく、財務面での健全性が高いと判断できます。

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6.生産性分析で使用する経営指標一覧

安全性分析で使用する経営指標は、主に下記2つです。

  1. 労働生産性
  2. 労働分配率

生産性分析では、業務効率性の高さや経営資源をどれだけ有効活用できているかが分析できます。ここでは、生産性分析で使用する各指標を解説していきます。

①労働生産性

付加価値額÷従業員数×100

従業員一人あたりがどれだけ成果出したかの指標であり、一人当たりが生み出す付加価値額ともいえます。

付加価値額は利益と同義であり、「営業利益+人件費+支払利息+不動産賃貸料+租税公課」で算出可能です。労働生産性が高いほど、業務効率が良好と判断できます。

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②労働分配率

人件費÷付加価値額×100

付加価値額に対して人件費が占める割合を示す指標です。人件費は経費のなかでも大部分を占めるため、労働分配率が低いほど人件費を抑えられていると判断できます。目安は大企業で50%、中小企業70〜80%ほどです。

数値が低すぎる場合には、従業員に適正な報酬が支払えていない可能性があります。適正でない報酬はモチベーション低下につながり、結果的に経営リスクとなるため要注意です。

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7.成長性分析で使用する経営指標一覧

成長性分析で使用する経営指標は、主に下記3つです。

  1. 売上高伸び率
  2. 経常利益増加率
  3. 総資本増加率

成長性分析では、経営拡大の度合いや今後の可能性から成長性が判断できるのです。ここでは、成長性分析で使用する各指標を解説します。

①売上高伸び率

(売上高(当期)- 売上高(前期))÷ 売上高(前期)× 100

前期と当期の売上から伸び率を示す指標です。伸び率が高いほど成長性が高いと判断できるものの、季節要因や流行など一時的な成長の可能性もあります。

そのため、現状で売上が伸びているからと安心せず、来期にどれだけ伸ばすかも検討するとよいでしょう。売上高伸び率は、目標売上高の設定にも活用できます。

②経常利益増加率

(当期経常利益−前期経常利益)÷前期経常利益×100

前期と比較して当期の経常利益がどれだけ伸びているかを示す指標です。売上高伸び率と合わせた確認がポイントで、両方が増加している場合、順調に成長していると判断できます。

また、売上が減少している一方で利益が増加しているパターンでは、コスト削減に成功しているとわかります。

③総資本増加率

(当期総資本−前期総資本)÷前期総資本×100

前期と比較して当期の総資本がどれだけ伸びているかを示す指標です。数値が増加していると、企業規模が拡大していると判断できます。成長性を適切に判断する場合は、どの資産が増加しているかまで分析することがポイントです。

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8.経営指標の算出に使う3つの財務諸表

経営指標は、財務諸表にある以下の3つを用い算出されます。ここでは、経営指標の算出に使う3つの財務諸表を解説します。

  1. 賃借対照表
  2. 損益計算書
  3. キャッシュフロー計算書

①賃借対照表(B/S)

「バランスシート」を略して「B/S」とも呼ばれる、決算日における企業の財政状態がわかる資料です。「資産」「負債」「資本」の3つで構成され、さらに下記5つの項目に細分化されます。

資産

流動資産 一年以内に現金化できるもの例:現金・預金、売掛金、受取手形、棚卸在庫
固定遺産 いずれ現金化できるが、一年以内にはできないもの例:ソフトウェア、投資有価証券、車両運搬具

負債

流動負債 一年以内に返済予定のお金例:支払手形、買掛金、短期借入金
固定負債 一年以内に返済しなくて良いお金例:長期借入金、退職給付引当金

資本

純資産(自己資本) 株主からの出資金とこれまでの利益の積立額例:資本金、資本剰余金、利益剰余金

②損益計算書(P/L)(Profit and Loss Statement)

略して「P/L」とも呼ばれる、1年間の経営成績や生み出した利益、費用の使用用途がわかる計算書です。主に、下記5つの利益が確認できます。

売上総利益 経営がうまくいっているかのおおよその目安がつけられる指標
営業利益 本業で稼いだ利益
経常利益 企業活動における総合的な収益力
税引前当期純利益 通常の企業活動で発生しない臨時的の損益を足し引きした後の利益
当期純利益 企業の最終利益

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③キャッシュフロー計算書(C/L)

略して「C/F」と呼ばれる、企業のお金の流れを把握するための書類です。お金の流れは「営業活動」「投資活動」「財務活動」で分類され、いつ何にいくら使ったかがわかる家計簿のような資料となります。

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9.経営指標を活用する際の注意点

経営指標は、正しく活用すれば今後の経営をよりよいものへと導いてくれるもの。ここでは、経営指標を活用する際の注意点をお伝えします。

  1. 分析の軸を明確にする
  2. 結果だけでなく原因も分析・把握する
  3. 現状分析で終わらせない

①分析の軸を明確にする

ただ数値を算出するだけでは、経営指標は活用できません。経営上の課題を見つけたい、融資を受けやすくしたいなど、軸を明確にして分析することが重要です。経営指標はあくまでツールに過ぎません。目標を達成するために活用していきましょう。

②結果だけでなく原因も分析・把握する

数値のよし悪しを把握するだけでなくなぜその結果になったか原因を分析・把握することが重要です。業種によって数値の標準値も異なるため、分析しないとに実情はわかりません。仮に数値が悪く、改善余地がある場合は、原因を必ず追及しましょう。

③現状分析で終わらせない

経営指標は経営状況の分析に活用できる有効なツールです。しかし結果と原因を把握して終わってしまっては、本来の効力を発揮しません。

結果をもとに、よりよい経営状況にするためにも、解決策や戦略の策定に役立てましょう。現場と連携し、組織で一体となって解決策や戦略を立てるのをオススメします。