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「人的資本経営」という言葉を耳にする機会が増えてきました。特に、2023年からは有価証券報告書での開示が義務化され、多くの大企業が対応に追われています。
一方で「自社の開示準備が進んでいない」「何から始めればいいかわからない」「他社事例を参考にしたい」といった悩みを持つ企業担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、人的資本経営の定義やその背景、国内外の動向、実践ステップ、開示すべき項目まで網羅的に解説。あわせて、人的資本経営のメリットや企業価値への影響、実際の企業事例もご紹介します。
目次
1.人的資本経営とは?その定義と基本概念

人的資本経営とは、人材を投資対象として捉え、戦略的に育成・活用することで企業価値を高める経営手法です。従来の経営では、設備投資や資金調達といった「見える資産」への投資が重視されてきました。
ところが、技術革新が加速し、競争環境が激変する今の時代において、真の競争力の源泉は「人」にあるという認識が高まっています。
ここで重要なのは、人材を単なる「人件費」や「コスト」として見るのではなく「将来のリターンを生み出す投資先」として位置づけることです。
たとえば、従業員のスキルアップ研修に年間100万円を投じた場合、これをコストと見るか、投資と見るかでその後の展開は大きく変わるでしょう。
人的資本経営では、研修制度の充実、働きやすい環境の整備、キャリア開発支援などを通じて、従業員一人ひとりが持つ可能性を最大限に引き出そうとします。その結果として、組織全体の生産性向上、イノベーションの創出、そして持続的な企業成長を目指すのです。
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2.人的資本経営が注目されている理由
人的資本経営が脚光を浴びている背景には、次の3つの大きな要因があります。
- 人材や働き方の多様化
- 無形資産の重要性の高まり
- サステナビリティへの関心
これら3つの要因について、より詳しく見ていきましょう。
①価値観や働き方の多様化
少子高齢化による労働力不足、グローバル化の進展により、企業を取り巻く人材環境は大きく変わりました。今や多くの職場で、年齢も国籍もキャリアも価値観も異なる人々が一緒に働いています。
リモートワーク、副業解禁、フレックスタイム制など、働き方の選択肢も格段に増えました。こうした多様性は確かに新しいアイデアや革新的な解決策を生み出す原動力となります。
しかし同時に、従来の画一的な管理手法では対応しきれない複雑さを生んでいるのが実情です。
優秀な人材を引きつけ、定着させるためには、一人ひとりの状況や価値観に寄り添った柔軟な支援制度が欠かせません。人的資本経営は、こうした多様な人材を「資本」として最大限活用するための経営手法として位置づけられています。
②無形資産の重要性の高まり
これまで企業の価値を構成する要素といえば、工場や設備といった有形資産でした。しかし現在では、ブランド力、技術力、組織力、そして人的資本といった無形資産の占める割合が圧倒的に高くなっています。
設備は資金があれば購入できますが、従業員の知識や経験、チームワーク、企業文化といった無形の価値は、お金だけでは手に入りません。時間をかけて育み、磨き上げていく必要があるのです。
投資家の視点でも、短期的な利益だけではなく、中長期的な成長力を支える「人の力」に注目が集まっています。人的資本への投資は、まさに持続的な競争優位性を築くための戦略投資と言えるでしょう。
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③サステナビリティへの関心
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資やSDGsへの注目度が高まる中、企業の社会的責任はますます重要視されています。人的資本は、特にESGの「社会」「ガバナンス」領域において中核的な要素です。
投資家や株主にとって、企業がどのような人材戦略を持ち、従業員をどう大切にしているかは、その企業の将来性を判断する重要な材料となります。人的資本に関する情報開示は、こうしたステークホルダーとの信頼関係を築く上でも欠かせない要素なのです。
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3.人的資本経営に関する国内外の動き
人的資本経営は一部の先進企業だけの取り組みではなく、世界的な潮流となっています。ここでは、人的資本経営に関する国内外の動向について詳しく見てみましょう。
海外:「ISO 30414」の策定
2018年、国際標準化機構(ISO)が「ISO 30414」を発行しました。これは人的資本に関する情報の測定・分析・報告方法を体系化したガイドラインです。具体的には、以下の11の開示項目を明示しています。
- 倫理とコンプライアンス
- コスト
- ダイバーシティ
- リーダーシップ
- 組織風土
- 健康・安全・幸福
- 生産性
- 採用・異動・離職
- スキルと能力
- 後継者計画
- 労働力
参照:ISO「ISO 30414:2018」
この基準により、企業は投資家やステークホルダーに対して、より透明性の高い人的資本情報を提供できるようになりました。
【海外】米国が上場企業に人的資本の開示を義務化
2020年、米証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務づけたことは、世界的な転換点となりました。
SECのガイドラインでは、従業員数の公表を必須とし、雇用形態や離職率なども必要に応じて開示するよう求めています。この動きが引き金となり、各国で同様の制度整備が進みました。
【国内】人材版伊藤レポートの公表
日本では2020年9月、経済産業省が「人材版伊藤レポート」を公表し、人的資本経営の重要性と具体的な実践方法を示しました。
このレポートは、学識経験者、経営者、投資家など多様な立場の専門家による議論を重ねてまとめられ、日本企業にとって人的資本経営を考える上での羅針盤となっています。
人材版伊藤レポートでは、人的資本経営の実現に向けて「3つの視点(3P)」と「5つの共通要素(5F)」を提示し、企業が取り組むべき方向性を明確化しました。
さらに2022年5月に発表された「人材版伊藤レポート2.0」では、より具体的な実践方法や先進企業の事例が紹介されています。「3P・5F」の要点は、後の章で詳しく解説します。
参照:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」
【国内】「人的資本可視化指針」の策定
2022年8月、内閣官房非財務情報可視化研究会が「人的資本可視化指針」を策定し、企業が人的資本情報を開示する際の具体的な指針を提示しました。
この指針は、先行して発表された人材版伊藤レポートの内容をより実務的な観点から具体化したものです。企業が実際に人的資本情報を開示する際の手引きとして機能しています。
指針の中身を見てみると、整理されているポイントは大きく以下の3つです。
- 人的資本の可視化を通じた人的投資の推進に向けて(背景と指針の役割)
- 人的資本の可視化の方法
- 可視化に向けたステップ
参照:内閣官房「人的資本可視化指針」
【国内】有価証券報告書での開示義務
2023年3月期決算から、金融庁により上場企業の有価証券報告書において「人的資本の情報開示」が義務化されました。開示が求められる項目を整理すると、以下のようになります
| 区分 | 義務化された開示項目 | 詳細内容 |
| 全般 | サステナビリティ情報の記載欄(新設) | ・「ガバナンス」および「リスク管理」は全企業が開示 ・「戦略」および「指標・目標」は重要性を判断して開示 |
| 人的資本 | ・人材育成方針 ・社内環境整備方針 |
新たに記載項目として明記 |
| 多様性 | ・女性管理職比率 ・男性の育児休業取得率 ・男女間賃金格差 |
いずれも全企業が開示義務あり |
| 取締役会の機能発揮 | ・取締役会・指名委員会・報酬委員会等の活動状況 | 活動状況を新たに記載欄として追加 |
これらの項目について、上場企業は業種や規模を問わず開示が求められ、投資家や株主が企業間の比較を行う際の重要な判断材料になります。
参照:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等改正の解説」
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【国内】岸田前首相が人的資本に言及
岸田前首相は「新しい資本主義」政策の中核に人的資本への投資を位置づけ、国家戦略として人的資本の強化に取り組む方針を打ち出しました。
実際に、リスキリング支援の大幅な予算拡充、デジタル人材育成プログラムの展開、働き方改革を促進する法制度の見直しなど、具体的な施策を策定・実行しています。
こういった政府の取り組みにより、人的資本経営は単なる企業の自主的な働きかけではなく、日本の経済成長と国際競争力強化に向けた国家的な課題として認識されるようになりました。
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4.人的資本経営のメリットと企業価値への影響

実際に人的資本経営に取り組むことで、企業にはどのような変化が起こるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットを3つ紹介します。
- 企業のイメージやブランド価値の向上につながる
- 生産性やエンゲージメントが上昇する
- 投資面で有利になる
①企業のイメージやブランド価値の向上につながる
本気で人的資本経営に取り組む企業は、しばしば「働きがいのある会社」として話題になります。従業員一人ひとりの成長を真剣に支援し、多様な働き方を認める企業は、自然と社外からの評価も高まるものです。
その結果、社会的責任を果たす優良企業として認識され、顧客や取引先からの信頼を獲得できるでしょう。
さらに「働きがいのある会社」としてのブランドイメージが高まることで、採用活動でも優位性を発揮するケースが増えています。人的資本経営を通じて構築された企業イメージは、長期的な競争優位性の源泉となるのです。
②生産性やエンゲージメントが上昇する
人的資本経営の効果で最もわかりやすいのが、現場で働く従業員の変化です。スキルアップのための研修機会が充実し、キャリア形成への支援を受けられる環境があると、従業員は前向きに仕事へ取り組めるようになります。
また、リスキリング支援や柔軟な勤務制度によって、従業員は「この会社にいれば自分の将来は安泰だ」という安心感を持てるようになります。こうした心理的な安定は、日々の業務における集中力や創造性の向上に直結するでしょう。
結果として、個人のパフォーマンス向上が組織全体の生産性アップにつながり、最終的には業績改善という形で成果が現れるのです。
③投資面で有利になる
近年の投資環境の変化で特に注目すべきは、ESG投資の急速な拡大です。機関投資家の多くが、財務指標だけではなく「その企業が持続的に成長できるか」を重視するようになりました。
その判断材料として、人的資本への取り組みは極めて重要な位置を占めています。
人的資本経営を積極的に推進している企業は「将来性がある」「リスクが低い」と評価され、結果として株価にもポジティブな影響が現れる傾向にあるものです。
さらに、新規事業への投資や大型のM&Aを検討する際にも、こうした取り組み実績が有利に働くケースが増えています。
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内閣府の非財務情報可視化研究会がまとめた「人的資本可視化指針」では、企業が開示を検討すべき項目として19の指標を示しています。これらは7つの大きなカテゴリーに分類されています。
- 人材育成:リーダーシップ、育成、スキル/経験
- エンゲージメント:従業員エンゲージメント
- 流動性:採用、維持、サクセッション
- ダイバーシティ:ダイバーシティ、非差別、育児休業
- 健康・安全:精神的健康、身体的健康、安全
- 労働慣行:労働慣行、児童労働/強制労働、賃金の公正性、福利厚生、組合との関係
- コンプライアンス:コンプライアンス/倫理
出典:内閣官房「人的資本可視化指針」
すべての項目を開示する必要はなく、企業の方針や目的に応じて柔軟に選べます。重要なのは、自社の経営戦略と整合性のある内容を選定することです。
開示義務化された項目
一方で、2023年3月期決算から有価証券報告書で開示が法的に義務づけられた項目もあります。
ESG投資の拡大と社会情勢の変化を受けて、従来の財務情報中心の開示から、非財務情報も含めた総合的な企業情報の開示へと制度が見直されました。
新たに設けられた「サステナビリティ情報」の記載欄では、以下の項目が開示義務の対象となっています。
<すべての上場企業が開示必須>
- サステナビリティ情報の記載欄:ガバナンス、リスク管理
- 人的資本:人材育成方針、社内環境整備方針
- 多様性:女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差
人的資本の情報開示とは?【開示が求められる19項目】義務化
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6.人材版伊藤レポートが示す「3P・5F」の要点
人材版伊藤レポートは、企業が人的資本経営を戦略的に進める上での実践フレームワークとして、「3つの視点(Perspectives)」と「5つの共通要素(Common Factors)」を提示しています。ここでは、その構成を詳しくご紹介しましょう。
人材戦略に必要な3つの視点(3P)
人的資本経営を実効性のある戦略として機能させるためには、経営と人材の橋渡しとなる3つの視点(3P)を取り入れることが不可欠です。
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is-To beギャップの定量把握
- 企業文化への定着
①経営戦略と人材戦略の連動
多くの企業で見られる典型的な問題は、経営陣が描く事業戦略と人事部門が進める人材施策の間に、深い溝があることです。
経営会議では「5年後には海外売上比率を50%に」という話をしているのに、人事では相変わらず国内向けの人材育成しかしていない。
このような状況では、いくら個別の施策が優れていても、全体としての効果は期待できません。
成功している企業では、まず中長期の事業計画から「どのような人材がいつまでに何人必要か」を具体的に逆算しています。そして、その人材要件に向けて採用・育成・配置の戦略を一体的に設計するのです。
このように経営と人事が同じ方向を見てはじめて、人材投資が企業価値の向上に直結する仕組みができあがります。
②As is-To beギャップの定量把握
「うちの会社には優秀な人が足りない」「もっと若い力が必要だ」といった感覚的な判断だけでは、効果的な人材戦略は立てられません。
大切なのは、現在の人材構成(As is)と将来あるべき姿(To be)の差を、できるだけ具体的な数字で把握することです。
現在の従業員のスキル分布、年齢構成、専門分野別の配置状況などを詳細に分析し、将来の事業計画で求められる人材像と比較します。
データにもとづくギャップ分析を行うことで、「どの分野に」「どれだけの人数が必要か」といった具体的な人材計画を立てやすくなるでしょう。限られた予算と時間を最も効果的に使うためには、この数値にもとづいた現状把握が欠かせません。
As Is / To Beフレームワークとは? 分析のやり方や活用例を解説
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この記事では、ビジネスの現場で役立つ活用法...
③企業文化への定着
制度や仕組みを整えるだけで満足してしまう企業は多いですが、それだけでは人的資本経営は根付きません。大切なのは、取り組みが現場の文化として定着することです。
たとえば、従業員にスキルアップの研修制度を導入しても、上司が「そんな時間があるなら営業へ行くように」といえば、学ぶ意欲は失われます。
同じように、多様性を大事にすると掲げても、人事評価や昇進に反映されなければ、社員は本気になれません。人的資本経営を成功させている企業は、経営トップが継続的にメッセージを発信しています。
加えて、中間管理職の意識改革や評価制度の見直し、日常的なコミュニケーションの改善など、多方面から文化の定着に取り組んでいるのです。時間はかかりますが、こうした地道な変化こそが、持続的な成長を支える基盤となります。
人材戦略に必要な5つの共通要素(5F)
人的資本を経営戦略と連動させて推進するための“運用の柱”となるのが、「5つの共通要素(5F)」です。それぞれの要素は以下の内容になります。
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
①動的な人材ポートフォリオ
日本企業ではよく、「一度配属されたら異動はない」「管理職はずっと同じ部署」といった固定的な人事が行われてきました。しかし、変化のスピードが速い現代では、こうしたやり方では対応できません。
求められているのは、「動的な人材ポートフォリオ」という考え方です。これは、従業員一人ひとりのスキルや経験、志向をデータとして管理し、事業の状況に応じて最適な配置を柔軟に行う仕組みを指します。
たとえば、急成長中の新規事業には経験豊富な人材を投入する、縮小する部門からは別の成長分野へ人材をスムーズに異動させる、などが一例です。こうした機動的な人材活用ができる企業こそ、市場の変化に強く、持続的に成長していけるのです。
人材ポートフォリオとは? 重要な理由、作り方、企業事例を解説
人材ポートフォリオとは、企業の人的資本(従業員のスキル・経験・適性など)を可視化し、組織全体の人材構成を分析・最適化するためのツールです。
ビジネス環境の変化が加速し、人的資本経営の重要性が高まる中、...
②知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
同じような背景を持つ人ばかりが集まった組織では、どうしても発想や判断が似通ったものになりがちです。
性別、年齢、国籍、専門分野、キャリアパスなど、さまざまな背景のある人材を積極的に受け入れることで、これまでにない視点やアイデアが生まれやすくなるでしょう。
新しいソリューションや革新的なアプローチは、多くの場合このような多様性から生まれています。
ただし、多様な人材を採用するだけでは意味がありません。それぞれの個性や能力を最大限に活かせる環境を整備し、誰もが安心して力を発揮できる「インクルーシブ」な組織づくりが同時に必要です。
③リスキル・学び直し
DXの波やAI技術の発達により、5年前には存在しなかった仕事が増える一方で、従来の仕事の多くが自動化されつつあります。このような大きな変化に対応するため、企業は従業員のリスキルや学び直しを本格的に支援する必要があるでしょう。
オンライン学習プラットフォームの活用、社外研修への参加支援、資格取得の奨励など、多様な学習機会を用意し、従業員の成長を後押ししてください。
また、個々のキャリア志向や適性にあわせて学習プログラムをカスタマイズしている事例もあります。一律の研修ではなく、一人ひとりの成長ニーズに寄り添ったサポートを行うことで、学習の効果は格段に高まるでしょう。
④従業員エンゲージメント
どれだけ素晴らしい制度や仕組みを作っても、従業員が心から納得して取り組まなければ期待した成果は生まれません。従業員エンゲージメント向上の核心は、企業のビジョンや戦略と個人の成長目標がうまく重なり合う状態を作り出すことです。
会社が目指している方向性をわかりやすく伝える、従業員一人ひとりのキャリア希望を丁寧に聞き取る、そして両者をつなぐキャリアパスを具体的に示す。
こうしたプロセスを通じて、従業員は「この会社で働くことが自分の成長につながる」という確信を持てるようになります。
また、定期的な従業員アンケートで現状を把握し、課題が見つかったら迅速に改善策を実行する姿勢も大切です。エンゲージメントの高い組織では、従業員の創造性や主体性がアップします。
それが顧客満足度や業績向上に良い影響を与えるという好循環が生まれるでしょう。
従業員エンゲージメントとは? 高める効果や方法をわかりやすく
従業員エンゲージメントとは、会社に貢献したいという、従業員自身の意欲のことです。従業員エンゲージメントの要素やメリット、取り組んでいる企業などについて詳しく解説します。
1.従業員エンゲージメントと...
⑤時間や場所にとらわれない働き方
業務の効率化やワークライフバランスを推進するためには、テレワークやフレックスタイム制、時短勤務といった柔軟な働き方の導入が求められます。
従業員はライフステージや家庭の事情に応じて、無理なく働けるため、働きやすさが向上し、多様な人材が能力を発揮しやすい環境が整います。
ただし、働き方改革は制度を整えるだけにとどまりません。成果を正当に評価する仕組みや業務プロセスの見直しなども含めた、総合的な取り組みが必要です。
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実際に人的資本経営を進めるにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、導入から運用までの流れを4つのステップに分けて解説します。
- 経営戦略と人材戦略の連動
- 目指す姿と現状のギャップ把握
- KPI設定と施策考案
- モニタリング・改善
①経営戦略と人材戦略の連動
人的資本経営を本格的に進める第一歩は、企業の経営戦略と人材戦略をしっかりと結びつけることです。
そのためには、経営層と人事部門が連携し「会社としてどのような価値を生み出したいのか」「実現に向けてどのようなスキルや人材が必要か」といったビジョンの共有が重要です。
このプロセスを通じて、従来の人事施策を見直し、経営戦略に直結する人材育成や配置へと取り組みの優先順位を切り替える必要があります。
②目指す姿と現状のギャップ把握
次のステップは、現在の人材状況(As is)と理想の姿(To be)の差を、できるだけ具体的な数字で把握することです。従業員のスキル分布、年齢構成、専門分野別の配置状況などを詳細に分析し、将来の事業計画で求められる人材像と比較してみましょう。
そうすると「デジタル系の専門家があと8人必要」「今後3年でマネジメント候補を10人育成すべき」といった具体的な目標が浮かび上がります。こうした「人材の棚卸し」を効果的に行う際に、動的な人材ポートフォリオの仕組みが役立つでしょう。
従業員一人ひとりのスキルや経験をデータベース化することで、現状把握の精度が格段に上がります。
③KPI設定と施策考案
ギャップが明確になったら、それを埋めるための具体的なKPI(重要業績評価指標)と施策を設計します。ここでのポイントは、他社との比較がしやすい共通指標と、自社の特色が反映された独自指標をバランス良く組み合わせることです。
<よく使われる共通指標>
- 離職率
- 女性管理職比率
- 従業員エンゲージメント
- リスキリング実施率 など
<自社らしさを出せる独自指標の例>
- 新規事業への社内応募率(イノベーション創出力の指標として)
- 他部署との協働プロジェクト参加率(組織横断的な連携力として)
- メンター制度の活用率(人材育成文化の浸透度として)
大切なのは、各KPIに明確な達成目標と期限を設定し、それぞれに対応する具体的な施策を考えることです。
「3年後に女性管理職比率を30%にする」なら、「そのために毎年何人の女性をリーダー候補として育成するか」「どのような研修プログラムが必要か」まで落とし込んで考える必要があります。
④モニタリング・改善
施策を動かし始めたら、定期的な効果検証と改善を行います。KPIの数値だけではなく、従業員アンケートや業績データなど、多角的な情報をもとに進捗を評価してください。
また、人的資本への取り組みや投資成果を定期的に報告し、経営の透明性向上を図ることが投資家への信頼獲得につながります。
人的資本経営は一度取り組めば完了というものではありません。市場環境や事業戦略の変化に応じて、継続的に見直しと改善を重ねていく必要があります。そのためにも、PDCAサイクルを意識した継続的なマネジメントを実践しましょう。
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ここでは、人的資本経営に取り組み、成果を上げている企業事例を3社紹介します。
旭化成株式会社
旭化成株式会社は、経営戦略に不可欠な人材を年次ごとに「事業」と「機能」の両軸から可視化しています。不足する人材はM&Aや外部投資も駆使して確保しているのが特徴です。
また、自社独自のエンゲージメント調査を毎年実施し、職場環境や社員の活力・成長志向を測定。その結果をもとに、個人と組織の両面で成長支援施策を具体化しています。
さらに、高度な専門スキルを持つ人材像を明確化し、その数値目標達成に向けた進捗を継続的にモニタリング。こうした仕組みにより、戦略的な人的資本の蓄積と育成を実現しています。
参照:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集_事例-01|旭化成株式会社」
オムロン株式会社
オムロン株式会社では、従業員一人ひとりが企業理念をもとに目標を設定し、その達成に向けた行動と成果を共有することで、理念の浸透を図りました。
グローバルリーダーの登用やコアポジションの現地化を明確な戦略として位置づけ、それぞれに具体的なKPIを設けて進捗を管理しています。
さらに同社では、持続的な成長を支える多様な人材の活躍を促すため、エンゲージメント調査の重点項目をもとに課題を整理。個々の能力・経験・志向を可視化できる情報基盤の整備も進めています。
参照:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集_事例-05|オムロン株式会社」
サイバーエージェント株式会社
サイバーエージェント株式会社は、事業領域の拡大に伴い、外部人材の活用と組織的なリスキリングを推進することで、成長に必要な人材ポートフォリオの確保を実現してきました。
若手に対して積極的に成長の場を提供し、全社課題について自由に意見を交わせる対話の場を提供。年齢や役職、部門の垣根を越えて挑戦しやすい企業文化を育んでいます。
また、エンゲージメント状況を定期的に把握し、専任担当者がフォローを行うほか、社内異動の自由度を高めるなど、従業員が意欲的に力を発揮できる環境づくりにも取り組んでいます。
参照:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集_事例-09|株式会社サイバーエージェント」
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人的資本経営の実現には、経営陣だけではなく、人事部門の働きが大きく影響します。ここでは、人事部門が今すぐ始めるべき取り組みを2つ紹介しましょう。
- 他社の人的資本に関する情報を確認
- 戦略的な目標設定や改善策を検討
他社の人的資本に関する情報を確認

人的資本経営を始める際は、まず他社の情報開示を参考にすることが有効です。有価証券報告書や統合報告書、サステナビリティレポートには、人的資本に関するさまざまな情報が開示されており、項目設定や指標選定のヒントになります。
特に同業他社や規模の近い企業の事例は、自社への応用可能性が高く、自社に不足している視点や取り入れるべき施策の参考になる点が多いはずです。
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戦略的な目標設定や改善策を検討
他社の事例を参考にしながら、同時に進めたいのが「自社としての明確な目標設定」です。よくある失敗に「制度を導入したものの効果が見えない」「開示が目的になり、本質が伴っていない」といったケースがあります。
大切なのは「3年後、5年後にどのような組織になっていたいのか」という将来像を明確に描くことです。そのためには、経営陣との対話が欠かせません。事業戦略と人材戦略の方向性が一致しているかを確認し、両者が連動した目標を立てる必要があります。
また、改善策についても「なんとなくやってみる」ではなく、戦略実現に向けた意図のある取り組みとして設計することが重要です。「他社がやっているから」ではなく、「自社の戦略実現のために必要だから」という明確な理由づけができる施策を選択しましょう。
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人的資本経営とは、人材を「コスト」ではなく将来への「投資対象」として捉え、その価値を高めることで企業の持続的成長を実現する経営手法です。グローバル化やデジタル化が進む中で、企業競争力の源泉は「人の知識・能力・創造力」へと移りつつあります。
2023年からは情報開示の義務化も始まり、企業には人的資本への取り組みを外部に示す姿勢が求められるようになりました。これは単なる対応ではなく、自社の魅力を伝えるチャンスでもあります。
人的資本経営の実現は、手間と時間のかかる取り組みですが、他社との差別化効果も大きく、中長期的な企業価値向上につながる可能性を秘めています。
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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
・専任サポートについて など


