企業には、ゼネラリストとスペシャリストの両方の存在が不可欠です。そしてゼネラリストとスペシャリストともに、プロフェッショナルという要素を加味して、広く社会に良い影響を与える存在になることが求められています。
企業側もプロフェッショナルなゼネラリストやスペシャリストを早急に育成する必要があるでしょう。
目次
1.ゼネラリストとは?
ゼネラリストとは保有している知識や技術、スキルが広範囲にわたる人のこと。ジェネラリストという言葉も同義で使われています。
ゼネラリストの対義語はスペシャリストです。ここでは、ゼネラリストとは何か、スペシャリストとの違いはどこにあるのか等を解説しましょう。
ゼネラリストの特徴
ゼネラリストとは、広範囲にさまざまな知識、技術、スキルを有している人のこと。ゼネラリストをビジネスの世界でいうと、
- 部下やチームをまとめる管理職
- プレイングマネージャーのような役割を果たす立場にいる人
となるでしょう。
ゼネラリストの特徴は部署やチーム全体を広い視野で見渡し、采配を振るうマネジメントや調整役に適していること。組織に与えられたミッションを達成できるかに重きを置き、ミッション達成時に充足感を覚えることが可能な人材を指します。

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求められる能力
通常のマ...
ゼネラリストが多かった背景
ゼネラリストが多く育成・輩出された背景はいくつかあります。
- 新卒採用後に各部門を経験し、総合職になるゼネラリスト向きのキャリアパスが多かったこと
- 部門やチーム、企業をマネジメントするには組織や企業を見渡せるゼネラリストとしての広い視点や調整能力が求められていた
ゼネラリストに必要な能力、スキル
ゼネラリストに求められる能力は、
- コミュニケーション能力
- 広い視野
- 行動力
の3つです。チームや部署は必ずしも気が合う人材で構成されるわけではありません。中には、気が合わない、理解しにくい言動、思考回路が異なる人も存在するでしょう。どんな人がいても、組織をまとめ、課題を見つけて改善・マネジメントを行う能力が欠かせません。
また、組織外には、上司と異なる立場の人間や関係取引先等、さまざまな人が存在します。
ゼネラリストには、
- 前述した3つの能力を用いて組織をまとめる力
- 人を取り込む力
- 相手を理解する考え方
なども必要でしょう。
ゼネラリストを育成する方法
人によっては向き・不向きがあります。教育・育成すれば誰でもゼネラリストになれるわけではないのです。
そのため、まずはゼネラリストになる素養を持つ適性の高い人材を選抜し、その後CDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)に乗せていきましょう。
CDPとは、中長期的な視点で社員のキャリア形成をバックアップする取り組み。年単位でキャリア形成を考え、社内のOJTだけでなく、社外の研修等も併用して総合的にキャリア形成や能力開発を進めていくプログラムです。
2.スペシャリストとゼネラリストの違い
スペシャリストの特徴
スペシャリストとは専門分野や特定の領域に特化した人で、ゼネラリストの対義語です。
- 専門的な知識
- 専門分野に必要な資格や特殊技能を有する
など、特定の分野や領域に関する知識や技術に長けていることが求められます。
一般的に、
- 一つのことに集中する人
- 自分が興味や関心を持っていることを仕事に結び付けた人
がスペシャリストの道に進みます。スペシャリストは自分の強い意志で仕事を進めるため、スキルアップなどにも積極的に取り組む傾向にあるのです。
ゼネラリストとの違い
- ゼネラリスト:知識や技術を、横に広げていくようなイメージ
- スペシャリスト:専門的な知識や技術をより深く下に掘り下げていくイメージ
ゼネラリストとスペシャリスト、どちらが良いかといったテーマを耳にすることもあるでしょう。しかしゼネラリストとスペシャリストを同じ土俵に上げて、どちらが優れているのかを議論するのは正しくありません。
なぜなら、ゼネラリストとスペシャリストは、仕事に対する取り組み方や、求められている職務が全く異なるからです。企業はゼネラリストとスペシャリスト、それぞれの力が発揮されてこそ健全に機能するという考え方を持つべきでしょう。
スペシャリストを育成する方法
スペシャリストの特徴は、特定の分野の知識に精通していたり、技能に長けていたりする点。
まずは、本人がどんな分野を専門としていきたいかを理解する必要があります。そして、分野を決定した上でそ門性を追求します。また、どんな状況でも自分が決めた分野を貫く強い意志を持ってもらう必要もあるでしょう。
専門分野を決める場合、「好きこそ物の上手なれ」という方法で、自分の好き・得意な分野の能力を伸ばすことも可能です。扱う分野の専門性が高ければ高いほどスペシャリストの地位を確立できます。
企業としても専門分野を重点的に伸ばすプログラムを用意するなど、特別な人材育成方法が必要になるでしょう。
ゼネラリストとスペシャリスト、どちらが良い?
前述した通り、ゼネラリストとスペシャリストのどちらが良い・悪いということはありません。しかし、企業内での人材育成を考えると、新入社員として入社してからある程度の立場になるまでの間なら、スペシャリストが望ましいでしょう。
また、転職や出産や子育て、介護等を機に今までと異なる働き方を目指す際も、スペシャリストのほうがスムーズに仕事に就ける可能性は高いでしょう。
しかし、広範囲のマネジメント能力を要する管理職等を目指す場合には、ゼネラリストの能力を磨くことが必要です。
どちらを選ぶにしても、自分がどのような働き方を望んでいるのかがポイントになります。自分の理想型となるロールモデルを見つけて実際に聞いてみるのもよいでしょう。
ビル・ゲイツとゼネラリスト、スペシャリスト

画像引用:Emprendiendo Historias”40 Frases de Bill Gates sobre la vida y los negocios” https://www.emprendiendohistorias.com
LinkedIn創業者レイド・ホフマンとビル・ゲイツの会話によれば、ビル・ゲイツは「スペシャリストを採用すればよかった」と言ったそうです。
ビル・ゲイツは若い頃、「自分と異なる専門分野への敬意が少なかった」という点を反省していました。また、こういった考え方によって「本当に良いマネジメントへの敬意も払えていなかった」と語っていたそうです。
テクロノジー分野で成功した起業家は、スペシャリスト気質の人が多く、社交性や人の真似をする、相手の能力を認めるという能力は低い傾向にあります。しかしこれは決して悪いことではありません。
寝食を忘れて何かに没頭できるタイプのほうが、周りと違う発想力につながり、企業にイノベーションを起こせるのではないかといわれているのです。
3.エキスパートやプロフェッショナルとはどう違うのか?
エキスパート
エキスパートとは専門的なスキルを持ち、かつ、熟練度の高い人のこと。
特定の分野に関する専門的知識や経験が非常に豊富で熟練しているエキスパートであれば、知識や経験を武器にして生きていくことが可能です。自分の興味のある分野、得意とする技術に磨きをかけたエキスパートたちは、今、社会のさまざまなシーンで活躍しています。
- 無限に広がる分野から、自身の興味・関心をもとに絞り込んだ分野に特化
- 特定分野において「右に出る者はいない」「〇〇さんにお願いすれば安心」と周囲から言われる
こうした存在がエキスパートです。
プロフェッショナル
プロフェッショナルとは、2つの性質を持つ人のことです。
- エキスパート同様、ある特定の分野に関しての専門的知識や経験が非常に豊富
- 知識や経験をもとに他ジャンルとリンクし、知識や経験を総合的に活用して相手のニーズに合致したものを提供できる
自分の専門分野を持って、相手の求めるものに対しても広い見地でアドバイスできる、これがプロフェッショナルに求められる点です。
常にアンテナを張り、自分が関心のある分野以外にも熱心に情報収集する等広く社会に精通している人こそが、真のプロフェッショナルといえるでしょう。
エキスパートとプロフェッショナルの差
エキスパートは自分の専門分野を持ち、そこに関する知識や経験が非常に豊富でかつその深度も深い人を指します。一方プロフェッショナルとは、自身の持つ専門分野を自分と相手が満足できる状況に進められる力を持っている人のことです。
現代社会はインターネットの検索で、さまざまな専門的知識や情報を簡単に調べることができます。何百人、何千人のエキスパートの役目をパソコン1台で担える、そんな時代になりつつあるのです。
そんな時代だからこそ、多くの企業で今プロフェッショナルに熱い視線が注がれています。専門的知識をもとに、多角的な視点で相手の立場に立ってアドバイスができるプロフェッショナルの存在が、クローズアップされているのです。
ゼネラリスト、スペシャリストどちらにも必要なプロフェッショナル
ゼネラリストとプロフェッショナル
このように考えていくと、これからの社会には、
- プロフェッショナルなゼネラリスト
- プロフェッショナルなスペシャリスト
がさまざまなところに利益をもたらし、活躍するでしょう。彼らは専門性に長けるだけでなく、組織としてのチームワークや、真の意味での顧客満足度を実現できます。
また、管理職・プレイングマネージャーのどちらの方向でも、自分も相手も満足できるように周りをまとめていくことで、プロフェッショナルなゼネラリストとしての理想的な姿に近付けます。
自己満足や一部の人の満足ではなく、あくまでチームや部署などの組織に属する人員すべてが満足できるような力が必要です。
スペシャリストとプロフェッショナル
スペシャリストにもプロフェッショナルの要素が求められます。一般的に、スペシャリストのままではエキスパートと同じ状況に陥りやすく、「専門分野しか知らない人」で終わってしまいがちです。
ではそこにプロフェッショナルな視点を加味しましょう。すると、スペシャリストの間でもコミュニケーションの輪が広がります。
他分野で活躍する第一人者との交流で、自分の専門分野にも新たな気付きや学びが加わり、さらに深みが増すでしょう。また、新たなビジネス展開やチャンスと出会い、新しい時代づくりに参画できるかもしれません。
スペシャリストには専門分野を大切にしつつ広く社会と交わる力が必要なのです。