デザイン経営(宣言)とは?【成功事例】導入効果、実践方法

近年、注目を集めている経営手法にデザイン経営があります。デザイン経営とは、デザインを経営資源として企業価値の向上やイノベーションの構築に活用する経営手法のこと。ユーザーのニーズが多様化する現代、重要視されているのです。

今回は、デザイン経営とは何かをふまえて、デザイン経営宣言やデザイン経営の効果、実践方法やポイントなどを詳しく解説します。

1.デザイン経営とは?

デザイン経営とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法のこと。特許庁による「デザイン経営」宣言では、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営とも定義されています。

デザイン経営の目的は、人(ユーザー)を中心に考えて根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれず実現可能な解決策を柔軟に実行し、改善を繰り返してイノベーションを創出すること。

これにより、顧客ニーズにあった商品やサービスを開発し、ブランド力の向上やイノベーションの実現を図ります。

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デザイン経営とデザイン思考の関係

デザイン経営のもととなる考え方がデザイン思考であり、デザイン経営はデザイン思考があってこそ実現します。そもそもデザイン思考とは、デザイナーやクリエイターが業務で用いる思考プロセスを活用して解決策を見出す思考方法のこと。

ユーザーの共感や満足に重きを置いて、固定観念や前例にとらわれない考え方でアイデアを創出しながら試行錯誤を繰り返してブラッシュアップします。デザイン経営では、こうした思考法のもと経営に取り組んでいくのです。

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2.デザイン経営宣言とは?

経済産業省・特許庁が2017年7月に有識者からなる「産業競争力とデザインを考える研究会」の議論の結果、2018年5月に報告書として取りまとめたもの。資料では、デザイン経営の効果や実践のための具体的な取り組みなどを示しています。

下記はデザイン経営宣言で示されているデザイン経営のための具体的な7つの取り組みです。

  1. デザイン責任者(CDO、CCO、CXO等)の経営チームへの参画
  2. 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
  3. 「デザイン経営」の推進組織の設置
  4. デザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見
  5. アジャイル型開発プロセスの実施
  6. 採用および人材の育成
  7. デザインの結果指標・プロセス指標の設計を工夫

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3.デザイン経営が注目される背景

デザイン経営が注目される背景にあるのは、デジタル技術の急速な発展、市場が豊かになったことで多様化したユーザーの価値観・ニーズに対応するためです。下記で、注目される背景を詳しく解説します。

デジタル技術の急速な発展

近年、データやAIを活用したビジネスが社会に浸透し、世界では第四次産業革命以降のソフトウェア・ネットワーク・サービス・データ・AIの組み合わせ領域に急速にシフトしつつあります。

こうしたサービスでは顧客体験の質がビジネスの成功に大きな影響をおよぼすため、顧客ファーストでイノベーションを創出するデザインの重要性が高まると同時に、経営手法においても適用されるものと認識されるようになったのです。

デザインは顧客と⻑期にわたって良好な関係を維持するためのブランド⼒の創出⼿法でもあり、顧客視点を取り込んだイノベーションの創出⼿法として活⽤されています。

多様化したユーザーの価値観・ニーズ

モノの豊かさが増した一方、飽和状態にあります。物理的な豊かさが一定を超え、ユーザーは心の豊かさを求める心理へと変化した結果、自分に新しい価値を与えてくれるもの、共感できるものが重要視されるようになりました。

こうした心理変化は提供者である企業に対しても例外ではなく、ユーザーは価値観やコンセプトに共感でき、そのうえで価値を感じる企業や商品、サービスを選択するようになっています。

目まぐるしく変化するユーザーの価値観やニーズに対応するには、デザイン思考が欠かせず、経営においても適用することが重要となりつつあるのです。

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4.デザイン経営で期待される効果

デザイン経営で期待される効果は、ブランド力とイノベーション力向上による企業競争力の向上です。「デザイン経営」宣言では、経営とは企業が⼤切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営みと定義しています。

無形物である価値をメッセージとして見える化するにはデザインが欠かせず、価値や意志をデザインによってメッセージ化・イメージ化したものがブランド力となるのです。

人々の価値観やニーズを満たす商品やサービスの実現にはイノベーション力が欠かせず、これらの要素は競合との差別化にも欠かせません。

デザイン経営によって、誰のために何をしたいのか、原点に立ち返ることで何が求められているのか、そのために何をすればいいかが明確になり、既存の事業に縛られないイノベーションの創出につながります。

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5.デザイン経営のポイント

デザイン経営のポイントは、以下3つです。各ポイントを詳しくみていきましょう。

  1. 高度デザイン人材の育成
  2. 経営層へのデザイン思考の浸透
  3. 持続可能性を意識する

①高度デザイン人材の育成

高度デザイン人材とは、デザインを基軸にしてリーダーシップを持ってビジネスの中核に立てる人材のこと。高度デザイン人材にはデザインスキルをはじめ、デザイン哲学やアート、リーダーシップやビジネススキルなど多様なスキルが求められます。

②経営層へのデザイン思考の浸透

現場だけがデザイン思考を持っていても経営には反映されないため、経営層にもデザイン思考を浸透させる必要があります。

というのも、経営の意思決定にデザイン思考を取り入れるとデザイン経営が実現するからです。くわえて経営スキルに長けている経営層にデザイン思考があると、ビジネス戦略とデザインの統合が可能となります。

また、デザインをメッセージとしてステークホルダーへ伝えるのも経営層の役割。よって経営層にデザイン思考が浸透しているかどうか、はデザイン経営を進めるうえで欠かせないポイントなのです。

③持続可能性を意識する

現代はSDGsが重要視されており、持続可能性(サステナビリティ)を意識した企業のビジョン・ミッションの選定や商品・サービスの開発が重要となっています。企業には、目先の利益でなく、中長期的な視点をもった持続可能な経営が求められているのです。

デザイン経営に持続可能性を意識することで、ブランド力の向上やイノベーション創出にもつながるだけでなく、企業価値やイメージの向上にも有効です。

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6.デザイン経営の実践方法

「デザイン経営」宣言によると、デザイン経営の実践には「経営チームにデザイン責任者がいること」「事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること」のふたつが必要条件です。

そのほか、デザイン経営を実践するには複数の取り組みを一体的に実施することが望ましいとしています。ここでは、「デザイン経営」宣言にある「デザイン経営」のための具体的取組を参考に、デザイン経営の実践方法を解説しましょう。

  1. デザイン責任者の経営チームへの参画
  2. デザイン経営を推進する専門組織の設置
  3. 顧客の潜在ニーズ発見
  4. アジャイル型開発の採用
  5. デザイン人材の採用・育成

①デザイン責任者の経営チームへの参画

経営層へのデザイン思考の浸透に必要なステップであり、経営チームと密にコミュニケーションを図りながら、デザイン経営を浸透させていくことが求められます。

デザイン責任者と経営チームが連携し、経営戦略や事業構想、製品やサービス開発にデザインを反映させていくのです。

②デザイン経営を推進する専門組織の設置

次に、社内横断でデザインが実施できるよう、組織の重要な位置にデザイン部門を位置づけます。そのためには、事業戦略の構想段階から関与することが必要で、上流からデザインがかかわると一貫したデザイン経営を実現できるでしょう。

なお、このステップはデザイン経営の実践に必要な2つ目の条件です。

③顧客の潜在ニーズ発見

デザイン経営の効果を発揮するため、観察手法を導入し、表面化していない顧客ニーズを発見・具現化します。デザイン経営は顧客ファーストでイノベーションを創出する手法であるため、まずは潜在的な顧客ニーズを洗い出すことが重要です。

この時、固定観念や前例にとらわれないことが大切です。

④アジャイル型開発の採用

アジャイル型開発とは、「実装→テスト実行」を繰り返し、徐々に開発を進めていく手法です。はじめから詳細な仕様は決めず、段階的に進めていきます。

小単位で進めていくため柔軟な対応が可能であり、変化する顧客のニーズに合わせた商品・サービスの開発に有効です。また、PDCAが素早く繰り返せるといったメリットもあります。

⑤デザイン人材の採用・育成

企業全体でデザイン経営を推進するには、デザインに強い人材の採用・育成が欠かせません。なぜなら、現場の特定の人材がデザインに強いだけでは、組織で一体的にデザイン経営を進められないからです。

デザイン人材は、デザインスキルだけでなく、ITのデジタル技術や知識、経営層に近いビジネスマインドを持った人材が理想です。

デジタル人材は新規で採用するばかりではなく、同時進行で育成も行いましょう。育成により、企業理解が深まっているデジタル人材が育成できます。採用・育成の結果、さまざまな部門の従業員がデザインに関するスキル・理解がある状態がベストです。

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7.デザイン経営の成功事例

ここでは、特許庁「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック」より、デザイン経営の成功事例をご紹介します。

株式会社カンディハウス

株式会社カンディハウスは、北海道旭川市にある家具の製造・販売を行う老舗企業です。北海道旭川市では、ブランド構築やイノベーション創出を図るために地元企業に対し、デザイン経営を推奨しています。

カンディハウスは、デザイン経営という言葉が生まれていない時代から「デザインは一番重要な経営資源」として経営に取り組んできました。

2018年の創業50年の節目に会社全体のリブランディングを実施し、スローガンを「ともにつくるくらし。」、ブランドコンセプトを「北の共創力。」に設定。事業の軸を明確にして社内外に発信し、企業文化の醸成を徹底しました。

現在は世界中のデザイナーとものづくりを行い、コンペティションを開催してデザイナーのコミュニティ作りと地域活性化を牽引しています。

株式会社浜野製作所

株式会社浜野製作所は、本社兼工場が火事により全焼したのち、見事な復活劇を遂げた金属加工の町工場です。「ものづくりをとおして社会に価値を提供する」という強いビジョンを描き、ゼロから事業拡大に奮闘。

この情熱と魅力的なストーリーが多くの人の共感を得て、多種多様な業界とのコラボレーションを実現しました。

同社では、ベンチャー企業に対するインキュベーションスペースや、全国の製造企業とのハブ機能を持つ「Garage Sumida」の運営を行い、ものづくりを通じて社会課題の解決に取り組んでいます。

こうした経営姿勢がクライアントや社会から高く評価され、いくつもの賞を受賞して実績を収めたのです。

昌和莫大小株式会社

1935年創業の昌和莫大小株式会社は、タイツやレギンスのOEMをメイン事業としていたものの、海外からの輸入増大によるOEMの生産需要の低下や靴下業界のコモディティ化により経営危機に直面。

その危機を脱するため、デザイナーとともに、井上社長の趣味である「登山」や「ランニング」をベースに「はだし靴下」のコンセプトを考案し、ブランド「OLENO®️」を設立しました。

デザイン経営を実践したポイントとして、SNS上に顧客コミュニティを作ったことが挙げられます。

そこから得られる辛辣なフィードバックや提案を起点に商品開発を磨き、新たな市場の開拓に成功。直接ユーザーの声を取り入れ、デザインの力で形にしたデザイン経営の事例です。