企業文化とは? 意味や重要性、醸成の方法、企業事例10選を紹介

企業文化とは、企業と社員の間で共有される企業規範や行動様式のこと。企業文化の重要性やメリット・デメリット、企業文化の醸成や浸透方法について解説します。

1.企業文化とは?

企業文化とは、経営方針や行動様式など企業内で共有される企業規範のことです。企業文化には、その企業の歴史や実績、経営者の考え方、ポリシーなどが反映されます。また企業文化は、企業の社会的なイメージやステークホルダーからの評価などにも影響するのです。

3段階のレベル

心理学者エドガー・シャインは、企業文化を以下3レベルにわけました。

  1. レベル1:社名やロゴデザイン、規則など、視覚的に把握できる人工物に見られる文化
  2. レベル2:経営理念や戦略、目標など社内で共有される価値観など、組織の定義で作られる文化
  3. レベル3:無意識に思考や認識、行動や信念などを反映した判断や言動など、組織内で常識とされる文化

レベル3に達した文化は、企業に根付いているといえるでしょう。

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2.企業文化と企業風土、社風の違い

企業文化と似た言葉に、「企業風土」「社風」があります。混同されやすいものの、意味合いや定義がそれぞれ異なります。

企業風土との違い

企業風土はそこで働く社員の考え方や人間関係から「自然に」生まれるものです。一方企業文化は、上層部の経営方針や経営理念が反映されたもの。

企業風土は社外からの影響で変化する可能性がありますが、企業文化は社外からの影響を受けず自社の要素でだけ醸成されます。

社風との違い

社風とは、その企業が持つ独特な雰囲気のこと。個々の社員が仕事に取り組む姿勢や働きやすさなど、社員の性格や職場環境などが影響します。そのため社風は、企業に対する漠然としたイメージとして捉えられるでしょう。

一方、企業文化は、経営方針や経営理念などから創られていきます。

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3.企業文化が重要な理由

企業文化はその企業独自の企業規範であり、自社の事業に大きな影響を与える要素のひとつ。企業にとって、企業文化の構築が重要な理由を説明します。

  1. コーポレートガバナンスの推進
  2. 持続的な企業価値の向上

①コーポレートガバナンスの推進

コーポレートガバナンスコードでは、ステークホルダーから評価される企業文化を構築することが重要としています。ステークホルダーとの関係を良好にし、評価されてこそ、企業は持続的に成長できるからです。

ステークホルダーと良好な関係を持てる企業文化を形成するためにも、上層部は、コンプライアンスを遵守して経営し、各社員の行動様式に落とし込む必要があります。

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②持続的な企業価値の向上

優れた企業文化の醸成は、企業価値の持続的な向上につながります。優れた企業文化とは、事業の成功をもたらしている社員の行動や姿勢を反映したもの。その規範が浸透すると企業競争力がより高まるのです。

優れた企業文化が構築できたら、人事戦略へ取り込んで社員の行動へ反映させます。無意識レベルまで浸透すれば、企業価値はさらに向上しやすくなるからです。

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4.企業文化の構成する8つの要素

企業文化は、「8つの要素」から構成されます。企業文化の創造および変革には、これら8つの要素が不可欠です。

  1. 果たすべき使命(Mission)
  2. ビジョン(Vision)
  3. 価値観(Values)
  4. 慣行(Practices)
  5. 人材(People)
  6. ストーリー(Narrative)
  7. 場所(Place)
  8. 外部からの影響(Environment)

①果たすべき使命(Mission)

「企業の存在意義は何か」「何を目的として事業を展開するのか」といった根本的な価値観を示すため、企業文化の構築でもとくに重要な要素です。企業の存在意義は、当然ながら社員の思考や行動に影響します。

②ビジョン(Vision)

企業の指名や目的を果たすための将来像のこと。将来像といっても曖昧で漠然としたものではなく、数値や期限を設定してより具体的な目標を掲げます。ビジョンが明確になると、社員もそのビジョンに沿って行動しやすくなるのです。

③価値観(Values)

自社にとって何が重要なのかを示す価値基準や行動基準のこと。なかでも企業の中核となる価値観は、「コアバリュー」と呼ばれるのです。

コアバリューが組織全体に浸透すると、社員が同じ価値観で判断や行動できるため、業務のスピードアップや質の均一化も可能になります。たとえば「顧客第一主義」「チームと家族精神を育てる」「謙虚さの重視」などです。

④慣行(Practices)

企業文化は、社内に浸透し、慣行(Practices)となって日常的に行われなければ意味がありません。企業の目的やビジョン、価値観などをもとにした思考や行動を定着させるためには、制度や規則などの整備も必要でしょう。

⑤人材(People)

企業文化は、人材(People)がいなければ醸成されず、定着もしていきません。自社で働く人間のなかで、自社の経営方針や価値観に共感して行動に反映する人材が多いほど、企業文化の構築が早まります。そのような人材を採用し、育成できる体制が必要です。

⑥ストーリー(Narrative)

企業の歴史やストーリー(Narrative)は、社員の企業文化への共感や理解を深めます。独自の伝統や歴史、またそこから生まれた商品やサービスなど、社内で語り継がれるものが多ければ多いほど、企業文化はより根強いものになるのです。

⑦場所(Place)

企業が位置する場所(Place)も企業文化に影響を与える要素。立地や気候、地域の特色などはもちろん、建物やインテリアなども企業文化に影響するからです。企業の経営方針や価値観をベースに、オフィスの場所を決めるケースも少なくありません。

⑧外部からの影響(Environment)

企業文化は、業界の動向や競合他社、取引先や顧客といった外部からの影響(Environment)を受けます。社会情勢や人々の価値観は刻々と変化していますから、企業もその変化と流れに対応していかなければ生き残れません。

外部からの影響で経営戦略を変えるのなら、既存の企業文化を見直す必要があります。

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5.企業文化を醸成するメリット

優れた企業文化の醸成は、さまざまなメリットをもたらします。企業文化の醸成が企業にもたらすメリットを説明しましょう。

  1. 意思決定の迅速化
  2. 生産性の向上
  3. 組織の強化
  4. 競争優位性の確立
  5. 離職率の低下

①意思決定の迅速化

企業文化で社員の意識を統一すれば、意思決定の迅速化につながります。ビジネスでは選択や判断が迫られるシーンが多く、ときには意思決定の遅れや判断ミスが起こるもの。

しかし明文化された企業文化があれば、社員はそれを基準としてスムーズに意思決定できます。個人の曖昧な価値観や偏見による判断ミスも減らせるでしょう。

②生産性の向上

企業文化で社員の自主性が高まり、生産性の向上が期待できます。明確化した企業文化があれば、社員は「どう行動すればよいか」「どのような判断が適切か」を基準に沿って自発的に考えられるようになるからです。

社員一人ひとりが自発的かつスムーズな思考と行動を取れるようになり、パフォーマンスも向上。企業全体の生産性を上がりやすくなります。

③組織の強化

企業文化で組織の目標や意識が統一されると、社内のチームワークが強化されます。企業文化で企業全体の方向性や目的が明確化されるので、すべての社員が同じ目標を共有して行動でき、ごく自然と組織力が強くなるのです。

異なる部署同士の協力や連携が活発化し、横断的なプロジェクトもスムーズに進められるようになります。

④競争優位性の確立

企業文化で他社と差別化を生み出せると、競争力優位性が確立します。近年、商品やサービスだけの差別化では競争優位性を保てなくなってきました。そこで重要になるのが、独自の企業文化のなかで育成された「ヒト(人材)」。

その企業特有の優れた企業文化が社員一人ひとりに浸透すれば、他社の追随を許さない競争優位性を確立できます。

⑤離職率の低下

企業文化は、離職率の低下にも効果的です。企業文化を共感している社員ほど、自分の役割やミッションを理解でき、仕事に対するモチベーションが高まります。また同時に社員のエンゲージメントも向上。

このような社員が多いほど、社内におけるコミュニケーションや連携も充実し、「ずっとこの職場で仕事をしていたい」というポジティブな気持ちが生まれます。

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6.企業文化を醸成するデメリット

企業文化の構築には、メリットだけでなくデメリットもあります。企業文化の醸成に取り組むなら、デメリットが自社へおよぼす影響も想定しておくべきです。

  1. 排他的思考
  2. パターン化

①排他的思考

企業文化は意識の統一を促す反面、排他的思考につながる可能性があります。企業文化というのは、良くも悪くも企業の統一された規範だからです。

自社の企業文化に合わない人が入社してきて企業に異を唱えた場合、その社員に対して社内いじめのような排他的言動が行われる恐れもあります。企業文化を定期的にチェックする仕組みや、企業文化に合わない人へのケア体制などの整備が必要かもしれません。

②パターン化

独自の企業文化が強固になりすぎて、思考と行動がパターン化してしまう恐れもあります。同じ考え、同じ行動だけが繰り返されると、「新しいものが生まれない」「イノベーションが生まれない」といった状況に陥りかねません。

社会もビジネスも変化が早いです。新たな流れと変化に適応するには、凝り固まった企業文化を刷新していく必要があります。

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7.企業文化を可視化する方法

企業文化は社員の判断や行動などに現れるため、視認しにくいもの。そのため企業文化を定着させるには明文化が必要です。企業文化を可視化する方法について、説明します。

  1. フレームワークに沿って明文化
  2. 組織サーベイの活用

①フレームワークに沿って明文化

企業文化を明文化するには、企業文化のベースとなる強みや特徴といった要素を洗い出します。自社の現状を洗い出す方法として「マッキンゼーの7S」のフレームワークがあります。7Sの要素は以下のとおりです。

  • 戦略(Strategy)
  • 構造(Structure)
  • システム(System)
  • 経営スタイル(Style)
  • 経営スキル(Skills)
  • 人材(Staff)
  • 共通の価値観(Shared value)

②組織サーベイの活用

組織サーベイ(社員に対して行うアンケート調査)の実施も、現状の企業文化の把握に役立ちます。結果をとおして、自社にどのような企業文化がどの程度浸透しているか、把握できます。

質問項目の例として挙げられるのは、「企業の経営方針について」「仕事内容について」「待遇について」「職場の雰囲気について」「人間関係について」などです。

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8.企業文化を醸成・浸透させる方法

企業文化を可視化しただけでは、社員になかなか浸透しません。企業文化の浸透を促進する施策を取り入れましょう。

  1. 社員の意識改革
  2. 社内制度の見直し

①社員の意識改革

企業文化の浸透のためには、社員の意識改革が不可欠です。企業文化は、社員の日々の思考と行動の習慣化によって醸成されていくので、社員が意識的に行動できるような働きかけを行う必要があります。

働きかけの例として挙げられるのは「意識を高めるために研修を実施する」「理想の企業文化を上司が体現して手本となる」「行動方針や企業規範を人事評価に組み込む」などです。

②社内制度の見直し

企業文化と社内制度をマッチさせると、浸透を促進できます。社員が日々の活動を通して企業文化を意識できる回数が増えれば、それだけ浸透も早まるからです。

たとえば企業文化に合わせた採用や評価、コミュニケーションなどを取り入れた社内制度へ整備する方法が挙げられます。これは対外へのアピールとしても有用です。

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9.企業文化の具体例10選

企業文化の醸成や浸透方法で迷ったら、他社の企業文化への取り組みを見てみるとよいでしょう。最後に企業文化の例を紹介します。

  1. トヨタ自動車
  2. メルカリ
  3. Google
  4. ユニクロ
  5. Netflix
  6. シャープ
  7. サイボウズ
  8. Retty
  9. リクルート
  10. 味の素

①トヨタ自動車

トヨタ自動車は、経営理念として「人間性尊重経営」を掲げています。そのため「社員一人ひとりの能力、創造力こそ最も重要な経営資源」ととらえ、社員の育成を徹底する企業文化を定着させているのです。

OJTを中心とした中長期人材育成プログラムを構築し、人事異動や個人課題などの成長機会を提供。「自己成長の促進」「個々の社員の能力向上」とともに、社員のやりがいやモチベーションを高めるのが狙いです。

②メルカリ

メルカリは、ミッションとバリューを明文化しました。ミッションは「世界的なマーケットプレイスの創出」、バリューは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(すべては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」の3つです。

明文化された3つの価値観が社員の行動指針となり、中途採用や外国人の社員にも企業文化として定着しています。

③Google

Googleの行動規範として「Don’t beevil」という言葉が有名です。「利益ばかりを追求して邪悪になるな」という意味で用いられる言葉で、これはGoogle全体の倫理観を示します。

裁量権を持つ社員が意思決定を行うときに、社内外に対する誠意や責任を考慮させる意図があるのです。またGoogleは社員の創造性を高めるため、働き方や服装などあらゆる「自由」を尊重した企業文化を定着させました。

④ユニクロ

ユニクロは、親会社であるファーストリテイリングの経営方針と同じく「全員経営」「社員一人ひとりが社長」を掲げています。経営権を持たない社員でも経営的視点を持って仕事をすれば、業務効率や成果を高められるからです。

そこで経営者向けの行動規範を「ファーストリテイリングコードオブコンダクト」として明文化し、各社員が遵守すべき基本事項と定めました。

⑤Netflix

Netflixの企業文化の特徴は、「プロセスよりも社員の質を重視している」。Netflixはそのときどきで最高の人材を集め、その人材に最高のパフォーマンスを発揮できる職場環境を与え、収益向上と持続的な企業成長を図りました。

社員の自主性を重視し、できるだけ自由に判断や行動ができるよう、細かい制約をなくしているのもポイントです。

⑥シャープ

シャープが企業文化の変革として実施したのは、ボトムアップの文化を根付かせるための構造改革。上層部からの指示がなければ動けないトップダウンの風土を改善し経営層と社員のコミュニケーションを活性化させることで風通しの良い環境を目指しています。

また社内SNSも導入し、部門や地域を超えたコミュニケーションの促進を図っているのです。

⑦サイボウズ

サイボウズが持つ企業文化の特色は、時間と場所に制限を設けず、そのときの都合で自由な働き方を選べる「ウルトラワーク」。たとえば台風が接近している日は、自由に在宅ワークへ切り替えられます。

通勤や勤務時間の制限をなくして、自由度の高い働き方を実現し、社員のクリエイティビティを向上させることが狙いです。実際に生産性や効率性のアップにもつながっています。

⑧Retty

Rettyは、「コミュニケーションで社員を幸せにする」という企業理念がそのまま企業文化として浸透。そのため他社にないユニークな社内制度が生まれました。

たとえば「ランチタクシー」「Retty Happy Bar」「お茶会」など。これら制度では、すべて社員のコミュニケーションの活性化を目的としています。

⑨リクルート

リクルートでは、「個の尊重」という企業文化を持ちます。社員一人ひとりの意志や考えを尊重し、能力やポテンシャル、さらにモチベーションやエンゲージメントを高めるという考え方がもとになっているのです。

社員はつねに「自分がどうしたいか」を問うようになり、それが習慣として定着しました。たとえば部下が上司へ「どうしたらよいか」と尋ねた場合、上司は「あなたはどうしたいか」と問いかけ、まず部下の意見や考えを聞き出します。

⑩味の素

味の素は、グローバル化やスピード化、IT化に対応できる組織を目指し、企業文化の刷新に着手。ビジョンを一新し、世界の健康寿命延伸と環境付加の半減を掲げました。

このビジョンを達成するために、「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」という取り組みを策定。社員は取り組みをとおして食と健康の課題解決に貢献していこと実感でき、エンゲージメントが向上しやすくなりました。