家族手当/扶養手当とは?【いつから?】金額の相場、条件

就職や転職活動の際に福利厚生の確認は欠かせません。福利厚生の中でも特に、企業間で大きな違いが生まれやすいものが家族手当。家族手当に関する考え方はその企業ごとに全く違うのです。人事担当者に向けて、

  • 家族手当の考え方
  • 家族手当の扱い
  • 家族手当の運用方法

などについてまとめました。今後、自社で家族手当をどう運用するか検討している人も他社で行われている取り組みを参考にしてください。

1.家族手当(の意味)とは?

家族手当とは家族を持つ社員に雇用主が支給する手当のこと。多くの家族手当が扶養家族に限定しているため、家族手当ではなく扶養手当という名称を採用している企業もあるでしょう。

家族手当は、それぞれの企業のルールにのっとって支給される福利厚生です。そのため、家族手当の対象になる範囲や支給額についてあらかじめ定めておく必要があるでしょう。

家族手当がある会社とない会社の違い

家族手当は基本給にプラスして支払う手当で、雇用主に法的な支払い義務はありません。また、労働基準法などで定められたものでもなく、就業規則に基づいて支給されるのです。そのため就業規則に福利厚生として家族手当が設定されていない企業もあります。

扶養手当との違い

家族手当と扶養手当を両方取り入れている会社の場合を見てみましょう。家族手当は、扶養の有無に関わらず生活を共にする「家族」(共働きの配偶者も含む)に対して支給されます。

扶養手当の場合「扶養」しているという事実が必要です。配偶者に一定以上の収入がある場合、手当の対象になりません。両親が同居している場合も年金などの収入がポイントになるでしょう。子どもの場合も18歳や22歳までと決まっていて、その年齢を超えると支給要件からは外れるのです。

規定は会社の判断に任されているため、各社で違いがあります。

家族手当は「賃金」か?

家族手当は、会社から支給されるお金です。そういう意味では、給与と違いがありません。そもそも家族手当は会社から受け取る賃金といえるのでしょうか?

賃金として受け取る場合、労働基準法の規制を受けるでしょう。家族手当が賃金に当たるかどうかは、福利厚生なものなのか、支払い義務があるものなのかによって違います。

福利厚生なものと考える場合、労働の対価とはいえないため賃金には当たりません。しかし、就業規則や労働契約などで支払額や基準が明確に定められている場合には、支払い義務がある労働の対価として扱われることも。

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2.家族手当の現状|みんなもらっているのか?いないのか?

自社の福利厚生はよく知っていても、他社の福利厚生について知る機会はあまりありません。しかし家族手当によって収入にも大きな違いが出てしまいます。

実際のところどの程度支払われているのでしょうか?福利厚生の実態についてデータを調査しました。

76%の会社が家族手当を支給

人事院の「平成27年職種別民間給与実態調査」のデータによると、76%以上の会社が家族手当を支給しています。これは50人以上100人未満の企業から500人以上の企業まで大きな違いはありません。家族手当という福利厚生は多くの会社が導入しているといえるでしょう。

配偶者への支給は90%

人事院の「平成27年職種別民間給与実態調査」のデータでは家族手当がある会社のうち、90%以上の会社が配偶者に家族手当を支給しています。つまり、家族手当があるものの配偶者が手当の対象にならないという企業は1割もないのです。

ただし、手当の対象となる配偶者に制限が付くことがあります。

配偶者に所得制限がある会社が84%(103万円が68%、130万円が25%)

配偶者に家族手当を支給する会社のうち84%は所得制限があります。その中でも103万円を収入制限にしている会社が過半数でした。年収103万円の壁という話はよく聞くものでしょう。

所得税や住民税の負担の話になりますが、これから働く場合、家族手当の対象になる収入制限も確認した上で働き方を選ばなくてはならないのです。

家族手当の相場

家族手当制度のあるなしだけでなく、手当の額も気になるところでしょう。家族手当の相場は、

  • 配偶者に対する手当:月額10,000円から15,000円
  • 子どもに対する手当:月額3,000円から5,000円程度

といわれています。しかしこれは法的な制限を受けないため、会社によって金額の変更、手当の対象の変更、といった動きもあるでしょう。また時代の流れによっても変わります。

家族手当の見直しは人事担当者の腕の見せどころでしょう。

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3.家族手当を廃止する企業が増えている理由

時代の変化に対応して家族手当の取りやめを検討する会社も見られます。「東京都の中小企業賃金・退職金事情」によれば家族手当を支給する企業は、

  • 昭和57年:83%
  • 平成12年:75%
  • 平成26年:58%

と減少しています。特に配偶者に対する手当は全体として縮小、もしくは廃止の方向が強まっているのです。男性がその世帯の生計を維持するようなシングルインカムが廃れ、共働き家庭が増えたことが大きな要因でしょう。この流れは今後も続いていくと考えられます。

①支給の必要性がなくなり、デメリットが大きくなる

家族手当は仕事の能力や会社の業績に関係なく一定額が支給される制度です。これは誰しもが結婚して子どもを持つというライフスタイルが当たり前だった時代に適合した制度といえます。

しかし、現代のライフスタイルは多様化。多くの人が共稼ぎを選択してダブルインカムが主流になる今日、家族手当の意義が薄れているのです。また独身社員は家族手当を受け取ることができません。不公平感、不利益を感じる原因にもなるでしょう。

②配偶者控除の廃止による影響

家族手当、特に配偶者に対する手当を減らす動きの裏には配偶者控除の改正があります。配偶者控除とは専業主婦や一定の収入のある主婦の世帯で所得税を減税するもの。

しかし、配偶者控除の壁があることで働く量をセーブする女性も多く、控除額の引き上げが決まりました。すると家族手当の対象を103万円としていた企業は根拠がなくなり、収入から制限した家族手当の支給に無理が生じてしまうのです。

家族手当の見直し方法

家族手当を見直すには以下の方法があります。

  1. 子どもに対する手当に振替
  2. 配偶者手当を廃止

①子どもに対する手当に振替

配偶者に対する家族手当を廃止するとしても、単純に支給停止だけでは反発も予想されるでしょう。そこでできる手段が子どもに対する手当に振り替える方法です。

この方法を選択したトヨタ自動車は2021年までに扶養配偶者への月1万9,500円を廃止。その代わり子ども1人当たり月5,000円だった手当を2万円に増額すると決めました。

②配偶者手当を廃止

中には、配偶者手当をきっぱりと廃止するケースも。場合によっては家族手当制度自体をなくすこともあるでしょう。しかしこれは労使での話し合いや経営陣からの説明などが必要になります。また会社によって方針は違うため、

  • 原資となる賃金総額を維持するために賃金制度自体を見直す
  • 成果主義への移行と同時に家族手当などを廃止する
  • 数年かけて段階的に減額

などさまざまです。

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4.家族手当の制度変更・廃止事例

家族手当の制度変更や廃止は、社員の家族構成や環境によっては不利益になるため、変更に伴って反発が起きるケースもあるでしょう。家族手当の制度変更は、どのように行われているのでしょうか。事例を調べてみました。

支給要件を変更した企業例

家族手当の制度変更や廃止には以下のようなケースがあります。

  1. 子どもの教育費、親の介護などに焦点を合わせた制度変更
  2. 配偶者手当を減額、子どもに対する手当を増額
  3. 配偶者か否かの区別なく、扶養家族に一律支給

①子どもの教育費、親の介護などに焦点を合わせた制度変更

子どもの教育費や親の介護など将来の不安に対応するよう制度を変更したケースがあります。若手から65歳まで成長・活躍し続けるための制度見直しの一環で、労働組合からも理解が示されて合意に至りました。

見直しによって支給額が減る社員に対する最大限の配慮として5年間の経過措置も設けられています。

②配偶者手当を減額、子どもに対する手当を増額

ある会社では、20年以上手当制度の大きな見直しをしていませんでした。その中、賃金・評価制度が成果や貢献度合いを的確に反映するかたちへと変更されることになり、配偶者手当の減額が決定したのです。

当初使用者側は、配偶者手当の廃止を目指していましたが、話し合いの末減額にとどまり、それとともに子どもに対する手当は増額したのです。この改革で支給額が減る社員には差額の一定割合を支給する1年間の移行措置を行いました。

③配偶者か否かの区別なく、扶養家族に一律支給

もともと配偶者に対する手当が厚かったある会社では人事制度全体を見直すことに。それに伴って、家族手当の支給対象を改めました。結果、配偶者であるかどうかに限らず扶養家族1人につき同額を支給することとしたのです。

原資の総額は家族手当の支給対象やその額を変更することで維持。しかし関連会社への影響もあります。そのため、1~1年半の交渉を経て、2年間の経過措置を設定し、導入が決定しました。

段階的な廃止を進める企業例

段階的な廃止を進める場合、以下のような例をモデルケースにするとよいでしょう。

  1. 4年間の経過措置、配偶者を対象から除外
  2. 5年間の経過措置、基本給への再配分
  3. 配偶者扶養手当の段階廃止、出産一時金など子育て支援策を導入

①4年間の経過措置、配偶者を対象から除外

賃金制度の見直しは家族手当を見直すチャンスでしょう。いわゆる年功型(職能型)から成果型への給与体系に移行する際に家族手当も見直して公平性の観点から配偶者を対象から除外したという例もありました。

この例では削減した手当の原資を基本給に組み入れるとともに、生活の安定性を考慮して4年間の経過措置を取ることで合意に至っています。仕事の成果と関係ない手当を見直し、より公平な賃金制度を採用した例です。

②5年間の経過措置、基本給への再配分

実力主義による賃金制度への移行は世界的に見ても自然な流れです。また男性に支給されることが多い家族手当は、男女均等の観点から見直しが必要な場合もあるでしょう。そこで属人的な手当を廃止し、基本給に組み入れて再配分する手段が取られています。

原資を基本給に組み入れたため、この例では経過措置は設けていません。会社側は社員向けの研修を実施して、社員からの理解を得るように努力しました。

③配偶者扶養給の段階廃止、出産一時金など子育て支援策を導入

男女共同参画社会の進展に合わせて配偶者扶養給を廃止した会社では、子育て支援を中核とした支援制度を新たに導入。また、仕事と家庭の両立をサポートする次世代育成支援も実施しました。

原資の総額は維持しつつ支給方法や対象を変更した例です。育児をする上での不安感を取り除き、配偶者扶養手当の段階的な廃止を進めることで合意に至りました。

家族手当を廃止した企業例

家族手当を廃止した例には以下のようなものがあります。

  1. 給与に相当分(年功に応じた第一子・第二子の存在を想定)を入れ込む
  2. 基本給に一本化
  3. 基礎能力手当を創設
  4. 子どもと障害者を対象とした養育手当を新設

①給与に相当分(年功に応じた第一子・第二子の存在を想定)を入れ込む

1年間にわたる労使交渉を経て人事制度を成果主義に転換したケースに、特段の経過措置を取らずに家族手当を廃止したものがあります。

このケースでは廃止に至った家族手当の原資は給与の中に入れ込むこととなりました。さらにモデルケースも作成して理解に努めています。

モデルケースの設定では、総じて賃金の減少がないようにしました。また、モデルケースの作成により、社員も廃止後の給与体系を理解しやすくなったのです。

②基本給に一本化

職能資格給は実力によるといっても、どうしても年功序列になりがちです。そこで実力主義に基づいた「人基準」でなく、「仕事基準」の役割給制度に移行する試みも実施されています。

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属人的な手当を廃止して基本給に一本化することで合意。手当を廃止したことで支給額が減る社員もおらず、特段の経過措置も取られていません。労働組合は職場集会を開催し、会社側も社員を対象にした研修を実施して、理解を深めるように尽力しました。

③基礎能力手当を創設

人事制度や手当の考え方にはトップの意向も反映されます。米国では能力や成果に応じた処遇が一般的。あるケースでは駐在経験が長かったトップの考えから、やる気を引き出す方策を検討した結果、家族手当を廃止して基礎能力手当を創設したのです。

原資として使用したのは家族手当と住宅手当。新評価制度によって能力に応じた手当が支給される枠組みが導入されたのです。

④子どもと障害者を対象とした養育手当を新設

事業の再構築に合わせて人事処遇制度を改革したケースもあります。

人材の育成や活性化につながる人事制度を目指した改革の一環として家族手当が廃止されました。仕事に関わりのない要素を減らすため、配偶者等への手当を減らし、一方で子どもや障がい者への養育手当に再配分しました。

また、厚生労働省による「男女間賃金格差解消のためのガイドライン」も参考にし、1年間の経過措置を設けて、合意に至っています。

家族手当のQ&A

家族手当とは、家族を持つ従業員に対し、雇用主が支給する手当のことです。多くの家族手当が、扶養家族に限定しています。そのため「家族手当」ではなく、「扶養手当」という名称を採用している企業もあります。 家族手当は、福利厚生のひとつで、各企業のルールに従い支給されます。対象範囲や支給額は、企業により定めが異なります。
家族手当は一般的に、扶養の有無に関わらず、生活を共にする「家族」(共働きの配偶者も含む)に対して支給されます。 一方、扶養手当の場合には「扶養」しているという事実が必要になります。なお、扶養親族に一定以上の収入がある場合には、手当の対象になりません。
家族手当の支給条件は各企業の定めによるため差があるものの、一般的には、収入の有無や年齢がポイントになります。 同居の両親がいる場合、年金などの収入額によっては、支給対象から外れるケースがあります。 子どもがいる場合、18歳や22歳までなど、年齢制限があるのが通常です。また、同居を条件にしている場合は、別居中の子どもは支給対象になりません。