フィランソロピーとは?【簡単に】事例、メセナとの違い

フィランソロピーとは、社会の課題解決のために、主に企業が取り組む活動のこと。ここではメセナとの違い、企業のメリット、活動事例などについて解説します。

1.フィランソロピーとは?

フィランソロピーとは、企業が行う社会貢献活動のこと。具体的な活動内容は、寄付やボランティア、子育て支援や環境保護活動などさまざまです。

意味と英語表記

英語での表記は「Philanthropy」です。語源はギリシャ語の「フィロス(愛)」と「アントロポス(人類)」で、「人類愛にもとづいた慈善活動」をといった意味を持ちます。

ボランティアやCSR活動との違い

ボランティアはフィランソロピーの一種です。一般的に、有事の際に行われる短期の活動を指します。またCSRは本業を通じて行われる社会貢献のこと。CSRとの違いはフィランソロピーは本業の余力で行われる活動である点です。

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2.フィランソロピーとメセナの違い

メセナとは、企業が行う文化や芸術への支援活動のこと。見返りを求めずに行う、本業とは直接関係のないコンサートの企画や美術館の運営などです。ただしメセナの支援対象は「文化」や「芸術」に限定されます。

一方、社会貢献活動全般を行うフィランソロピーは、特定の分野に限られません。

メセナ活動の具体例

メセナ活動として挙げられるのは、以下のようなものです。

  • コンサートや美術展、講演会など文化イベント開催
  • 音楽や美術のコンクール主催や入賞者への資金援助
  • スポーツチームの運営やスポーツ大会の主催
  • スポーツチームや文化団体への資金援助
  • 絵本の読み聞かせ
  • 美術館や博物館など文化施設の経営

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3.フィランソロピーに企業が取り組むメリット

企業はフィランソロピーに取り組むと社会的価値が向上し、さまざまな恩恵を得られます。ここでは3つのメリットをご紹介しましょう。

  1. 投資家へのアピール
  2. 企業価値の向上
  3. ビジネス機会の創出

①投資家へのアピール

フィランソロピーに取り組む企業は、投資家や銀行から好印象を持たれるため、資金調達しやすくなる可能性もあります。

2016年に国連がSDGsを示したのをきっかけに「将来、社会がよくなることにお金を使いたい」と考える投資家が増えました。本業を通じて社会貢献している企業は、成長率やリターンが高い傾向にあると判断され、事業資金を調達しやすくなるのです。

ベンチャー・フィランソロピー

社会的事業を行う企業や組織を、中長期にわたり支援して、事業を成長させることで社会的課題の解決に貢献する手法のこと。資金面の支援に限らず、事業戦略や組織づくりといった経営面も支援します。

日本では2013年に「日本ベンチャー・フィランソロピー基金(JVPS)」を設立。子ども学習支援や地方創生などを手掛けるNPO法人や一般企業などへの支援を、進めています。

社会的インパクト投資

社会や環境によい変化をもたらす活動へ投資して、社会貢献すること。たとえば以下のようなものです。

  • 被災地の経済復興を目的に産業へ支援
  • がん検診率向上プロジェクトへの出資
  • シングルマザーの起業支援プロジェクトへの出資
  • 発展途上国における女性起業家への支援

②企業価値の向上

フィランソロピーをとおして社会貢献活動に取り組むと、自社のブランドイメージを高められます。その結果、以下のようなメリットを得られるでしょう。

  • 転職市場で差別化でき、優秀な人材の獲得機会が増える
  • 消費者から自社の商品やサービスが選ばれやすくなる
  • 顧客からの信頼が高まり、長期的によい関係を維持できる

③ビジネス機会の創出

フィランソロピーで社会貢献を行いながら、新たな事業の創出も実現できます。

サステナビリティ経営が求められる潮流のなか、CSRとともに「CSV(Creating Shared Value:社会的課題をビジネス化すること)」という考え方が注目されるようになりました。

CSRは企業が担う社会的な「責任」ですが、CSVは社会貢献と企業利益を両立させる経営戦略を指します。

フィランソロピーへの取り組みをとおしてCVS経営に挑戦し、社会と企業の利益が共存する「新しい価値」を創造すれば、新たな分野でのビジネスチャンスを獲得できるでしょう。

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4.フィランソロピー活動の具体例

フィランソロピーは、社会に貢献する活動の総称です。ここでは思い浮かべやすい寄付やボランティアなどの身近な事例をはじめ、8つの活動例を紹介します。

  1. 寄付活動
  2. 地球環境保護
  3. ボランティア
  4. 子育てや教育支援
  5. CSR活動
  6. NPO活動
  7. ソーシャルビジネス
  8. デジタルフィランソロピー

①寄付活動

金銭や物品を特定の事業や団体、施設へ自発的に無償で提供する活動のこと。たとえば災害の被災者に送られる「義援金」も寄付の一種です。

多忙で社会貢献活動に時間を割けない人であっても、関心のある事業や応援したい団体への寄付をとおしてフィランソロピーに参加できます。

②地球環境保護

環境や生態系を守る取り組みや、地球温暖化や気候変動を抑制する取り組みのこと。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。

  • 温室効果ガスの抑制
  • 再生可能エネルギーの導入
  • ゴミの減量や分別

③ボランティア

自分の意思で行う社会貢献活動のこと。ラテン語の「volo(自発的)」から派生して生まれた言葉です。具体的には以下のような活動が挙げられます。

  • 地域の人との交流活動や高齢者の社会参加への支援
  • 青少年を対象としたレクリエーション活動やキャンプなど
  • 災害の被災者を支援する活動
  • 森林や海洋、動物などの自然保護活動

④子育てや教育支援

未来を担う子どもたちの育成支援や、育児中の親へ支援すること。具体的には以下のような支援が挙げられるでしょう。

  • 「保育ママ」や「事業所内保育」などの取り組みによる、地域型保育への支援
  • 子育ての相談や親子の交流ができる拠点の運営支援

⑤CSR(Corporate Social Responsibility)活動

企業が果たすべき社会的責任のこと。多くの企業では、自社の事業内容と関連する活動をとおして、環境保全を推進する取り組みを行っています。たとえば以下のような活動内容です。

  • 植樹や間伐などによる緑化活動
  • カーボンニュートラル原材料の利用による環境保全活動

環境保全以外では女性地位向上や文化支援、人権保護などへの取り組みも見られます。

⑥NPO活動

NPOとは、民間非営利団体のことで、社会的な使命の達成を目的とした市民活動団体です。活動には以下のような例が挙げられます。

  • ひとり暮らしの高齢者に食事を届ける活動
  • 歴史ある街並みや伝統芸能などの保存活動
  • 地雷の除去や撤廃への活動
  • 森林の保護や木材の有効活用への取り組み
  • 非行児童の更生支援活動

⑦ソーシャルビジネス

社会的課題へ継続して取り組む事業のこと。一般的な企業が利益の追求を目的としているのに対し、ソーシャルビジネスは社会問題の解決を目的としています。具体的な事業例は以下のとおりです。

  • 貧困層のため無担保で小口融資を行う銀行「マイクロクレジット」の設立
  • 耕作放棄地を利用してオーガニック野菜の生産販売事業の設立
  • 子育てと仕事の両立を実現するための病児保育サービスを提供

⑧デジタルフィランソロピー

デジタルを活用して、企業的価値と社会的価値の創出を目指す社会貢献活動のこと。

2021年、マイクロソフトとNTTデータが協業して「AIを活用するデジタルフィランソロピー」に取り組みました。活動をとおして、自社技術の認知度の向上よる企業的価値や、ステークホルダーや投資家、国際機関からの評価による社会的価値の向上を目指します。

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5.フィランソロピーの企業事例

近年、サステナビリティを意識して、自主的に社会課題解決に取り組む企業が増加しています。ここでは国内外の企業によるフィランソロピーの事例を4つ紹介しましょう。

国内企業

日本でも、企業に社会貢献を求める傾向は年々高まっており、多くの分野でフィランソロピーが進みつつあります。

味の素

味の素グループとして「食・栄養」「人材育成」「環境」「地域活動」「従業員参加活動」など、多くのフィランソロピーを実践しています。

  • 東日本大震災における支援:被災地に駐在スタッフを派遣して、現場の声に耳を傾け「心と体のケア」という課題を抽出し、参加型の健康栄養セミナーや料理教室を開催
  • 人材育成への取り組み:世界5か月6財団を中心に「奨学金制度」「学術・研究助成」「出張講義」などを展開
  • 世界一斉清掃:従業員参加の取り組みとして「世界一斉清掃」や「MOTTAINAI」キャンペーンを実施。毎年、世界150事業所で1万人以上が参加

トヨタ自動車

「環境保護」「人材育成」「交通安全」の3分野を中心に、主に中国でフィランソロピー活動を行っています。

中国の砂漠化を防ぐ日中共同プロジェクトの一環として、2001年から2010年までの間、砂漠化防止緑化プロジェクトを実施。

日中の関連各社からボランティアをつのってアブラマツの植樹活動に取り組み、9年間で370万本の植樹を達成しました。ほかにも「中国青年トヨタ環境保護賞」を設立し、環境保護活動をサポートする取り組みを行っています。

パナソニック

無電化地域に住む人々の暮らし向上を目的に、2013年から「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を開始。5年間の活動でアフリカやアジアの国々に10,2716台のソーラーランタンを寄贈しました。

2018年以降は「みんなでAKARIアクション」をスタートし、「あかり関連商品」の売上の一部をソーラーランタン購入費用に充て、無電化地域に寄贈しています。

海外企業

海外では、資産家個人のフィランソロピー活動が報じられる場合も多いです。しかし企業単位での活動も活発化しています。

マイクロソフト

「マイクロソフト非営利団体向けプログラム」を新設しソフトウェアやOffice365などクラウドサービスの寄贈を実施しています。寄贈の対象となるのは、社会貢献活動を行っている非営利団体です。

  • 貧困者や生活困窮者に対する支援
  • 教育の推進
  • 社会福祉の推進
  • 文化の保存
  • 環境の保護と復元
  • 人権の促進
  • 市民社会の確立

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6.個人でもできるフィランソロピーの活動例

企業だけでなく、個人でも参加できるフィランソロピー活動も多数存在しており、「日本フィランソロピー協会」でも多くの個人向けの活動を実施しているのです。

  1. 情報発信
  2. ボランティア活動
  3. エシカル消費

①情報発信

欧米諸国と比較して、日本でのフィランソロピーの認知は遅れているのが実情です。そのため個人による情報発信であっても、十分に有意義な活動といえます。たとえば以下のような行動です。

  • SNSやブログ、口コミなどで、フィランソロピーの情報を積極的に発信する
  • 友人や家族に、フィランソロピーに取り組んでいる企業の活動を伝える

②ボランティア活動

「高齢者や障がい者、子育て支援」「町おこしのサポート」「防犯活動」など、地域のボランティアへの参加もフィランソロピー活動です。

ボランティア募集は、各自治体に設置された「市民活動センター」のWebサイトから探せます。たとえば東京都は「市民活動の情報サイト」として「ボラ市民ウェブ」を立ち上げ、さまざまな情報を掲載しているのです。

③エシカル消費

エシカル消費とは、「人」「社会」「地域」「環境」に配慮した消費行動のこと。日常的なエシカル消費には、以下のような行動が挙げられます。

  • 売上の一部が社会貢献への寄付になる商品を購入する
  • 被災地で作られたものを購入して復興を支援する
  • 地産地消を心がける
  • マイバックやマイボトルなどを積極的に利用する
  • 地域のゴミ分別ルールを守る
  • 再利用やリサイクルを心がけてゴミを出さない工夫をする

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7.企業フィランソロピー大賞とは?

企業の社会貢献活動を表彰する取り組みのこと。2003年、日本フィランソロピー協会により創設されました。目的は、社会課題の解決に取り組む企業の活動を広く発信することで、「公正で温もりと活力がある社会」を次世代に伝えることです。

なお2022年度(第20回)の大賞は、パナソニックホールディングスの「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」。SDGsの「貧困の解消」を目指し、NPOやNGOといった非営利公益型組織の強化をサポートしています。

応募方法と選考基準

社会課題の解決に寄与する活動であれば、自薦他薦をとわず、各事業所や部門単位のプロジェクトでも応募できます。

応募方法

  • 協会指定の用紙に必要事項を記入
  • 応募期間内に応募フォームに添付して送信

選考基準

以下5つの選考基準をふまえて「書類審査」と「訪問調査」により選考します。

  1. 革新性
  2. 継続性
  3. 波及性
  4. 経営との関連性
  5. 経営資源の活用

2021年の大賞を受賞した取り組み

2021年度の大賞は、サラヤの「いのちをつなぐプロジェクト」でした。

同社は事業目的である「衛生・環境・健康の向上に貢献する」にもとづき2004年以降「生物多様性の保全」や「途上国の衛生への貢献」「海洋環境保護団体の支援」などさまざまな活動を展開。

「我々の生きる地球を守る」という大きな目標に取り組む点が評価され、受賞に至りました。