【事例】リバースメンタリングとは?【やり方をわかりやすく】

リバースメンタリングとは、若い社員がメンターとなって先輩社員に指導する取り組みのこと。リバースメンタリングのメリットや導入のステップ、実施のポイントや導入事例などを解説します。

1.リバースメンタリングとは?

リバースメンタリングとは、若手社員がメンターとなり、メンティーである先輩や上司に指導する取り組みのこと。メンターは「指導者」「助言者」などを意味し、「メンティー」は指導や助言を受ける側を指します。

つまりメンタリング(指導や育成)を行う人がリバース(反転)するのです。

逆メンター制度とも呼ばれる

一般的なメンタリングでは、上司や先輩が若手社員を指導する形になります。しかしリバースメンタリングでは両者の立場が逆になるため「逆メンター制度」とも呼ばれるのです。

メンター制度とは?【失敗例・成功事例】具体例に何をする?
メンター制度とは、年齢の近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする制度です。精神面のサポートをメインとすることから、社員の心理的安全性を高める効果に期待できます。 今回はメンター制度について、導入...

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【評価業務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

評価システム「カオナビ」を使って評価業務の時間を1/10以下にした実績多数!!

●評価シートが自在につくれる
●相手によって見えてはいけないところは隠せる
●誰がどこまで進んだか一覧で見れる
●一度流れをつくれば半自動で運用できる
●全体のバランスを見て甘辛調整も可能

カオナビの資料を見てみたい

2.リバースメンタリングとメンタリングの違い

リバースメンタリングとメンタリングは、役割と目的の面で明確な違いがあります。それぞれについて説明しましょう。

メンターとメンティーの位置づけ

  • メンタリング:知識やキャリアの豊富な先輩社員がメンターとなって若手社員を指導する
  • リバースメンタリング:役割と立場が逆になり、若手社員がメンターとなって、上司や先輩社員を指導する。技術といった直接的な指導だけでなく意見交換も含まれる

メンターとは?【チューターとの違い】役割、効果、運用手順
離職率の高さや社員の育成などについて、頭を悩ませている企業は多いのではないでしょうか。メンター制度は社員が頼れる指導者をつくり、そうした問題を改善へと導きます。メンター制度を取り入れる企業は、徐々に増...

実施する目的

  • メンタリングの目的:先輩社員の知識や経験にもとづいた若手社員に対するアドバイス
  • リバースメンタリングの目的:若手社員の知識やスキルを先輩社員が共有すること。組織のイノベーションや、多様性の受け入れなどを推進するといった目的も含まれる

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

3.リバースメンタリング導入のメリット

リバースメンタリングの導入は、組織の活性化や社員育成、エンゲージメントの上昇など、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。

  1. 視点や視野の拡大
  2. コミュニケーションの活性化
  3. マネジメントスキルの向上
  4. 社員エンゲージメントの向上
  5. 社員への支援として活用可能
  6. 知識や技術力の向上

①視点や視野の拡大

若手社員が持つ新しい考え方や価値観を取り入れられるようになり、ベテラン社員の視点や視野を拡大できます。

若手社員の考えをまったく取り入れない企業は、社員の考えが凝り固まりやすく、組織の硬直化を招きかねません。リバースメンタリングを行うと、若手社員の持つ柔軟なアイデアや発想力、働き方に関する新しい考えなどを取り入れやすくなるのです。

②コミュニケーションの活性化

リバースメンタリングの指導や意見交換をとおして、若手社員と上司のコミュニケーションが活性化します。一般的な会社で見られるような縦方向の力関係が緩和されて風とおしがよくなり、若手社員は上司や先輩に意見や提案などを伝えやすくなるでしょう。

コミュニケーションの活性化は、生産性の向上にもつながります。

③マネジメントスキルの向上

先輩社員や上司のマネジメントスキルが向上しやすくなります。若手社員と上司の交流が増えるため、上司は若手社員の悩みや考え方を把握しやすくなり、管理者としてどのように対応すべきか、考える機会が増えるからです。

④従業員エンゲージメントの向上

若手社員の発言の機会が増えると、若手従業員のエンゲージメントが向上しやすくなります。リバースメンタリングで若手社員が伸び伸びと発言できる社風が醸造されると、モチベーションも高まりやすいからです。離職率の低下も期待できるでしょう。

従業員エンゲージメントとは?【簡単に】高い企業、高める方法、事例
従業員エンゲージメントとは、会社に貢献したいという、従業員自身の意欲のことです。従業員エンゲージメントの要素やメリット、取り組んでいる企業などについて詳しく解説します。 1.従業員エンゲージメントと...

⑤社員への支援として活用可能

リバースメンタリングは、社員の働き方を支援する側面もあります。たとえば子育てをしている社員が現在自社の制度に持っている不満や、仕事と子育てを両立するうえで抱えている制約などを、上層部や管理職に伝える機会となりえるからです。

さまざまな境遇にある社員の悩みを企業側が解決していけば、社員の生産性およびエンゲージメントの向上につながるでしょう。

⑥知識や技術力の向上

リバースメンタリングで若手社員の知識やスキルを吸収したベテラン社員は、知見や業務の幅が広がります。とくにベテラン社員が苦手としているジャンルを、若い社員が積極的にサポートできれば、企業全体のスキル向上が見込めるでしょう。

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

4.リバースメンタリングのやり方・導入のステップ

リバースメンタリングの導入方法は、一般的なメンタリングとほぼ同じです。具体的な導入ステップを説明します。

STEP.1
人員の選定
リバースメンタリングを実施するメンターとメンティーを選定します。人員選定のポイントは、できる限り「評価者と被評価者」という組み合わせを避けること。

同じ部署の上司と部下では利害関係が生じやすいため、部下が指導しにくくなるからです。そのため上下関係が確立されていない他部署間で選定すると効果が高まるとされています。

STEP.2
目的の周知
リバースメンタリングを行う目的や期待する効果などを明確にし、メンターとメンティーへ伝えて理解を得ておきます。

またルールや制度の整備といった企業側のサポートをメンターへ伝えておけば、メンターは安心して指導や意見交換を行えるでしょう。

STEP.3
オリエンテーションの実施
本格的な実施の前に、メンターおよびメンティーへオリエンテーションを行います。内容は、ガイドラインの共有やコーチングや、ファシリテーションの学習など。

またオリエンテーションは、メンターとメンティーが交流する時間を作り、信頼関係を構築する機会ともなります。

STEP.4
関係部署からの同意
リバースメンタリングの実施を関係部署に連絡し、同意を得ておきます。関係部署へ伝える項目は、下記のとおりです。

  • リバースメンタリングのために時間を割く
  • 協力体制を築いてもらう
  • 施策の優先度の高さ
STEP.5
守秘義務契約のサポート
通常のメンタリングと同様、リバースメンタリングにも守秘義務が発生します。メンタリングで語られた内容は個人情報として扱い、相手の許可なく第三者へ漏らしてはいけません。

守られなかった場合の懲罰も含め、守秘義務に関する項目を必ず両者へ明示しましょう。

STEP.5
フォローアップ
リバースメンタリングを実施したら、1か月後や3か月後などのタイミングで定期的に効果を測定します。リバースメンタリングのテーマ、企業側のフォローアップ体制、ルールや制度などの見直しを行うためです。

定期的なフォローアップは、リバースメンタリングの形骸化の防止につながります。

Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。
人事評価システム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

5.リバースメンタリング実施のポイント

リバースメンタリングの実施では、いくつかのポイントがあります。たとえばメンターとメンティーの双方が納得のいくコミュニケーション方法や評価制度を用意するなどです。

  1. 実施目的の明確化
  2. 心理的負担に配慮が必要
  3. メンターの保護
  4. メンターの貢献度を評価

①実施目的の明確化

リバースメンタリングの効果を高めるためにも、実施目的をメンターとメンティー双方に理解してもらいましょう。目的が明確なら、その目的に合わせた行動指針や達成基準もまた明確になり、メンターもメンティーも行動できるからです。

定量的な達成基準を設けると、リバースメンタリング導入後の効果測定がしやすくなります。

②心理的負担に配慮が必要

世代間ギャップや価値観、考え方の違いなどから生じる心理的負担を考慮する必要があります。若手社員が目上の社員へ指導や教育を行うとなれば緊張や不安を覚えますし、メンティーの年齢差が大きいほど年長者のプライドから軋轢が生じる可能性も高いからです。

たとえば「メンティーからメンターへの指導は禁止する」「メンティーに傾聴の研修を実施する」など、心理的な衝突を防ぐルールや仕組みを設けましょう。

③メンターの保護

企業側がメンターを保護、あるいはサポートする仕組みも必要です。指導や教育などの経験が浅い若手社員がメンターになる場合もあるため、この点について事前にメンティーの理解を得ておき、メンターを尊重してもらうようにしましょう。

またメンタリングの実施前に、メンティーへの教え方や伝え方などのコミュニケーション研修を実施するのも効果的です。

④メンターの貢献度を評価

メンティーがメンターの貢献度を評価するのもポイント。メンターとしての働きや成果を人事評価に反映させるのはもちろん、メンティーがメンターから受けた指導や助言で「学べたこと」「できるようになったこと」などを伝えるのも評価のひとつです。

メンターの自信やモチベーションがアップしやすくなり、メンター社員の成長やエンゲージメントの向上などにもつながるでしょう。

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

6.リバースメンタリングの企業事例

すでに国内でも多くの企業がリバースメンタリングを導入しています。リバースメンタリング制度の事例を解説しましょう。

  1. P&Gジャパン
  2. 住友化学
  3. 資生堂
  4. スリーエムジャパン
  5. UBSグループ

①P&Gジャパン

P&Gジャパンは、2004年からリバースメンタリングを実施しています。導入した主な目的は、管理職や役員が部下の仕事や子育てなどに関する悩みを理解すること。

そのため同社のリバースメンタリングは相談や助言が中心です。また若手社員だけでなく、子どもを持つ女性管理職や外国人社員などもメンターに任命されています。

取り組みの結果、自発的にメンターとメンティーが生まれる企業風土が育まれ、女性社員の増加や出産後の職場復帰率の向上などの効果が見られました。

②住友化学

住友化学は、2020年からリバースメンタリング制度を開始。その理由は、メンティーである経営幹部が若手社員のセンスや感性に触れ、それを経営に生かすことです。

またメンターである若手社員と経営幹部とのコミュニケーションを増やして、エンゲージメントやモチベーションを高める狙いもあります。

メンタリングの内容は、「最新のIT機器・ツールの使い方を指導する」「若手社員の専門分野の知識を深める」などです。

③資生堂

資生堂は、2017年からリバースメンター制度を本格導入しました。目的は、「役員のITスキルや知識の向上および全社的なIT活用促進」「社内コミュニケーションの活性化」「若手の育成」の3つです。

同社のリバースメンター制度は、各部署の管理職の推薦を受けた社員がメンターとなり、年に3回から6回のミーティングを行うもの。

業務で使用するSNSツールの活用や課題の共有、他社事例の研究などをテーマとし、業務の改善やイノベーション促進につながるコミュニケーションが生まれています。

④スリーエムジャパン

スリーエムジャパンは、18歳から64歳の社員が所属する企業。多様な価値観を持つ社員に対するマネジメントを探るため、社長も含めた役員をメンティーに、入社4年目までの社員をメンターにするリバースメンタリングを導入しました。

同社のリバースメンタリングは、メンティー1名に対してメンターを2名選定し、月に1回1時間の対話を半年継続するというもの。

第1回目のテスト運用からすでに50名のメンターが参加しました。実施後の満足度測定では、メンターとメンティーの両方で5段階評価の4.5以上を得ています。

⑤UBSグループ

UBSグループの日本拠点では、経営層や若手社員の考え方や行動を変えることを目的として、早期にリバースメンタリング制度を導入しました。

同社のリバースメンタリングは、若手社員をメンター、経営層をメンティーとし、2名のメンターが1名のメンティーへ8か月にわたってアドバイスを行うというもの。

経営層は若手社員の考えを柔軟に取り入れるようになり、若手社員は発言の機会が増えるという好循環が生まれました。社員満足度調査では、コミュニケーションやエンゲージメントのスコアも向上しています。