コーポレートガバナンスコードとは? 5原則、改訂のポイント

コーポレートガバナンスコードとは、企業統治における行動規範のこと。ここではコーポレートガバナンスコードを構成する要素や改定の動き、5つの原則などについて解説します。

1.コーポレートガバナンスコードとは?

コーポレートガバナンスコードとは、企業としての望ましい関係性や、取締役会など会社を監視する組織のあるべき姿が記された「企業統治指針」のこと。

株主をはじめ顧客や従業員、地域社会などさまざまなステークホルダーとの関係を踏まえたうえで、会社が公正かつ迅速な意思判断を行うための仕組みが記述されています。

2015年に金融庁と東京証券取引所により原案が公表され、その後日本企業のガバナンス底上げを目的として2021年6月に改訂されました。

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2.日本におけるコーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスを日本語に訳すと「企業統治」となります。東京証券取引所では、コーポレートガバナンスを次のように定義しています。

「株主をはじめ顧客や従業員、地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明公正かつ迅速果断な意思決定を下すための仕組み」

このコーポレートガバナンスを実現するうえで役立つ原則をまとめたものが「コーポレートガバナンスコード」です。コーポレートガバナンスコードは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現する目的で策定されました。

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3.コーポレートガバナンスコードをめぐる社会の動き

コーポレートガバナンスコードが制定された背景にあるのは、持続的成長や中長期的な企業価値の向上を実現するためのガバナンス改革です。ここではコーポレートガバナンスコードをめぐる、社会のおもな動きについて解説します。

日本再興戦略

2014年に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」では、主要政策のひとつとしてコーポレートガバナンスの強化を明示しました。

目指すのは、日本企業の稼ぐ力、すなわち中長期的な収益性や生産性を高めて経営者のマインドを変革し、グローバル競争に打ち勝つ「攻めの経営判断」を後押しする仕組みの強化です。

日本版スチュワードシップコード

コーポレートガバナンスコードのガイドラインのひとつに「スチュワードシップコード(StewardshipCode、機関投資家の行動規範を示した国際基準、)」があります。

「リーマンショックを深刻化させたのはコーポレートガバナンスが不十分だったからではないか」という反省から生まれ、日本では2014年に制定、2017年に改訂が行われました。

コーポレートガバナンスコード原案

先に触れた「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」では、企業の持続的成長に向けた自律的な取り組みが促進されました。これは企業が中長期的に資本生産性を向上させ、強い企業経営力を取り戻すための取り組みです。

こうした動きを受けて、金融庁と東京証券取引所は「コーポレートガバナンスコードの策定に関する有識者会議」を開催。その後2015年に「コーポレートガバナンスコード原案」が発表されたのです。

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4.コーポレートガバナンスコードの構成

全36ページのコーポレートガバナンスコードは、以下5つの基本原則で構成されています。

  1. 株主の権利および平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上という基本思想にもとづいたコーポレートガバナンスコード。全文は日本取引所のホームページからダウンロードできます。

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5.コーポレートガバナンスコードの5原則

コーポレートガバナンスコードの原則を読み解けば、コーポレートガバナンスの全体像や、企業がどう行動するべきかが見えてきます。ここでは前述したコーポレートガバナンスコードを構成する5つの原則について解説します。

  1. 株主の権利平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

①株主の権利平等性の確保

「企業の実質的所有者である株主の声に耳を傾ける」ことです。企業は、自分たちにとって最も重要な存在である株主の権利と平等性を確保しなければなりません。

具体的な施策として挙げられるのは、「資本政策の基本的な方針を説明しなければならない」「株主の判断の役に立つような情報を適確に提供する」などです。

②株主以外のステークホルダーとの適切な協働

「従業員や顧客、取引先など各ステークホルダーとの関係を重視すべき」という内容です。企業が持続的な成長を遂げるためには、さまざまなステークホルダーとの協働が欠かせません。

「内部通報に関わる適切な体制を整備する」「中長期的な企業価値向上に向けて、活動の基礎となる経営理念を策定する」などの原則が示されています。

③適切な情報開示と透明性の確保

コーポレートガバナンスを十全に機能させるためには、公正で透明な経営が必要不可欠。そのためコーポレートガバナンスコードの基本原則には、適切な情報開示と透明性の確保が明示されています。

経営が公正透明であれば会社への信頼は高まり、株主とのコミュニケーションの充実につながるでしょう。会社が開示すべき情報だけでなく、外部会計監査人が行うべき対応も示されているのです。

④取締役会等の責務

「独立した客観的な立場から実効性の高い監督を行う」という内容です。取締役会は会社の意思を決定する機関であると同時に、それぞれの取締役に対して監督機能を果たす役割もあります。

会社が持続的成長を果たすためには、取締役会がその責務を適切に果たさなければなりません。ここでは経営陣の意思決定や組織運営などについて言及しています。

⑤株主との対話

コーポレートガバナンスコードの原則では、株主との建設的な対話を促進するための体制整備や取り組みについても述べています。つまり「株主との対話」の重要性です。

株主総会以外にも建設的な対話の場を設けると、企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に役立つと指摘されています。

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6.コーポレートガバナンスコードの適用と法的拘束力

コーポレートガバナンスコードは、東京証券取引所のガイドライン。そのため適用を受けるのは基本的に東証上場の企業のみです。ここではコーポレートガバナンスコードの適用対象と法的拘束力について解説します。

適用対象

コーポレートガバナンスコードは以下の3段階で構成されており、企業によって遵守の範囲が異なります。

  • 基本原則:企業統治の基本的な考え方や理念を示したもの
  • 原則:基本原則を具体化したもの
  • 補充原則:原則を実現するため、さらに具体的な行動レベルに落とし込んだもの

東証第一部および第二部の上場会社は全原則、マザーズおよびJASDAQの上場会社は基本原則の遵守が求められています。

法的拘束力

東京証券取引所のガイドラインであるコーポレートガバナンスコードに法的拘束力はありません。よって万が一違反が認められても制裁金や罰則などは発生しないのです。しかし東京証券取引所による公表措置の対象となります。

違反の事実が公表されれば、企業は自社の評判を落としてしまうでしょう。そのため法的拘束力がなくてもコーポレートガバナンスコードを無視する選択肢は事実上ありません。

「コンプライオアエクスプレイン(comply or explain)」の原則

コーポレートガバナンスコードには「コンプライオアエクスプレイン(Comply or Explain)」の原則が適用されています。

これは「遵守(Comply)せよ、さもなくば説明(Explain)せよ」、つまりコーポレートガバナンスコードを遵守するか、遵守しないのであればその説明を求める、という考えです。

企業はなぜその事項を遵守しないのかについて、合理的な理由を開示しなければなりません。

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7.コーポレートガバナンスコード改訂の理由

日本におけるコーポレートガバナンスコードは、2015年に適用を開始して以来、2018年、そして2021年の2回にわたって改訂が行われています。なぜわずか6年のあいだに2回も改訂されたのでしょう。近年の世界情勢から次の点が指摘されたからです。

社会状況の急激な変化

コーポレートガバナンスへの関心が世界的に高まるなか、日本もスピード感を持ってガバナンスの諸課題に対応しなければなりません。そのなかで直面したのが、2020年からのコロナ禍でした。

コロナ禍の企業を取り巻く環境の変化により、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方の変革と早急に向き合う状況になったのです。

そこで持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、企業戦略を大きく見直す必要がありました。

市場区分の変更

コーポレートガバナンスコードは3段階で構成されており、市場区分によって遵守の範囲が異なります。この市場区分が2022年4月に変更されるのです。

  • プライム市場:全基準の適用(より高い水準)
  • スタンダード市場:全原則の適用
  • グロース市場:気舗原則の適用

これにより、企業がより高度なガバナンスを発揮することが期待されています。

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8.2021年コーポレートガバナンスコード改訂のポイント

2021年に行われたコーポレートガバナンスコードの改訂では5つの補充原則が新設され、全83の原則となりました。2021年の改訂ポイントは次の3つです。

  1. 取締役会の機能向上
  2. 管理職における多様性(ダイバーシティ)の確保
  3. サステナビリティをめぐる課題への取り組み

①取締役会の機能向上

取締役会に関する内容です。コード改訂では経営者によるリスクテイクを支え、重要な意思判断を行うためには、実効性の高い監督を行うことが重要だと述べています。

それには独立性のある指名委員会や報酬委員会の設置、資質を有する独立社外取締役の選任などが必要です。これらによって、取締役会の機能が十分に発揮できる体制を構築することが求められています。

②管理職における多様性(ダイバーシティ)の確保

コロナ禍による急速な変化のなかを先導し、新たな成長を実現するためには、多様性(ダイバーシティ)の確保が欠かせません。これは取締役会のみならず、経営陣も同様です。

性別や国籍、中途採用者の登用など多様性の確保に向けて取締役会が促進し、監督することが期待されています。また多様性の確保に向けた人材育成方針や社内環境整備方針の公表についても要求しているのです。

③サステナビリティをめぐる課題への取り組み

コーポレートガバナンスコードの改訂では、ESG要素を含む中長期的な持続可能性、すなわちサステナビリティを巡る課題への取り組みについても言及しています。

国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されて以来、サステナビリティは企業にとっても重要な経営課題のひとつであるとの意識が高まっているのです。

本改訂ではサステナビリティについて基本的な方針を策定し、自社の取り組みを開示することが求められています。

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9.コーポレートガバナンスコード改訂による企業の対応

コーポレートガバナンスコードの改訂により、上場企業には次のアクションが求められているのです。ここではコーポレートガバナンスコードの改訂にともなう実務対応について解説します。

対応スケジュール

上場企業は2021年12月末までに改訂を踏まえた内容を確定し、報告書を提出する必要があります。もし本コードを実施しない場合は、その理由を説明しなければなりません。

ただしプライム市場の上場会社のみを対象とする原則の実施状況については、この限りではありません。2022年4月4日以降に開催される定時株主総会終了後のガバナンス報告書から、記載すればよいとされています。

新たな開示項目

本改訂により、7点の開示項目が追加されました。

  1. グローバル人材登用の目標および状況
  2. 多様性の確保に向けた人材育成方針と実施状況
  3. サステナビリティについての取り組み
  4. 人的資本や知的財産への投資
  5. TCFD(あるいはそれと同等の枠組み)にもとづく開示(プライム市場のみ)
  6. 委員会構成の独立性に関する考え方や権限について(プライム市場のみ)
  7. 取締役会の実効性確保に向けたスキルの組み合わせ

上場企業は新市場区分に応じてこれらの情報を開示しなければなりません。

実務レベルの対応

実務レベルでの対応としては、以下の5つが考えられます。

  1. 取締役会で企業統治に対する考え方を決定する
  2. 原則の実施にあたって、実施と未実施を区別する
  3. 未実施の原則を今後どうするか検討する
  4. ステークホルダーの理解を得られる開示内容を検討する
  5. 報告書を更新する

未実施の原則について検討する際は、対応にかかる期間や影響を考慮して、優先度の高いものから対応していくことが重要です。