CSR(企業の社会的責任)とは? 意味、企業のCSR活動例を簡単に

収益を求めるだけでなく、環境活動やボランティア、寄付活動など企業としての責任を持って社会貢献へ取り組むCSR(corporate social responsibility)という考え方。

ここでは、CSRの意味やステークホルダーとの関係性、CSRが重要視される世界的な背景や混同されがちなCSVやサステナビリティとの違い、CSRによるメリットとデメリット、CSRに取り組む企業の事例などを解説します。

1.CSR(企業の社会的責任)とは?

CSRとは、企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことです。社会的責任とは、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献までの幅広い内容に対して適切な意思決定を行う責任を指します。各企業の特徴から担うべき責任は異なるため、各社はそれぞれ課題を見つけCSRを自ら作り上げていきます。

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2.CSRとの意味の違いを知りたい言葉一覧

CSRには混同しやすい言葉がいくつか存在します。そのなかでも特に使い分け方を知っておきたい3つの用語について解説します。

CSVとの違い

CSV(Creating Shared Value)とは、「共通価値の創造」を意味する言葉で、自社の経済的な価値と社会的な価値を両立させる共通の価値を見出すことです。

CSRがCSVと異なる点は、自社の利益獲得を主目的としないことです。CSRは社会的課題の解決に取り組み、企業価値を高めることを目的とします。

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サステナビリティと違い

サステナビリティ(Sustainability)とは、「持続可能性」を意味する言葉で、環境や経済、社会のバランスを考え、世界を持続可能な状態にしていくという考え方です。

CSRが企業の持続可能な成長を目指す活動であるのに対して、サステナビリティはより広い環境や経済、社会に対する持続可能性を追求する点で意味が異なります。

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SDGsとの違い

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」を意味する言葉です。2015年に国連で採択された2030年に向けた世界共通目標で、17の目標とこれを達成するための169個のターゲットで構成されています。

CSRとの違いは、SDGsが取り組むべき課題が決まっているのに対して、CSRはステークホルダーや社会の期待に応えるための活動を自由に選択できる点です。

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3.CSRが注目される理由

2000年代以降食品の偽装表示など企業の不祥事が相次ぎ、繰り返し発生していることが国内・国外問わず大きな問題となっています。また近年では、企業の生産活動に伴う環境破壊にも全世界から厳しい目が向けられています。

このような背景もあり、企業が社会から信頼を得るためにはCSR、つまり企業の社会的責任を果たしていくことが急速に重要視されるようになりました。

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4.国別に見るCSRの違い

続いて、日本以外の国でCSRはどのように取り組まれているのか国別に見ていきましょう。

アメリカの場合

1990年代の後半からアメリカでは、企業は利益を追求するだけでなく法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められるようになり、CSRの必要性が注目されるようになりました。

そして2000年代、企業活動のグローバル化により、多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことを背景にCSRの法整備が進んだのです。

またアメリカでは「企業は株主のもの」と考えられるため、株主への説明責任という観点から見ても、昔からCSRについての関心が高いといえるのです。

ヨーロッパの場合

ヨーロッパにはEUという共同体があるため、CSRを「未来への投資」と考えています。

すなわち社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払うことで、未来に対する投資や必要な活動を行っている、と認識されているのです。

ヨーロッパでは環境や労働に対する市民の意識が高く、このため企業としてのCSRに対する取組は包括的で、企業活動の根幹として根付いています。

アメリカ、ヨーロッパともに、それぞれの歴史的文化的背景からCSRについて広く認知されていると分かります

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5.CSR活動のメリット

次に、CSR活動に取り組むことで得られるメリットを見ていきましょう。

企業イメージ向上

CSR活動に取り組んでいることを内外にアピールすることで、イメージの向上に役立つとされています。東京商工会議所が行ったアンケートによると、79.7%の中小企業、98.3%の大企業がCSR活動に取り組む目的として企業イメージの向上と答えているのです。

企業のイメージの向上は、商品やサービス自体のアピールのほか、安心や安全といったイメージにもつながります。結果、企業としての信頼やブランドが向上し、それが商品購入につながり、利益向上にもつながると考えられるのです。

参考 「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査東京商工会議所

販売先・納入先との関係強化

CSR活動を継続して行っている企業は企業イメージが良くなるばかりではなく、その結果として顧客からの信頼が厚くなり、株主・投資家からも支持されるといわれています。

同じく東京商工会議所のアンケートによると、56.7%の中小企業、44.1%の大企業がCSR活動に取り組む目的として「販売先・納入先との関係強化」と答えています。

CSR活動に取り組むことで、これらステークホルダーとの関係を密にし、企業活動の円滑化や利益につなげることができるでしょう。

従業員満足度の向上

企業のステークホルダーは顧客や投資家だけではなく、従業員もその一部です。東京商工会議所のアンケートでは、52.9%の中小企業、72.9%の大企業がCSR活動に取り組むことで「従業員満足度の向上」を目指していると回答しています。

従業員は、自分の仕事が社会貢献につながっていると自覚し自信を持って働くことで、モチベーションが高まり生産性が上がります。

また、そのような従業員が多数在籍することで会社そのものも正常化。そこから明るい職場、社会貢献といったアピール要素ができ、学生などの求職者に好印象を与え、優秀な人材の採用につながります。

CSRのメリットとして挙げられるのは、「企業イメージの向上」「関係先とのつながりの強化」「従業員満足度の向上」などです

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6.CSR活動のデメリット

では逆に、CSR活動によるデメリットはどんなものがあるでしょうか?

コストの増加

CSR活動を行う上で考えられる最大のデメリットは、コストがかかるという点。東京商工会議所のアンケートによると、中小企業は73.8%、大企業は81.1%がコストの増加を感じていると答えました。

CSR活動を長期的な目で見ると間接的に企業の利益に貢献しますが、本業とはつながらない事業に対して投資することになるため、直接的かつ短期的には利益につながりません。創立間もない企業、経営が苦しい企業はなかなか踏み切れないでしょう。

人手不足

人手不足が社会問題となる中、CSR活動に取り組む人手がない、CSR活動に取り組むことによって人員を割かなければいけないという点を、デメリットと取る企業も多いとされています。

東京商工会議所のアンケートでは、51.8%の中小企業と48.6%の大企業が、人手が不足しているためCSRに取り組みたくとも思うように進まないと回答しています。

前述の通り、CSR活動は長期的な目で見れば優秀な人材の採用にもつながりますが、経営難の企業や人手の足りない中小企業では、CSR活動への取り組みによって起きる障害を懸念する声が目立つようです。

人手不足や短期的なコストがかかることから、CSR活動に取り組みたくても思うように進まないという企業も目立ちます

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7.CSR(企業の社会的責任)の7つの原則|ISO26000

ISO26000は、CSRに関する国際規格で、企業が社会的責任を果たしていくためのガイダンスとして利用されるものです。そのなかで社会的責任を果たすために必要とされているのが、次の7つの原則です。

  1. 説明責任:企業活動によって社会に与える影響を十分に説明する
  2. 透明性:組織の意思決定や活動に対して、透明性を保つ
  3. 倫理的な行動:公平性や誠実さなどの倫理観に基づいて行動する
  4. ステークホルダーの利害の尊重:様々なステークホルダーに配慮して活動する
  5. 法の支配の尊重:自他国の法令を尊重し、遵守する
  6. 国際行動規範の尊重:法令に限らず、国際的に通用する規範を尊重する
  7. 人権の尊重:重要かつ普遍的である人権を尊重する

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8.CSR活動の企業事例

最後に、CSR活動に取り組む日本企業とその内容について紹介します。

富士フイルム

「富士フイルムグループの考えるCSRとは、誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践することにより、社会の持続可能な発展に貢献すること」

富士フイルムでは上記の「CSRの考え方」を明確にし、富士フイルムグループの全従業員が日々の業務の中でCSRを意識し実践できる工夫をしています。

具体的なCSRの内容としては、きれいな水と空気や緑に代表される「自然保護」を対象に10億円の資金を拠出し、1983年に日本で最初の自然保護をテーマとした民間企業による公益信託として「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」を設立しました。

ブリヂストン

「最高の品質で社会に貢献」することは、私たちが受け継いできた伝統と使命

「責任ある企業として持続可能な社会の実現や社会課題の解決に向けて取り組む」ことを掲げ、グローバルCSR体系「Our Way to Serve」を運用するブリヂストングループ。

具体的には、自社の強みや特性を活かした人々の快適な移動、生活をサポートするためバス乗車時のバリアフリー化に貢献。免震ゴムの開発などの技術力を還元したり、自然や資源を大切にしたりすることを目的にゴム農園周辺の森林回復活動に力を入れています。

ダイキン工業

「価値提供のCSR」と「基盤的CSR」の2つの観点からCSR実現を目指すダイキン工業。

省エネエアコンの開発や世界7カ所で地域の人々とともに森林再生プロジェクトに取り組むなど、環境や新しい価値を創造することで「価値提供のCSR」をかなえました。

さらに企業統治の強化を土台にサプライチェーンマネジメントの導入、人権の尊重、小学生などを対象として教材の提供などを行うことで「基盤的CSR」にアプローチし、社会貢献のための取組を続けているのです。

武田薬品工業

「国際社会と連携し、疾患予防に注力することで、患者さんと医療の未来に貢献し続ける」

武田薬品工業では上記の考えに基づき、途上国・新興国の人々にとって切実な問題である保健医療アクセスの改善を進めるべく取り組んでいます。

具体的には出産時の母体の命を救うためのワークショップ、適切な医療を受けることが困難だった農村地域への資金提供の実施など、健康増進のための疾病予防に重点を置いたさまざまな支援プログラムを行っているのです。

これらの支援を長期的に行うことによって、日本のみならずアフリカ、アジアおよびラテンアメリカの地域で、数百万人の人々の健康に貢献しています。

コマツ

「本業を通じてCSR活動を行う」

コマツでは上記を基本方針とし、その際、CSRでどういった点を重視すべきか第三者を交えて整理したといいます。その結果、「生活を豊かにする」「人を育てる」「社会とともに発展する」の3つを主軸として活動を続けているのです。

具体的にはカンボジアにおける地雷除去作業を行う対人地雷除去機や油圧ショベルやブルドーザーなどの無償貸与、活動費の支援、また現地の人々の生活基盤形成のために、機械のメンテナンスや操縦方法などのトレーニングを実施しています。

さらに国内・国外を問わず災害によって被災した地域に、機材の提供などの実質的な方法で復興支援を行っています。

東北電力

東北電力では「地域社会との共栄」と「創造的経営の推進」の経営理念に基づいてCSRを進めています。事業活動の成長と地域や社会が直面する課題の解決に取り組み、それをもって持続的な発展を目指すことを目標としているのです。

具体的には東北7県の地域を舞台に、各県で行われる地域行事への参加や清掃・植樹、環境活動、福祉施設への訪問などを通して地域協調を図っています。

また、次代を担う子どもたちに身近な電気・エネルギーの学習を通して地球環境やエネルギー資源など地球規模の問題について考えてもらえるよう「エネルギー・環境教育」の支援活動に取り組んでいるのです。

トヨタ車体

トヨタ車体では「社会から必要とされる企業を目指して」を基本的な考え方とし、SDGsの17の目標と絡めてCSR活動に取り組んでいます。

事業と関わり深い環境への取り組みでは、車の走行時や生産時におけるCO2削減を、技術の改善や再生可能エネルギーの導入等から実現しようとする挑戦がされています。

また社会貢献活動では、国内外の工場や関連企業がある地域の緑化活動を通した森林環境の保全や地球温暖化の防止。地域の子どもたちの育成を目的とした、工場見学や職場体験の実施などの活動に取り組むことで、地域社会に貢献しています。

各企業は自社の特性や強みをよく理解した上で、社会において担うべき役割を分析し、CSRのため取組を行っていることが分かります

CSRのQ&A

CSRとは、corporate social responsibility(企業の社会的責任)の略語です。 企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことで、社会的責任とは、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献まで、幅広い内容に対し適切な意思決定を行うことを指します。
CSRの取り組みにはさまざまな手法があります。 たとえば富士フイルムは、自然保護をテーマとした民間企業による公益信託として「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」を設立。 ブリヂストンでは、バス乗車時のバリアフリー化への貢献や、免震ゴムの開発などの技術力の還元、ゴム農園周辺の森林回復活動。 また武田薬品工業では、出産時の母体の命を救うためのワークショップの開催や、適切な医療を受けることが困難だった農村地域への資金提供などのプログラムが実施されています。
CSRを推進すると企業イメージが向上します。顧客からの信頼が厚くなり、株主・投資家からも支持されやすくなるでしょう。 また、企業のステークホルダーは顧客や投資家だけではなく、従業員もその一部です。職務が社会貢献につながることを自覚し働くことで、モチベーションが高まり、生産性の向上を期待できるようになります。