ソーシャルキャピタル / 社会関係資本とは? 事例でわかりやすく

ソーシャルキャピタルとは、人々の関係性やつながりを資源としてとらえる概念のことです。ここではソーシャルキャピタルを構成する要素や重要性、メリット、デメリットについて解説します。

1.ソーシャルキャピタルとは?

ソーシャルキャピタル(social capital)とは、人と人との結び付きを支える仕組みの重要性を説いた考え方のこと。

人々の協調行動を活発にして、「信頼」や「規範」などの社会効率性を高めるものとされているのです。物的資本(Physical Capital)や人的資本(Human Capital)と並ぶ新しい概念として「社会関係資本」や「社会的資本」と訳されます。

ソーシャルキャピタルを利用した例

ソーシャルキャピタルは、アメリカの政治学者、ロバート・パットナム氏によって定義されました。これを利用した代表例が1990年代にニューヨークの治安を回復させたジュリアーノ氏の取り組みです。

ジュリアーノ氏はニューヨーク地下鉄の落書きを消したり、未成年者の喫煙取り締まり、万引きなど軽微な事案に対処したりして人々に安心感と信頼感を醸成しました。周囲の環境を落ち着かせてニューヨークの治安を回復させたのです。

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2.ソーシャルキャピタルの構成要素

ソーシャルキャピタルは下記3つの要素から構成されています。

  1. 信頼
  2. 規範
  3. ネットワーク

①信頼

あらゆる取引で重要とされる要素のこと。相互で信頼があれば、品質や安全性、納期などさまざまな情報に安心できます。自発的な協力を促すときもあるでしょう。

パットナム氏は「知っている人に対する厚い信頼」と「知らない人に対する薄い信頼」とでは、後者のほうがより広い協調行動につながり、ソーシャルキャピタルの形成に役立つと唱えています。

②規範

ソーシャルキャピタルにて、パットナム氏が重視したのは「互酬性」を持った「規範」。パットナム氏は相互に利益のあるwin-winの関係、つまり「互酬性」がある関係を目指すのが重要だと考えました。互酬性を持つ規範とは、以下2つの行為です。

  • 同等価値のものを同時に交換する行為
  • その時点では不均衡でも将来、均衡が取れると期待できる交換行為

特に後者は相手に短期的な利益をもたらし、当事者には長期的な利益をもたらすと考えられています。

③ネットワーク

周囲の人物やコミュニティ、団体などとのつながりのこと。パットナム氏はこのネットワークを「上下関係をともなう垂直的なネットワーク」と、「横並びの水平的なネットワーク」の2つにわけて考えました。

相互利益が目指せる協力を引き出すには、後者の水平的ネットワークが重要になります。相互関係を支えるには上司と部下の関係に見られる垂直的なネットワークより、顔をつき合わせた水平的ネットワークのほうが重要だとする考え方です。

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3.ソーシャルキャピタルを取り入れるメリット

近年、ソーシャルキャピタルを重視する企業も増えてきました。ソーシャルキャピタルが高い組織ほど、事業を円滑に進めやすいといわれているのです。ここではソーシャルキャピタルを取り入れるメリットについて3つの視点から説明します。

  1. 健康・教育
  2. 経済
  3. 犯罪率

①健康・教育

ソーシャルキャピタルをかんたんにいえば人間関係。ソーシャルキャピタルが多い人ほど健康状態がよく、幸福感も高いという調査結果もあるのです。人間関係が広ければ悩みを相談しやすくなり、ストレスの軽減に役立つでしょう。

②経済

ソーシャルキャピタルには信頼の増大による情報共有化の促進や取引コストの低下、ひいては経済成長に寄与する可能性などが期待されています。

たとえば求職活動をする際、ソーシャルキャピタルにて親友や家族、ちょっとした知り合いから新たなつながりが築ける可能性も高まるのです。こうした「橋渡し型」のソーシャルキャピタルが、経済面にもさまざまなメリットをもたらします。

③犯罪率

日常的に顔を合わせ、お互いどんな人が知っているソーシャルキャピタルを築けていれば、防犯や災害復旧に役立てられます。また子育ての不安や家族崩壊などの相談もしやすくなり、結果として孤独死や自死のリスクを下げられるでしょう。

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4.ソーシャルキャピタルを取り入れるデメリット

ソーシャルキャピタルにはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。

  1. コミュニティの対立
  2. 悪用のおそれ

①コミュニティの対立

パットナム氏はソーシャルキャピタルを取り入れるデメリットとして「排他性の危険性」を挙げているのです。

たとえばカルテルや人種差別活動のグループが現れると、必然的にそれに反した意見を掲げるコミュニティが誕生します。この対立が経済パフォーマンスの悪化や社会参画の遮断、個人の特異性を損なうと指摘しているのです。

②悪用のおそれ

ソーシャルキャピタルには、犯罪を減らすどころか、かえってその温床となる可能性もあるのです。

内向きで閉鎖的なソーシャルキャピタルは、社会的・民主的な目的ではなく反社会的・非民主的な目的に使われる恐れも。悪用を防ぐには特定グループの利益を目的とせず、あらゆる人がそのソーシャルキャピタルにアクセスできるようにするとよいでしょう。

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5.企業におけるソーシャルキャピタルの重要性

健康や教育、経済などさまざまな分野にメリットをもたらすソーシャルキャピタル。現代ではソーシャルキャピタルを重要視する民間企業も増えてきました。企業がソーシャルキャピタルを重要視することにはどのような目的があるのでしょうか。

  1. 事業の円滑化
  2. 職場内の関係性改善

①事業の円滑化

ソーシャルキャピタルが醸成されている企業では、以下の関係を築けます。

  • 職場内で自身の状況を正しく理解してもらえる関係
  • 職場ルールが正しく共有できている関係
  • 同僚からの手助けが得られる関係

これらの関係が組織を円滑に運営するためのインフラとしてプラスに作用するのです。

②職場内の関係性改善

企業と社会とのつながりが示せるソーシャルキャピタルを社内人事に応用すると、下記の効果を得られます。

  • 報告・連絡・相談がしやすく、ビジネスを円滑に進められる関係性が築ける
  • 従業員が困った際、相談できる場所を確保できる

ソーシャルキャピタルによって社内の人間関係が健全になり、従業員のパフォーマンスを発揮しやすい環境が作れます。

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6.企業におけるソーシャルキャピタルの活用方法

企業におけるソーシャルキャピタルは、事業の円滑化や関係性の改善を目指すうえで非常に重要となる取り組みです。ここでは具体的なソーシャルキャピタルの活用方法について説明します。

  1. ジョブローテーション
  2. オフィスレイアウト
  3. メンター制度
  4. グループインセンティブ

①ジョブローテーション

従業員の能力開発を目的として、人材育成計画にもとづいた異動や職務の変更を行う人事施策のこと。

会社にはさまざまな業務があり、各部署がどのような活動を行っているのか、瞬時にすべてを理解するのは困難です。そこでジョブローテーションとOJTをとおして、会社の状況把握や適性を判断し、将来的に会社を背負って立つ人材を育てます。

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②オフィスレイアウト

ソーシャルキャピタルはオフィスレイアウトの変更やフリーアドレス制の導入によっても構築できます。

決められた席を持たず、働く席を自由に選択できる「フリーアドレス型」なら、「人間関係の幅を広げる」「たコミュニケーションパフォーマンスの向上」「省スペース化」「スペースソリューションの促進」が期待できるのです。

③メンター制度

豊富な知識と経験を有した先輩(メンター)がキャリア形成を含めた、幅広い支援活動を行うマネジメント制度のこと。若手従業員が退職する理由のひとつが「仕事の悩みを気軽に相談できる相手がいない」。

社内のつながりを構築し、職場の人間関係の希薄化やロールモデルの不在を解消する制度として注目されています。

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④グループインセンティブ

グループ内の連携を強化する社内施策のこと。グループの成績や成果を評価してインセンティブを与える制度で、チーム内での連携を高められます。

インセンティブはチーム全体を活発にすると同時に、効率性や生産性の向上、チーム内でのつながりを感じるきっかけとなるのです。

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7.ソーシャルキャピタルの影響と事例

ソーシャルキャピタルの構築によって、どのような影響が生じるのでしょう。2つの自治体が実施した実例から、ソーシャルキャピタルの影響を見ていきます。

兵庫県神河町

兵庫県のほぼ中央に位置する神河町では、「住民関係の希薄化にともなうコミュニティ機能の低下」「ニーズの複雑化や多様化に対する行政対応の限界」に課題を抱えていました。

そこで同町はコミュニティの活性化に自主的に取り組んでもらうため「地域サロン事業」を開始。たとえソーシャルキャピタルの低い集落でも、高いソーシャルキャピタルを持つ中心層の活動にて、高いパフォーマンスが発揮できる可能性を示しました。

北海道東川町

北海道東川町の事例は、パットナム氏が伝えようとしていたソーシャルキャピタルの思想を具現化した希少な事例のひとつです。

東川町では「持続可能な地域社会」の姿を追って、定住人口を増やすより滞在してくれる人を目指す街づくりを行いました。住民には橋渡し型のソーシャルキャピタルが醸成され、健康と社会貢献、地域社会の発展につながる結果となったのです。