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度重なる法改正、働き方改革、採用市場の高騰……人事担当者の業務は尽きず煩雑化しています。人事システムを導入し、組織全体で活用することにより、人事から労務まで業務の効率化を図ることができます。生産性を高めて組織力を向上するひとつの手法として、人事システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
目次
1.人事システムとは?
人事システムと呼ばれるツールは、人事担当者が関わる業務内容を幅広くカバーし、その遂行を効率的に助けるものを呼びます。採用やタレントマネジメントなど人事業務から、勤怠管理・給与計算などの労務管理まで、あらゆるデータを管理し、意思決定の判断をサポートします。
戦略人事システムの意味
戦略人事とは、経営戦略を見据えた人材マネジメント。単純な人材管理機能だけでなく、経営戦略とその目標達成をサポートする目的で、上流の機能がそろうツールを戦略人事システムと呼びます。
戦略人事とは?【意味をわかりやすく】必要な役割、事例
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2.人事システムの目的
業務の効率化による生産性の向上が主たる目的です。経営資源の要「ヒト」を扱う人事部門の生産性の向上は、経営視点上でも重要な課題であり、その影響は組織全体の生産性にも及びます。また、人事・労務管理は業務内容が複雑多様であり、各業務の効率化を推進するにはシステムの導入が必要不可欠と言えます。
人事業務の効率化・生産性の向上により、企業活動の発展をより加速させることこそ、人事システムの導入ゴールです。そのために経営戦略を見越したツールの選別が必要とされるケースが一般的です。
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3.導入しやすい従業員規模数
人事課題の変化や技術の進歩とともに、企業の人事システム導入や運用に対する考え方も変わってきています。労務管理などの定型業務を行う人事システムについては、かつては従業員が数百名規模というのが導入目安のラインと言われていました。
大手だけでなく中小企業も導入可能
黎明期には、各企業が独自で開発・運用していましたが、環境変化に伴いパッケージ化が進み、現在ではクラウドで提供されることも多くなりました。
人事システムの導入コストが下がり、立ち上がりのスピードも速くなる中で、戦略的人事業務への活用も目的に、100名に満たない小規模の事業所で導入がなされるケースも見られるようになっています。
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4.人事システムの開発変遷と歴史
①人事業務効率化を目指した黎明期
人事システムと呼ばれるものが日本で使われだしたのは1980年代頃で、企業で使われるシステムとしては最も古い部類であるとされています。
当初はこの人事情報管理コストを下げることがユーザー側の最大の関心事であり、ターゲットとなったのが、いわゆる定型業務と呼ばれる分野でした。
具体的には、労務や給与、勤怠管理の効率化を目標に、氏名、性別、住所、家族構成や職歴、資格、昇降格や異動情報を管理する用途で開発、導入、運用されていました。
これらが厳密に管理されるべき個人情報であったこともあり、システムには汎用機ベースの自社開発ソフトウェアが使われることが多く、当然こうした開発や導入が可能なのは、一部の大手企業に限定されていました。
②人事システムのパッケージ化と導入企業数の拡大期
1990年代に入り、バブル崩壊やグローバル競争の激化といった社会的・経済的背景も相まって、リストラや成果主義の導入を行う企業が相次ぎました。
この一連の流れで中途採用や抜擢人事などが行われるようにもなり、人事部門は変化への柔軟な対応や、脱均一的管理が求められるようになりました。
そうした中で、人事システムにオープン系システムを導入する企業が増え、大手企業向けのERPだけでなく、中小企業向けのパッケージソフトなども一般的になり、人事システムを導入する企業の数が一気に拡大していきました。
③戦略的人事業務への人事システム活用へ
2000年以降には、各企業の人事部門が、従来の労務管理業務メインの役割から戦略的経営パートナー的役割への転換を目指す風潮が強まります。
人事部門にとって、企業の戦略実現に直結する、戦略的な人員配置や人材育成こそがメイン業務であるべきとされるようになりました。
人事部門では、定型業務に割く時間やコストを抑えつつ、いかにしてこうした重要業務にリソースをつぎ込むべきかが課題とされ、従来の人事システムを見直すとともに、戦略的人事業務へのさらなるシステムの活用が模索されるようになりました。
ベンダーからリリースされる人事システムの具体的な機能も、採用(含マッチング)、人事評価・タレントマネジメント、教育・研修といった分野にまで広がりを見せています。
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5.人事システムの種類
パッケージ型のツールから、各分野に特化したツールまで、人事システムにはさまざまな種類があります。各ツールの特徴と主だった機能を紹介します。
- 総合パッケージ型
- 採用管理ツール
- 人材管理ツール
- 給与管理ツール
- 労務管理ツール
- 勤怠管理ツール
- 人事評価ツール
①総合パッケージ型
基本的な従業員データ管理はもちろん、評価・給与・勤怠など組織運営におけるルーチンの効率化、採用・人材育成・配置転換などの分析・アウトプット、管理職の意思決定サポートまで、すべての機能を包括的にパッケージングしたツールを指します。
導入における注意点
基本的な機能は網羅されているため導入で間違いは起こりにくいものの、総合パッケージ型では痒いところに手が届かないことも。必要な機能で満たされているか、各分野で使いづらい部分はないか、専門的な機能が欲しい領域はないか、組織の現状とニーズを確認してから導入を進めましょう。
②採用管理ツールの機能
新卒採用・中途採用ともに、それぞれの採用フローや人材データを一元管理し、俯瞰的に見渡せるツールが多く出されています。面接スケジュールの進捗管理、審査におけるコメント機能といった、データの見える化と共有、またコミュニケーション機能などがあります。
③人材管理ツールの機能
タレントマネジメントを包括的に実施できるツールが多くあります。年齢・勤続年数・評価など基本の社員データを集計・グラフ化したり、部署における人材の偏り・不足人材の把握に役立つ配置バランス・スキル管理など、人材マネジメントを効果的にアシストする機能が多くあります。
④給与管理ツールの機能
勤怠情報の集計・分析、振り込み作業、従業員が給与明細をスマホで確認できるなど、便利な機能が多く揃えられています。単なる給与計算ソフトでは効率化ができない専門的な分野まで網羅されているケースが多いでしょう。
⑤労務管理ツールの機能
労使関係の情報管理、各種保険・福利厚生の管理、雇用や退職など時々に必要となる書類の自動作成機能など、煩雑な処理を効率的に遂行できるツールが主に出されています。
⑥勤怠管理ツールの機能
タイムカードなどを用いた物理的な打刻ではなく、スマホを利用したオンラインでの出退勤管理、人手不足になりやすい時間帯を可視化したシフト調整、給与の自動計算などが機能としてそろっています。
⑦人事評価ツールの機能
社員の目標設定から評価面談、評価結果の確認、フィードバックまで、すべての運用を可視化します。管理作業の効率化だけでなく、評価者による結果のバラつきや基準との乖離を是正するなど、評価の公平性の担保を期待できます。
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6.人事管理システム・ツールの種類とそれぞれのメリット・デメリット
人事管理業務におけるさまざまな機能を兼ね備えた人事管理ツールには、3つのタイプがあります。それぞれ異なるメリット・デメリットを持つため、導入を検討する際はこれらの特徴をしっかりと理解しておきましょう。
- インターネット上のシステムを利用する「クラウド型」
- 自社で回線を管理する「オンプレミス型」
- 自社に必要な機能のみを選択し使用する「パッケージ型」
①インターネット上のシステムを利用する「クラウド型」
「クラウド型」とは、委託企業(ベンダー)が提供するインターネット上のシステムを利用する形態のこと。物理的にサーバを設置・運用したり、ソフトを購入したりする必要がないため、ほとんどの場合、導入における追加費用がかかりません。
ユーザー数ごとの月額課金が基本となっており、導入・運用にかかるコストを抑えられる反面、自由度が低く自社に合わせてカスタマイズしにくいといったデメリットがあります。
②自社で回線を管理する「オンプレミス型」
「オンプレミス型(クライアント・サーバ型)」とは、サーバやパソコンにソフトをインストールして利用する形態のこと。自社内にサーバを購入もしくはリース契約する必要があるため、クラウト型に比べると初期費用はやや高額です。
一方で、「自社にあわせた独自システムを構築しやすい」「高いセキュリティを確保できる」といった強みも持ち合わせています。
またオンプレミス型はほかソフトウェアとの統合性も高いです。しかしそれにより、バックアップも自社内で実行・保管しなければなりません。
③自社に必要な機能のみを選択し使用する「パッケージ型」
「パッケージ型」とは、既存のソフトウェアを購入し、自社のパソコンにインストールして使う形態のこと。
クラウド型のような月額費用や、オンプレミス型のようなサーバ設置費用などはかかりません。しかし利用する端末ごとにソフトウェア購入・インストールが必要です。
ソフトウェアを購入するだけで始められるため、ランニングコストを抑えられます。その一方で、「必要な機能がそろわない」「ほかソフトウェアとの連携が難しい」といったデメリットもあるのです。

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7.クラウド型の人事システムが適している企業の特徴
クラウド型の人事システムが適している企業には、いくつか共通する特徴があります。クラウド型人事システムは、どのような企業に適しているのでしょう。かんたんに解説します。
- 導入の手間とコストを抑えたい
- 社外からのアクセスが多い
- 戦略人事に着手したい
- BCP(事業継続計画)対策を進めたい
①導入の手間とコストを抑えたい
クラウド型人事システムは、「初期費用やランニングコストが安い」「かんたんに導入できる」といったメリットを持ちます。またシステムを導入すれば、法改正への対応やセキュリティ対策なども不要です。
よって導入の人的手間やコストを抑えたいと考えている企業に、適しています。
②社外からのアクセスが多い
コロナ禍を経てテレワークを推進する企業が増えてきました。従業員とのやり取りにインターネットを介している企業は、どこにいてもシステムにアクセスできるクラウド型人事システムの利用が有効です。
また人数の多い営業部隊があるなど社外で活躍する従業員が多い場合にも、クラウド型はオススメです。
③戦略人事に着手したい
クラウド型人事システムでは、従業員情報を一元管理できます。一元管理した情報を活用すれば、戦略人事が進めやすくなるでしょう。
またシステムを活用すれば、人事業務の効率化・自動化・スピード化がよりいっそう進みます。時間的余裕を作って、ほか業務や人事施策に力を注ぎたい企業に有効です。
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④BCP(事業継続計画)対策を進めたい
クラウド型人事システムは、インターネット環境とデバイスが整っていれば、いつでもどこでも利用できます。万が一、自社で業務ができない事態が生じても、自社以外の場所から業務の継続が可能です。
作業状況もクラウド上でバックアップできるため、データ損失のリスクも抑えられます。BCP(事業継続計画)対策を進めたい企業には最適です。
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8.人事システムの比較ポイント
クラウド型の人事システムを比較検討する際、何に気をつければよいのでしょう。いくつかのポイントからかんたんに解説します。
- 自社が希望する機能を備えているか
- 操作はかんたんか
- 多言語に対応できるか
- サポートが充実しているか
- ほかシステムと連携が可能か
- セキュリティ対策が万全か
①自社が希望する機能を備えているか
クラウド型人事システムには、さまざまな機能があります。そのため、自社が希望する機能を備えているかどうか、比較検討事項にしましょう。
たとえば「どのような目的で人事システムを利用するのか」「目的達成のためにはどのような人事システムの機能が必要かどうか」です。
②操作はかんたんか
人事システムは、「個人情報の変更、更新」「各種手続き申請」「人事評価」など、人事担当者だけでなく一般の従業員も操作することがあります。
操作が複雑であれば、効率的な操作は困難です。直感的に操作できるかどうか、といった操作性の比較検討は不可欠でしょう。
③多言語に対応できるか
日本企業でも、外国人の採用といったグローバル化が進んでいます。それに対応するためには、多言語に対応できる人事システムの導入が不可欠です。
選択するシステムが自社が必要としている外国語に対応しているのか、比較検討しましょう。そして外国人の従業員も安心してシステムを使用できる環境を整えます。
④サポートが充実しているか
人事システムでは、「個人情報を取り扱う」「多くの従業員がシステムを利用する」ため、ベンダーが適正かつ充実したサポートを行っているかどうか、比較検討が必要です。
たとえば「サポートデスクにいつでもアクセスできる」「社会保険労務士などの専門家のサポートを受けられる」など、手厚いサポートがあるかを検討します。
⑤ほかシステムと連携が可能か
すでにほかシステムが稼働している場合外部ツールとしてそれらシステムと連携ができるかどうか、検討も必要です。
また現在ほかの人事システムを使っている場合、新しい人事システムへデータ移行が可能かどうか、検討しましょう。確認しておかないといざ導入した際、想定外の作業が発生する可能性もあります。
⑥セキュリティ対策が万全か
クラウド型人事システムは、クラウド上で個人情報といった機密情報を扱います。そのためシステムそれぞれのセキュリティ対策を丁寧に比較検討しましょう。たとえば、下記のようなポイントは最低限検討すべきです。
- 不正アクセス
- 通信の暗号化の有無
- アクセスログの管理
- ハードウェア機器の障害対策
- データのバックアップ
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9.人事システムの課題
日本の人事部は人事情報の蓄積・整理業務への割り当て時間が長い
神戸大学の調査(2009)から、日本企業の人事部は米国企業と比較した際「人事情報の蓄積・整理業務(従業員に関わるデータを収集し、必要な時に引き出せるようにメンテナンスすること)」に割く時間の割合が高くなっている一方で、戦略的経営パートナーとしての役割(戦略的な人事計画、組織設計、戦略的変革への従事)や、人事施策の実施や運用に関する支援といった業務への時間の割り当てが低いことが明らかになりました(Lawler, Bouderau and Mohorman, 2006の調査と神戸大学調査2009の比較によるもの)。
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人事施策とは...
従来型人事情報管理の限界
Lawlerなどは、人事部門の戦略的パートナーへの転換の有効性を主張し、逆に人事情報の蓄積・整理に時間を費やす人事部は戦略的焦点を曖昧にすると警鐘を鳴らしています。
また、平野氏は研究により、ローテーションを活用し、内部人材市場を育成し配置していく従来型の日本企業において、人事異動や人材育成をサポートするために人事部が集中的に情報蓄積・管理を行うことは、効率的かつ効果的であったことを明らかにした一方で、企業が今後もこのような人材マネジメントの形をそのまま維持し続けることに対しては否定的な見解を示しています。
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