無期転換ルールとは? 対策、モデル就業規則、特例、労働者のデメリットについて

期間を定めて雇用されている労働者、いわゆる非正規社員と呼ばれる労働者の雇用確保が社会問題となっています。同時に、企業にとって少子高齢化による労働人口の急激な減少が頭を悩ませる課題となっているのです。これらの問題の解決策のひとつとして、無期転換ルールという制度が誕生しました。

今回は、

  • 無期転換ルールの対象労働者
  • 無期転換ルールへの対策
  • モデル就業規則
  • 無期転換ルールの特例
  • 労働者のデメリット

などについて見ていきます。

1.無期転換ルールとは? 概要を解説

無期転換ルールとは、「同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期雇用契約労働者からの申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルール」(厚生労働省有期契約労働者の無期転換ポータルサイトより)です。

無期転換ルールは2013年4月1日の改正労働契約法により施行されました。目的は有期労働契約者が安定した雇用を確保することです。

  • 有期労働契約者の生活レベルを改善
  • 少子高齢化による労働人口不足への対応

など社会構造が抱える問題の解決策としても期待されています。

無期転換ルールの対象となる労働者

無期転換ルールの対象となる労働者は、原則として同一の会社で通算5年を超えるすべての有期雇用労働契約者です。具体的には1年や半年単位で有期労働契約を結び、その契約の更新を反復している労働者を指しており、雇用形態や雇用名称は問いません。

契約社員、アルバイト、パートタイマーなど、労働契約期間に定めがあれば、それらはすべて無期転換ルールの対象労働者となります。なお、3カ月や半年ごとの更新といった期間で派遣契約を更新する派遣社員も、雇用期間が有期であることから無期転換ルールの対象者です。

ただし、派遣社員は就業先企業と労働契約を結んでいるわけではなく、派遣元企業との雇用契約です。無期転換ルールの対応が求められるのは、派遣元企業ということになります。

特例を除き期間の定めがある労働契約をしている労働者なら対象で、かつ有期労働契約者が同一の会社で通算5年を超えて雇用されている場合には無期転換ルールの対象者になりうると覚えておきましょう。

有期労働契約/無期労働契約とは?

ここで、有期労働契約と無期労働契約、それぞれの定義を確認します。

有期労働契約とは、期間の定めのある労働契約のこと。労働基準法第14条は、1年を超える期間を定める労働契約をしてはならないとしています。

理由は強制労働や不当な身柄拘束の危険から労働者を守り、雇用の長期化によって労働者の働き方を束縛しないようにするためです。

一方無期労働契約とは、契約の終了日が定められていない契約です。両者の違いは雇用形態は問わず、あくまで雇用される期間が有限か無限かの違いによるものと理解しましょう。

無期転換ルールが適用される条件・ルール

無期転換ルールには、大きく4つの条件(ルール)があります。

  1. 有期労働契約者の労働契約が、同一の企業との間で5年を超えて反復更新されている
  2. 1回以上有期労働契約の更新が行われている
  3. 現時点同一企業間で労働契約を結んでいる労働者は、企業に対し無期労働契約への転換を申し込むことができる
  4. 労働者から有期労働契約期間満了日までに申し込みがあった場合、企業は無期労働契約への転換をする

労働者からの申し込みの後4つ目の条件が発動し、企業は無期労働契約への転換をすることとなります。

無期転換ルールの条件(ルール)は1回以上更新された有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者からの申し込みを受けて、企業は無期労働契約へと転換するというものです。

いつからカウント?(通算契約期間)

無期転換ルールの条件に、「5年を超えて反復更新されている」とありますが、どうカウントするのでしょう?5年の通算契約期間のカウント方法を解説します。

2013年4月1日以降に開始した有期雇用契約から、5年の契約期間をカウントします。

たとえば2013年4月1日から1年の労働契約を更新し続けている場合、5年が経過した2018年4月1日からの労働契約に無期転換申込権が発生します。2013年3月31日以前に開始した有期労働契約については、通算期間の算定対象外となります。

通算期間のクーリング

通算期間の算定には、通算期間のクーリングというもうひとつの注意点があります。

有期労働契約と有期労働契約の間に、同一の企業との労働契約がない期間、すなわち空白期間が原則6カ月以上ある場合、その空白期間より前に結ばれた有期労働契約は、無期転換ルールの算定対象期間5年間に含まないというルールがあります。

つまり通算期間を一旦リセットする意味で、通算期間のクーリングと呼ばれています。また空白期間の前の有期労働契約が3カ月更新、6カ月更新といった1年未満であった場合、クーリング期間は「厚生労働省令で定める期間以上」となっています。

2.無期転換の3つの類型

無期転換ルールの定義、対象労働者、条件(ルール)といった概要がご理解いただけたでしょうか。次に無期転換した労働者の活用方法を考えましょう。活用方法には、3つの類型がありますので、それぞれの概要を解説します。

  1. 雇用期間を変更
  2. 多様な正社員へ転換
  3. 正社員へ転換

①雇用期間を変更

無期労働契約を結んだ労働者の活用方法として挙げられるのは雇用期間のみを変更する方法です。

有期労働契約から無期労働契約へと労働契約期間のみを変更し、賃金や労働時間などその他労働条件面の変更はありません

就業する業務や就業場所が無期転換前と後とで変わらないケースや、配置転換・異動の対象にならない労働者であれば、雇用期間を有期から無期へと転換するだけで済むのです。企業側も大きな変更がなく手続きも複雑ではないので、対応しやすい方法のひとつでしょう。

②多様な正社員へ転換

多様な正社員への転換という方法もあります。多様な正社員とは、下記のような条件つきで働く正社員です。

  • 転勤が無い
  • 残業時間などの労働時間に対して一定の制限がある

働き方に一定の制限はあるものの、育児や介護などと仕事を両立している労働者にとっては、その制限がメリットに変わります。

労働者は、制限があることで働き続けることが可能というメリットを享受できるうえ、企業は、制限に合った報酬体系を作ることができます。労使双方がメリットを感じられる活用方法といえるでしょう。

③正社員へ転換

転換後の労働者の活用方法として最も幅広いのが正社員への転換でしょう。労働時間や業務内容などに制約がない、キャリアを積んだり将来的に会社の経営を担ったり各組織のトップに立ったりするいわゆる「正社員」です。

制約がない分、モチベーション高く仕事に取り組めば自分の能力を最大限発揮できるでしょう。企業側は貴重な経営資源のひとつとして労働者に惜しみなく活躍の場を提供するとともに、成果物に対してそれなりの報酬を支払うことになるでしょう。

転換の考え方

無期転換ルール適用後の労働者の活用には、3つのタイプがありました。

  1. 雇用期間を変更
  2. 多様な正社員へ転換
  3. 正社員へ転換

まずは労働者本人に3タイプのうちどれがよいかヒアリングすることが大切です。ヒアリングし、労働者の意向などを踏まえつつ、企業側の考えと折り合いをつけて決定していきましょう。

それと同時にひとつの活用方法にとどまらずたとえば「契約期間の変更」⇒「多様な正社員」⇒「正社員へ登用」といった段階を踏む登用制度を設けるなど中長期的な視点を持ち、その後の登用のあり方を想定することも大切です。

それは、労働者のモチベーションを高めることにもつながるでしょう。

3.2つの主な対策:就業規則変更と雇止め

企業が無期転換ルールを受け入れるには、事前の準備も必要です。労働契約の転換といった短期的な視点から、中期的な人事労務管理に至るまで幅広い検討をするようにしましょう。ここでは、主な対策として以下の2つをご紹介します。

  1. 無期転換をする場合
  2. 無期転換を回避(雇止め)する場合

(1)無期転換をする場合⇒就業規則の変更、申込書と承諾書の整備

企業が無期転換をする場合、就業規則の作成や変更、改訂を行う必要があります。

  • 雇用期間のみ変更
  • 多様な正社員として転換
  • 正社員として転換

それぞれで、就業規則の内容が変わります。無期転換ルールの導入前に雇用形態や労働条件をしっかりと検討しておくことが必要です。

就業規則の作成や変更、改訂にあたっては、3つのポイントをおさえておきましょう。

  1. 適用される無期転換労働者を明確にする
  2. 転勤条項の確認
  3. 定年に関する規定の整備

さらに出来上がった就業規則には「申込書」と「承諾書」の整備をします。口頭でも契約は成り立ちますが、必ず書面にて取り交わしましょう。

モデル就業規則

どのような就業規則を作成、または変更や改訂すればよいのかわからない場合モデル就業規則があると参考になり便利です。ここでは、「多様な正社員」制度の導入支援ツールとしての「モデル就業規則」について、全業種共通の規則をご紹介しましょう。

参考 全業種共通のモデル就業規則有期契約労働者の無期転換サイト

(2)転換を回避(雇止め)する場合⇒雇用契約書の整備

無期転換を回避する、すなわち雇止めする場合、企業は雇用契約書の整備が必要です。

たとえば、自社で契約社員を採用するとし契約社員との雇用契約書を締結する際に、「通算で5年を超えて雇用契約を更新しないこと」を明記します。この記載があれば当該契約社員が、無期転換ルールの対象者になることはありえません。

ただし、従来から雇用している有期雇用契約労働者を雇止めすることには高いリスクも伴います。有期労働契約が自動更新だった場合、無期労働契約の解雇と同一視されるケースもあるのです。

また有期労働契約の更新を期待する合理的な理由があれば、雇止めが解雇同等とみなされることもあります。雇止めには下記2点が必要です。

  1. 客観的に合理的な理由がある
  2. 社会通念上相当と認められる

対策の始め方

無期転換ルールを導入する場合の対策の始め方にも言及しておきましょう。無期転換ルールの対策として、まず現状把握に努めます。下記のような実態把握が必要です。

  • 有期雇用契約労働者の人数
  • 更新回数
  • 勤続年数
  • 担当業務内容

長期契約労働者の場合、気が付いたときには無期転換権が発生していたなどのケースも見られます。勤続年数や更新回数に関しては、正確な情報が必要です。

4.無期転換ルールの特例

無期転換ルールには、いくつか特例や例外があります。自社の労働者に該当者がいる場合には、特例についてのルールに従い、適切に対応しましょう。

– 通算契約期間の上限の例外
– 継続雇用の高齢者への対応方法

通算契約期間の上限の例外

例外となるのは、

  • 専門的知識等を有する有期雇用契約労働者(高度専門職)
  • 定年に達した後に引き続きその事業主に雇用される有期雇用契約労働者(継続雇用の高齢者)

です。

高度専門職とは、医師、公認会計士、システムアナリスト、システムエンジニア、特許の発明者などで、1年間当たりの賃金が1,075万円以上であることという年収要件もあります。

高度専門職は、5年を超える一定期間内に完了するプロジェクトに従事している間、無期転換申込権は発生しません

継続雇用の高齢者とは、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で定年に達した後、引き続いて雇用されている有期契約雇用労働者です。その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しません

継続雇用の高齢者への対応方法

継続雇用の高齢者は職種や年収要件を問わないので、各企業で対応を迫られるケースが多いでしょう。企業で具体的にどのような対応をする必要があるか、手続きを見ていきます。

  1. 第二種計画認定・変更申請書を作成
  2. 都道府県労働局長へ申請、認定を受ける
  3. 労働条件通知書を整備

①第二種計画認定・変更申請書を作成

継続雇用の高齢者に関する特例を受けるには、手続きが必要です。雇用管理措置に関する計画の認定申請を受けるために、「第二種計画認定・変更申請書」を作成します。

この申請書には、高年齢者雇用安定法第11条の規定による、下記9項目を記載します。

  1. 高年齢者雇用推進者の選任
  2. 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施
  3. 作業施設・方法の改善
  4. 健康管理・安全衛生の配慮
  5. 職域の拡大
  6. 知識・経験等を活用できる配置
  7. 処遇の推進
  8. 賃金体系の見直し
  9. 勤務時間制度の弾力化

②都道府県労働局長へ申請、認定を受ける

「第二種計画認定・変更申請書」の作成が終わったら、本社を管轄している都道府県労働局に提出し、労働局長の認定を受けます。就業規則などの添付書類もあるので、確認が必要です。

ただし全体で常用労働者数が30人以上いる企業であれば、手続きが簡略化できます。毎年管轄ハローワークに提出する6月1日現在の「高年齢者雇用状況報告書」にある「高年齢者雇用推進者」の項目に氏名が記載されている場合、書類のコピーを添付することで申請が可能です。覚えておきましょう。

③労働条件通知書を整備

特例措置の適用対象となる労働者には、必ず労働条件通知書を書面で明示してください。

労働基準法第15条等でも労働紛争防止の意味で労働契約の締結・更新といった際には、特例措置の内容を書面にて明示する必要があると明記されています。

労働条件通知書に【有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合】というタイトルを設け、「無期転換申込権が発生しない期間:Ⅰ (高度専門) ・ Ⅱ (定年後の高齢者)」とどちらの特例にあたるのかを示すのです。

そして、「Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間( ○年 ○カ月(上限10年))Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間」と具体的な期間を記しましょう。誤解が生じやすい定年後の高齢者については、引き続き有期雇用されている期間が無期転換申込権の対象期間とならない旨を、忘れずに提示しましょう。

5.無期転換による労働者のデメリット・問題点

無期転換ルールが適用された労働者には、デメリットや問題点はあるのでしょうか。ここでは、考えうる4つのデメリットや問題点を挙げます。

  1. 正社員になりにくい
  2. 労働条件は変更されない
  3. 正社員との待遇差
  4. 仕事が重くなる可能性

①正社員になりにくい

まず挙げられるのは、正社員になりにくいということです。雇用期間は期限の定めのない契約になりますが、契約社員、パートタイマー、アルバイトといった雇用形態に変動はありません。

また、無期契約社員、無期パートタイマーとして雇用が固定されるので、正社員になりたくてもなりにくい状況が発生します。企業側からしても、期間の定めをなくすだけで正社員にする必要はないのです。就業は確保されたものの、それが本当に労働者のメリットになるのかどうかは、疑問が残ります。

②労働条件は変更されない

無期労働契約を締結できた場合でも雇用形態が変わらなければ労働条件も変更されないことが多いでしょう。たとえば、給与やボーナス、退職金といった報酬規定や、福利厚生などの制度は契約社員、アルバイト、パートタイマーのままです。

企業側も、契約期間を無期にすれば、労働条件について特段の取り決めがない限り変更しなくても問題はありません。労働者は労働条件が変わらないまま契約期間だけが無期になる可能性が高い制度であると認識しなければならないでしょう。

③正社員との待遇差

無期転換しても正社員にならなければ、雇用側は従来通りに正社員よりも低い条件で労働者を雇用し続けることが可能です。一方、正社員は昇進や昇格などで労働条件や待遇の改善が進みます。

このように正社員との待遇格差は狭まるどころか、その差は広がる一方でしょう。雇用機会は守られたけれど、給与や福利厚生、昇進、昇格といった面で正社員との待遇差が広がる可能性が高い点は、労働者にとってデメリットといえます。

④仕事が重くなる可能性

有期雇用が無期雇用になれば、当然企業側から長期スタンスでの成果を求められることになります。与えられた目の前の仕事だけに結果を出していればよかった有期雇用時より、重要な業務を任される可能性が高まるのです。

  • 無期雇用になったら仕事が重くなった
  • 以前よりも責任感を求められるようになった

ということも起こりかねません。このように仕事が重くなることに対しての覚悟も必要となるでしょう。

まとめ

無期転換ルールは、非正規社員の雇用確保や少子高齢化による労働人口不足の解消などを背景に生まれました。有期労働契約が5年を超えて更新された場合、労働者からの申し込みにより無期労働契約に転換できます。

しかし、高度専門職や継続雇用の高齢者に対しては特例措置があるので、手続きも含めて制度の詳細をよく確認しなくてはなりません。

労使ともにメリット・デメリットはありますが、制度の趣旨を読み取り、経営資源を有効活用するひとつの手段として考えるのもよいのではないでしょうか。