日本企業のジョブ型雇用事例【10選】

ジョブ型雇用は日本でも注目されており、近年さまざまな企業でも導入する動きが目立っています。実際に導入している企業の事例を紹介します。

1.なぜジョブ型の事例が注目されているのか?

なぜジョブ型の事例が注目されているのか、その理由として挙げられるのは「企業の国際競争力の向上」「人材不足の解消」「テレワークの普及」です。

そのほか2020年の経団連による、「日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の見直し」「ジョブ型雇用の推奨」の提言にくわえ、2022年9月に岸田文雄首相が日本企業に対し、ジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針も示しました。

こうしたいきさつにより、ジョブ型雇用の事例を知りたいという企業も増えています。

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2.ジョブ型雇用の事例を見る際のポイント

ほかの企業が実施しているジョブ型雇用の事例を参考にする際、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。マッチ度を高めるために見るべきポイントについて解説します。

  1. 事例企業の規模や特徴
  2. 事例企業が行った社内整備
  3. 事例企業がジョブ型雇用を適用した範囲

①事例企業の規模や特徴

ジョブ型雇用の成功事例をそのまま取り入れようとするだけでは、自社にマッチしない可能性もあります。まず事例の制度が自社の職務や社風に馴染むものか見極め、企業の規模や特徴についても理解したうえで、成功事例を見ていきましょう。

ジョブ型雇用には、人事評価など一部分だけを取り入れる「ハイブリッド型」という運用方法もあります。このような事例も選択肢に入れて考慮するとよいでしょう。

②事例企業が行った社内整備

成功事例をチェックする場合、多くの人は事例の内容や効果だけにとらわれがちです。しかし、このときに押さえておきたいのが「どのような環境整備を行ったか」という点。なかでも重要なのが社内制度です。例として、次のようなものが挙げられます。

  • 報酬水準や給与保証制度などの給与規定の整備
  • 人材育成に関する研修

このような点にも気を配りながら事例を確認すると、ジョブ型雇用を導入するまでにしなければならない作業を整理できます。

③事例企業がジョブ型雇用を適用した範囲

事例となっている企業が、ジョブ型雇用をどの範囲に適用したかも大切なポイント。適用した職種や役職、年代の傾向などを知っておくと、自社で対象とすべき範囲を検討できるようになります。

また、ジョブ型雇用を導入する際に欠かせないのが「職務記述書」ともよばれるジョブディスクリプションで、下記のような内容を記載します。

  • 役割や責任
  • 業務内容
  • 求められる能力
  • 求められる実績や経験
  • 求められる性質・行動

状況によって「まず管理職にジョブ型雇用を適用する」「技術職や中途採用人材からスタートする」などケースが変わります。

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3.日本企業のジョブ型雇用事例【10選】

国内にも、ジョブ型雇用を取り入れている企業があります。日本企業のジョブ型雇用事例10選をご紹介しましょう。

  1. 富士通|電気機器業
  2. 日立製作所|電気機器業
  3. 資生堂|製造販売業
  4. KDDI|情報通信業
  5. カゴメ|食品業
  6. 双日|卸売業
  7. 三菱ケミカル|化学業
  8. みんなのマーケット|情報通信業
  9. ソニーグループ|電気機器業
  10. NEC(日本電気)|電気機器業

①富士通|電気機器業

富士通では2020年4月からジョブ型雇用を導入し、幹部社員を対象として取り組んでいます。特徴は、社員がありたい姿や社員の年度目標を明確にしている点です。3年くらいの中期的なスパンを設定して、具体性を維持しています。評価体制の例は次のとおりです。

  • 人材レベルをグレードで示す
  • 売上などの定量的な規模の観点にくわえ、レポートラインや難易度、専門性や職責の重要性などをくわえる

このようなさまざまな観点から社員を適切に評価し、報酬を支払っています。柔軟かつ人材育成を重視した評価体制となっており、社員が活躍しやすい仕組みに整えられています。

②日立製作所|電気機器業

国内市場からグローバル市場へシフトして業績を回復した日立製作所は、海外拠点を含めて統一されたルール作りが必要になりました。グローバルな人事制度を作るため、2021年春にジョブ型雇用を導入しています。

日立製作所では、「ジョブ型人財マネジメント」という雇用スタイルを設けています。さらに「デジタル人財採用コース」を新設し、新卒と中途の両方でジョブ型の雇用を強化しました。

このコースでは一律の初任給を設けず、個別の処遇設定を盛り込んでいます。さらに、職場環境も整備してジョブ型雇用をより浸透させるために運用を継続し2024年度中には全社員を「ジョブ型雇用」へ移行することを目指しています。

③資生堂|製造販売業

資生堂がジョブ型雇用を導入した背景には、次のふたつがあります。

  • 競合のグローバル企業と比較したときの生産性の低さ
  • 日本支社で働いている人材の専門スキルの低さ

これらを解消するため、国内の管理職の一部となる約1,700名を対象に、ジョブ型雇用制度を導入しました。

2021年からは国内の一般社員にも範囲を広げていき、「ジョブグレード制度」を導入。これは、「20以上のジョブファミリー(領域)」「ジョブファミリーそれぞれのジョブディスクリプション(職務定義書)」を用意したものです。

特定のジョブファミリーで昇進を進めて専門性を高め、必要な場合はジョブファミリーの中での異動がスムーズに行えるようになりました。

④KDDI|情報通信業

携帯電話事業を展開するKDDIは、通信事業をメインとして人材育成に力を入れてきました。しかし、そのためにスキルが偏るという問題があったのです。

  • 若い社員のチャレンジ精神の向上
  • 外部から採用した人材を育ててキャリアシフトさせる

などを目的に2020年8月に「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入。この制度はハイブリッド型人事制度となっており、ジョブの定義をなるべく大きなくくりにしています。

たとえば、採用や給与などのように細かいジョブも「人事」というくくりで定義します。それによって幅広い人材を育成できるようになり、多様な事業を展開する中で別の職種や領域へのキャリアチェンジもできるようになりました。

⑤カゴメ|食品業

カゴメは人事戦略にあまり積極的ではなく、年功序列を続けてきた企業でした。しかし、2013-2015年度の中期計画である「NEXT50」の最重点課題として「グローバル人事制度の導入」を掲げたのです。

まずは制度が受け入れられやすい海外子会社から導入しました。国内では上層部の強い意思を表明するため、2013年7月より「取締役評価・報酬制度」を設定。これは、社長と役員への評価制度となります。

よって本格的な導入がスムーズに進み、2014年7月からは「執行役員」「コミットメントスタッフ評価」「報酬制度」「グローバル・ジョブ・グレード」を導入できたのです。

さらに2015年4月からは「グローバル・ジョブ・グレード」を課長職に適用し、「課長職評価・報酬制度」を整備しています。

⑥双日|卸売業

双日では、商社初のジョブ型高度人材ファームとして「双日プロフェッショナルシェア(SPS)」を新設しました。SPSを新設した目的の前提として、次の項目があります。

  • 副業や起業でのキャリア幅出し
  • リカレントでの新領域開拓
  • 起業家精神をもつ人材の育成・輩出

これらを実現し、双日グループの価値創造につなげることが目的となります。

SPSは35歳以上の希望者でスタートして社員がやりたいことを支援。最終的には全社(単体2,550名)へのジョブ型雇用の導入を目指しています。スキルや経験を社内外で活用できるだけではなく、勤務日数などに柔軟性を持たせて副業や兼業も可能となります。

⑦三菱ケミカル|化学業

三菱ケミカルでは、働き方やキャリアに社員が自主性を持って臨むことを目的に、賃金水準や賞与へジョブ型の基準を採用しました。

これまで職能で10万円、職務で10万円というように設定されていた給与が、全社員とも職務等級に一本化しました。総合職や一般職といった区別も撤廃されています。

管理職の評価指針は、ポジションごとに設定されたジョブディスクリプションの職務に準じます。一般社員は、ジョブディスクリプションを作ってグレードを決めず、職務を広めにくくって等級を決めました。

これにより、職務や貢献による報酬体系に変更され、メリハリがついたのです。

⑧みんなのマーケット|情報通信業

みんなのマーケットは、マーケットプレイス「くらしのマーケット」を運営する企業で、2020年3月よりフルリモートに移行しました。それにともない、次の雇用形態を新設したのです。

  • 業務設計と実行の双方を求める「メンバーシップ型」
  • 仕事の成果のみを求める「ジョブ型」

さらに評価制度を見直し、経営メンバーを除くすべてのメンバー同士で「チーム間評価」「個人評価」を行いました。

これにより社員が能動的に目標や成果を把握して、相互の成長が期待できる仕組みを作ったのです。入社直後は全員ジョブ型が適用されるものの、3か月以降は一定の評価基準をクリアした場合に限ってメンバーシップ型に変更できるようにしています。

⑨ソニーグループ|電気機器業

ソニーグループではジョブグレード制度を設定する際、役割によるクラス分けから始めました。その際気をつけたのが過去の実績にとらわれず、現在の役割で評価すると定めたこと。年功の要素が入った評価方法を完全撤廃し、フェアな等級制度を目指しました。

そして各職群の各グレードにおいて等級定義書を定め、その定義を構成する下記7つの要素を参照したのです。役割が変わると、グレードも見直されます。

  • 専門知識
  • 事業の知見
  • リーダーシップ
  • 問題解決
  • 影響の性質
  • 影響の範囲
  • 対人スキル

⑩NEC(日本電気)|電気機器業

NEC(日本電気)では、2021年度の新卒採用からジョブ型採用を導入しました。新卒でジョブ型採用が適用されるのは、下記のような一部のキャリアのみです。

  • データサイエンス
  • サイバーセキュリティ
  • DXビジネス
  • AI創薬

初任給は学歴別に設定せず、本人の役割に応じて決まります。学生が有しているスキルと入社後の役割がマッチングするようにし、成立すればキャリア採用ポジションの格づけで採用するのです。これにより、職務ベースで月収を決めます。

また制度をさらに改善し、「ジョブ型雇用制度」「メンバーシップ型雇用制度」を取り入れたハイブリッド型を目指しています。

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4.ジョブ型雇用の事例を集める方法

ジョブ型雇用の事例の情報を得られるものとして、次のようなものがあります。

  • 経産省の経営競争力強化に向け、人材マネジメント研究会が公開している事例集
  • ジョブ型雇用に関するセミナー
  • ジョブ型雇用について解説した書籍

成功例だけでなく、失敗例を知るのも大切です。成果が出なかった理由をセミナーや事例集から知っていければ、自社へ導入する際に失敗を回避できます。

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5.ジョブ型雇用のトラブル事例

ジョブ型雇用によってトラブルが生じる場合もあるのです。厚生労働省には、「多様な正社員の雇用ルール等に関する裁判例」という資料があります。これにはジョブ型雇用によるトラブル事例が掲載されているのです。

トラブルの事例として「募集時に提示された職種や面接時に想定していた業務とかけ離れた職種への配転を企業から提示され、断った従業員が解雇された」ものがあります。このトラブルは裁判に発展し、配転命令拒否の正当性が認められました。