デザイン思考とは? 背景やデザイン経営、メリットやデメリット、やり方や流れについて

デザイナーの感性やアプローチを通じて、課題や問題を解決するデザイン思考という方法が、さまざまなビジネスシーンで活用されています。

  • デザイン思考とは
  • 推進する背景、原因
  • 経済産業省、特許庁による「デザイン経営」宣言
  • メリットとデメリット
  • デザイン思考のやり方

などから、デザイン思考について掘り下げていきます。

1.デザイン思考とは?

デザイン思考とは、洋服や家具、パッケージなどの形態やレイアウト、模様などをデザインするデザイナーの感性やアプローチを通じて、ビジネス上の問題解決につなげる手法のこと。

  • 疑問を持つ
  • アイデアを探す
  • 試す
  • 最終形を出す
  • また疑問を持つ

などのプロセスを繰り返しながら、新商品開発や新サービス開発などデザイン思考を活用して、課題を具現化します。

デザイン思考の始まり

デザイン思考の発案者は、世界的に有名なアメリカのカリフォルニア州にあるデザインファームIDEOの創設者、ティム・ブラウン氏といわれています。

デザイン思考を実践し、アップル社の初期のマウス、無印良品の壁掛け式CDプレーヤーなどを生み出して、世界の注目を集めました。

デザイナーの感性やアプローチを使って、問題や課題を解決していくデザイン思考は、世界のビジネスシーンで活用されています

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2.デザイン思考を推進する背景、原因

一昔前までは、新製品が発売されるたびに消費者が心弾ませながら商品を手に取っていました。

しかし近年はインターネットやスマートフォンの普及、技術の進化などで、消費者のニーズはたやすく満たされるようになったのです。その結果、サービスや製品は多様化し、新商品を作るだけではその魅力が消費者には届きにくくなりました。

従来通りのサービスや製品開発ではユーザーのニーズに対応できない、そうした背景からデザイン思考の需要が増し、推進されるようになったのです。

多様化するユーザーのニーズに対応するために、デザイン思考を活用して新サービスや新商品開発を行うことを推進しています

3.デザイン思考とデザイン経営

クリエイター採用のWebサービス「ViViViT」を展開するビビビットが、全国の企業を対象にデザイン経営および、デザイン思考について意識調査を実施しました。

その調査によると、

  • 「デザイン思考を知らない」と答えたのは50.4%
  • 「デザイン経営を知らない」と答えたのは65.4%
  • 「デザイン思考ならびにデザイン経営を認知しており、かつデザイン思考を取り入れている」と答えたのは14.9%

日本ではデザイン思考の認知度はまだまだ低く、理解不足のため活用する企業も少ないようです。また、デザイン思考を導入する大手企業からは、導入後の経営効果が分かりづらいという回答も多くありました。

デザイン思考、デザイン経営を知らないという日本企業は半数以上。導入後の経営効果が分かりづらいという課題もあります

4.経済産業省、特許庁による「デザイン経営」宣言

2018年5月、経済産業省、特許庁は「デザイン経営」宣言を公表し、経済産業省と特許庁は「日本企業の経営者がデザインを有効な経営手段と認識しておらず、グローバル競争環境での弱みになっている」と提唱しました。

「世界のメイン市場で生き残るには、顧客に真に必要とされる存在に生まれ変わらなければいけない」とし、その手段として、ブランディングとイノベーションを用いたデザイン経営を推進しているのです。

デザイン経営とは?

経済産業省と特許庁が定義するデザイン経営とは、「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である」のこと。

アップル、ダイソン、マツダ、メルカリ、スリーエムなどの世界的に有名な企業はデザイン経営を実践して成功した企業といわれています。

デザイン経営に必要な条件とは、「経営チームにデザイン責任者がいる」「事業戦略構築の最上流からデザインが関与する」です。

また、デザイン責任者とは、製品、サービス、事業が顧客起点で考えられているかどうか、またはブランド形成に資するものであるかどうかを判断し、必要な業務プロセスの変更を具体的に構想するスキルを持っている人のこと、と説明しています。

デザイン経営による利益

欧米では、デザインへの投資を行う企業のパフォーマンスについての研究が行われています。その研究によると、以下の内容が明らかになりました。

  • デザイン投資に対して営業利益は4倍
  • デザインを重視する企業の株価は10年間で2.1倍成長
  • デザイン賞に登場することの多い企業(166社)の株価は、市場平均と比較して10年間で約2倍成長

これらの研究結果から、デザインへの投資を行う企業は高いパフォーマンスを発揮していると分かります。

デザインを経営に取り入れるデザイン経営を実践する企業は、4倍もの利益を得るなど、高いパフォーマンスを発揮しています

5.デザイン思考のメリット

デザイン思考は他のビジネスシーンでも活用できます。

  1. 従業員の思いを仕事に活かせる
  2. 思考力が身に付く
  3. ユーザーの視点に立つ力が身に付く

①従業員の思いを仕事に生かせる

デザイン思考は、従来のデザイナーといわれる人だけでなく、総務やエンジニア、看護師などどのような職業でも、「人のためになることをしたい・やってみたい」という思いを立場は関係なく形にして、それを開発や改良などに活かします。

アートな作品ではなく、あくまでもユーザーに選んでもらえるもの、人のためになるものをつくる、そうしたアイデアを生み出すなどがデザイン思考の重視するポイントです。

②良い問いにたどりつく思考力が身に付く

デザイン思考の発案者、世界的デザインコンサルティング会社IDEOのCEOティム・ブラウン氏は、デザイン思考の真骨頂は正しい問いを見つけることと唱えています。そして優れた問いを効果的に見つける方法は、顧客の視点に立つこととも話しているのです。

デザイン思考では顧客が何を望んでいるのか、将来何を必要とするのかなど、顧客の潜在ニーズをとことん観察し調べます。そうしたプロセスによってデザイン思考だけでなく、ビジネスに必要な「問い」の力が鍛えられるのです。

③ユーザーの視点に立つ力が身に付く

デザイン思考は、ユーザーのニーズの調査、分析を行うために、ユーザーを観察してユーザーが抱える課題やニーズを見つけます。デザインを考える人やつくる側の思い込みではなく、常にユーザーの視点に立って取り組むのです。

実際にそれを使う人たちの身になってアイデアを生み出す工程によって、ユーザーを理解する力が身に付くでしょう。そしてそれらのプロセスは新製品や新サービスの開発・改良に活用されていきます。

ユーザーの視点に立つことがデザイン思考には大切。そこで養われるさまざまな力は他のビジネスシーンでも活かせます

6.デザイン思考のデメリット、問題点、課題

デザイン思考を実施して、成功した有名企業は世界にも数多くあり、日本企業でもデザイン思考に注目が集まるのですがなかなか定着しません。それはなぜでしょうか?デザイン思考のデメリットや問題点などを解説します。

  1. メリットを理解してもらいにくい
  2. ありきたりな問いになる
  3. デザイン思考が根付きにくい

①メリットを理解してもらいにくい

デザインという職種に無縁の社員から見れば、「デザイン思考」は自分とは関係のない世界に感じられます。そのため、デザイン思考のメリットや必要性などについて疑問視し、定着につながりにくくなるのです。

②ありきたりな問いになる

デザイン思考は、ユーザーの視点に立って「何が問題か、問題はどこか」などを調査するもの。つまりユーザーが抱える悩みやニーズ、潜在的な問題を探ることが重要です。

そのためには広い視野、革新的は発想を持ち合わせている必要があります。そうした感性やアイデアがなければ、デザイン思考の要となる「問い」はありきたりなものとなってしまうでしょう。

③デザイン思考が根付きにくい

クリエイター採用のWebサービス「ViViViT」を展開するビビビットが、全国の企業を対象にデザイン経営およびデザイン思考について意識調査を実施したところ、「デザイン思考とは何か、なぜ必要かが社内に浸透している」を実感したのはわずか5%でした。

理解が進まない状況で、デザイン思考を実施しようとしても難しいです。もし仮に、デザイン思考を強行しても、それによって生まれたアイデアの実行も厳しくなるでしょう。

デザイン思考がうまく日本企業に定着しない理由として考えられるのは、導入する必要性の理解が会社全体に浸透していないことです

7.デザイン思考のやり方、流れ、ステップ

デザイン思考の流れは、5つのプロセスを繰り返して、最終的な解決策を目指していきます。それぞれのプロセスを説明します。

  1. ユーザーを知る
  2. 定義
  3. 自由な発想
  4. 試作する
  5. 検証

①ユーザーを知る

ユーザーがどんな考え方をするのか、どんな動きをするのか、どんな感情を抱いて、どんなふうに感情を示すのかなどを詳細に観察することが、その後のアイデアの起点となります。

アンケートやインタビュー、対話などでユーザーを観察し、ユーザーが抱える問題や悩みなどを探り、ユーザーを知っていきます。こうして集めた情報をまとめ、次の定義につなげていくのです。

②定義

問題定義はデザイン思考を実施するメンバーで行います。上記の「ユーザーを知る」でまとめた内容をベースに、ユーザーが求めるニーズを洗い出し、何が課題なのか明確に定義付けして、情報に意味付けを行うのです。

そして、チーム全員でインタビューやアンケートの際に感じたユーザーの印象深い事柄は何かを出し合います。その際、なぜそうなるのかを掘り下げて、ユーザーの行動や気持ちを理解していくと、大きな文脈との関係性を見出しやすいです。

③自由な発想

定義した課題をどのようにして解決していくかを考えます。デザイン思考を行うチームやプロジェクトメンバー全員で、自由な発想を出し合い、立場に関係なく自由に意見を交換し合うのです。

そのためにもメンバーとコミュニケーションを取るように心掛けます。頻繁に交流するとメンバー同士の信頼関係が深まり、また認識が共通化するためチームに一体感が生まれるのです。

ブレインストーミングやKJ法、ワールドカフェなどさまざまな方法を用いると、自由な発想やアイデアを出し合うことができるでしょう。

④試作する

上記の「自由な発想」で出たたくさんのアイデアからおおよその策が決まったら、解決に向けて試作します。試作で重要な点は、時間やコストをかけて完成品を制作するのではなく、できる限り時間をかけずに低コストで簡単な試作品を作っていくこと。

低品質であれば、さまざまなアイデアを追求して何度も試作品を作っていけます。

また出し合ったアイデアを実際に試作するため、視覚化によってこれまで気付かなかった点が判明し、さらに新しいアイデアが見つかる可能性も高いでしょう。そして試作品を通して、機能性やサービスの効果などをさらに検討していきます。

⑤検証

上記の「試作する」によって得た改善点や感想などをもとに、社内で検証作業を行い、その後、作成した試作品をユーザーに使用してもらいます。その際、使用方法を説明せずに、試作品をユーザーがどう解釈して使用するのかを観察していくのです。

間違った使い方をしたとしても静かに、ユーザーが使用したときの反応、言葉、感想、質問などを注意深く観察します。

またひとつだけでなく、複数の試作品をユーザーに比較してもらいましょう。それにより、潜在的なニーズを見出せますし、これまでの方針が正しかったかも判断できます。

プロセスを繰り返す

検証作業で終わりとせず、この1~5のプロセスを何度も繰り返しましょう。

たくさんの試作品を作ったり、ブレインストーミングやKJ法、ワールドカフェなどで出されたさまざまなアイデアや発想をメンバー全員で試してみたりするのもよいでしょう。

不具合があれば試作品を作り直す、ユーザーのフィードバックを得ながら再度解決策を検討し直すなど、プロセスを何度も繰り返していくと、ユーザーが求めるサービスやニーズに合ったものが作られていきます。

デザイン思考の基本は繰り返しプロセスを行うことといわれています。それにより、次第に完成品へと近づいていくでしょう。

デザイン思考で5つのプロセスを何度も繰り返すと、ユーザーのニーズに合った最良の商品やサービスを作り出せます