ストレッチ目標とは? 成長の5段階レベル、チャレンジ目標との違い、設定、目標の立て方

ストレッチ目標とは、背伸びしないと手が届かない難易度に設定された目標のことです。ここではストレッチ目標の目的や設定する際のポイント、ストレッチ目標を設定するメリット、デメリットについて解説します。

1.ストレッチ目標とは?

「ストレッチ目標」とは、個人や組織において「背伸びして工夫することではじめて手が届く」ような難易度に設定された目標のこと。

ストレッチ(stretch)には「引き伸ばす、引っ張る」という意味があります。現在の能力では少し難しさを感じる状況で背伸びしながら仕事にあたり、成長を促すのです。なかには定常目標とセットでストレッチ目標を立てる企業もあります。

ストレッチ目標とチャレンジ目標の違い

ストレッチ目標とよく似た言葉に「チャレンジ目標」があります。「高い目標を設定する」という意味ではどちらも同じではあるものの、使用する場面が異なるのです。

  • ストレッチ目標:目標全般の難易度を「もっと高く」伸ばす意味合いで用いられる。設定される難易度は工夫して手が届きそうなレベル
  • チャレンジ目標:最低限達成しなければならない目標とは別に設けられた「2段階目の目標」としての意味合いが強い。ジャンプしても届くかどうかといった難易度で設定される

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2.ストレッチ目標の目的

ストレッチ目標を設定する目的は、「従来以上の能力発揮を促す」そして「新しい能力の開花や可能性の発見につなげる」。

アメリカ、GE社の元最高経営責任者であるジャック・ウェルチ氏は、ストレッチ目標を発案した際に「手の届く位置よりさらに達成が難しい位置で目標を設定すると、より大きな成果が生まれる」と考えました。

やがてストレッチ目標はアメリカから世界中に広がり、日本でも多くの企業が設定するようになったのです。

成長の5段階レベル

ストレッチ目標は人材の成長においてどの段階で必要となるのでしょう。経営組織論を研究する北海道大学大学院教授の松尾睦氏は、人の成長には次の5つの段階があると述べています。

  1. 初心者
  2. 見習い
  3. (とりあえず)一人前
  4. 中堅
  5. 熟達者

このうち、組織の中核を担う「中堅」は全体の約30%、職場のエースである「熟達者」はわずか10%といわれています。つまり(とりあえず)一人前から中堅に上がる段階に成長の壁が存在しており、そこにストレッチ目標の効果が期待されているのです。

従業員の育成に効果的

ストレッチ目標は特に従業員を育成する方法として有効です。入社して間もない新入社員や経験の浅い部下に「会社のために自分がなすべき明確な目標を立てよう」といっても、会社の経営状態や企業全体を見渡せない彼らには、難しいものがあります。

曖昧な目標を立てて仕事を行っても、彼らの能力は十分に発揮されません。ストレッチ目標を設定し、一人ひとりの状況に合わせた目標を立てると効果的な育成が期待できます。

ストレッチ教育とは?

背伸びをしないと届かない目標を与えて成長を促す育成手法のこと。

人材開発および組織開発を研究する立教大学教授の中原淳氏は、人は背伸びをしながら仕事にあたる「ストレッチゾーン(成長空間)」のなかでより成長できる、と述べています。

「頑張れば克服できそう」という考えがやる気を維持させ、クリア後の達成感、個人の成長につながるという考えです。

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3.ストレッチ目標を設定する際のポイント

従来以上の能力を発揮させ、新たな可能性の発見につなげるストレッチ目標。設定する際は、どのような点に注意すればよいのでしょう。ここではストレッチ目標を効果的に設定するための方法を説明します。

  1. 能力の見極め
  2. 個人に合わせた目標設定
  3. 目標設定後のフォロー
  4. ポジティブフィードバック

①能力の見極め

ストレッチ目標を設定する際は、まず部下や組織の能力を正しく見極めます。管理職は実際に部下と会話したり、現場を見学したりして自分自身で現在の状況を判断しましょう。

その際、自分の思い込みや査定結果のみを鵜呑みにしないよう注意が必要です。現在の状況が正確に把握できず、的外れなストレッチ目標を設定する恐れがあります。

②個人に合わせた目標設定

個人のレベルに合わせた目標を設定すると、ストレッチ目標はより効果的です。単に「売上を伸ばす」といった企業側の一方的な目標では、個人の効果的な成長は望めません。

ストレッチ目標を設定する最大の意義は「当事者に新たな行動を促す」。個人の成長やレベルに合わせ、「実施後どのような行動ができるようにしたいのか」「目的となる行動内容は何か」などを設定しましょう。

③目標設定後のフォロー

ストレッチ目標を設定するだけでは、成長や能力発見にはつながりません。個人や組織の能力を把握し、適切なストレッチ目標を設定したあとも、その後のフォローアップは欠かさないようにしましょう。

ストレッチ目標は、目標を達成するまでの過程と目標達成の成功体験を経てはじめて効果が得られます。設定後も自分の目で進捗を確認したり、相談や励ましを行ってより効果的なものにしていきましょう。

④ポジティブフィードバック

ストレッチ目標設定後のフォローでは「ポジティブフィードバック」を心がけます。ポジティブフィードバックとは、相手のポジティブな面を見つけ出して前向きな言葉で内省を行い、さらなる自発的成長を促す手法のこと。

結果が悪くともプロセスのよかった点を探して本人に伝えます。そうして「なぜそうなったのか」「もっと合理的な方法はなかったか」を考えさせ、成功(あるいは失敗)の認識を整理するのです。

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4.ストレッチ目標を設定するメリット

部下の育成手段として非常に有効なストレッチ目標。ここではストレッチ目標を活用するために知っておきたいメリットについて説明します。

  1. パフォーマンスの最大化
  2. 達成感
  3. 生産性の向上

①パフォーマンスの最大化

ストレッチ目標は背伸びをしないと届かない高さに目標を設置するもの。かんたんに手を伸ばしただけでは届かないところに目標があります。達成には相当量の努力が必要だと従業員自身が理解し、努力した結果、従業員の能力が引き出されるのです。

②達成感

人はさまざまな創意工夫を重ねて苦難を乗り越えた結果、目標がクリアできると高い達成感を得られます。ストレッチ目標の設定も同様です。

達成が困難な場所に設定された目標にはトラブルやミスが起こる可能性も高いでしょう。しかし乗り越えた際は大きな達成感を味わえます。

③生産性の向上

目標達成までの過程で生み出した新しい発想や仕事の進め方、技術の活用方法などは再活用可能な経営資源として蓄積されます。ストレッチ目標を達成した従業員はもちろん、その影響を受けた組織全体の生産性も高まるでしょう。

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5.ストレッチ目標を設定するデメリット

ストレッチ目標の設定にはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。

  1. モチベーションダウン
  2. パワーハラスメント

①モチベーションダウン

ストレッチ目標はかんたんに達成できるものだと意味がありません。目標の難易度は工夫や努力を重ねて届きそうな高さに設定します。

ここであまりにも実現が難しい目標を設置してしまうと、かえってモチベーションを下げてしまうでしょう。達成可能な目標の目安は、実能力の1.2倍~1.3倍です。

②パワーハラスメント

ストレッチ目標の設定は「パワーハラスメント」と紙一重です。「業務上明らかに不要」「遂行不可能な業務の強要」「過大な要求や仕事の妨害」はパワーハラスメントにあたります。

たとえ目標設定に部下を成長させる意図があっても、部下がそれを遂行不可能な業務の強要と感じれば、パワーハラスメントと見なされる恐れがあるのです。

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6.ストレッチ目標を立てる際の注意点

メリットとデメリットをそれぞれ踏まえたうえで、ストレッチ目標を立てる際の注意点について確認しておきましょう。注意するポイントは以下の3つです。

  1. 目標を設定したまま放置しない
  2. 高すぎる目標を設定しない
  3. 強要しない

①目標を設定したまま放置しない

ストレッチ目標は一度設定すればそれで完了ではありません。進捗や状況を見ながらフィードバックを行ったり、相談に乗ったりすることも大切です。

ストレッチ目標を立てる際は、目標を設定したまま放置しないように気をつけましょう。目標の達成までにいくつかのマイルストーンを設けて、進捗の確認、達成までの道のりを見直すのも効果的です。

②高すぎる目標を設定しない

前述した「ストレッチ目標を設定するデメリット」でもお伝えしたとおり、高すぎる目標の設定はかえって従業員のモチベーションを削いでしまいます。

努力や工夫をいくら重ねても達成できない目標では「どれだけやっても到達できるはずがない」「努力するだけ無駄」いう発想につながるからです。

成長を促す目的で設定したはずのストレッチ目標が、従業員の能力を半減させてしまわないよう注意しましょう。

③強要しない

各従業員の目標は上司が一方的に決めるのではありません。ストレッチ目標に限らず、従業員本人が主体となって設定します。

上司によって一方的に設定された目標は「強制されている」「過大な要求をされている」と受け取られる可能性もあるからです。

本人が「組織へ貢献すると同時に、自身の成長にこの目標を設定している」と感じられれば、目標達成に向けた本人のモチベーションも高まるでしょう。

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7.ストレッチ目標の立て方

それでは具体的にストレッチ目標を立ててみましょう。ストレッチ目標を立てる際は、以下3つのメソッドを参考にすると効果的です。

  1. SMARTの法則
  2. ロジックツリー
  3. ランクアップ法

①SMARTの法則

目標設定の有効度を高める手法のひとつ。以下5つをクリアすると、モチベーションを維持しやすい、また行動に移しやすい目標を立てられます。

  • S(Specific、明確性):具体的な目標である
  • M(Measurable、計量性):目標や達成度合いが定量的に示せる
  • A(Assignable、割当設定):目標達成に必要な役割を与えている
  • R(Realistic、実現可能性):目標が現実的である
  • T(Time related、期限設定):達成期限が明確である

②ロジックツリー

問題を解決する際、本質的な問題を絞り込んで解決策や課題を見つける手法のこと。最上位目標→中位目標→下位目標の階層にわかれています。抽象的な目標から具体的な手段に落とし込んで、実際の行動につなげる手法です。

問題をツリー状に分解して、細かい原因や解決策を論理的に探し出すロジックツリーを活用すれば、具体的な問題解決策が考えやすくなるでしょう。

③ランクアップ法

以下6つから目標項目を考えるフレームワークのこと。

  • 改善:ネガティブな部分に注目して解決する
  • 代行:自分よりランクが高い人の仕事を代行できるようにする
  • 研究:あるテーマを取り入れられるのか、研究する
  • 多能化:異なるジャンルのスキルを身につける
  • ノウハウの普及:自分のスキル、ノウハウを第三者が習得できるようにする
  • プロ化:スキルやノウハウを専門家レベルまで高める

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8.ストレッチ目標を設定した企業事例

アメリカから世界中に広がったストレッチ目標は、日本の企業でも設定されています。なかでも有名なのが、Google社が設定している「ストレッチゴール」です。

Google

Google社では、達成可能と思う値より高い目標を設定する方法として「ストレッチゴール」と呼ばれる目標設定を推奨しています。大きくとも達成不可能ではない目標を掲げるGoogle社では、目標の70%を達成できれば成功と考えているのです。

予定どおりに進められれば何の問題もなく達成できる目標を立てても、それは単なる進捗管理にすぎません。Google社は高すぎない目標値の設定が、チームやメンバーに創造性と向上心を与えると考えているのです。