従業員満足度調査は、社員の声を聞き、職場の改善につなげるための重要な取り組みです。しかし実際の現場では、「調査しても意味がない」「どうせ何も変わらない」といった否定的な声が上がることも少なくありません。
せっかく時間と労力をかけて実施しても、目的が曖昧だったり、結果が活用されなかったりすれば、かえって従業員の信頼を損なう恐れがあります。
この記事では、従業員満足度調査が無駄と思われてしまう原因、調査を有意義なものにするための工夫や期待できる効果について、わかりやすく解説します。
目次
1.従業員満足度調査とは?
従業員満足度調査(Employee Satisfaction Survey)は、従業員が職場や業務に対してどの程度満足しているかを測定するための調査です。
具体的には、仕事内容、労働環境、人間関係、給与・福利厚生、評価制度など、多岐にわたる項目について従業員の意見を収集・分析します。
この調査を通じて、企業は従業員のモチベーションや組織の課題を把握し、改善に活かすことが可能です。
結果として、従業員の満足度向上を図り、離職率の低減や生産性の向上を目指すことができます。厚生労働省も「魅力ある職場づくり」の一環として、従業員満足度の向上を推進しています。
参考:厚生労働省「「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保」

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2.従業員満足度調査が「意味ない」「無駄」と思われる理由
なぜ従業員満足度調査は「意味ない」「無駄」と感じられてしまうのでしょうか?その主な理由について詳しく解説します。
調査の目的が明確でない
従業員満足度調査が「意味ない」と思われる理由の一つは、調査目的が不明確であることです。目的を明確にしないまま進めると、得られたデータを有効活用できない可能性があります。
また、「従業員の声を聞くこと」自体が目的となってしまい、具体的な課題の特定や改善策の検討が後回しになるケースもあります。
このような状況では、従業員も調査の意図を理解しづらく、回答へのモチベーションが低下するでしょう。その結果、調査は形骸化し、実施する意義が薄れてしまいます。
本音で回答できていない
調査の質問項目が多すぎたり、内容が抽象的であったりすると、従業員は回答に負担を感じ、適当に回答することがあります。
さらに、匿名性への懸念も問題です。従業員が「自分の回答内容が特定されるかもしれない」と感じると、本心ではなく無難な回答をする傾向があります。
このような状況を防ぐためには、質問項目を精査し、シンプルで具体的な内容に絞ること、匿名性を担保することが必要です。
結果のフィードバックがない
従業員満足度調査後に結果のフィードバックを行わないことも、「意味ない」と感じる原因となります。従業員は自分たちの意見や回答内容がどのように活用されているか気にしています。
しかし、結果の共有や改善計画について説明されず、その後何も変化が見られないと、調査そのものへの関心や信頼感が低下するでしょう。
特に、ネガティブな結果を隠蔽しようとする姿勢は、従業員のモチベーション低下を招きます。調査結果は、良い点も悪い点も含めて透明性を持って共有し、今後の改善方針や具体的なアクションプランを示すことが重要です。
調査結果が改善に結びついていない
調査を行っても、その結果が職場の改善につながらなければ、従業員は「調査は意味がない」と感じてしまいます。よくある失敗は、結果の数値だけを見て判断し、背景や優先度を深く考えないことです。
例えば、単にスコアの低い項目だけを改善しようとして、本質的な課題解決につながらないケースがあります。効果的に活用するには、全体満足度と各項目との関係を分析するなど、丁寧な見方が必要です。
また、改善には従業員の協力が欠かせないため、結果を共有し一緒に取り組む姿勢も大切です。
3.従業員満足度調査の目的
従業員満足度調査は、企業が従業員の職場に対する満足度や意見を収集し、組織の課題を明らかにするために実施します。ここでは、3つの主要な目的を詳しく確認してみましょう。
- 従業員・組織の現状の可視化
- 施策の効果検証
- 労働環境の改善に活用
従業員・組織の現状の可視化
従業員満足度調査の重要な目的の一つは、従業員のモチベーションを定量的に可視化することです。モチベーションは組織の成長や生産性向上に不可欠な要素ですが、日常業務や個別面談だけではその実態を把握するのは難しいものです。
そこで、従業員満足度調査を活用することで、人間関係、業務量、上司との関係、制度への満足度などを数値として測定することが可能になります。
施策の効果検証
調査のもう一つの目的は、これまで実施してきた人事施策や制度が、実際に従業員にとって意味があったのかを検証することです。
新しい福利厚生や評価制度を導入したとしても、その効果を感じてもらえていなければ、コストをかけただけで終わってしまいます。
調査結果によって、施策がモチベーション向上につながっているのか、あるいは逆効果だったのかを客観的に確認できます。これにより、効果的な施策の継続や、必要に応じた改善が行いやすくなるでしょう。
労働環境の改善に活用
従業員の満足度を調べる本来の狙いは、働きやすい環境づくりに活かすことです。調査結果をもとに、職場の課題や不満を明確にし、それにもとづいた改善を行うことで、従業員のストレスを減らし、定着率を高める効果が期待されます。
ただ調査を実施するだけで終わってしまうと、「意味がない」と感じられてしまいます。大切なのは、集めた結果をどう活かして職場の改善につなげるかということです。
4.意味のない従業員満足度調査のデメリット
意味のない従業員満足度調査は、単に効果がないだけでなく、組織にとってさまざまな負の影響をもたらす可能性があります。ここでは、主なデメリットを紹介します。
従業員の負担増加と信頼低下
従業員満足度調査を適切に行わないと、かえって従業員に負担をかけてしまい、会社への信頼を損ねる可能性があります。
忙しい業務の合間に時間を割いて回答しても、調査の目的がきちんと説明されていなかったり、結果が改善に活かされないと、「意味のない面倒な作業」と感じられてしまいます。
そうなると、次第に協力する意欲が薄れ、調査への回答率も低下してしまうでしょう。さらに、新しい制度や施策が導入されても「どうせ形だけ」といった冷ややかな見方が広がり、組織の取り組みに対する信頼まで失われてしまう恐れがあります。
調査は、実施するだけでなく、その後の対応まで丁寧に行うことが大切です。
不正確なデータによる誤った意思決定
質問が抽象的すぎる、あるいは誘導的など、調査の設計が不十分だと、従業員は本音を答えにくくなります。従業員が表面的な回答や無難な回答を選択すると、得られるデータは実態とかけ離れたものになってしまうでしょう。
その結果、経営陣は誤ったデータを元に判断を下し、必要のない施策を進めてしまったり、本来改善すべき課題を見落としてしまったりすることがあります。
また、調査設計や分析のための専門的なスキルが不足していると、データの解釈を誤り、的確な施策を打ち出せないことも考えられます。
時間とコストの浪費
従業員満足度調査には、設計から実施、分析、結果の共有まで、多くの手間とコストが伴います。
しかし、その結果を有効活用しなければ、これらは全て無駄になってしまいます。最も問題なのは、従業員の声を拾っておきながら改善につなげないことです。
これでは、従業員に「どうせ反映されない」という諦めを与え、エンゲージメント低下を招きかねません。調査は実施することが目的ではなく、結果をもとに組織を良くすることがゴールであることを忘れてはいけません。
5.意味ある従業員満足度調査を行うメリット
従業員満足度調査を適切に実施することで、組織全体にさまざまなメリットがもたらされます。ここでは、その主要な利点を詳しく説明します。
課題の早期発見と対策ができる
従業員満足度調査を通じて、職場内の潜在的な問題や従業員の不満を早期に把握することが可能です。
例えば、上司との関係性や特定の部署での過度な労働など、日常業務では見落としがちな課題を明らかにすることができるでしょう。
これらの問題を早期に発見できれば、深刻化する前に適切な対策を講じることができ、組織全体の健全性を維持することにつながります。
モチベーションが向上する
調査を通じて従業員の声に耳を傾け、その結果をもとに職場環境や業務内容の改善をすることで、「会社は自分たちの意見をちゃんと聞いてくれている」と感じる人が増えていきます。
そうした実感は、会社への信頼や愛着を深め、仕事に対するモチベーションを高めるきっかけになります。
意欲的に働く人が増えれば、生産性の向上やチーム全体の活性化につながり、結果として組織全体のパフォーマンスも向上することが期待できます。

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離職率の低下と人材確保につながる
職場に満足している従業員が多いと、「ここで働き続けたい」と感じる人が増え、結果的に離職率の低下につながります。
また、満足度の高い職場は、従業員の口コミや評判も良くなりやすく、「働きやすい会社」として外部からも評価されるようになります。
こうした好印象は企業のイメージ向上にもつながり、優秀な人材の応募が集まりやすくなるなど、採用面でも大きなメリットとなるでしょう。
顧客満足度の向上が期待できる
従業員満足度の向上は、顧客満足度の向上にもつながる可能性があります。従業員が高いモチベーションを持って働くことで、顧客対応の質が向上し、サービスの品質が改善されるからです。
満足度の高い従業員は、自社の製品やサービスに対する理解も深く、顧客のニーズにより適切に対応できる傾向があります。
また、従業員同士のコミュニケーションが活発になることで、顧客に関する情報共有も円滑になり、より質の高いサービス提供につながります。
6.従業員満足度調査を意味あるものにするポイント
最後に、従業員満足度調査を意味あるものにするためのポイントを解説します。
- 従業員に調査目的を理解してもらう
- 適切な質問項目を選定する
- 心理的安全性を確保する
- 結果をフィードバックする
- 労働環境の整備に取り入れる
- 定期的に実施する
従業員に調査目的を理解してもらう
調査を実施する際、まず従業員にその目的を明確にすることが不可欠です。
なぜなら、調査の狙いによって、質問項目が変わるためです。また、目的が不明確なままでは、従業員は調査の意義を感じられず、協力的な姿勢を持ちにくくなります。
例えば、「離職率の低減」や「職場環境の改善」といった具体的な目的を共有することで、従業員も調査の重要性を理解しやすくなるでしょう。
適切な質問項目を選定する
効果的な従業員満足度調査を行うためには、「働きがい」「人間関係」「キャリアの成長機会」など、目的に沿ったテーマをもとに設問を設計することがポイントです。
設問が多ければ、さまざまな視点から現状を把握でき、分析の精度も高まります。しかし、項目が多すぎると、回答者にとっては負担となり、回答の質が下がる可能性があります。
また、集計や分析に時間がかかり、運用面の負担も増すでしょう。そのため、質問数は必要最低限にとどめつつ、ポイントを押さえた内容に絞ることが大切です。それぞれの設問から有益な情報を引き出せるよう、丁寧に検討しましょう。

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心理的安全性を確保する
従業員が安心して本音を述べられる環境を整えることも重要です。匿名で回答できるようにするのはもちろん、「回答内容が人事評価に影響しない」と明確に伝えることが大切です。
そうすることで、従業員も遠慮せずに正直な気持ちを書きやすくなります。批判的な内容でも安心して伝えられる環境が整えば、より正確かつ実用的な情報を得ることができるでしょう。
結果をフィードバックする
調査結果は、全社集会や定例会議などの場を活用して従業員に丁寧に共有しましょう。結果の共有や説明が不十分だと、従業員は「どうせ何も変わらない」と感じてしまい、かえってエンゲージメントを下げてしまう可能性があります。
結果に基づいて具体的な改善策を提示したうえで、従業員と一緒に考える対話の場を設けることで、調査への信頼感と関心を高めることができます。
労働環境の整備に取り入れる
調査結果を基に具体的な改善策を実施することで、従業員は「自分たちの声が職場づくりに活かされている」と実感できます。
特に、スコアが低かった項目や、前回の調査結果と比べて大きな変動があった設問については、その背景や原因を深掘りして丁寧に分析することが大切です。
こうした分析を通じて、職場で見落とされがちな課題を洗い出し、実効性ある対策の検討へとつなげましょう。調査と改善を繰り返すことで、従業員の満足度向上につながっていきます。
定期的に実施する
従業員満足度調査は、その時点での職場の状況や従業員の意識を把握するためのものです。
ただし、職場の環境や従業員の気持ちは常に変化するため、結果も時期によって変わります。だからこそ、1回だけの実施で終わらせず、継続的に調査を行い、現場の変化に合わせた対応を続けていくことが大切です。
もし一度きりで終えてしまうと、当時は見えなかった問題が後に大きなトラブルに発展したり、新たな不満が表面化することもあります。変化の兆しを見逃さず、改善にしっかりつなげていきましょう。
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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
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