人的資源経営とは?【わかりやすく解説】人的資源管理モデル

人的資源経営とは、人材を資源と考えてその価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上につなげる経営のことです。ここでは人的資源経営の歴史や具体的な施策、人的資源管理について解説します。

1.人的資源経営とは?

人的資源経営とは、企業が経営を行ううえで利用できる「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」を資源としてその価値を最大限に引き出し、企業価値の向上につなげる経営のこと。

少子高齢化や人生100年時代の到来により、企業には事業環境の変化に対応しながら持続的に企業価値を高めていく力が求められています。

これを踏まえて重要視されているのが、企業価値向上に向けた人的資本の活用、すなわち「人的資源経営」です。

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2.人的資源経営の意味

「人的資源」「経営資源」はどのような資源を指すのでしょう。ここではそれぞれの意味と人的資源が注目されるようになった背景について説明します。

人的資源とは?

企業が経営戦略を推進していくうえで必要不可欠な経営資源のひとつ。

現代の企業活動におけるおもな経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」の4種類で、そのうちのヒト、つまり人的資源はほかの経営資源を活用できる唯一の存在です。この人的資源がなければ、企業の経営そのものが成立しません。

またこの人的資源は自社の従業員に限定せず、顧客や株主、取引先などのステークホルダーも含める考え方もあります。

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経営資源とは?

人的資源を含め、企業経営に必要となるリソースそのもの。一般的に事業を拡大するための「資金」、オフィス環境を豊かにするための「モノ」、企業のノウハウや顧客情報などの「情報」、そして人的資源の「ヒト」を総括して「経営資源」と呼びます。

さらに、企業活動に関する「時間」、特許や商標権、著作権など法律で保護されている財産を指す「知的財産」を加えた6つで経営資源とする場合もあるのです。

人的資源の英語は?

人的資源は英語で「Humanresources(ヒューマンリソース)」といいます。人間そのものが企業の資産、財産であるという意味で、このヒューマンリソースを戦略的に育成するマネジメントが「ヒューマンリソースマネジメント(HRM:人的資源管理)です。

この「HRM(人的資源管理)」が提唱されるまで、人を資源ではなく「コスト」と考える「パーソナルマネジメント(PM:人事労務管理)の考えが一般的でした。

ここから教育制度やキャリアプランによる企業活動へのプラスの影響を考えるようになり、人的資源が注目されるようになったのです。

人的資源経営の歴史

日本で人的資源経営が注目されるようになったのは、1990年代以降のこと。それまで企業活動における「ヒト」の管理といえば「人事、労務管理」であり、ヒトを資源としてみなすことはありませんでした。

やがて日本でもグローバル化と知識社会化が進み、「働く」ことに対する考え方も変わってきたのです。そこで注目されるようになったのが、個人としての労働者を尊重し、かつ経営戦略に直結する人材に育成、管理していく「人的資源経営」の考えでした。

経営において人的資源が注目される理由

人的資源が注目されるようになった理由として、次の3つが挙げられます。

  1. 経営戦略を実現するために必要不可欠である
  2. 経営資源で唯一育成できるものである
  3. 人的資源が企業の喫緊の課題になっている

①経営戦略を実現するために必要不可欠である

経営戦略を実現するために必要な能力を持った人材が、いつでも都合よく見つかるわけではありません。人口減少による労働市場の縮小が危惧されるなか、企業は限られた人材のなかで人的資源経営を確実に行う必要があります。

従業員のモチベーションの高さは組織の活性化に、スキル向上は生産性向上につながるもの。従業員の貢献から新しいイノベーションが生まれ、経営戦略実現の近道となる可能性もあります。経営戦略の実現には、人的資源と向き合わざるを得ないのです。

②経営資源で唯一育成できるものである

数ある経営資源のなかでも、人が育成できるのは「人的資源」のみです。

たとえば新卒採用の場合、学校を卒業したばかりの社員を研修や教育によって育てていきます。社会人として必要なルールや業務上必要な知識をゼロから教えていくことで、やがて一人で対応できるようになったり、業務範囲を広げたりできるようになるのです。

これはほかの財務資本や物的資本にはない特徴といえます。「人は育つ」という特徴を踏まえた戦略人事が重要です。

③人的資源が企業の喫緊の課題になっている

人的資源は非常に流動的です。せっかく時間をかけて優秀な人材を育成したとしても、その人が転職して競合他社に流れてしまう可能性もあるでしょう。

また人の思考もつねに一律ではありません。どれだけ熱心に育成、教育に取り組んでも、どれだけ満足度の高い評価制度や報酬制度を確立したとしても、つねに期待通りに育つわけではないのです。

企業は変化する時代を生き残るためにも、ビジョンや長期戦略、さらに現場の状況にあわせた的確なマネジメントを行わなければなりません。

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3.人的資源経営における人的資源管理の5つのモデル

人的資源経営の代表的なモデルとして、以下の5つが挙げられます。それぞれのモデルの特徴を理解しておくと、人的資源管理を展開する際に役立ちます。

  1. ミシガンモデル
  2. ハーバードモデル
  3. タレントマネジメント
  4. 高業績HRM
  5. コンピテンシーモデル

①ミシガンモデル

1980年代にミシガン大学を中心に実施された研究結果をベースにしたものです。このモデルでは、人的資源管理の基本を以下の4つに分類しています。

採用と選抜:職務遂行に最も適した人材を選ぶ

  • 人材評価:客観的かつ適切な評価
  • 人材開発:将来を見越した育成
  • 報酬:業績に応じた報酬でモチベーション向上につなげる

これらを経営に落とし込み、会社全体のパフォーマンス向上につなげることが狙いです。

②ハーバードモデル

人的資源管理は、経営者や従業員などの「ステークホルダーの利害」および社員の特性や経営戦略などの「状況的要因」から大きな影響を受けるという考えのこと。同じく1980年代、ハーバード大学を中心に実施された研究をもとに考えられました。

本モデルが考える人的資源管理の要素は次の4つです。

  • 職務システム:従業員それぞれに目標や責任を与えて組織へのコミットメントを高める
  • 人的資源のフロー:従業員を会社の財産として考えて、入社から退社までのフローを扱う
  • 従業員からの影響:現場の声を積極的に取り入れてシステムの最適化を目指す
  • 報酬システム:報酬を調整してモチベーション向上につなげる

実務で用いられる人的資源モデルの多くが、このハーバードモデルです。

③タレントマネジメント

タレント(従業員)が持つ能力やスキルを経営資源として捉え、これらを人員配置や育成に活用して、従業員本人と組織のパフォーマンス最大化を目指すマネジメントのこと。

少子高齢化や生産年齢人口の減少により、日本では従来の「人を増やして成果を増やす」経営が通用しなくなっています。

「今いる社員でより多くの成果を生み出す」経営実現のため、従業員に理想的なキャリアパスや人材開発メニューを提供してキャリア実験を支援したり、事業や売り上げ拡大につなげたりするのです。

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④高業績HRM

高業績企業が採用している人的資源管理体制の総括です。高業績HRMでは個人の能力を「従業員個人の能力(Ability)」「モチベーション(Motivation)」「機会(Opportunity)」の関数から数値化できると考えています。

それぞれの要素を向上させることで、競争優位性が高められるというもの。3つの頭文字を取って「AMO理論」とも呼ばれています。経営目標に対する貢献度を向上させるより、従業員個人のモチベーションを向上させる作用のほうが強いのも特徴です。

⑤コンピテンシーモデル

ハイパフォーマーに共通して見られる専門知識やノウハウ、技術など、優秀な成果を生み出す行動特性を観察、分析して「何が従業員を仕事のできる人材にしているのか」を明らかにする考え方のこと。

本モデルでは高評価につながる行動が明確になるため、従業員にとっては会社が求める行動や姿勢を理解しやすくなります。成果主義の導入を検討している企業や、従業員の弱みを適切に指導できていない組織などに有効なモデルです。

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4.人的資源管理を用いた人的資源経営を行う際の注意点

感情を持ち、自ら思考する「ヒト」のマネジメントは、ほかの経営資源に比べ非常に複雑で困難です。人的資源管理を用いて人的資源経営を行う際の注意点について、説明しましょう。

長期的ビジョンを持つことが求められる

人的資源管理は短期成果の出にくいマネジメントです。「ヒト」の育成が一朝一夕にいかないことを考えれば、当然のことでしょう。

短期的な成果が見られないからといって、今後も成果が生み出せないわけではありません。企業はどのような人材を必要としているのか、その育成に対してどのようなビジョンを描いているのか、どちらも長期的なデザインを持つことが必要です。

また人の思考は変化するため、企業戦略や現場の状況にあわせて適宜見直していくことも重要になります。

社員の人間性軽視のリスクがある

人的資源経営では従業員の人間性を軽視しないよう注意する必要があります。

先に述べた「ミシガンモデル」では企業戦略が最優先事項であり、これを達成するために人的資源管理を実行します。戦略がうまく働けば企業の業績は向上し、人的資源の価値も高まるでしょう。

しかし一方で従業員個人の人間性や雇用保障などは軽視される傾向にあるのです。

また「ハーバードモデル」でも人的資源管理と経営戦略のあいだに一貫性と調和が求められます。これが先走って従業員を「モノ」として軽視しないよう注意しなければなりません。人間性を軽視した対応では、人はついてこないからです。

人的資源は常に流動的であるという認識を持つ

人的資源はつねに流動的であり、たとえ優秀な人材をひとり育成できたとしても、その育成方法がすべての従業員に適応するとは限りません。

事実、かつて主流だった年功序列による職能資格制度は現代では通用しなくなってきています。成果主義の時代にあわせて、人事評価の尺度も成果に徹底した評価制度になりつつあるのです。

また時代や個人の背景などさまざまな理由により、人の思考もつねに変化しています。満足度の高い評価制度や報酬制度の確立など、企業がどれだけ熱心に人材育成に取り組んでも、その施策がすべての従業員によい影響を与えるとは限らないのです。

従業員の主体性を潰す

企業がよかれと思った施策でも、従業員側がよいと思うかはわかりません。たとえば能力開発を目的としたジョブローテーションの場合、会社はさまざまなスキルを持つ人材に育成してあげていると思うかもしれません。

しかしその従業員がやりたくない業務だった場合、本人のモチベーションを保つのは困難です。管理を徹底するあまり、従業員の主体性を潰してしまうことも考えられます。

企業と従業員の価値観はイコールではないと、企業はつねに意識する必要があるのです。

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5.人的資源経営を実現するための3つの具体的施策

人的資源経営を実現させるためには、どのような施策が有効なのでしょう。ここでは人的資源経営を実現させるための3つの施策について説明します。

  1. 多様な働き方の採用
  2. 人事評価制度の整備、改善
  3. 人財採用と育成の制度構築

①多様な働き方の採用

従業員それぞれが自分の労働時間や始業時間、終業時間を決められる「フレックス制度」なら、従業員に柔軟な働き方を促せます。

就業時間は会社が決めた一律のものではなく、自分のライフスタイルに合わせた時間であるため、効率化やモチベーションアップにつながるのです。

また在宅勤務やテレワークなどを活用すれば、通勤や移動におけるコスト削減、災害時などのリスク分散につながります。いずれも会社としての都合を押し付けるものではなく、従業員の視点に立った施策を実行していくことが重要です。

②人事評価制度の整備、改善

従業員の能力や会社への貢献度などを評価して、報酬や等級などの待遇に反映させる仕組みを「人事評価制度」といいます。こうした適切な評価制度の制定と改善も人的資源経営の実現につながるのです。

成果主義の時代といわれる昨今、「今まで従業員満足度が高かったから、これからも年功序列でいこう」と押しとおしたとして、従業員のモチベーションアップ、会社に対する貢献度のアップは期待できるでしょうか。

人事評価制度の尺度も、時代の変化にあわせて変わりつつあります。どれだけよい制度であっても、定期的な整備や改善が欠かせません。

人事評価制度とは?【図解でわかりやすく】仕組みと作り方
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③人財採用と育成の制度構築

人的資源経営を実現するためには「人材採用」と「人材育成」についても適宜見直す必要があるでしょう。人材募集や採用、異動や配置転換など雇用に関する制度を管轄して、人的資源を有効に活用する制度を「人材採用制度」といいます。

また経営に関する課題を解決して目標を達成させるための制度を「人材育成制度」と呼ぶものの、どちらも近年の多様な働き方に合わせた構築、見直しが必要です。

「労働力不足のなか、必要なスキルを所有していない人材を新規採用した」「その新人を現場レベルに育成してほしい。やり方は決まっていないから勝手にやってみて」このような会社で既存従業員の会社に対する貢献度を高めるのは困難でしょう。

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6.人的資源経営に関するおすすめの書籍

人的資源経営について理解を深めるためには、人材マネジメントや人事の科学についてまとめた書籍を参考にする方法もあります

経験から学ぶ人的資源管理 新版

組織における人材マネジメントについてはじめて学ぶ学生や、これから実践に役立てたい社会人などに最適なのが、人的資源管理論を専攻する上林憲雄氏らが著者をつとめるこの一冊です。

本書ではグローバル化や雇用法制の改正、情報技術の革新などさまざまな変化を受ける日本企業の人材マネジメントに触れており、ライトな切り口で戦略的人的資源管理の視点について学べます。

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本書では人材マネジメントに関する具体的な実例をQ&Aと図解でわかりやすく解説。トヨタやサイボウズ、リクルートなど日本を代表する企業が、具体的にどのような人材マネジメントを実践しているのかにも触れています。

とくに企業規模と育成雇用のスタンスから人材マネジメントに関する理解を深めたい人におすすめです。

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