自己都合退職で失業保険(給付)はいつから・いくら貰える?

自己都合退職でも、条件を満たすことで失業保険(給付)が受けられます。失業保険(給付)はいつからもらえるのか、いくらもらえるのかなど気になる点も多いでしょう。今回は自己都合退職の失業保険(給付)について、さまざまな観点から詳しく解説します。

1.自己都合退職で失業保険(給付)を受け取るための条件

失業保険とは、雇用保険の基本手当のこと。「失業手当」「失業給付金」と呼ばれる場合も多いものの、正式名称は雇用保険の失業給付の基本手当といいます。会社を自己都合退職した場合でも、以下3つの条件を満たすことで失業保険(給付)が受けられるのです。

  1. 失業状態である
  2. 退職前の2年間で雇用保険に通算12ヶ月以上加入している
  3. ハローワークで求職申し込みを行う

各条件を詳しくみていきましょう。

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失業状態である

失業状態とは、就職する意思や就職する能力はあるが現時点で就業していない状態のこと。

たとえば、出産・育児のために退職してしばらく就職できない状態は、ここでいう失業状態に該当しません。退職後、仕事が見つかればすぐにでも就業する意思と能力がある状態を失業状態といいます、

退職前の2年間で雇用保険に通算12か月以上加入している

退職前の2年間で雇用保険に通算12か月以上加入しているのも必須条件です。退職前の2年間で一度転職しており、1社の在籍期間が6か月でも次の職場で6か月以上働いていれば対象となります。

なお、けがや病気、身内の介護、妊娠・出産・育児など正当な理由における自己都合退職では、軽減措置が適用されるのです。退職前の1年間で通算6ヶ月加入していれば失業保険が受け取れます。

ハローワークで求職申し込みを行う

ハローワークで求職申し込みを行い、積極的に転職活動していることも条件のひとつ。失業保険を受け取れるのは、仕事に就く意思と能力がある人です。ハローワークでの求職活動がその証明となります。

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2.自己都合退職の場合、失業保険でいくらもらえる?

自己都合退職の場合、支給される失業保険は退職時の年齢も加味されたうえで賃金日額のおよそ50〜80%です。

賃金日額は「退職日までの直近6か月の賃金合計÷180」で計算します。このとき、賞与は除き、残業代は含んだ賃金から計算するのです。

失業保険の日額は「賃金日額×0.5〜0.8」から算出でき、「失業保険の日額×給付日数」より失業保険で受け取れる手当の総額が計算できます。賃金日額には上限と下限があり、上回る場合は上限額、下回る場合は下限額が適用されます。

賃金日額の上限額(円) 基本手当日額の上限額(円)
29歳以下 13,890 6,945
30〜44歳 15,430 7,715
45〜59歳 16,980 8,940
60〜64歳 16,210 7,294
賃金日額の下限額(円) 基本手当日額の下限額(円)
全年齢 2,746 2,196

上限額は離職時の年齢が関係しますが、下限額は全年齢に適用されます。

失業保険で受け取れる基本手当日額の計算方法

年齢も考慮した計算方法を一覧で紹介します。

離職時の年齢が29歳以下

賃金日額 給付率 基本手当日額
2,746円以上5,110円未満 80% 2,196~4,087円
5,110円以上12,580円以下 80〜50% 4,088~6,290円
12,580円超13,890円以下 50% 6,290~6,945円
13,890円(上限額)超 6,945円(上限額)

離職時の年齢が30〜44歳

賃金日額 給付率 基本手当日額
2,746円以上5,110円未満 80% 2,196~4,087円
5,110円以上 12,580円以下 80〜50% 4,088~6,290円
4,088~6,290 円 50% 6,290~7,715円
15,430円(上限額)超 7,715円(上限額)

離職時の年齢が45〜59歳

賃金日額 給付率 基本手当日額
2,746円以上5,110円未満 80% 2,196~4,087円
5,110円以上12,580円以下 80〜50% 4,088~6,290円
12,580円超16,980円以下 50% 6,290~8,490円
16,980円(上限額)超 8,490円(上限額)

離職時の年齢が60〜64歳

賃金日額 給付率 基本手当日額
2,746円以上5,110 円未満 80% 2,196~4,087円
5,110円以上11,300 円以下 80〜45% 4,088~5,085円
11,300円超16,210 円以下 45% 5,085~7,294円
16,210円(上限額)超 7,294円(上限額)

賃金日額が低いほど、給付率が高くなります。離職時の年齢が65歳以上の「高年齢求職者給付金」を受給する場合も、上記表を適用します。

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3.自己都合退職の場合、失業保険はいつからいつまでもらえる?

自己都合退職では、失業保険の給付日数は90〜150日です。離職した翌日から1年間が支給対象期間となります。被保険者であった期間と給付日数を見ていきましょう。(全年齢)

1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
90日 90日 120日 150日

雇用保険に加入していた期間に応じて、給付日数は異なります。最大150日は、雇用保険に20年以上加入していた場合が対象です。つまり、20〜30代の人は90〜120日間の支給となります。

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4.自己都合退職の給付制限期間(待機期間)とは?

自己都合で退職した場合、受給手続き日から原則7日経過した日の翌日から2か月間は基本手当が受給できない期間があります。

これが給付制限期間(待機期間)です。基本的に給付制限期間は2か月ですが、「自己の責めに帰すべき重大な理由」により退職した人と直近5年間で2回以上自己都合退職している人は3か月となります。

給付制限期間は2020年10月1日より2か月に短縮され、それまでは通常で3か月でした。

給付制限が2か月となる場合

一般的な自己都合退職の給付制限期間は2か月です。最初の離職後、5年間は新たに離職が発生しても2か月の給付制限があります。つまり5年間で2回までの離職であれば給付制限は2か月のままです。

給付制限が3か月となる場合

3回目の離職であり、その前の直近5年間で2回以上の自己都合退職がある場合、給付制限期間が3か月になります。短期間で離職を繰り返してしまうと、5年間で2回以上となる状態が続くため、3か月の給付制限期間から抜け出せなくなる恐れもあるのです。

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5.自己都合退職者でも失業保険がすぐもらえるケース

自己都合による退職でも、下記2ケースでは給付制限期間なくして失業保険がすぐもらえます。

正当な理由で自己都合退職した場合

正当な理由による自己都合退職者を「特定理由離職者」といいます。下記は、特定理由離職者に該当する主な退職理由です。

  • 身体や精神上の理由
  • 出産や育児
  • 介護などの家庭の事情
  • 企業の人員整理制度に応募した
  • 配偶者の転勤など通勤事情が変化した

このような理由では早期に転職活動が行えない可能性があるとして、給付制限期間が適用されません。

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職業訓練を受ける場合

公共職業訓練を受けると、給付制限期間が免除されるのです。職業訓練は就職に必要な技能・知識を身につけることを目的に国や都道府県が実施する再就職支援で、どのような講座があるかは管轄のハローワークによって異なります。

次の就職に向けて新しいスキルや知識を身につけたいと考えている方にオススメです。

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6.自己都合退職における失業保険の再就職手当とは?

給付制限期間に就職し、以下要件を満たす場合は再就職手当が受け取れます。

  • 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上ある
  • 1年を超えて勤務することが確実であると認められている
  • 待期満了後の就職である
  • 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものである
  • 離職前の事業主に再び雇用されたものでない(資本・資金・人事・取引等の状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある事業主も含む)
  • 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていない
  • 受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでない
  • 原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用である

再就職手当の支給額

【基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の人】 【基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の人】
基本手当日額×所定給付日数の残日数×70% 基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%

早期に再就職するほど支給額も上がります。手当には上限額があり、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。

再就職手当の支給日数

支給日数は、所定給付日数と支給率によって異なります。

所定給付日数 支給残日数:支給率60%の場合 支給残日数:支給率70%の場合
90日 30日以上 60日以上
120日 40日以上 80日以上
150日 50日以上 100日以上
180日 60日以上 120日以上
210日 70日以上 140日以上
240日 80日以上 160日以上
270日 90日以上 180日以上
300日 100日以上 200日以上
330日 110日以上 220日以上
360日 120日以上 240日以上

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7.自己都合退職と会社都合退職で失業保険の何が変わる?

自己都合退職と会社都合退職で、給付制限期間の有無と給付日数が変わります。会社都合退職では下記表のように給付制限期間がなく、給付日数は最大330日です。

  1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上

35歳未満

120日 180日 210日 240日
35歳以上

45歳未満

150日 240日 270日
45歳以上

60歳未満

180日 240日 270日 330日
60歳以上

65歳未満

150日 180日 210日 240日

会社都合は自分の意志に反した離職となるため、最終就職する準備がないことを考慮して支給内容が手厚くなります。

なお、会社都合退職とは倒産や解雇、事務所の移転による通勤困難や労働契約内容が実際の労働条件と違っていたなどといった理由で退職することで、会社都合退職者は「特定受給資格者」の区分になるのです。

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8.自己都合退職で失業保険をもらうために必要な書類と手続き

失業保険の手続きは、失業者自身がハローワークで行います。ここでは、自己都合退職で失業保険をもらうために必要な書類と手続きの流れについて詳しく解説しましょう。

失業保険の手続きに必要な書類

失業保険の手続きに必要な書類は、下記4つです。

  1. 雇用保険被保険者離職票
  2. 身元を確認できる書類:運転免許証、マイナンバーカードなど
  3. 個人番号が確認できる書類:マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票
  4. 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

上記とあわせて、証明写真が2枚必要です。雇用保険被保険者離職票とは離職を証明する公的な書類であり、交付手続きは所属していた企業が行います。退職後、企業から雇用保険被保険者離職票が届けば失業保険の手続きが可能となるのです。

失業保険の手続きの流れ

必要書類を用意し、下記手順で失業保険の手続きを行います。

  1. ハローワークで求職申し込み
  2. 雇用保険受給者初回説明会に参加
  3. 失業認定
  4. 受給

①ハローワークで求職申し込み

失業保険の手続きは、住居を管轄するハローワークで行います。必要書類を用意し、ハローワークの窓口で手続きを進めるのです。

②雇用保険受給者初回説明会に参加

手続きが完了したら、次に行うのが雇用保険受給者初回説明会への参加です。指定の日時に開催されるため、必ず出席しましょう。

当日は「雇用保険受給資格者のしおり」と筆記用具を持参します。このとき、「雇用保険受給資格者証」や「失業認定申告書」がわたされ、次に解説する第一回目の「失業認定日」が知らされるのです。

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③失業認定

受給期間は、原則として4週間に1度、失業認定を行います。失業認定は、失業状態にあることの確認を行うために実施する手続きのこと。

指定日に管轄のハローワークへ行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出すれば失業認定が完了します。

④受給

失業認定を行った日から、通常5営業日で失業保険が振り込まれます。失業認定を行わないと失業保険が受け取れないため、指定日に必ず失業認定を受けにいきましょう。