【3分でわかる】CSRとは? 活動の種類、取り組み方、人事部の役割

収益を求めるだけでなく、環境活動やボランティア、寄付活動など企業としての責任を持って社会貢献へ取り組むCSRという考え方。

ここでは、CSRの意味やステークホルダーとの関係性、CSRが重要視される世界的な背景や混同されがちなサステナビリティとの違い、CSRによるメリットとデメリット、CSRに取り組む企業の事例などを解説します。

1.CSRとは?

CSRとは、企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことで、社会的責任とは、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献までの幅広い内容に対して適切な意思決定を行う責任のことです。

各企業の特徴から担うべき責任、役割、そして影響力は異なるため、各社はそれぞれ課題を見つけCSRを自ら作り上げていきます。また英語では「corporate social responsibility(企業の社会的責任)」といい、これの頭文字をとって「CSR」と呼ぶのです。

言葉の意味

最初に「corporate social responsibility」という言葉の意味について解説しましょう。

corporateの意味

「corporate」(コーポレート)は、「団体の」「組織の」といった意味を持つ言葉です。この場合、「法人の」という意味合いがあります。

socialの意味

「social」(ソーシャル)は「社交的な」「社会的な」「社会の」といった意味合いを持つ形容詞です。

responsibilityの意味

「responsibility(レスポンシビリティー)」は、「責任」「負担」「責務」といった意味を持ちます。

CSRとは、企業が持つ社会的責任のこと。この場合の対象は、従業員や消費者、環境などへの配慮から社会貢献など幅広いです

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2.CSRが広まった背景

食品の偽装表示など企業の不祥事が相次ぎ、しかも繰り返し発生していることが国内・国外問わず大きな問題となっています。また近年では、国内での取引にとどまらず国外取引も当たり前という時代です。

そのような背景に、企業の生産活動に伴う環境破壊にも全世界から厳しい目が向けられています。インターネットを通じて、共通の関心事を持つ個人やNGOが情報を共有できる現代において、こうしたさまざまな事情からCSRは急速に重要視されるようになりました。

企業による不祥事やグローバル化、環境問題の深刻化や消費者の目の成熟などさまざまな背景からCSRが広まりました

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3.CSRとサステナビリティとの違い

CSRと混同されがちな用語・考え方の一つにsustainability(サステナビリティ)があります。

サステナビリティとは、環境や経済、社会のバランスを考え、世の中全体を持続可能な状態にしていく考え方のことで、企業では、コーポレートサステナビリティ(さまざまな点に事業を通じて与える影響から、企業経営を考えていく)と呼ばれています。

サステナビリティは「持続可能な」「持続可能性」という意味を持つもので、CSRより前に提唱されていました。

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サステナビリティと関わりの深いSDGs

「SDGs」は「持続可能な開発目標」という意味も持ちます。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。

地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを目指し、さまざまなゴールとターゲットが定められています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むべきものとして、日本でも積極的な取組が期待されているのです。

サステナビリティ・レポートとは?

サステナビリティ・レポートとは、企業がサステナビリティを重視した経営を行っていることを一般に開示するための報告書のことで、持続可能性報告書と訳されます。

企業活動が事業活動を通じて環境に与える影響を主に盛り込んだ環境報告書に似ていますが、サステナビリティ・レポートは地域社会への貢献活動や労働環境、社内倫理などについても記載しているのです。

また自社が果たしている社会的責任について報告するCSRレポートが企業視点であるのに対し、サステナビリティは社会視点となっています。

サステナビリティとは、環境や社会などを「持続可能」な状態にしていく考え方のこと。CSRは優れたサービスによって社会的責任を果たすといった意味合いがあります

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4.国別に見るCSRの違い

続いて、日本以外の国でCSRはどのように取り組まれているのか国別に見ていきましょう。

アメリカの場合

1990年代の後半からアメリカでは、企業は利益を追求するだけでなく法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められるようになり、CSRの必要性が注目されるようになりました。

そして2000年代、企業活動のグローバル化により、多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことを背景にCSRの法整備が進んだのです。

またアメリカでは「企業は株主のもの」と考えられるため、株主への説明責任という観点から見ても、昔からCSRについての関心が高いといえるのです。

ヨーロッパの場合

ヨーロッパにはEUという共同体があるため、CSRを「未来への投資」と考えています。

すなわち社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払うことで、未来に対する投資や必要な活動を行っている、と認識されているのです。

ヨーロッパでは環境や労働に対する市民の意識が高く、このため企業としてのCSRに対する取組は包括的で、企業活動の根幹として根付いています。

アメリカ、ヨーロッパともに、それぞれの歴史的文化的背景からCSRについて広く認知されていると分かります

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5.CSRのメリット

次に、CSRに取り組むことで得られるメリットを見ていきましょう。

企業イメージ向上

CSRに取り組んでいることを内外にアピールすることで、イメージの向上に役立つとされています。東京商工会議所が行ったアンケートによると、79.7%の中小企業、98.3%の大企業がCSRに取り組む目的として企業イメージの向上と答えているのです。

企業のイメージの向上は、商品やサービス自体のアピールのほか、安心や安全といったイメージにもつながります。結果、企業としての信頼やブランドが向上し、それが商品購入につながり、利益向上にもつながると考えられるのです。

販売先・納入先との関係強化

CSRを継続して行っている企業は企業イメージが良くなるばかりではなく、その結果として顧客からの信頼が厚くなり、株主・投資家からも支持されるといわれています。

同じく東京商工会議所のアンケートによると、56.7%の中小企業、44.1%の大企業がCSRに取り組む目的として「販売先・納入先との関係強化」と答えています。

CSRに取り組むことで、これらステークホルダーとの関係を密にし、企業活動の円滑化や利益につなげることができるでしょう。

従業員満足度の向上

企業のステークホルダーは顧客や投資家だけではなく、従業員もその一部です。東京商工会議所のアンケートでは、52.9%の中小企業、72.9%の大企業がCSRに取り組むことで「従業員満足度の向上」を目指していると回答しています。

従業員は、自分の仕事が社会貢献につながっていると自覚し自信を持って働くことで、モチベーションが高まり生産性が上がります。

また、そのような従業員が多数在籍することで会社そのものも正常化。そこから明るい職場、社会貢献といったアピール要素ができ、学生などの求職者に好印象を与え、優秀な人材の採用につながります。

CSRのメリットとして挙げられるのは、「企業イメージの向上」「関係先とのつながりの強化」「従業員満足度の向上」などです

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6.CSRのデメリット

では逆に、CSRによるデメリットはどんなものがあるでしょうか?

コストの増加

CSRを行う上で考えられる最大のデメリットは、コストがかかるという点。東京商工会議所のアンケートによると、中小企業は73.8%、大企業は81.1%がコストの増加を感じていると答えました。

CSRを長期的な目で見ると間接的に企業の利益に貢献しますが、本業とはつながらない事業に対して投資することになるため、直接的かつ短期的には利益につながりません。創立間もない企業、経営が苦しい企業はなかなか踏み切れないでしょう。

人手不足

人手不足が社会問題となる中、CSRに取り組む人手がない、CSRに取り組むことによって人員を割かなければいけないという点を、デメリットと取る企業も多いとされています。

東京商工会議所のアンケートでは、51.8%の中小企業と48.6%の大企業が、人手が不足しているためCSRに取り組みたくとも思うように進まないと回答しています。

前述の通り、CSRは長期的な目で見れば優秀な人材の採用にもつながりますが、経営難の企業や人手の足りない中小企業では、CSRへの取り組みによって起きる障害を懸念する声が目立つようです。

人手不足や短期的なコストがかかることから、CSRに取り組みたくても思うように進まないという企業も目立ちます

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7.CSRの事例

最後に、CSRに取り組む日本企業とその内容について紹介します。

富士フイルム

「富士フイルムグループの考えるCSRとは、誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践することにより、社会の持続可能な発展に貢献すること」

富士フイルムでは上記の「CSRの考え方」を明確にし、富士フイルムグループの全従業員が日々の業務の中でCSRを意識し実践できる工夫をしています。

具体的なCSRの内容としては、きれいな水と空気や緑に代表される「自然保護」を対象に10億円の資金を拠出し、1983年に日本で最初の自然保護をテーマとした民間企業による公益信託として「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」を設立しました。

ブリヂストン

「最高の品質で社会に貢献」することは、私たちが受け継いできた伝統と使命

「責任ある企業として持続可能な社会の実現や社会課題の解決に向けて取り組む」ことを掲げ、グローバルCSR体系「Our Way to Serve」を運用するブリヂストングループ。

具体的には、自社の強みや特性を活かした人々の快適な移動、生活をサポートするためバス乗車時のバリアフリー化に貢献。免震ゴムの開発などの技術力を還元したり、自然や資源を大切にしたりすることを目的にゴム農園周辺の森林回復活動に力を入れています。

ダイキン工業

「価値提供のCSR」と「基盤的CSR」の2つの観点からCSR実現を目指すダイキン工業。

省エネエアコンの開発や世界7カ所で地域の人々とともに森林再生プロジェクトに取り組むなど、環境や新しい価値を創造することで「価値提供のCSR」をかなえました。

さらに企業統治の強化を土台にサプライチェーンマネジメントの導入、人権の尊重、小学生などを対象として教材の提供などを行うことで「基盤的CSR」にアプローチし、社会貢献のための取組を続けているのです。

武田薬品工業

「国際社会と連携し、疾患予防に注力することで、患者さんと医療の未来に貢献し続ける」

武田薬品工業では上記の考えに基づき、途上国・新興国の人々にとって切実な問題である保健医療アクセスの改善を進めるべく取り組んでいます。

具体的には出産時の母体の命を救うためのワークショップ、適切な医療を受けることが困難だった農村地域への資金提供の実施など、健康増進のための疾病予防に重点を置いたさまざまな支援プログラムを行っているのです。

これらの支援を長期的に行うことによって、日本のみならずアフリカ、アジアおよびラテンアメリカの地域で、数百万人の人々の健康に貢献しています。

コマツ

「本業を通じてCSR活動を行う」

コマツでは上記を基本方針とし、その際、CSRでどういった点を重視すべきか第三者を交えて整理したといいます。その結果、「生活を豊かにする」「人を育てる」「社会とともに発展する」の3つを主軸として活動を続けているのです。

具体的にはカンボジアにおける地雷除去作業を行う対人地雷除去機や油圧ショベルやブルドーザーなどの無償貸与、活動費の支援、また現地の人々の生活基盤形成のために、機械のメンテナンスや操縦方法などのトレーニングを実施しています。

さらに国内・国外を問わず災害によって被災した地域に、機材の提供などの実質的な方法で復興支援を行っています。

東北電力

東北電力では「地域社会との共栄」と「創造的経営の推進」の経営理念に基づいてCSRを進めています。事業活動の成長と地域や社会が直面する課題の解決に取り組み、それをもって持続的な発展を目指すことを目標としているのです。

具体的には東北7県の地域を舞台に、各県で行われる地域行事への参加や清掃・植樹、環境活動、福祉施設への訪問などを通して地域協調を図っています。

また、次代を担う子どもたちに身近な電気・エネルギーの学習を通して地球環境やエネルギー資源など地球規模の問題について考えてもらえるよう「エネルギー・環境教育」の支援活動に取り組んでいるのです。

各企業は自社の特性や強みをよく理解した上で、社会において担うべき役割を分析し、CSRのため取組を行っていることが分かります

CSRのQ&A

CSRとは、corporate social responsibility(企業の社会的責任)の略語です。 企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことで、社会的責任とは、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献まで、幅広い内容に対し適切な意思決定を行うことを指します。
CSRの取り組みにはさまざまな手法があります。 たとえば富士フイルムは、自然保護をテーマとした民間企業による公益信託として「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」を設立。 ブリヂストンでは、バス乗車時のバリアフリー化への貢献や、免震ゴムの開発などの技術力の還元、ゴム農園周辺の森林回復活動。 また武田薬品工業では、出産時の母体の命を救うためのワークショップの開催や、適切な医療を受けることが困難だった農村地域への資金提供などのプログラムが実施されています。
CSRを推進すると企業イメージが向上します。顧客からの信頼が厚くなり、株主・投資家からも支持されやすくなるでしょう。 また、企業のステークホルダーは顧客や投資家だけではなく、従業員もその一部です。職務が社会貢献につながることを自覚し働くことで、モチベーションが高まり、生産性の向上を期待できるようになります。