サクセッションプラン(後継者育成計画)とは? 事例、作り方

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サクセッションプランでは、経営方針を明確にして長期的な計画立案を行うことが重要なポイントです。

今回は、

  • サクセッションプランの意味、目的
  • サクセッションプランの事例
  • サクセッションプランニング

について紹介します。

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1.サクセッションプランとは?

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サクセッションプランとは「幹部人材の育成計画、またはその育成計画の実行施策全体」のことを指します。

安定した経営を継続するためには、経営に関わる幹部候補者をはじめとする後継者の育成が不可欠です。そこで注目しておきたいのがサクセッションプランです。

人事戦略に精通した方であれば、企業内に優秀な人材を育成・定着させるための施策「タレントマネジメント」とほぼ同義であるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

サクセッションプランは、特に幹部候補者、さらに言えば経営者候補に焦点を絞り優れた人材を長期的な視点で育成していく新しい人材マネジメントシステムです。ここでは、サクセッションプランの内容を詳しく見ていきます。

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意味

サクセッション(succession)とは「継承」「相続」という意味を持つ言葉です。

そのため、サクセッションプランというと「後継者育成のための計画」という意味になるほか、単に「後継者育成」というシンプルな意味でも用いられることもあります。

「後継者」には、中小企業の社長の後継者だけでなく、大企業の幹部候補生という意味合いも含んでいます。

最近では「後継者」を広意義で解釈し「幹部人材の育成計画とその育成計画の実行施策全体」と定義しています。

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目的、必要性

なぜ、サクセッションプランが注目を集めているのでしょうか。実は、企業が抱えているさまざまな問題がサクセッションプランに大きく関わっているからなのです。

サクセッションプランの目的は何か、現代のビジネス社会にとってのサクセッションプランの必要性をひも解いてみましょう。

企業を成長させ続けるため

企業が成長を続けるためには、さまざまな力を必要とします。そのひとつが経営幹部の能力です。経営幹部の能力は企業の業績に大きな影響を与えます。プロジェクトが大きければ大きいほど、経営幹部による経営判断を仰ぐことになります。

もし、力不足の人材が重要なポジションを狙うことになると、経営的に間違った判断を下すことになりかねません。

その結果、業績が一気に低下する危険性が高まります。加速化する現代ビジネスの環境下では、迅速かつ確実な経営判断は不可欠です。

成長を続けていた企業がこれからも継続して成長を続けていくためには、現在まで成長させてきた経営者と同等、もしくはそれ以上の高い能力を持った幹部後継者を確保しておかなければならないのです。

コーポレートガバナンス・コードでの記載

コーポレートガバナンス・コードには、

取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである

との記載があります。

サクセッションプランでは、後継者の育成を図り、優秀な後継者の絞り込みや指名までを行います。コーポレートガバナンス・コードでは、サクセッションプランの管理監督をする組織を挙げています。後継者の育成関しては「取締役会」を、幹部候補者の絞り込みや指名に関しては「報酬・指名の諮問委員会」が記載されているのです。

蓄積してきた企業価値を、未来へ持続的に継続していくための、企業統治の観点から鑑みてもサクセッションプランの重要性がお分かりいただけると思います。

コーポレートガバナンス・コードとは?

ちなみにコーポレートガバナンスとは「企業統治のこと。つまり、コーポレートガバナンス・コードとは、経営の透明性を明確にするために企業の利害関係者が守るべき行動規範を示したルールのことです。

サクセッションプランは、企業統治のルール作りの中にしっかりと組み込まれています。

サクセッションプランの必要性は認識できても、実際の着手は難しいものです。

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2.サクセッションプランの事例

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現在では、さまざまな企業がサクセッションプランを導入しています。ここでは9社の事例をもとに、サクセッションプランの実施概要を見ていきましょう

どの企業も独自のプランを持って幹部育成に励んでいます。自社のプランニングに役立つ内容があれば積極的に参考にしてみましょう。

  1. 日産
  2. りそな銀行
  3. 花王
  4. GE
  5. コマツ
  6. 帝人
  7. トヨタ
  8. 良品計画
  9. オムロン

日産

開始時期

2000年

実施概要

グローバルな主要ポストの発掘、育成

特徴的な内容

CEOをはじめとする役員で構成する人事委員会(Nomination Advisory Council_NAC)の立ち上げを行いました。

そして、NACにおける情報収集を目的として、すべての会議に自由参加できるキャリアコーチという特別な役職を全社で5名選出します。

人的な情報を自在に集められるキャリアコーチが世界各地から次世代リーダー候補を発掘し、キーポジションに最適な人材をNACへ提案します。

また、RDP(Nissan Rotational Development Program)と呼ばれる採用の取り組みも行っています。

まず、海外の優秀な人材を集めているビジネススクールから卒業生を採用。そして、日本において仕事を習得し、そのノウハウを本国へ持ちかえってもらうという採用スタイルです。技術の日産が持つ高度なオペレーションを学んだ人材の排出は、人材の底上げを図ることにつながっています。

りそな銀行

開始時期

2015年

実施概要

役員の選抜・育成

特徴的な内容

対象となる「次世代トップ候補者」「新任役員候補者」を階層ごとに分類をし、育成プログラムを実施しています。客観的視点を重視しており、外部コンサルタントの助言を受けているのも特徴です。プログラムに関する評価はすべて指名委員会に報告されます。

指名委員会は、監査委員会や報酬委員会に並ぶ委員会のひとつで、代表執行役の監督や選定に関わる機関です。

指名委員会は、プログラムの報告を受けるだけでなく、指名委員会として個々のプログラムにも積極的に参加をすることにより育成対象者と直接接点を持つ機会を作っています。

また、

  • 組織を動かす迅速な決断と実行
  • 多角的・論理的に本質を見極める
  • グループの将来ビジョンを描く

など役員に求められる人材像7つを明確に定めています

指名委員会や役員がこのコンピテンシーに基づき、中立に評価を行っています。指名委員会の活動はすべて、半数以上が社外取締役の占める取締役会に報告されます。経営層の意向も汲める仕組みも整っています。

花王

実施概要

基幹人材の育成

特徴的な内容

花王は人財の定義を3つに分けてサクセションプランを実施しています。

  • ReadyNow(今すぐに後任となれる人財)
  • ReadySoon(1~3年で後任として育成する人財)
  • MidTeam(3~5年で後任として育成する人財)

です。

いますぐ後任になれる人財は候補者を1名必須で挙げます。

1~3年後に活躍する人財には、現業務のほか育成プログラムを通して能力開発にあたります。

3~5年後に活躍できるポテンシャルを持った人財には、育成プログラムと業務のローテーションを組むことで能力開発に臨みます。

サクセションプラン対象者には、サクセション・プランフォームを作成し、基本使命、求められるスキル、求められる経験といった内容を把握します。

それぞれの課題達成度は、コーチング、360度多面評価、フィードバックといった手法で本人に還元されます。還元された遂行度の評価で「気づき」を促していく仕組みです。

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GE

開始時期

1999年(日本法人における開始時期)

実施概要

9ボックス

注意
いま現在GEでは9ボックスの運用をやめています

特徴的な内容

GEはもともと、

  1. 外部志向
  2. 明確な思考
  3. 想像力と勇気
  4. 包容力
  5. 専門性

といった5つのGrowth Valueの定義を持っていました。

人材育成に活用してこれら明確な定義を持ちながら今日に至っているGEは2016年まで、サクセッションプランにおける候補者の選出の際、「9ボックス」というツールを用いて人材を振り分けていました。

縦軸にパフォーマンスの度合い、横軸にポテンシャルの指標をおきます。ポテンシャルには、前述のGrowth Valueの定義を活用します。

そして、それぞれの高低さに応じて縦軸3つ、横軸3つの計9ボックスに区分けします。それぞれのボックスには「ベスト」「優秀」「組織の屋台骨」「要改善」「ミスマッチ」といった名前をつけ、そこに人材を振り分けます

従業員は、自己評価と他者評価を同時に知ることができ、モチベーションアップに効果的と言われていました。この9ボックスに人材を振り分ける考え方は、日本企業の人材育成に大きな影響を与えました。

コマツ

開始時期

2006年

実施概要

経営層、工場長、部長などの幹部を対象とした人材開発

特徴的な内容

2006年より「グローバルマネージメントセミナー」を実施しています。

対象者は海外現地法人の幹部候補者および、サクセッションプランの対象者となる将来有望な人選された人材です。

このセミナーのねらいは、コマツの経営陣や社内外の講師とのディスカッションを通じて、自社の文化や歴史、戦略、リーダーシップ、強みと弱みなどの深い理解と情報の共有化を図ること。

毎年1回程度の開催ですが、研修ルームに集まった面々は、

  • コマツの歴史とコマツウェイ
  • コマツの事業戦略
  • グループディスカッションとプレゼンテーション

といったカリキュラムに沿って自分の所属する企業体への理解を深めていきます。2017年12月現在、累計118名がこのセミナーに参加しています。

ほかにも、部長クラスを集めたコマツウェイリーダーシップ開発研修やエキスパート研修、課長や一般社員を対象にしたコマツウェイ研修を行うなど、階層別に人材開発を行っています

帝人

開始時期

1999年

実施概要

経営者育成制度「ストレッチ」

特徴的な内容

帝人は、オリジナルの経営者育成制度「ストレッチ」によって役員候補者の選抜、育成をしています。

まず、役員に自分の後継者を推薦させ、人事委員会で選抜するメンバーを定期的に審議します。

後継者については、経歴を最も重視しています。特に海外とのビジネス経験、交渉能力などは高く評価されます。

一定の基準に基づき選抜された人材は、

  • ストレッチⅠ50代前後(40人程度)
  • ストレッチⅡ40代(75名前後)
  • ストレッチⅢ30代(100名程度)

の3区分にわけていきます。

ストレッチⅠやⅡに属する人材は、1年ごとの入れ替え制で、ビジネススクールに通わせるなど外部組織も活用します。

また、ストレッチに選抜された社員の人事権は社長が留保していることも特筆すべきでしょう。緊急時に備えて、会長、社長、国内および海外の社外アドバイザー計7名で構成されているアドバイザリーボードにおいて候補者を別途選別しています。

候補者は毎年審議を重ねて決定する念の入れようです。帝人では次期CEOの推薦については現CEOによって行われており、サクセッションプランの進行と同時に、CEOによる推薦の客観性や公平性も保たれるようにしています。

トヨタ

開始時期

1999年

実施概要

GLOBAL21プログラム

特徴的な内容

トヨタは役員や部長クラスの人材育成プログラム「GLOBAL21プログラム」を実施しています。

  • 経営哲学や幹部への期待の明示
  • 人事管理
  • 育成配置・教育プログラム

という3つの柱を用意し、グローバル幹部に見合う能力開発を目的とする内容になっています。

まず、哲学では「知恵と改善」「人間性尊重」といったトヨタウェイを学びます。

人事管理においては、評価基準、評価プロセスをグローバルに統一。

報酬については、ホームカントリー制を導入し、採用された事業体の給与体系に基づいた給与水準をベースに追加手当を支払います。

教育プログラムでは、年3回Global Succession Committeeを開催し、約600名の部長級以上の幹部人材の移動・配置や役員の候補者の育成についても議論および決定しています。

さらに、全世界から部長職候補の優秀者を10名程度選抜し、日本でケーススタディを実施。トヨタウェイに基づく経営判断についてのディスカッションを行います。

良品計画

実施概要

  • プロフィールシート
  • ファイブボックス
  • キャリパー・ポテンシャル・レポート

特徴的な内容

良品計画では、トップを含む課長以上の後継者の育成を人事委員会で検討します。その際、用いられるのがオリジナルのツールです。

後継者候補の人材育成を目的に開発され、基本属性に関しては「プロフィールシート」で管理を行います。社歴や行動評価、業績評価、社内教育、海外経験などが管理対象となります。

また、人材評価ツール「ファイブボックス」では、横軸に潜在能力、縦軸にパフォーマンスをとり、後継者に一番近いグループから合格範囲のコア・パフォーマーまでを選別します。

さらに、もっと詳しい要素別人事評価を行うために「キャリパー・ポテンシャル・レポート」を実施。リーダーシップや問題解決能力、意思決定、時間管理などをグラフ化して個々の特性を引き出していきます。

このように3つのツールを駆使して、課長80~90名弱、部長約20名、役員は常勤約10名、計110名程度のサクセッションプランが遂行されていきます。

オムロン

実施概要

社長指名諮問委員会

特徴的な内容

オムロンは、社長が指名した人材で形成されている委員会「社長指名諮問委員会を設けている点が特徴といえます。

社長指名諮問委員会とは、

「緊急事態が生じた場合の継承プランおよび後継者計画(サクセッションプラン)について毎年審議し、取締役会に答申する」(オムロン コーポレート・ガバナンスポリシーより引用)

という点を目的とし、設置された委員会となっています。

「サクセッションプランの透明性を高めていく」という点も目的としている委員会であり、取締役会は社長指名諮問委員会の答申に基づいて取締役選任議案を決定することになっています。

また、オムロンは「地球視点のビジョンで、新しい価値を創造し続ける企業」を目指しています。グローバルや透明性をキーワードにリーダー人材の育成、最適な人材配置、人間関係が良好で働きやすい組織づくりに取り組んでいる企業です。

意思決定の根拠となる人事データが少ないのは、サクセッションプランの策定の障壁にもなり得ます。カオナビなら、人事データの活用のポイント「収集の効率化」「一元管理」「可視化」がスムーズに実現します。

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3.プランの作成方法、サクセッションプランニング

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さまざまな企業で実際に活用されているサクセッションプラン。自社での導入を検討したときのために、実際のプランの作成方法、サクセッションプランニングについて確認してみましょう。

  1. 中長期経営戦略の策定
  2. 戦略上の重要ポジションの数・内容の想定
  3. 各ポジションの人材要件の決定
  4. 候補者の特定
  5. 候補者ごとの育成計画の作成
  6. 育成計画の実行
  7. 進捗の確認
  8. 計画の変更や育成施策の追加

①中長期経営戦略の策定

サクセッションプランニングの第一段階は、中長期経営戦略の策定です。

そもそもサクセッションプランは、経営者や経営幹部などの後継者育成計画を意味します。経営に携わる人材を育成するに当たり、経営に不可欠な企業風土、経営理念、経営戦略などの中長期的ビジョン無しにプランニングは成立しません。また、経営戦略無しではどんな人材を獲得、育成していいのかの判断つきません。

後継者育成の前段階でしっかりと経営戦略を練り、明文化しておくことはサクセッションプランニングの第一条件です。

②戦略上の重要ポジションの数・内容の想定

サクセションプランの作成にあたり、戦略上重要と思われるポジションの数とその内容を明確にしておくことも必要です。

代表取締役のみを対象とするのか、役員クラスまで、もしくは部長クラスまでを対象とするプランにするのかによって、サクセッションプランの規模や内容が大きく変わってきてしまうからです。

組織の中でどのポジションまでを重要とみなしプランニングの対象とするのか、その数や各ポジションにおける内容を詰めておきましょう。

③各ポジションの人材要件の決定

プランニング対象者の属するポジションが決定したら、今度は人材の要件について話を進めます。

それぞれのポジションでどのような人材が必要なのかを具体的にはっきりと定義付けます。

  • 専門的知識
  • 語学力
  • 資格
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • コンピテンシー

などといった項目を作って、細かく洗い出しましょう。

ここで導き出された要件によって育成計画の内容が決定しますので、できる限り具体性を持たせた人材要件にまとめあげられるのが理想です。

④候補者の特定

人材要件があがったら、次のステップは候補者の特定です。

特定方法には、

  • 自他による推薦方式
  • アセスメント方式
  • 選抜試験・選抜研修方式

などさまざまな方法があります。

また、特定のポストに関する候補者を都度募るのか、複数名の人材をプールしておくのかによっても絞り込み方法が変わります。

自社の規模やプランニングの対象となるポジション数にもよりますので、門戸は広く設けながら公平性や透明性のある選抜を行うといいでしょう。

⑤候補者ごとの育成計画の作成

重要ポジションごとの候補者が選抜されたら、その候補者ごとの育成計画を作成します。

もっと伸ばすべき特性、強化が必要な能力、充填の必要なスキルなど、一人ひとりに応じた育成計画の作成が必須です。幹部候補者なら、外部機関を利用して経営学の知識習得に力を入れたり、海外への派遣を通したアクションラーニングといったプランニングをしたりするのもよいでしょう。

ネットワーク構築や新しい業務体験のやめの配置転換も選択肢の一つです。

⑥育成計画の実行

育成計画が決定すれば、次はその実行です。経営幹部に求められる力は、計画したことを実行に移し、それを実現する力です。

育成計画は1カ月、3カ月、半年、1年などでスケジューリングされているはずです。「いつまでに何をやらねばならないか」がはっきりと決まっていますので、そのスケジュールに沿って速やかに実行に移せるように環境整備も併せて行いましょう。

⑦進捗の確認

育成計画の実行が始まって一定期間が経過したら、必ず進捗の確認を行ってください。進捗に遅れが見えるようであれば、早めの対処が必要です。進捗の確認をどの組織が行うのかも決めておく必要があります。

所属部署の上司なのか、人事部なのか、幹部が揃う人事委員会なのかによって、進捗の把握の仕方も変わってきます。幹部の育成に関わる問題でもあるので、できる限り人事委員会などの組織でも対応できるようにしておきましょう。

⑧計画の変更や育成施策の追加

一定期間の進捗を確認していく中で見えてくる問題点、計画が変更する場合は速やかに育成計画に反映させます。そもそも育成計画は、中長期的な経営戦略のもとで作成されたものです。

計画の変更、育成施策の追加や削除なども含めて、柔軟な対応が必要です。

一般的なマネジメントシステムは、PDCAを回します。サクセッションプランにおいても、

  • 計画
  • 実行
  • 評価
  • 改善

のサイクルを回すことで、効果的な人材育成が可能となります。

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4.プランニングを助けるフォーマット、9ブロック

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サクセッションプランの必要性を実感したものの、どこから導入してよいのかは悩んでしまうかもしれません。

でも、ご安心ください。サクセッションプランのプランニングを助けてくれるフォーマットがあります。

GEの事例でも紹介した9ブロックです。

9ブロックとは?

9ブロックとは世界的企業GEも採用していた人事評価制度です。

縦軸に「業績」、横軸に「Growth Values」を用い、それぞれの軸を3段階、計9マスに区分けします。9マスの特徴の応じ、社員を振り分けグルーピングしていきます。

その際、営業成績などはっきりと数値表記できるもの以外は無理して数値化せず、「比較するとほんの少しValuesが高い」といったような評価コメントも取りこぼさないようにグルーピングの参考にしていくのがポイントです。

Growth Values

9ブロックの横軸に使われているGrowth Values ですが、GEでは社内外の有識者たちによって「21世紀のリーダーは何を備えているべきか」を検討した中から生み出されました。

Growth Valuesは、

– 外部志向
– 明確でわかりやすい思考
– 想像力と勇気
– 包容力
– 専門性

という5つの要素で構成されており、これらはすべての社員に期待する指標としてアナウンスされていました。

プランニングの候補者の特定や進捗確認に有効

9ブロックは企業が独自に設定する指標を用いて、従業員を複数のブロックにわけることにより人事評価、人材管理を行っていくものです。

指標のひとつは業績、もうひとつは価値。その2面から人材をカテゴライズします。このことは、多くの従業員を抱える企業においてもプランニングの候補者の特定を容易にしてくれます。

業績も上げ、Growth Valuesを高めた人材が把握しやすいので、人材育成の進捗確認の観点からも有効です。

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5.サクセッションプランニングには誰が関わる?

Two businessman in office having discussion

サクセッションプランは本来、人事ではなく経営者が主体となって行うものであり、人事の役割は限定的といえます。

後継者の指名は経営者が主体となって行いますが、その他の候補者の選出や育成計画の企画・立案・運用は、人事も積極的に関与し他部署や経営陣との議論を通して決定します。

注意したいのは、育成計画は一旦開始したら、それで終わりではなく、常に見直しを行い、プロジェクトへの登用やメンタルケアなど、対象者へのきめ細やかな配慮とともに運用することが必要な点です。

特にサクセッションプランは、他の研修制度とは違い、経営者が後継者に対して行うことが多く、より経営に近い部分での業務を行うことも珍しくありません。

人事担当者は、幹部候補者に対して定期的にヒアリングを行うだけではなく、多角的な分析を通して過度な負担が掛かっていないか、プレッシャーが強すぎないか注意深く観察をしましょう。


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サクセッションプランのQ&A

サクセッションプラン(後継者育成計画)とは、幹部人材の育成計画、またはその育成計画の実行施策全体を指します。 企業内に優秀な人材を育成・定着させることを目的とした計画です。タレントマネジメントとほとんど同義で用いられることもあります。
サクセッションプランニングの流れは下記のとおりです。 ①中長期経営戦略の策定 ②戦略上の重要ポジションの数・内容の想定 ③各ポジションの人材要件の決定 ④候補者の特定 ⑤候補者ごとの育成計画の作成 ⑥育成計画の実行 ⑦進捗の確認 ⑧計画の変更や育成施策の追加 計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを効率よく回し、サクセッションプランを確立させましょう。
経営幹部の能力向上が挙げられます。また、企業統治や企業価値の向上にも寄与しやすいでしょう。 近年、サクセッションプランがさまざまな企業の注目を集めています。後継者を効果的に育成することで、企業活動の支障になりやすい諸問題の解決に役立つことが示されています。