生活残業とは? 働き方改革、見分け方、対策

生活残業とは、生活費として残業代を稼ぐため意図的に残業することです。ここでは生活残業の背景、見分け方や対策などについて説明します。

1.生活残業とは?

生活費を得るため残業すること。長時間労働が問題になる一方、生活残業をあてにしている社員が多いのも事実です。不必要な残業が発生する、日本企業ならではの背景と根深い問題について見ていきましょう。

生活費をあてにした意図的な残業

基本給だけでは生活が苦しいため、残業代を目当てに意図した残業が行われてしまうのです。生活費だけでなく、残業代を見込んで住宅ローンの返済計画を立てているケースもあります。

不必要な残業があれば、光熱費といったムダな経費も発生するでしょう。そして残業せず効率よく仕事をしているほか社員のモチベーションが低下してしまうのです。

生活残業が起こる背景

生活残業が起きるのは、企業側にも原因があります。

  1. 基本給が低い
  2. 評価制度が整備されていない
  3. 残業を美徳とする風土がある
  4. プレイングマネージャーの存在

①基本給が低い

基本給が低いため、足りない生活費を残業代で補うために生活残業が行われています。しかし働き方改革で長時間労働を制限し、給与から残業代がなくなると、こういったケースでは生活に困窮する可能性が高まるのです。そもそも残業しなければ生活できないような基本給を設定している、企業に問題があるといえます。

②評価制度が整備されていない

評価制度がきちんと整備されていない職場では、生活残業が起きやすくなります。タイムカードに記載された労働時間のみで評価するケースなどです。

「長時間働いていれば立派で、高い賃金がもらえる」といった認識が社員間に広まってしまいます。真に能力の高い社員を正しく評価しないのは、会社にとっても損失です。

③残業を美徳とする風土がある

「残業するのが美徳」といった企業風土も生活残業を増やしてしまいます。従来、日本企業では、勤務時間の長さが労働意欲の証明だとされていました。

「残業するのが当たり前」「残業は努力の証明」といった考え方の職場では、定時で帰ると出世が遠のくと考えたり、社内で孤立しないよう残業したりしてしまいます。

④プレイングマネージャーの存在

近年、管理職が「プレイングマネージャー」として、管理だけでなく現場にも出るようになりました。その結果、管理職は自分の仕事に精いっぱいで、部下の様子が把握できなくなるのです。

そして部下が「仕事が終わらないから残業しているのか」「残業代のために残業しているのか」どちらなのか正確に把握できず、改善に至らなくなります。

生活残業と似た言葉

生活残業と似た言葉で、ダラダラ残業やカラ残業があります。どちらも望ましくない残業で、前者は働き方を改善すべきもので、後者は犯罪に当たるものです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

ダラダラ残業

ムダな残業のうち最も多いもの。「所定労働時間内に仕事を終わらせよう」という意識が薄く、ダラダラと集中せず仕事をしている状態です。その間はインターネットや雑談、タバコ休憩なども行っています。

終業時刻後も社内に滞在すると電気代といったコストが上昇するため、是正すべき残業です。

カラ残業

残業をしていないにもかかわらず、就業時間を偽って申請し、不正に残業代を受け取ること。これは会社に対する詐欺行為となり犯罪です。

タイムカードの不正打刻は、組織的な行為と考えられるうえ非常に悪質といえます。もしこのような事態が生じたら当事者を厳罰に処すると同時に、抑止のため社内に周知しましょう。

働き方改革との関係性

働き方改革により、一人あたりの残業時間の上限は原則、月45時間、年間360時間と残業時間の上限が定められました。臨時的かつ特別な事情がない限り、上限を超えられなくなったものの、例外が認められる場合もあるのです。

大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されています。これにより、生活残業は削減されるべきという気運が高まりました。

生活残業は、生活費として残業代を得るため意図的に残業することです。働き方改革により残業時間の上限が定められ、生活残業削減の気運が高まっています

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2.生活残業がもたらす悪影響

生活残業が起こるとさまざまな悪影響があります。企業と社員、それぞれに生じる悪影響を見ていきます。

企業への悪影響

人件費が増加する

企業が社員の生活残業を認めていると、高額な残業代を負担し続けなくてはなりません。人件費があまりにも増えすぎると、経営にも影響してくるでしょう。

残業代の未払いが発生すると、訴訟や労働審判に発展する可能性も高いです。長時間労働や未払いが世間に知れわたれば、企業は悪い評価を受けてしまいます。「とりあえず残業代を支払って社員を満足させていればよい」訳ではないのです。

社内全体のモチベーションが低下する

一部の社員の生活残業を認めていると、まじめに働いているほか社員のモチベーションが下がります。

「正当な理由があって残業している」「残業しないよう効率よく仕事をしている」社員が、生活残業している同僚を見たときどう思うでしょうか。この場合、「手を抜いた仕事で残業代を得ている」と不満がわいてきてしまうのです。

企業イメージが低下する

生活残業を黙認していると、事情を知らない人は下記のようにとらえます。

  • 社員がいつも遅くまで仕事をしていて、長時間労働になっている
  • 残業が多い企業である

すると「ブラック企業」というイメージがつき、思わぬところから悪い評判が広まり、企業イメージが低下してしまうのです。

義務違反の責任を問われる

生活残業を認めている会社で、社員が体調不良で出勤できない状態になった場合、労災や安全配慮義務違反の責任を問われる可能性があります。直近の労働時間が、労災・安全配慮義務違反の判断基準に関係してくるからです。

また生活残業を認め続けて長時間労働が常態化していると、労働基準監督署から立ち入り検査を受けやすくなります。

生産性が低下する

仕事にかかわる人数や時間が多くなってしまうため、生産性が低下します。また「本来、さらに少ない人数や時間ですむ業務」なのに社員があえて多く見積もって上司や経営陣に申告した場合、会社全体の損失も招くでしょう。

社員への悪影響

人事評価が下がる

仕事の成果や効率性で人事評価を行っている会社では、労働時間当たりの仕事量が少ないとわかるため、生活残業をしている社員の評価は下がります。

とくに時間内の作業量や作業にかかった時間が可視化しやすい業務では、社員ごとの能力が一目瞭然でしょう。そして昇進や出世の妨げになり、長期的には収入が下がるのです。

仕事のスキルが低下する

生活残業で残業代を得るため、社員がダラダラと作業時間を引きのばすと、「決められた時間内に成果を生み出そう」と考えなくなります。結果、スピードや効率性というスキルが低下するのです。

目先の残業代は得られるものの、時間内により多くの仕事をこなす能力は身につきません。自分自身が成長する機会を失ってしまうのは非常に残念です。

場合によっては退職勧奨を受ける

生活残業を続けていても突然の解雇される状況にはなりません。しかし時間内に作業できないため能力が低いとみなされ、退職勧奨を受ける可能性があるのです。生活残業しないよう注意を受けても態度を改善しなかった場合も、該当します。

働き方改革により残業時間が定められ、多くの残業代を得るのは難しくなりました。

生活残業は、企業と社員、双方に多くの悪影響をもたらします。状況を改善し、生活残業をなくす方向にシフトしましょう

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3.生活残業をする社員の見わけ方

生活残業をする社員はどのように見つければよいのでしょう。ここではその見わけ方について解説します。

  1. 退社時間が一定している
  2. 仕事の進め方が非効率である
  3. 日中仕事に集中していない

①退社時間が一定している

意図的に残業している社員は「どれだけ残業するか」あらかじめ計算しているため、退社時間が一定する場合が多いです。

「退社時間が毎日ほぼ同じ」「毎日、決まった時間だけ残業している」「繁忙期でも閑散期でも関係なく、残業時間が一定時間内に収まっている」「残業に時期の波がなく、合計で一致している」社員がいた場合、気をつけておきましょう。

②仕事の進め方が非効率である

生活残業を習慣にしている人は、「定時に仕事を終わらせる」という意識が欠如しています。そのため調べものや探し物に余分な時間をかけたり、定時が近づいてきたら新しい仕事をはじめたりするのです。

③日中仕事に集中していない

生活残業を目的とする人は、就業時間中に集中していません。

「高確率で不在、どこに居るかわからない」「トイレや休憩からなかなか戻ってこない」「優先度の低い作業に時間をかけている」などの行動パターンが多く見られます。本来の就業時間中に手を抜いて、生活残業をしようと考えているためです。

生活残業する人は、退社時間が決まっています。非効率な方法で仕事をし、本来の業務時間中に集中していません

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4.生活残業への対策

生活残業を減らしていくためには、どんな対策が考えられるでしょうか。下記8つについて、見ていきます。

  1. 業務管理を徹底する
  2. 残業を許可制にする
  3. みなし残業手当を導入する
  4. 副業を許可する
  5. 企業風土を変える
  6. 基本給を上げる
  7. 裁量労働制を導入する
  8. 成果主義を導入する

①業務管理を徹底する

業務について作業量や人員を見直し、「ムリ・ムラ・ムダ」を改善しましょう。そして「特定の人に集中して属人的な業務になっていないか」「スキルのミスマッチはないか」「全員が納期意識を持っているか」を確認するのです。

「ノー残業デー」を導入し、定時に帰宅する曜日を設定すると、社員が労働時間を意識するようになります。

②残業を許可制にする

残業が必要であれば申し出て、上司が許可したものだけ認めるという制度の導入も考えられます。必要がない残業をしないように注意指導・周知したにもかかわらず、生活残業を繰り返す問題社員もいるでしょう。

その際にはなんらかの処分が考えられます。しかしあらかじめ社員に「生活残業がなぜ問題で厳しい処分になるか」を周知徹底しておく必要もあるのです。

③みなし残業手当を導入する

生活残業を削減する対策として、「みなし残業手当を支払う」方法があります。固定残業代ともいい、時間外労働・休日労働・深夜労働の有無にかかわらず、一定時間外分の時間外労働に割増賃金を定額で支払うものです。

毎月、固定で支払うため、月々かかる人件費の変動を最低限に抑えられます。そのうえで、時間数以上の残業を禁止にするとよいでしょう。

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④副業を許可する

働き方改革により副業解禁の動きがあります。そこで厚生労働省は企業と社員双方に、下記のようなメリットがあるとしているのです。

  • 社員の所得が増える
  • 離職しなくても別の業務が経験でき、社員のキャリア形成や自己実現につながる
  • 社員が社外から知識や人脈を得てくるので、企業の事業拡大につながる
  • 優秀な人材を獲得し、流出を防げる

⑤企業風土を変える

日本企業では長年、気づかいや譲り合いが美徳とされ、下記のような風潮があったのです。

  • 長く、会社に滞在するのがよい
  • 皆が残業していると帰りにくい
  • 上司より先に帰らない

このような考えをあらためていかなければ、生活残業は減りません。社員が定時に帰り、家事や家族との時間、プライベートの充実など、より実りある生活ができる企業風土をつくりましょう。

⑥基本給を上げる

基本給が少なく、社員が家計のため生活残業をしている場合、「基本給を上げる」対策が考えられます。なかには生活残業の収入を見込んで、住宅ローンなどの収支計画を立てている人もいるかもしれません。

そういった社員にとって、生活残業ができなくなるのは大きな損害です。企業は基本給を増額して賃金の底上げをするとよいでしょう。

⑦裁量労働制を導入する

裁量労働制の導入も、生活残業の削減に効果的です。裁量労働制とは、規定された労働時間について、働いたとみなして賃金を支払う制度のこと。

実際に少ない時間の労働でも賃金は同じなので、社員はより短時間で効率よく業務をこなそうとするでしょう。一定以上の人件費が発生しないため、企業は経費削減になります。

⑧成果主義を導入する

労働時間にかかわらず、「成果を生み出すと高額な賃金が得られる」仕組みにすれば、不必要な残業が減らせます。その方法は、下記のとおりです。

  • 賃金総額のうち、成果に連動する手当の割合を増やす
  • 査定による賞与の金額を増やす
  • 残業代を固定し、一定以上支給しない

生活残業を減らす対策として考えられるのは、「業務管理を徹底する」「残業を許可制にする」「みなし残業手当を導入する」「副業を許可する」「企業風土を変える」「基本給を上げる」「裁量労働制を導入する」「成果主義を導入する」の8つです