トータルリワードとは?【意味を簡単に】メリット、モチベーション

トータルリワード(Total Reward)とは、従業員の報酬において「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の両方を組み合わせる考え方のこと。トータルリワードの概要、注目される理由、メリットとデメリットなど解説します。

1.トータルリワード(Total Reward)とは?

トータルリワード(Total Reward)とは、従業員に対する報酬に「金銭的報酬」だけでなく「非金銭的報酬」も含める考え方、あるいは報酬形態のこと。

従業員に対する2種類の報酬(リワード)を総合的(トータル)に管理し、従業員のモチベーションにつなげます。

金銭的報酬

金額で表せる報酬のことで、下記のふたつがあります。

  1. 直接報酬:従業員の生活を保証する報酬
  2. 間接報酬:従業員のやる気を起こさせる報酬

ただし金銭的な報酬でのモチベーション向上には限界があります。従業員が、より大きな金銭的報酬を欲していないと効果が下がるからです。

非金銭的報酬

金銭をともなわない報酬のこと。たとえば仕事で得られる喜びや満足感、充実感、あるいはそれらを得られる環境も含みます。金銭的報酬と比べてコントロールが難しいものの、やり方次第ではコストをかけずに非金銭的報酬を与えられるのです。

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2.トータルリワードが注目される理由

経営目標を達成するには、従業員のモチベーションコントロールが欠かせません。しかし近年、金銭的報酬のみで従業員の意欲を維持向上するのは難しくなってきました。そこで非金銭的報酬も含めて、自社の報酬制度を見直す必要が出てきたのです。

ここではトータルリワードが注目される理由について解説します。

  1. 価値観や働き方の多様化
  2. 人材不足の深刻化

①価値観や働き方の多様化

従業員や求職者の価値観や働き方が多様化し、従来の金銭的報酬だけでは意欲を維持向上するのが難しくなったからです。

たとえば「この仕事を経てキャリアアップしたい」という従業員には、キャリアアップを支援する制度が有効でしょう。「出社せずに空いた時間で働きたい」という従業員が多いなら、テレワークや時短勤務などの雇用形態や就業形態を設ける方法もあります。

このような職場環境は、非金銭的報酬に該当するのです。多様な価値観を尊重する非金銭的報酬を付与すれば、従業員の仕事に対するやりがいや意欲を高められます。

②人材不足の深刻化

トータルリワードで従業員のモチベーションを高めると、優秀な人材を確保しやすくなるからです。

2022年に総務省が公表した 人口推計(2021年10月1日時点)によると、労働人口の中核を占める生産年齢人口(15歳から64歳まで)の割合は、全人口の59.4%。しかも年代が下がるごとに人口の割合は減少しているのです。

このように深刻な人材不足を乗り切るために、モチベーションを向上させて長期に定着させる仕組みが必要となりました。そこでトータルリワードという報酬形態に注目が集まったのです。

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3.トータルリワード導入のメリット

トータルリワードを導入すると企業の魅力が高まり、従業員の定着率の向上や企業の業績などのメリットが期待できます。ここではトータルリワードの導入によって得られるメリットを3つ解説します。

  1. 従業員エンゲージメントの向上
  2. 定着率の向上
  3. 業績向上

①従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントとは「企業に貢献したい」という自発的な意欲のこと。従業員エンゲージメントを高める要素は、仕事で得られる充実感や達成感、賞賛や評価、やりがいや自己成長などの非金銭的報酬です。

金銭的報酬とともに非金銭的報酬を得られると従業員の満足度がさらに高まり、従業員エンゲージメントが向上します。

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②定着率の向上

「もっと自社に貢献したい」という意識が高いほど、退職や転職せずに働き続けてくれるからです。優秀な人材が増えれば組織力が強化され、さらによい人材の育成につながります。

③業績向上

献身的かつ自主的に仕事へ取り組むようになり、パフォーマンスが最大化しやすいからです。また従業員エンゲージメントが高い従業員は、自社の魅力を社外へ発信するようになります。ブランドイメージの向上による売上増加という効果も得られるでしょう。

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4.トータルリワード導入のデメリット

トータルリワードはメリットをもたらす一方、従業員の希望に合わなかったり報酬が不足したりすると不満を引き起こしかねません。ここではトータルリワードの導入によるデメリットを2点解説します。

  1. 従業員に応じた設計が必要
  2. 報酬の時期によって価値が低下

①従業員に応じた設計が必要

モチベーション向上につながる報酬は、従業員によって異なるためです。上層部の独断で報酬を追加しても、従業員が満足感を得られなければ意欲につながりません。アンケートや面談などで従業員の意見を集めたうえで、報酬制度設計を進めましょう。

②報酬の時期によって価値が低下

報酬を付与するタイミングが遅くなると、報酬の価値が下がったように感じてしまうことがあります。たとえば上司が部下の成果を褒めるときに、成果を伝えられたその場で褒めれば、部下は満足感を得られます。

しかしその場で褒めなかった場合、部下は「成果を認めてもらえなかった」と感じて不満に感じてしまうのです。金銭的報酬と非金銭的報酬のいずれでも、適したタイミングを逃さずに報酬をわたす必要があります。

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5.トータルリワード導入のポイント

トータルリワードを導入するなら、金銭的報酬と非金銭的報酬のバランスを考慮したうえで、従業員が喜ぶ魅力的な報酬を取り入れる必要があります。

  1. 従業員満足度での観点
  2. 金銭的報酬と非金銭的報酬のバランス

①従業員満足度での観点

従業員の満足度が向上する報酬であるか、考える必要があります。従業員が満足しない報酬制度を整備しても、モチベーションアップにつながらないからです。

従業員が満足する報酬は必ずしも豪華なことや贅沢なものである必要はありません。たとえば他人からの評価や承認が意欲につながる従業員であれば、上司が労いや感謝の言葉を伝えるだけでも満足度が高まります。

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②金銭的報酬と非金銭的報酬のバランス

トータルリワードを導入するときは、金銭的報酬と非金銭的報酬のバランスを意識する必要があります。金銭的報酬は、従業員の生活基盤を守る意味で重要な報酬です。そのため金銭的報酬を充実させる企業も少なくありません。

しかし金銭的報酬での満足度アップは限界があるのです。たとえば一度賃金をアップすれば満足度が上がります。しかし翌月以降の賃金が同額であれば、それ以上満足度は上がりません。

金銭的報酬と非金銭的報酬がもたらす効果を考慮したうえで、両方をバランスよく取り入れましょう。

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6.トータルリワードにおける金銭的報酬の具体例

トータルリワードで取り入れられる金銭的報酬から3つを解説します。

  1. 給与や賞与
  2. 福利厚生
  3. 能力開発

①給与や賞与

金銭的報酬の代表例ともいえるのが給与や賞与でしょう。「直接報酬」とも呼ばれます。付与する基準や金額の範囲を明確化しやすく、導入時の手間もそれほどかかりません。

しかしもともと仕事の対価として支払われるものであり、給与や賞与の増額で満足度を大きく向上させるのは難しいのです。

先に述べたとおり給与や賞与がアップしたときは一時的に満足度が向上するものの、それ以降増額されないあるいは減額された場合、満足度が下がりやすくなります。

②福利厚生

給与や賞与とは別に与える福利厚生も金銭的報酬のひとつです。給与や賞与にはあたらないものの、経済的な利益を得られる報酬であるため「間接報酬」とも呼ばれます。

福利厚生の目的は、働きやすい環境の整備、組織の団結力向上、従業員およびその家族の健康や生活の向上など。具体的な施策として挙げられるのは、雇用保険や労災保険、家賃補助や食事補助、資格取得支援金などです。

福利厚生を非金銭的報酬とする意見も見られます。しかし金額で示せる点から金銭的報酬といえるでしょう。福利厚生を導入する場合も、従業員が希望する施策やサービスを選ぶことが肝要です。

③能力開発

能力開発も間接的に金銭を付与する報酬といえます。たとえばスキルアップ講座の受講費用や資格の受験費用を企業が負担する施策です。

企業が従業員の成長を支援するため、成長意欲が強い従業員ほど満足感が高まるでしょう。また能力開発に関する金銭的報酬の充足は、採用活動においても有利に働きます。

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7.トータルリワードにおける非金銭的報酬の具体例

金銭をともなわない報酬には、下記の5つが挙げられます。

  1. 働く環境
  2. 承認や感謝
  3. 仕事の経験
  4. ワークライフバランス
  5. 企業文化

①働く環境

従業員が働きやすい職場環境を整えると満足度が向上します。たとえば下記のようなものです。

  • 作業に適したパソコンやデスク、空調や照明などを備えた執務環境
  • 役職や部署にかかわらず誰もが本音で話せる良好な人間関係
  • 個人の能力に合った適正な業務量

働きやすい環境は、従業員の満足度だけでなく業務効率の向上ももたらすでしょう。

②承認や感謝

他者から承認や賞賛、感謝などを受けると、「自分の仕事が認められた」という満足感が生まれ、次の仕事に対するモチベーションが高まります。

人前で表彰したほうが効果が高いと考えがちでしょう。しかし会話で伝えるだけでも効果を発揮するのです。ただし承認や賞賛でモチベーションを保ち続けるには、小さいことでもこまめにフィードバックする企業風土を醸造する必要があります。

③仕事の経験

仕事の経験をとおして知識やスキルが高まると、従業員は自身の成長を実感でき、満足感やモチベーションが上がります。能力の向上は評価や報酬にも反映されますし、成長したことで新しい仕事への挑戦やキャリアアップなども可能になるからです。

また従業員が成長すれば生産性があがるため、企業側にもメリットがあります。

④ワークライフバランス

ワークライフバランスが整ってプライベートが充実すると、仕事に対するモチベーションも向上が期待できます。

ワークライフバランスの改善施策では、労働時間の適正化や休暇の取得促進などが挙げられるでしょう。たとえば短時間勤務やフレックスタイム制など長時間労働を防ぐ制度や、リフレッシュ休暇や育児休暇などといった企業独自の休暇制度です。

⑤企業文化

従業員と企業が共有している価値観や考え方、およびそれにともなう行動規範のこと。企業文化と従業員の価値観がマッチすると、従業員は自社への貢献意欲が高まります。

企業文化を定着させるには自社のミッションやビジョン、バリューを明文化し、各種戦略や行動規範などはもとより、社内制度や福利厚生などにも組み込みましょう。

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8.トータルリワードを考える上で重要なモチベーションの種類

モチベーションは大きく2種類に分類でき、トータルリワードにおける金銭的報酬は「外発的動機づけ」、非金銭的報酬は「内発的動機づけ」にあたります。

外発的動機づけ

外部からもたらされる要素によって行動への意欲が湧き上がること。たとえば企業側が提示する昇給や賞与などによってモチベーションが上がるケースです。また罰則も外部からもたらされる要素として機能します。

ただしモチベーションを維持するには、意欲をもたらす要素を与え続けなければなりません。そのため外発的動機づけはあくまでも一時的な利用にとどめ、早期に内発的動機づけへ移行する仕組みを構築しましょう。

内発的動機づけ

興味や関心、欲求や探求心など、自身の内面から行動への意欲が湧き上がること。

内発的動機づけと仕事で得られる喜びが合致すると、仕事に対するモチベーションが向上しやすくなります。たとえば「相手から感謝されたい」という従業員であれば、カスタマーサポートのように他人から感謝を受けられる仕事に対してやる気が高まるでしょう。