パタハラとは? 事例、マタハラとの違い、原因と対策

パタハラとは育休を取得する男性社員に対するハラスメントです。ここでは、パタハラについて詳しく解説します。

1.パタハラとは?

パタハラ(パタニティハラスメント)とは、パタニティ(paternity)とハラスメント(harassment)を組み合わせた造語です。ハラスメントのひとつで、男性社員が育児休暇を取得する際、職場から受ける嫌がらせ行為を意味しています。

法律上、育児休暇は、男性女性ともに取得できることになっています。しかし、実際には男性の育児休暇取得率はなかなか向上しません。この背景のひとつに、職場におけるパタハラがあると考えられています。

マタハラとの違い

パタハラと類似する言葉に、マタハラがあります。マタハラとは、 英語で「pregnancydiscrimination」と言います。妊婦差別のことで、法律で認められている、産前産後休業や育児休業から復職した女性に対する不利益な取り扱いを指します。

具体的なマタハラの例としては

  • 復職後の不当な解雇
  • 不当な自主退職要求
  • 不利益な配置転換

などがあります。

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2.パタハラが注目されるようになった背景

パタハラが注目されるようになった背景には、低迷する男性の育児休暇取得率があります。男性にも育児への参加が求められていますが、実際には「男性=仕事」といった従来の固定観念から脱却できておらず、男性の育児休暇取得率は低迷を続けているのです。

その要因のひとつとして、パタハラが注目されています。厚生労働省の令和2年の調査では、過去5年間に育休を取得しようとした男性労働者の26.2%がパタハラを経験している実態がわかります。

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3.パタハラは法律違反

パタハラは育児介護休業法における法律違反です。育児介護休業法には、育児休業や育児を目的とした短時間勤務制度などが定められています。

この法律の対象者は、「日雇い労働者ではない」などの一定要件を満たした男女を問わないすべての労働者です。対象となる労働者に対し

  • 解雇
  • 雇止め
  • 降格
  • 減給
  • 契約更新回数の引き下げ

などにおける不利益な取扱いをした場合、事業主は法律違反をしたことになります。

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4.パタハラが発生する原因

パタハラが発生する原因として、4つの要因が考えられます。ここでは、パタハラの発生原因について解説します。

企業体制の未整備

パタハラが発生するひとつ目の原因は、企業体制の未整備です。育休の円滑な取得や復帰が実施できる仕組みや、育休が他の従業員の負担にならない仕組みづくりができていなければ、育休への理解は深まらず、パタハラが生まれる原因になります。

上司や同僚の無理解

パタハラが発生するふたつ目の原因は、上司や同僚の無理解です。職場には、育児休暇を取得しようとする男性社員に対して

  • 残業できない男性に仕事は任せられない
  • 育休をとるなら業務の変更や降格させる

といった上司や同僚の無理解があります。とくに、上司が古い価値観であれば、共働きの男性社員との価値観のズレはさらに大きくなります。

育児休業に関する知識不足

パタハラが発生する3つ目の原因は、育児休業に関する知識不足です。育児休業制度そのものの知識が不足している場合にも、パタハラが発生します。

  • 育児休暇は育児介護休業法で、一部例外を除き、男女を問わず法的に認められている権利である
  • 育児介護休業法では「育児休暇申請を認めない」など具体的な法律違反を設定している

など、正しい知識が必要です。

「育児は女性がおこなうもの」という固定観念

パタハラが発生する4つ目の原因は、「育児は女性がおこなうもの」という固定観念が根強く残っていることです。

  • 男性は社会に出て仕事をすべき
  • 女性は家庭で家事、育児に専念すべき

といった古い固定観念が社会に広く深く残っているため、男性が育児休暇を取得しようとする動きに対してハラスメントが発生します。

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5.パタハラの裁判事例

パタハラには、係争中のものも含め、さまざまな裁判事例があります。ここでは、3つの裁判事例をあげて解説します。

医療法人の事例

パタハラのひとつ目の裁判事例は、医療法人の事例です。3ヶ月以上の育児休業後に復職した男性看護師が、翌年度から

  • 就業規則上、職能給を昇給させない
  • 昇格試験を受けさせない

という扱いを受けました。

看護師側の訴えによる裁判の結果

  • 育児休暇取得が人事評価の対象外になるのは違法
  • 就業規則も業務上の合理性を欠く

とし、医療法人の対応を無効としました。

証券会社の事例

パタハラのふたつ目の裁判事例は、証券会社の事例です。男性外国人労働者が、パートナーの出産に合わせて育児休業の取得を申請しました。会社からは母子手帳不所持などを理由に休業が認められませんでした。結局、育休休業を開始しましたが、復職後に仕事を与えられないパタハラを受けました。

男性はうつ病を発症し、

  • 地位確認
  • 賃金支払い
  • 損害賠償

を求め東京地裁に提訴しました。

メーカー企業の事例

パタハラの3つ目の裁判事例は、メーカー企業の事例です。都内オフィスでプロモーション業務を担当していた男性社員が、「第一子誕生時1年間、第二子誕生時1年間の計2年間育休を取得し、復帰後、地方にある物流センターへ出向させられた」とし、会社を提訴しています。

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6.パタハラの防止策

パタハラを防止することは、企業のリスク管理のひとつであると考えられます。ここでは、パタハラの防止策について解説します。

育休制度を整備する

パタハラのひとつ目の防止策は、育休制度を整備することです。

  • 父親である男性社員に対し、1ヶ月以上の育休を取得することを義務化する
  • 育休だけでなく有給休暇を組み合わせることで、長期育休を取得できる制度を整備する

など、休暇取得の義務化を含めた男性社員の育児休業取得を容易にするための制度を整備します。

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周囲への理解を広げる

パタハラのふたつ目の防止策は、周囲への理解を広げることです。パタハラが発生する原因のひとつに、パタハラに関する周囲の理解不足があります。周囲へのパタハラに関する理解を広げるためには、

  • パタハラとはなにか
  • 育児休業とはどのような制度なのか

といったことに関する社内講習会を開くといった解決策があります。

育児をしやすい環境をつくる

パタハラの3つ目の防止策は、育児をしやすい環境をつくることです。育児休業に関する制度が整っても、現場の環境が変わらなければパタハラはなくなりません。

  • 業務を見直すなど、男性社員の負担を軽減させる
  • 上司も率先して育休を取得することで部下も育休を取りやすくする

など、職場の環境を整えることが重要です。

相談窓口を設置する

パタハラの4つ目の防止策は、相談窓口を設置することです。

  • 制度構築
  • 教育の徹底
  • 環境の整備

を行ってもパタハラが発生する場合があります。そのような際に、気軽に相談でき、客観的なアドバイスが受けられる窓口があれば、

  • パタハラ問題が大きくなる前の対処
  • 安心感のある育休の取得

が実現できます。

イクメン企業アワードに参加する

パタハラの5つ目の防止策は、イクメン企業アワードに参加することです。イクメン企業アワードとは、厚生労働省が2013年から実施している

  • 男性の仕事と育児の両立促進
  • 業務改善

を行う企業の表彰です。これに参加すれば、企業として男性社員の育児参加に協力的であることを社内外にアピールできます。

子育て推進企業の認定を受ける

パタハラの6つ目の防止策は、子育て推進企業の認定を受けることです。厚生労働省から子育て推進企業として認定を受けると、その証明としてくるみんマークがもらえます。

くるみんマークがあれば、

  • 職場で子育て推進について実際に取り組みが行われている
  • パタハラ防止やインクルージョンが推進されている

という証明になります。

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育児休業に関する助成金を得る

パタハラの7つ目の防止策は、育児休業に関する助成金を得ることです。子の出生後14日以内に、育児休業を連続14日以上(中小企業は連続5日以上)取得させた事業主に対して助成される、出生時両立支援コースといった助成金があります。

  • 中小企業では、1人目の取得で一人当たり57万円
  • 1企業で1年に10人分(初年度のみ9人)申請可能

です。

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7.パタハラの対応策

パタハラが発生してしまったときには対応策があります。ここでは、4つの対応策について簡単に解説します。

事実確認を行う

パタハラのひとつ目の対応策は、事実確認を行うことです。

  • パタハラの被害を受けた男性社員
  • パタハラの被害者の周囲にいる同僚社員

などに対し、

  • いつ
  • どこで
  • 誰が
  • どのような内容の

パタハラがあったのかを細かくヒアリングします。被害者のプライバシーに配慮しながらもできる限り詳しくヒアリングを行い記録に残します。

被害者のメンタルケア

パタハラのふたつ目の対応策は、被害者のメンタルケアです。パタハラを受けた被害者対して、メンタルケアなどの適切な対応を行います。

  • 育休取得が認められなかった場合には取得を認める
  • 不当な処分が実施されていたらそれを撤回する

など、これ以上被害者に、

  • 不利益が生じないよう
  • 不当な対応がされないよう

メンタルも含めてケアします。

加害者を指導する

パタハラの3つ目の対応策は、加害者を指導することです。パタハラを行った加害者に対しては、厳正な対処が必要です。加害者に対し

  • なぜパタハラをしたかを聞き取りながら、違法行為であることを直接注意する
  • 態度が改まらない場合には配置転換などの処分を下す

などの指導をします。ただし、重すぎる処分は裁判で争われる可能性があります。

再発防止に努める

パタハラの4つ目の対応策は、再発防止に努めることです。起きてしまった事例をもとに、再発防止策を徹底します。

  • パタハラが発生した理由や背景を分析し、その原因を把握する
  • パタハラが再発しないような有意義で実践的な措置を講じる
  • 一定期間経過後、措置の見直しを図る

など、パタハラの再発防止を徹底します。