伊藤レポートとは?【わかりやすく要約】人材、ROE、人的資本

伊藤レポートとは、経済産業省のプロジェクトの最終報告書の通称です。ここでは、伊藤レポートについて解説します。

1.伊藤レポートとは?

伊藤レポートとは、2014年8月に公表された、伊藤氏が座長を務めた経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書報告書の通称のこと。

伊藤とは当時一橋大学教授であった伊藤邦雄氏の苗字です。企業と投資家の対話による持続的成長に向けた資金獲得や企業価値の向上、ROEの目標水準を8%とするなどを提言し、経済界に衝撃を与えました。

伊藤邦雄氏とは?

伊藤邦雄氏は、下記を歴任した人物です。

  • 一橋大学大学院の商学研究科長、商学部長
  • 一橋大学副学長
  • 中央大学大学院戦略経営研究科特任教授

伊藤邦雄氏が座長を務めた経済産業省主催のプロジェクトがまとめた最終報告書、いわゆる伊藤レポートは、日本のコーポレートガバナンス改革を牽引するなど国内外に影響を与えました。

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2.伊藤レポートが公表された背景

伊藤レポートが公表された背景にあるのは、日本企業の収益性の低迷。日本企業は高い技術力とイノベーション創出力があるにもかかわらず近年、企業の収益性は低迷を続けています。

その原因は、企業・投資家の対立です。本来企業は投資家と協創して、イノベーション創出・高収益性の両方を実現させなければなりません。しかし企業が投資家のいる資本市場に対し十分な対応をしてきませんでした。これが収益性低迷の一因になっているのです。

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3.伊藤レポートの基本メッセージ

伊藤レポートの基本メッセージは、以下の6つです。

  1. 持続的成長の妨げとなるレガシーとの決別
  2. イノベーション創出と高収益性との同時実現
  3. 企業と投資家による協創で持続的価値の創造
  4. 株主資本コストを上回るROEの実現
  5. 企業と投資家による共創につながる対話の実現
  6. インベストメント・チェーン変革

企業と投資家が共創して長期的なイノベーションによる企業価値を創造し、日本全体の経済を成長に導くことが、伊藤レポートのメッセージです。

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4.伊藤レポートの要旨

伊藤レポートの要旨は以下のとおりです。

  • 企業と投資家が協創することで、持続的な企業価値の向上を目指すべき
  • 資本効率を重視した経営の実現に向け、中長期的なROE向上を目指すべき
  • 企業と投資家の関係性を共創関係になるように再構築するための対話を重視するべき

伊藤レポートの要旨は、「中長期的にイノベーションと高収益性を達成するためには、投資家から資金を獲得していく必要があるため、企業と投資家は適切な関係性を構築すべき」です。

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5.伊藤レポートと持続的成長

伊藤レポートでは、日本における資本市場の短期志向の顕在化を指摘しています。企業が持続的成長を達成するためには、長期的なイノベーションを支援するための体制や資金が不可欠です。

しかし、日本企業は短期志向に陥っているため、持続的成長が困難な状況になっています。伊藤レポートでは企業と投資家が共創関係を構築し、長期的なイノベーションへ投資することの重要性を指摘しているのです。

ショートターミズム(短期志向)とは?

企業・投資家など市場にかかわるものが、短期的利益を追求し、長期的成長や企業価値向上を軽視すること。特に投資家はショートターミズムが強く、短期的利益を重視します。

しかし企業がその圧力に負ければ、持続的成長が見込めなくなるでしょう。世界経済の成長スピードの減速や失業者・貧困層の増加といった社会問題が引き起こされる可能性も、否定できません。

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6.伊藤レポートとROE

伊藤レポートは、自己資本利益率でROEについてもコメントしています。それは、「最低限でも8%のROEを上げられるよう要請するという点。これは、残余利益モデルで理論的にも証明されています。

  • 2014年2月に金融庁が策定、公表した「スチュワードシップ・コード」
  • 2015年6月に日本証券取引所が公表した「コーポレートガバナンス・コード」

ROEとは?

自己資本利益率のことで、企業の自己資本に対する当期純利益の割合です。下記どちらかの方法で計算し、ROEの値が高ければ高いほど、効率のよい経営ができていることを示します。

  • 当期純利益÷自己資本×100
  • EPS(一株当たり利益÷ BPS(一株当たり純資産× 100)

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スチュワードシップ・コードとは?

金融機関などの機関投資家のあるべき姿に関するガイダンスです。リーマンショックといった状況を背景に、2010年にイギリスで策定されました。スチュワードシップ・コードには、機関投資家が行うべき7つの行動指針の原則をあげています。

  1. 受託者責任の果たし方の方針公表
  2. 利益相反の管理に関する方針公表
  3. 投資先企業の経営モニタリング
  4. 受託者活動強化のタイミングと方法のガイドラインの設定
  5. ほか投資家との協働
  6. 議決権行使の方針と行使結果の公表
  7. 受託者行動と議決権行使活動の定期的報告

コーポレートガバナンス・コードとは?

「企業の従業員、株主、顧客、地域社会といったステークホルダーとのあるべき関係性」「企業を監視する立場にある取締役会といった組織のあるべき姿」を文章化したもの。日本では金融庁と東京証券取引所が共同で2015年に策定、2021年6月に改訂されています。

コーポレートガバナンスは、企業活動の透明性や公正かつ迅速な意思決定を実現するために重要なしくみです。

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7.伊藤レポート2.0とは?

伊藤レポート2.0とは、2017年10月に策定された伊藤レポートのアップデート版のこと。伊藤レポートで策定された、企業・投資家との協調による企業価値の創造に向けて、下記2点について言及しています。

企業による戦略投資がどのように行われるか、また、戦略投資をどのように評価すべきか

投資家の投資動向がどのようになっているか、また今後の投資動向をどのようにすれば
中長期的投資を促進できるか

伊藤レポート2.0によって期待されるもの

伊藤レポート2.0によって期待されるものは、下記のとおりです。

  • 企業が企業価値創造に向け経営のあり方を整理し、行動に結びつける
  • 投資家やアナリストは、企業と対話し、企業ガイダンスと照らし合わせて投資判断に必要な情報を把握する

企業・投資家の両者がガイダンスを共通言語とし、持続的な価値協創に向けて対話を進めることで、双方の誤解が解けてエンゲージメントが促進されると期待されています。

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8.人材版伊藤レポートとは?

人材版伊藤レポートとは、経営戦略や人材戦略の連動によって、持続的な企業価値の向上に向けた人的資本経営のあり方がまとめられたレポートのこと。2020年9月に公表されたレポートで、下記のような変革を求めています。

  • 人材マネジメントの目的を人的資本、価値創造へ
  • アクションを人材戦略へ
  • イニシアチブを経営陣や取締役会へ
  • ベクトルを積極的対話へ
  • 個と組織の関係性を個の自立、活性化へ
  • 個用コミュニティを選び、選ばれる関係へ

人材版伊藤レポートが公表された背景

人材版伊藤レポートが公表された背景にあるのは、企業価値の変化です。

企業価値を決める重要因子は、有形から無形、すなわち人的資本へと変化しています。VUCAという言葉に象徴されるとおり、予測が困難な現代社会において人材戦略は、企業競争を勝ち抜くための重要な要素です。

企業が、「労働者に選ばれる企業であるか」という問いかけに対して経営戦略にもとづいた明確な答えを持つため、人材版伊藤レポートが公表されました。

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9.人材版伊藤レポートと人的資本経営

人材版伊藤レポートと人的資本経営とは深い関係性を持っています。下記2点から解説しましょう。

  1. 人的資本経営とは
  2. 人的資本効率を高めるための取り組み

①人的資本経営とは?

人材を資本と捉える経営のこと。資本である人材の価値を引き出しながら、中長期的視点に立って企業価値の創造に取り組む経営の姿です。人的資本の考え方は、1960年にアメリカ経済学会会長でノーベル経済学賞受賞者のセオドア・シュルツ氏が提唱しました。

また具体的な人材への教育投資の費用対効果をモデル化は、同じくノーベル経済学賞受賞者のシカゴ大学教授ゲイリー・ベッカーによって著された1964年の「人的資本」のなかで、「適切な投資で人的資本の価値を増やすことができる」と記されています。

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②人的資本効率を高めるための取り組み

経営戦略・人材戦略を適合させること。具体的には下記のようなものがあります。

  • 事業ポートフォリオの変化を見越した人材ポートフォリオを構築する
  • イノベーション、付加価値といった企業価値を生み出す人材の確保、育成

「人材をコストと捉えない」「人的資本を経営に取り入れる」といった人的資本への考え方を改めながら、人材をとおして企業価値を創造していく取り組みが求められています。