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DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには、経営戦略と整合性の取れたDX戦略が必要です。しかし、DXについての実践的な情報はまだ多くはありません。「何から取り組んでよいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、DXの戦略を考える上で必要な要素についてフレームワークを交えながら解説しています。DX戦略を成功させるポイントや事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
1.DX戦略とは?
DX戦略とは、経営戦略と整合性を取りながらDX(デジタルトランスフォーメーション)の目標を達成するための全社的な指針であり、目的達成の促進と迅速な意思決定を支える役割を果たします。
DXの推進は、不確実性が高い中で意思決定をスピーディにおこなっていかなければなりません。その中で、組織全体で意識共有ができ、いざというときに立ち返れる戦略は必要不可欠といえるでしょう。
DX推進に戦略があることで、
- 目的が達成しやすくなる
- 意思決定に役立つ
というメリットがあります。
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2.DX戦略が必要な背景
DX戦略が必要な背景とは、経済産業省の『DXレポート』でも指摘されている「ビジョン・戦略の不足」であり、技術ありきの戦術偏重ではビジネス変革につながらないためです。
日本のDXにおいて「ビジョン・戦略の不足」は大きな課題のひとつです。経済産業省の『DXレポート』でも指摘されています。
現状は、経営者からビジネス変革についての戦略が示されないまま、「AIを使って何かできないか」といった指示が出されるというケースが多いといいます。そのように技術ありきで戦術を考えていては、現場で概念実証が繰り返されるに止まり、ビジネスの改革に繋がりません。とくに日本では戦術に重きが置かれやすい傾向があります。
デジタル技術の活用はビジネスを変革する手段のひとつです。手段の目的化を防ぎ、デジタル技術をビジネス変革に活用するために、経営戦略にひもづいたDX戦略が必要なのです。
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3.DX戦略の立て方
DX戦略の立て方とは、現状把握・目的設定・外部環境分析・取り組み領域の策定・資源の最適配分という5要素を押さえた上で、ロードマップやアクションプランに落とし込む方法です。
DX戦略を立案するには、次の5つの要素が必要となります。
- 現状把握
- 目的・ビジョン
- 外部環境変化の分析・評価
- 取り組み領域の策定
- 資源の最適配分
これらをおさえた上で、ロードマップやアクションプランを策定していきます。
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4.DX戦略の立案に必要な5つの要素
DX戦略の立案に必要な5つの要素とは、①現状把握、②目的・ビジョン、③外部環境変化の分析・評価、④取り組み領域の策定、⑤資源の最適配分であり、それぞれにSMART・PEST分析・DXフレームワークなどの手法が活用できます。
①現状把握
DXの戦略立案をスタートする上で欠かせないのが現状把握です。自社のDX推進状況が把握できていないなら、まずは現状を正確に把握することから始めましょう。
経済産業省から公表されている『DX推進指標』を活用し自己診断をしたり、第三者機関に依頼して客観的に評価をしてもらうなどのやり方があります。
DX推進指標とは? 【わかりやすく解説】活用のメリットとステップ
経済産業省は2018年からDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を提唱しています。しかし「DXを推進したい」と考えてはいても、着手すべき取り組み方やアクションがわからないという企業は少なくあり…
②目的・ビジョン
DX推進によって達成したい目的やビジョンを定めます。データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新しい価値を生み出すかを明文化します。
その際、
- 経営課題を解決するためにデジタルを活用する
- デジタルだからこそ可能になる新たなビジネスモデルを模索する
という2つの軸で考えるのが大切です。
役立つフレームワーク|SMARTの法則
DXでは全社横断的な取り組みが求められるため、社内で共通の認識をもつことが大切です。
そのためにも、人によって解釈が異なるあいまいな目的ではなく、誰もが共通して理解できる目的を設定することが重要となります。
その際役に立つのがSMARTの法則です。SMARTの法則を活用することで、共有しやすい明確な目的を設定できるでしょう。具体的には次の5つの要素を意識して目標を立てます。
- Specific:具体的
- Measurable:計測可能
- Achievable:達成可能
- Relevant:関連性
- Time-bound:期限が明確
③外部環境変化の分析・評価
コロナ禍に対応できた企業とそうでない企業の差が広がったように、外部環境の変化は企業の存続に大きな影響をもたらします。
DXを成功させるためには、経営層が環境変化を正しく理解し、自社のビジネスへの影響を評価できることが重要です。外部環境変化を分析する方法としては、PEST分析、5フォース分析、3C分析などがあります。
外部環境の変化には、2つの側面から対応をとる必要があります。
- 予想できる変化に対しては対応を練る
- 予測できない変化にも対応できる組織力を確保する
役立つフレームワーク|PEST分析
PEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から外部環境を分析するフレームワークです。
次のような切り口で、事業や組織に影響がありそうなニュースや動向などを書き出していきます。
- 政治:法律、条例、規制緩和、税制の変化、政権交代 など
- 経済:為替、株価、金利、原油価格、経済成長率、景気動向 など
- 社会:人口動態、流行、世論、ライフスタイル など
- 技術:インフラ、IT技術、新技術 など
「3〜5年以内に影響がありそうなもの」といったように、時間軸を設定しておくとやりやすくなります。
④取り組み領域の策定
DXの領域は、ビジネスモデル変革から業務効率化まで多岐にわたります。どの領域でどのようにDXを推進していくのか、取り組みの領域の分類と策定が必要です。
その際、次のような切り口で分類すると整理しやすくなります。
①着手状況で分類する
『DXレポート2』P.34 図5-8 DXの構造 を引用
DXには次の3つの段階があるとされています。
- デジタイゼーション:紙などのアナログ情報のデータ化
- デジタライゼーション:業務・製造プロセスのデジタル化
- デジタルトランスフォーメーション:組織横断的な業務・製造プロセスのデジタル化、ビジネスモデルの変革
これに未着手を加えた4段階で、取り組みのレベルを分類できます。
②全社横断テーマと個別機能単位のテーマで分類する
DXの取り組み領域を検討する際、プロジェクトの大きさで分けることもできます。
- プラットフォームの構築など、ビジネスモデルを変革する全社横断的なテーマ
- 購買・製造・物流・販売・サービスといったバリューチェーン単位で最適化を進める、個別機能単位のテーマ
役立つフレームワーク|DXフレームワーク
『DXレポート2』P.35 図5-9 DXフレームワークを引用
DXフレームワークとは、経済産業省『DXレポート2』で紹介されている、DXの取り組み領域を分類したフレームワークです。DXを展開する領域と着手状況のマトリクスとなっています。
現状把握や次に目指すべきステップを明確にするだけでなく、最終ゴールからプロセスを逆算するのにも活用できます。
⑤資源の最適配分
戦略を実現性の高いものにするためにもっとも重要なのが、資源の最適配分です。
古くなりコストがかかっているシステムは、廃棄も検討しましょう。他社との差別化に直接つながらない協調領域ではコストを見直し、競争領域のDXにIT投資できるように最適配分を考えます。
とくに次の3つが、DXにおける重要な資源です。社内で確保が難しい資源は、社外から獲得することも検討しましょう。
- 人材・組織
- ITシステム・デジタル技術
- データ
3つの資源において重要な取り組みの例を紹介します。
①人材・組織
CDO(Chief Digital Officer/最高デジタル責任者)の設置、DX専任チームの設置、DX人材の採用・育成など
②ITシステム・デジタル技術
SaaS・パッケージソフトの活用、共通プラットフォームの構築、アジャイル開発など
③データ
目的を把握したうえでのデータ収集、データ収集手段の確保、戦略的なデータ活用など
DX人材とは? 求められる8つの職種とスキル、人材育成の要点
経済産業省による後押しが実施されるなど、国を挙げて進められているDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル競争の激化や新型コロナウイルスなどの影響もあり、推進に力を入れる企業が増えています。
…
5.DX戦略を成功させる4つのポイント
DX戦略を成功させるポイントとは、経営戦略との整合性確保、経営のコミットメント、アジャイルな企業文化の醸成、そして成果を定量的に評価できる仕組みづくりの4つです。
①経営戦略と整合性をとる
目指すべき方向性を見失わないために、経営戦略と整合性のとれたDX戦略を打ち出すことが重要です。
従来からあった「経営課題を解決するためにデジタルを活用する」という視点のほかに必要なのが、「デジタル活用により新たなビジネスモデルを模索する」視点です。デジタルだからこそ可能となる戦略をさがすことで、新たなビジネスチャンスにつながります。
②経営がコミットする
DX推進のように不確実性が高い取り組みをスピーディに進めるには、適確な意思決定を迅速に行うことが求められます。
メリットが一部の部署に偏ってしまうような場合、都度調整していては施策が進みません。説得しスピード感を持って進めるリーダーシップがいります。
DXに経営のコミットメントは必要不可欠であるため、経営がDXに対しリテラシーを養うことが大切です。ITに見識がある役員の登用なども積極的に行うべきでしょう。
③アジャイルな企業文化をつくる
アジャイルとは、企画、実行、学習のサイクルを継続的にスピード感を持って反復することです。
DXの性質上、綿密な計画を策定し着実に推進するよりは、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応することの方がより重要となります。
DXを目指すプロジェクトのすべてが成功するわけではありません。小さく始め失敗を許容するアジャイルな企業文化を醸成することが大切です。
④成果を評価できるようにする
成功しやすいプロジェクトの特徴に、定量的に成果を測れることがあげられます。DX戦略においても、顧客にどれだけ価値提供できたかを評価できる指標を設定することが大切です。
先進事例でも、顧客への価値を定量化している企業が成功しています。
例)製品の不良率、サービスの障害発生率、顧客からのレビュー、デリバリー時間、新製品の改良スピードなど
週次、月次、四半期などの短期間で評価し、改良・改善に生かすアジリティをもちましょう。進捗をステークホルダーに報告しやすくなり、ガバナンスにもつながります。
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DX戦略の代表的な事例として、中外製薬株式会社は成長戦略「TOP I 2030」とDX戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定し、デジタル基盤強化・バリューチェーン効率化・革新的新薬創出の3本柱で全社的DXを推進しています。
医薬品の生産性低下や新薬開発の難易度アップ、コロナ禍によるオンライン診療の浸透など、製薬業界を取り巻く外部環境は大きく変化していました。そのような状況をふまえ、中外製薬株式会社は3ヵ年の中期経営計画を廃止。新しい成長戦略「TOP I 2030」を打ち出しました。掲げた5つの改革すべてにデジタル活用を落とし込んでいます。
さらにDX戦略「CHUGAI DIGITAl VISION 2030」を打ち出し、
- デジタル基盤の強化
- すべてのバリューチェーン効率化
- デジタルを活用した革新的な新薬創出
この3つを基本戦略とし、人材の強化や風土改革にも取り組んでいます。
「“全社ごと”化」を掲げ、会長や社長、CFO(Chief Financial Officer)などの経営陣が積極的に社員にメッセージを発信していることも特徴的です。
参考
VISION中外製薬
参考
「DX銘柄」に2年連続で選定されました。DXの全社ごと化を進める中外製薬の取組みについて中外製薬
【DX事例15選】国内・海外企業・自治体のDX推進・成功事例集
デジタル競争の激化、人材不足、コロナ禍などを背景に多くの企業が必要性を感じるDX(デジタルトランスフォーメーション)。しかし実際に取り組む企業は少なく、また適切にDXを推進できている企業はほんのひと握…
7.DX戦略の参考になるオススメ書籍
DX戦略の参考になるオススメ書籍とは、コロンビア大学大学院教授による『DX戦略立案書』であり、DXの基本から実践的フレームワーク・事例までを網羅した全米ビジネススクール採用の教科書です。
DX戦略立案書
DXの基本的な内容から実践的なフレームワーク、事例が紹介されており、全米のビジネススクールでもDXの教科書として活用されています。著者は、コロンビア大学大学院の教授を務めるデジタル経営戦略の先駆者。経営者やDX担当者など、DXに関わる幅広いビジネスパーソンの役に立つ一冊です。
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【事例】馬淵建設株式会社
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【事例】九州旅客鉄道株式会社
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【事例】奈良市役所
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よくある質問
DX戦略とIT戦略の違いは何ですか?
IT戦略は、業務効率化やコスト削減を目的としたシステム導入・運用の計画です。一方、DX戦略は経営戦略と直結し、デジタル技術を活用してビジネスモデルそのものを変革することを目的としています。IT戦略は「既存業務の最適化」、DX戦略は「ビジネスの変革・新たな価値創出」という点で異なります。
DX戦略の策定にはどのくらいの期間がかかりますか?
企業規模や現状のデジタル成熟度によりますが、一般的に戦略策定には3〜6か月程度が目安です。現状把握(DX推進指標の自己診断)に1〜2か月、ビジョン策定・外部環境分析に1〜2か月、ロードマップ策定に1〜2か月を見込むとよいでしょう。ただし、策定後も環境変化に応じてアジャイルに見直す姿勢が重要です。
DX戦略を推進する専門組織は必要ですか?
推奨されます。経済産業省の指針でもCDO(最高デジタル責任者)の設置やDX専任チームの組成が挙げられています。専門組織がないと、既存の情報システム部門がDX推進を兼務する形になり、日常のシステム運用に時間を取られて変革に踏み込めないケースが多くなります。ただし、専門組織だけに任せるのではなく、全社横断的な推進体制を構築することが重要です。
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