DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?

DEIとは従業員一人ひとりが持つ多様な個性を最大限いかして、企業の価値創出につなげようとする考え方のことです。ここではDEIが注目される背景やD&Iからの変化、推進のポイントなどについて解説します。

1.DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?

DEIとは、人種や性別、年齢などさまざまな要素を持った人材が集まるだけでなく、その多様性が公平かつ包括的に扱われている状態のこと。

  • D:Diversity(ダイバーシティ)
  • E:Equity(エクイティ)
  • I:Inclusion(インクルージョン)

の頭文字からなる略称です。

D:ダイバーシティ(多様性)

集団のなかに人種や国籍、性別や年齢などさまざまな属性を持った人が分散している状態のこと。「多様性」と訳され、組織のなかでそれぞれの個性を認め合って尊重し合い、新たな視点でのイノベーションを生みやすくする状態を指しています。

またダイバーシティは以下のようにふたつの属性にわけられるのです。

  1. 表層的:個人の意思で変えられない生来のもの。人種、年齢、障がいなど
  2. 深層的:外観からは判断できないもの。価値観、スキル、コミュニケーションの取り方など

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E:エクイティ(公平性)

集団の方針や手続き、リソースの配分などが公平に保証されている状態のこと。

一人ひとりがそれぞれの価値観や経験を持った集団において、すべてのひとが同じ位置からスタートするわけではありません。不平等なスタート地点を認識し、それぞれの立場に立って働きやすい環境を整えることがエクイティの本質です。

たとえば「子どもがいる従業員にあわせた福利厚生を用意する」「リモートワークで働きやすい制度を整備する」などがこれにあたります。

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I:インクルージョン(包括性)

集団に属する人の主観にかかわるもので、一人ひとりが互いを認めながら一体感を持っている状態のこと。Inclusion(インクルージョン)を直訳すると「受容、包括」という意味になり「帰属意識」とも訳されます。

インクルージョンでは従業員一人ひとりが「自分は会社に居場所がある」「会社の価値に貢献している」と感じる環境を目指します。

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2.DEIが注目されている背景

企業の価値創出に影響を与えるDEIは近年、さまざまな企業で注目を集めています。ここではDEIが注目される3つの要因について説明しましょう。

  1. ビジネスのグローバル化
  2. 働き方や価値観の多様化
  3. 労働人口の減少

①ビジネスのグローバル化

DEIが注目される背景のひとつに「ビジネスフィールド、企業間取引のグローバル化」があります。ITの発達にともない、ここ数十年で地球規模のやり取りが急速に進んでいる昨今。

顧客ニーズは日々グローバル化し、商品開発やサービス提供には海外に負けない国際的な競争力が必要です。従来の旧態的な慣習にとらわれず、多様な人材、多様な価値観を取り込む必要が高まっているのです。

②働き方や価値観の多様化

いまや「働き方や価値観は一人ひとり違って当たり前」の時代です。ひとつの会社に定年まで勤続する、そのためにプライベートを犠牲にするという考え方は通用しません。

個性を生かせる仕事を探したり、仕事のやりがいを重視したりする労働者が増えています。この変化にあわせて、企業も柔軟なマネジメントを行う必要があるのです。

③労働人口の減少

労働人口の減少による労働力の変化も、DEIが注目される要因のひとつ。少子高齢化が加速し労働人口が減少するなか、企業は幅広い層から労働力を確保しなければなりません。

女性やシニア、障がいを持つひとなど多様な人材を確保し、その能力を発揮するためにどのような環境を整備する必要があるのかを問われています。

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3.D&IからDEIに変化した理由

これまで企業の経営理念といえば「D&I」が主流でした。「D&I」とは「ダイバーシティ&インクルージョン」のことです。「一人ひとりの違いを受け入れて生かしていくこと」という意味ではDEIと同じです。

しかしなぜD&Iではなく、新たに「E(エクイティ)」がくわわるようになったのでしょう。その理由について見ていきます。

  1. 社会的不平等な構造を解消するため
  2. エクイティが重要視されるようになってきた

①社会的不平等な構造を解消するため

D&IにEがくわわった理由として、マイノリティが被る社会構造的不平等の問題があげられます。機会を平等にしただけでは、マイノリティの社会構造的不平等を解決できません。

そもそもスタート地点に不平等がある点を前提とするのがエクイティの概念。そこから「それぞれの状況にあわせて成功する機会を与える」という取り組みを進めていきます。

②エクイティが重要視されるようになってきた

格差は世代を超えて継承されます。たとえば低所得の家庭に生まれた子どもは学資援助を十分に受けられず、努力したくてもしにくい環境からスタートしてしまうのです。

この社会的格差は日本でも指摘されています。しかしコロナ禍により、医療や福祉、物流や第一次産業などエッセンシャルワーカーの大切さが再認識され、エクイティの概念が、より重要視されるようになってきたのです。

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4.DEIを推進するメリット

企業がDEIを推進するとどのようなメリットがあるのでしょう。ここでは3つのメリットについて説明します。

  1. 新たなアイディアの創出
  2. 人材の確保
  3. 企業ブランディングの強化

①新たなアイディアの創出

DEI推進のメリットとして第一にあげられるのが、創造性の促進。同じような経歴や性格のメンバーが集まった組織では、どうしても視線が似かよったものになります。

そのため革新的で新しい発想は生まれにくいものの、そこに年齢や人種、価値観の異なる人材がくわわれば異なる視点が生まれます。また壁にぶつかったときにも、さまざまな意見から原因を追究して早期解決につなげられるでしょう。

②人材の確保

日本人の働き方は、まだまだ会社に強く束縛されていて、「1日8時間の週5日固定勤務地」という働き方が主流です。しかしこれでは育児や介護と仕事を両立させたい、ワークライフバランスを重視したいという人材は集まってきません。

さまざまな価値観、背景を持った人が働きやすい環境を整備している会社は、求職者にとって魅力的な職場となります。さらに応募母数が増えれば、優秀な人材を確保する可能性も高くなるのです。

③企業ブランディングの強化

DEIの推進には企業ブランディングの強化、ロイヤリティの向上というメリットもあります。取引先にとっては、担当者がすぐに変わる企業より、同じ担当者と長く密な関係を築ける企業のほうが好印象です。

また風とおしのよい企業風土を社外にアピールすれば、企業の評価をアップします。

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5.DEI推進のポイント

現代では多くの企業がDEI推進に取り組んでいます。しかし闇雲に推進しても、十分な効果は得られません。ここではDEIを推進する際のポイントについて説明します。

  1. DEI推進の提示と浸透
  2. 職場環境や制度の整備

①DEI推進の提示と浸透

すべての従業員が、これまで慣れ親しんだ「平等」の概念と「エクイティ(公正)」の違いを瞬時に理解して、双方を取り入れることは困難です。そのため企業としては自社の理念やビジョンなどを明確に定義し、くりかえし提示する必要があります。

まず「なぜ会社としてDEIを取り込むのか」「そこにはどのようなメリットがあるのか」などを具体的に設定しましょう。漠然とした概念ではなくDEIの評価指標を基準とした定量的な目標を提示します。

②職場環境や制度の整備

DEI推進の際は、多様性を尊重して公正を担保するさまざまな人事制度の整備が必要です。具体的には次のような施策があげられます。

  • 子育てや介護層が働きやすいフレックス制を導入する
  • 海外の方に向けて、外国人対応に精通したメンターを配置する
  • 公共交通機関での通勤が困難な人に向けて、車通勤許可制度を導入する

制度整備の際は、評価にも注意が必要です。制度利用の有無によって評価に優劣がつかないよう注意しましょう。

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6.DEIに関する企業の取り組み事例

大手企業やテック企業を中心に、国内でもDEIに関する取り組みが進められています。ここでは実際DEIに取り組んだ企業の事例と、その効果について説明しましょう。

  1. パナソニック ホールディングス株式会社
  2. P&Gジャパン合同会社
  3. アマゾンジャパン合同会社
  4. ANAグループ
  5. ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

①パナソニック ホールディングス株式会社

1960年代に国内でもいち早く週休2日制を取り入れた企業です。その当時から働く環境について真摯に考え、社員エンゲージメントの向上や女性管理職推移の向上などにつなげています。具体的な取り組みとしては、以下があげられます。

  • 一人ひとりがDEIについての理解と共感を高める「グループDEIフォーラム」の実施
  • 多様性推進月間の設定
  • DEI課題について共通認識を持って継続的に対話する「グループDEI推進委員会」の新設

②P&Gジャパン合同会社

「Forbes JAPAN」が主催する「Forbes JAPAN WOMEN AWARD2022」にて、以下の部門で1位を獲得しました。

  • 女性従業員の活躍実感度ランキング
  • 経営トップ実行力ランキング

同社は女性起業家育成プログラムの開催や、働き方を自由に選べる制度の設計などさまざまな取り組みを実施。その結果、ジェンダーキャップが少ないと感じる社員が増え、このような結果につながりました。

③アマゾンジャパン合同会社

DEIを目標そのものではなく目標への道筋と考えています。同社では取り組みを確実に機能させるメカニズムを構築したり、それらをプロセス化したりして、次のような成果をあげています。

  • 夕方の時間帯から会議を外し、退社時間に影響が出ないようにした
  • 協力企業との会合を夜から昼食会に変えた
  • 無意識の偏見に対する気づきと理解が増えた

できるDEI研修プログラムの整備や女性社員の声を取り上げるスポンサーシッププログラムの立ち上げなどによって、DEIを進めている企業の事例です。

④ANAグループ

2020年にグループD&I推進部(現グループDEI推進部)を新設。さらに2022年からは「エクイティ」をくわえたDEIの推進を掲げ、理解促進と行動化を進めています。具体的な取り組みは以下のとおりです。

  • 全グループ社員を対象としたDEIフォーラムの開催
  • 女性比率向上に向けた中期目標の策定
  • 仕事と育児の両立を支援するセミナーの開催
  • これらの取り組みによって、次のような成果をあげました。
  • 障がい者雇用率が2.69%アップ
  • 優良な子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定
  • 男性社員の育児休暇取得促進に向けた目標策定

⑤ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

DEIを制度整備やマネジメントのコミットメント、自発的な文化醸成などさまざまな面から推進しています。具体的には以下のような取り組みです。

  • 妊娠中に健やかな職場環境を提供する制度の策定
  • 仕事と育児の両立に役立つ支援プログラムの提供
  • 生産性の高い働き方を実現するための在宅勤務導入

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7.欧州で提唱されるDEIBとは?

欧州ではDEIに「B(Belonging)」をくわえた「DEIB」という考え方が広がりはじめています。Belonging(ビロンギング)とは、心理的安全性が確保された居場所を作ること。「帰属意識」と訳される場合もあります。

DEIが比較的企業視点での取り組みであるのに対しDEIBは働く個人の主観や気持ちに寄り添うことを求めているのです。

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DEIBが注目される背景

DEIBが注目されるようになった背景にあるのは、欧州で社会問題となった「大量退職時代」。現代では若い世代を中心にワークバランスの見直しや、やりたいことに挑戦する傾向が加速しています。

会社がDEIを推進しても、従業員本人が会社を居場所と感じないのであればその取り組みは一方通行のままです。そこで注目されるようになったのが、個人の主観や気持ちに寄り添うビロンギングでした。